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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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441 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 12:30:05.69 ID:TczQQdCb.net
慌ててカゴの中身を計算する。
すると、なんだかんだで3000円はいっていた。
財布の中身は・・・・・・俺は分かり切ってることを確認する。
使わなかったお年玉や、臨時の小遣い、そんないままでの分を全部合わせた、計6000円だ。
残りを全額つぎ込むとして、買えるやつはアレとアレとアレと・・・・・・
とりあえず候補は出したが、なかなかどれを買うか決まらない。
包丁売り場で悩んでたら疑われる。そう思った俺は、隣のまな板を手にとった。
そして誰もいない通路で、「俺が欲しいのは まな板です」アピールをしながら悩んだ。
442 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 12:36:13.62 ID:TczQQdCb.net
できることなら、実際に握りを掴んで、その感触を確かめたかった。そうすれば、どれが目的にふさわしいか、わかるような気がしたからだ。
けど、包丁はどれも箱に収められている。
・・・・・・よし、これでいいだろう。
俺は悩み抜いた末、一本を選んだ。
それは背が黒い色をした、比較的細身の包丁だった。先がすっと尖っていて、よく刺さりそうだ。
443 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 12:49:05.46 ID:TczQQdCb.net
Aの殺害道具一式。
そんな物騒なものが入ったカゴを持ち、俺はレジに並んだ。
レジには、二、三人の買い物客が並んでいた。俺が並ぶと、すぐそのあとにも もう一人が並んだ。
タンスが丸ごとカビたんだろうか。箱形のでかい除湿剤を山ほどカゴに入れた、おばさんだ。
おばさんは、俺のカゴの中をちらっと見た。
『あら? あなた、誰かを殺すつもりね??』
だなんて、もちろん言われなかったけれど、俺はいまにも そう言われそうで冷や汗が止まらなかった。
俺が その用途を知っているからだろう。
カゴの中身は殺人道具にしか見えなかった。
俺はレジの順番が来る間中、これが殺人道具じゃないという言い訳を考えることに費やした。
慌ててカゴの中身を計算する。
すると、なんだかんだで3000円はいっていた。
財布の中身は・・・・・・俺は分かり切ってることを確認する。
使わなかったお年玉や、臨時の小遣い、そんないままでの分を全部合わせた、計6000円だ。
残りを全額つぎ込むとして、買えるやつはアレとアレとアレと・・・・・・
とりあえず候補は出したが、なかなかどれを買うか決まらない。
包丁売り場で悩んでたら疑われる。そう思った俺は、隣のまな板を手にとった。
そして誰もいない通路で、「俺が欲しいのは まな板です」アピールをしながら悩んだ。
442 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 12:36:13.62 ID:TczQQdCb.net
できることなら、実際に握りを掴んで、その感触を確かめたかった。そうすれば、どれが目的にふさわしいか、わかるような気がしたからだ。
けど、包丁はどれも箱に収められている。
・・・・・・よし、これでいいだろう。
俺は悩み抜いた末、一本を選んだ。
それは背が黒い色をした、比較的細身の包丁だった。先がすっと尖っていて、よく刺さりそうだ。
443 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 12:49:05.46 ID:TczQQdCb.net
Aの殺害道具一式。
そんな物騒なものが入ったカゴを持ち、俺はレジに並んだ。
レジには、二、三人の買い物客が並んでいた。俺が並ぶと、すぐそのあとにも もう一人が並んだ。
タンスが丸ごとカビたんだろうか。箱形のでかい除湿剤を山ほどカゴに入れた、おばさんだ。
おばさんは、俺のカゴの中をちらっと見た。
『あら? あなた、誰かを殺すつもりね??』
だなんて、もちろん言われなかったけれど、俺はいまにも そう言われそうで冷や汗が止まらなかった。
俺が その用途を知っているからだろう。
カゴの中身は殺人道具にしか見えなかった。
俺はレジの順番が来る間中、これが殺人道具じゃないという言い訳を考えることに費やした。
444 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 13:00:39.92 ID:TczQQdCb.net
学校の理科の授業で、魚の解剖をするんです。
あ、フナとかじゃなくて、少し大きめの・・・・・・サバ? そう、サバとかで、それで汚れない服装と、すべらない手袋と、ゴミ袋と、包丁が必要で・・・・・・
・・・・・・という言い訳は、さすがに苦しいだろうか。
というか、全然殺人の方向から離れてないし。
いや、それなら調理実習のほうが・・・・・でもそれならエプロンだろうな?!
いい加減、考えが煮詰まったころ、極めて順当に俺の番が来た。
ピッ、ピッ、ピッ・・・・・・
「5760円になります」
レジのおばちゃんは、俺には一瞥もくれず、品物をレジ袋に詰めた。
俺は黙って、6000円をレジに置いた。
445 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 13:07:40.59 ID:TczQQdCb.net
〈自意識過剰ね〉
レイに言われた言葉を、俺は ぐっと飲み込んだ。
「240円のおつりになります」
「どーもありがとうございましたー」
俺の気も知らず、おばちゃんは さっさと釣りを押しつけると、大量の除湿剤をレジに通し始めた。
俺は受けた衝撃から回復しないまま、出口へ向かった。
それは、俺の〈自意識過剰〉が簡単にいなされた衝撃であり、それから、殺人道具一式がこんなに簡単に手に入ってしまったことへの衝撃でもあった。
446 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 14:51:38.04 ID:TczQQdCb.net
案ずるより産むが易し。
そうは言っても、これじゃ簡単すぎる。
俺は出かける前の俺に聞かせてやりたいくらいの、贅沢なつぶやきを口にした。
計画が順調なのは良いことだ。
けど、順調すぎても怖くなるのが、人間の心理だ。そうだろ?
447 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 14:54:18.07 ID:TczQQdCb.net
帰ろう。
俺は自転車に飛び乗ると、桜並木の中、力一杯足を動かした。
この正体のわからない焦燥感を、そうすることで紛らわそうとした。
帰ろう。
家に帰るんだ。
春の陽気に汗ばみながら、俺はそれだけを一心に思った。
家に帰って、パソコンをつける。
そしたら、そこにレイがいる。
そして、俺に答えをくれる。
いつものように簡潔に、いつものように少し素っ気なく。
448 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/15(火) 15:43:58.43 ID:TczQQdCb.net
桜の花びらが視界を舞う。
ひらひら、ちらちらと うるさく散り続ける。
それを蹴散らすように、俺は家へ急いだ。
なぜだか、少しでも早くレイと話さなくちゃいけない、そんな気がした。
454 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:01:35.47 ID:tUla2ho3.net
「ナイフ買ってきた」「他のものも」
まだレイが現れる時間じゃないことは知っていた。けど、部屋に戻ると、俺はそう画面に打ち込んだ。
「チャンスがあったら、今日にでも計画を実行したいと思ってる」
「ってういか、する」
「それで、話があるんだけど・・・・・・」
俺は並んだ文字を読み返すように確認してから、続けた。
455 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:06:33.88 ID:tUla2ho3.net
「この計画が成功したら、」
「俺が捕まらなかったら、」
「レイに会いたい」
震える指で、俺はエンターキーを押した。画面に、俺の書いたままの文が表示された。
それを読み返し、俺は、なんかプロポーズみたいだ、、、、と勝手にどきどきした。
付き合うどころか、なくせに。。。
456 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:11:41.88 ID:tUla2ho3.net
「今度は、ちゃんと約束の時間通りに行くから」
「前と同じ時間と場所でいい?」
「君の都合に合わせるよ」
一気に書ききって、俺はベッドに倒れ込んだ。
照れ隠しもあるが、早起きをして、買い物をこなして、本当に眠かったのもあった。
俺は眠いという欲求のままに目を閉じた。
そのまま、ひとときの眠りに落ちた。
457 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:20:06.62 ID:tUla2ho3.net
小さな、カタン、という物音に目を覚ますと、時計の針は、まだ夜の九時過ぎを指していた。
今日、計画を実行するにしろ、日付が変わる前に家を出れば間に合う。
俺は思いきり伸びをして起き上がった。
それから、部屋のドアの方を見た。
さっきの物音は、飯が廊下に置かれた音だろう。
人の気配がないことを確かめてドアを開ける。
すると、そこにはまだ温かい生姜焼きが置かれていた。
皿を覆ったラップが、湯気で曇っている。
458 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:32:04.07 ID:tUla2ho3.net
それを見て、俺の腹がぐうと鳴った。
考えてみたら、今日はまだ何も食べてない。
昼にひっくり返したサンドイッチを振り返ってから、俺はとりあえず生姜焼きのラップを外した。
それからお盆ごとパソコンの前に移動させると、白飯と共にかっ込んだ。
うまい。
思わず夢中で食べ進むうちに、俺は画面に新しい文章が増えているのに気づいた。
レイだ。
反射的に俺は そう思った。
同時に、俺の顔は嬉しさで ほころんだ。
だから、というべきか、そこに書かれた言葉の意味を理解したのは その後だった。
俺は笑ったような顔のまま、画面の前で固まった。
「計画は中止して」
何度読み返してみても、そこにはこう書いてあったのだ。
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