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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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459 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:36:54.34 ID:tUla2ho3.net
計画を、中止する??

どういうことだ?

レイは何を言ってるんだ??

俺は大量の はてなマークに埋もれた。

そうしながら、急激に不安に襲われた。

レイがこんなことを言うなんて、よっぽどのことが起きたに違いない。

殺人道具一式を買い込んだ俺が出て行くのを見計らって、あのレジのおばちゃんが こっそりと警察に電話をする・・・・・・

・・・・・・そんな想像が俺の頭に浮かんだ。


461 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:43:57.03 ID:tUla2ho3.net
いやいやいやいや。

自分でした想像を打ち払うように、俺は首を振った。

俺はまだ道具を手に入れただけだ。何も事件は起こしていない。たしか、警察は事件が起こらないと動けないんじゃなかったか?

それとも、計画だけで逮捕するなんて、そんなことができるんだろうか・・・・・・!


「どうして????」

「何かあった?????」

俺は急いで打ち込んだ。


「レイ??????」

「大丈夫?????」

不安のまま、俺は呼びかけた。

レイがいなくなったらどうしよう、よくわからないがそんなことを考えていた。


462 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:50:37.30 ID:tUla2ho3.net
「大丈夫も何も、どうもしてないわ」

「どうかしてるのは、あなた」

するするっと画面がスクロールし、レイが言った。


「よかった・・・・・・」


リアルでも、文字でもつぶやいて、俺はため息をついた。

レイはいた。いつものように、ここにいてくれた。

でも、それなら・・・・・・と、俺は首をかしげた。

計画中止ってなんのことだ?

ここまでやり遂げて、あと一歩ってときに、どうして中止しなくちゃいけないんだ?




463 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:57:29.47 ID:tUla2ho3.net
「それなら、なんで中止なんだ?」

俺は聞いた。

「道具は揃えたし」

「千枚通しで、自転車もパンクしたし」

「あとは、チャンスをうかがうだけだから、大丈夫だよ」

実験結果もあわせて報告する。


「パンクってなんかすごい音がするかと思ったんだけど、そうでもないんだな」

これなら、誰にも気づかれることがない。俺は自信を深めていた。


464 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:04:41.34 ID:tUla2ho3.net
〈考えるより、行動〉

〈行動の記録が努力の証〉

俺はレイの言葉を忠実に守ってきた。

そして、その結果、計画もここまでこぎ着けた。

確かに最初の変化は、この部屋から一歩出た、それだけのことだったかもしれない。

けど その一歩は、振り返ると、いまやこんなに遠くまで、想像すらできなかったところまで、俺を押し進めてくれた。

俺は自分が誇らしかった。

いや、これは堂々と誇るべきだろう。

何もできなかった俺が、周囲に当てつけるためだけに自殺しようとしていた俺が、Aの殺害を計画し、あと一歩というところまで進めたのだから。

「何が大丈夫なの?」

だというのに、レイは冷たく言った。

「え?」

俺は思わず聞き返した。

それは、何かが壊れてしまうような、そんな予感に似ていた。


465 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:08:03.62 ID:tUla2ho3.net
「だって・・・・・・大丈夫だよ」

得体の知れない予感に怯えながら、俺は そう返した。

はっきり言って、レイが何を言ってるのかよくわからなかった。

何か計画に大きな穴があるのか?

俺は本気でそう考えた。

このまま実行すると、俺が捕まってしまうような、そんな穴が。


466 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:14:46.11 ID:tUla2ho3.net
「なにか俺が見落としてることがあるなら、教えて」

大急ぎで俺は打ち込んだ。

「俺は完璧だと思ってたけど、何かやばいとこがある?

あ、返り血のついた服をどうするか、だけど、指定のゴミ袋を買ってきたから、凶器をくるんで捨てちゃおうと思ってるんだ。

もしかして、それってやばいかな??」


普段なら、俺がこれくらいの分量を書くころには、レイはこの倍のレスをくれているのだが、今日に限って、それがない。

「どうしたの? 調子が悪いの?」

この前、打ち込めなかった台詞を、俺は打ち込んだ。

「大丈夫??」




467 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:19:29.07 ID:tUla2ho3.net
「私は大丈夫よ」

しばらく待つと、やっとレイの返事が返ってきた。

「なんだ、心配したよ」

俺は ほっとしてそう返した。

それから、中断したままだった飯に手を伸ばした。

あ、そうか、レイも食事中なのかもしれないな。呑気にそんなことを考える。

そのときだった。

「もう一度言うわ」「私は大丈夫」「どうかしてるのは、あなた」

箸を持った手が、宙で止まった。


468 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:30:59.84 ID:tUla2ho3.net
「どうかしてるのは、あなたよ」

もう一度、同じ台詞が画面に現れた。

そのまま、再びレイは黙った。


どうかしてるのは、・・・・・・俺?

のぼっていた蜘蛛の糸が、ぷつり、どこかで切れたような音がした。

なんだ? どういう意味だ? なぜレイは そんなことを言う?

糸はまだ完全には切れていない。そこにしがみついたまま、俺は自問した。

あと少しで、お釈迦様の待つ天上だ。

そこに咲き乱れているという蓮の香りが漂い、目にはその美しい風景が映ろうとしている。だというのに。なぜだ。

糸にしがみつく俺の中に、小さな空虚が生まれた。それは じわじわと身体の内部を侵食し、俺を虚ろにしようとした。


469 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:34:58.64 ID:tUla2ho3.net
「どういう意味?」

俺はやっと そう打ち込んだ。

「わからない?」

今度は すぐに文字が現れた。

「わからない」

俺は答えた。

「全然わからない」

「どうして計画を中止しなきゃならない?」

「理由を教えてくれ」

ありったけの力を込めて打ち込んだ。


470 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:39:13.99 ID:tUla2ho3.net
「それは・・・・・・言えない」

しばらく待つと、文字が現れた。

俺は その言葉が信じられず、何度もそれを読み返した。

言えない?
言えない、だって?
あの、レイが?
あの、何でも淡々と言葉にしてしまうレイが??



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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