数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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457 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:20:06.62 ID:tUla2ho3.net
小さな、カタン、という物音に目を覚ますと、時計の針は、まだ夜の九時過ぎを指していた。
今日、計画を実行するにしろ、日付が変わる前に家を出れば間に合う。
俺は思いきり伸びをして起き上がった。
それから、部屋のドアの方を見た。
さっきの物音は、飯が廊下に置かれた音だろう。
人の気配がないことを確かめてドアを開ける。
すると、そこにはまだ温かい生姜焼きが置かれていた。
皿を覆ったラップが、湯気で曇っている。
458 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:32:04.07 ID:tUla2ho3.net
それを見て、俺の腹がぐうと鳴った。
考えてみたら、今日はまだ何も食べてない。
昼にひっくり返したサンドイッチを振り返ってから、俺はとりあえず生姜焼きのラップを外した。
それからお盆ごとパソコンの前に移動させると、白飯と共にかっ込んだ。
うまい。
思わず夢中で食べ進むうちに、俺は画面に新しい文章が増えているのに気づいた。
レイだ。
反射的に俺は そう思った。
同時に、俺の顔は嬉しさで ほころんだ。
だから、というべきか、そこに書かれた言葉の意味を理解したのは その後だった。
俺は笑ったような顔のまま、画面の前で固まった。
「計画は中止して」
何度読み返してみても、そこにはこう書いてあったのだ。
小さな、カタン、という物音に目を覚ますと、時計の針は、まだ夜の九時過ぎを指していた。
今日、計画を実行するにしろ、日付が変わる前に家を出れば間に合う。
俺は思いきり伸びをして起き上がった。
それから、部屋のドアの方を見た。
さっきの物音は、飯が廊下に置かれた音だろう。
人の気配がないことを確かめてドアを開ける。
すると、そこにはまだ温かい生姜焼きが置かれていた。
皿を覆ったラップが、湯気で曇っている。
458 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:32:04.07 ID:tUla2ho3.net
それを見て、俺の腹がぐうと鳴った。
考えてみたら、今日はまだ何も食べてない。
昼にひっくり返したサンドイッチを振り返ってから、俺はとりあえず生姜焼きのラップを外した。
それからお盆ごとパソコンの前に移動させると、白飯と共にかっ込んだ。
うまい。
思わず夢中で食べ進むうちに、俺は画面に新しい文章が増えているのに気づいた。
レイだ。
反射的に俺は そう思った。
同時に、俺の顔は嬉しさで ほころんだ。
だから、というべきか、そこに書かれた言葉の意味を理解したのは その後だった。
俺は笑ったような顔のまま、画面の前で固まった。
「計画は中止して」
何度読み返してみても、そこにはこう書いてあったのだ。
459 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:36:54.34 ID:tUla2ho3.net
計画を、中止する??
どういうことだ?
レイは何を言ってるんだ??
俺は大量の はてなマークに埋もれた。
そうしながら、急激に不安に襲われた。
レイがこんなことを言うなんて、よっぽどのことが起きたに違いない。
殺人道具一式を買い込んだ俺が出て行くのを見計らって、あのレジのおばちゃんが こっそりと警察に電話をする・・・・・・
・・・・・・そんな想像が俺の頭に浮かんだ。
461 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:43:57.03 ID:tUla2ho3.net
いやいやいやいや。
自分でした想像を打ち払うように、俺は首を振った。
俺はまだ道具を手に入れただけだ。何も事件は起こしていない。たしか、警察は事件が起こらないと動けないんじゃなかったか?
それとも、計画だけで逮捕するなんて、そんなことができるんだろうか・・・・・・!
「どうして????」
「何かあった?????」
俺は急いで打ち込んだ。
「レイ??????」
「大丈夫?????」
不安のまま、俺は呼びかけた。
レイがいなくなったらどうしよう、よくわからないがそんなことを考えていた。
462 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:50:37.30 ID:tUla2ho3.net
「大丈夫も何も、どうもしてないわ」
「どうかしてるのは、あなた」
するするっと画面がスクロールし、レイが言った。
「よかった・・・・・・」
リアルでも、文字でもつぶやいて、俺はため息をついた。
レイはいた。いつものように、ここにいてくれた。
でも、それなら・・・・・・と、俺は首をかしげた。
計画中止ってなんのことだ?
ここまでやり遂げて、あと一歩ってときに、どうして中止しなくちゃいけないんだ?
463 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 03:57:29.47 ID:tUla2ho3.net
「それなら、なんで中止なんだ?」
俺は聞いた。
「道具は揃えたし」
「千枚通しで、自転車もパンクしたし」
「あとは、チャンスをうかがうだけだから、大丈夫だよ」
実験結果もあわせて報告する。
「パンクってなんかすごい音がするかと思ったんだけど、そうでもないんだな」
これなら、誰にも気づかれることがない。俺は自信を深めていた。
464 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:04:41.34 ID:tUla2ho3.net
〈考えるより、行動〉
〈行動の記録が努力の証〉
俺はレイの言葉を忠実に守ってきた。
そして、その結果、計画もここまでこぎ着けた。
確かに最初の変化は、この部屋から一歩出た、それだけのことだったかもしれない。
けど その一歩は、振り返ると、いまやこんなに遠くまで、想像すらできなかったところまで、俺を押し進めてくれた。
俺は自分が誇らしかった。
いや、これは堂々と誇るべきだろう。
何もできなかった俺が、周囲に当てつけるためだけに自殺しようとしていた俺が、Aの殺害を計画し、あと一歩というところまで進めたのだから。
「何が大丈夫なの?」
だというのに、レイは冷たく言った。
「え?」
俺は思わず聞き返した。
それは、何かが壊れてしまうような、そんな予感に似ていた。
465 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:08:03.62 ID:tUla2ho3.net
「だって・・・・・・大丈夫だよ」
得体の知れない予感に怯えながら、俺は そう返した。
はっきり言って、レイが何を言ってるのかよくわからなかった。
何か計画に大きな穴があるのか?
俺は本気でそう考えた。
このまま実行すると、俺が捕まってしまうような、そんな穴が。
466 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:14:46.11 ID:tUla2ho3.net
「なにか俺が見落としてることがあるなら、教えて」
大急ぎで俺は打ち込んだ。
「俺は完璧だと思ってたけど、何かやばいとこがある?
あ、返り血のついた服をどうするか、だけど、指定のゴミ袋を買ってきたから、凶器をくるんで捨てちゃおうと思ってるんだ。
もしかして、それってやばいかな??」
普段なら、俺がこれくらいの分量を書くころには、レイはこの倍のレスをくれているのだが、今日に限って、それがない。
「どうしたの? 調子が悪いの?」
この前、打ち込めなかった台詞を、俺は打ち込んだ。
「大丈夫??」
467 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/16(水) 04:19:29.07 ID:tUla2ho3.net
「私は大丈夫よ」
しばらく待つと、やっとレイの返事が返ってきた。
「なんだ、心配したよ」
俺は ほっとしてそう返した。
それから、中断したままだった飯に手を伸ばした。
あ、そうか、レイも食事中なのかもしれないな。呑気にそんなことを考える。
そのときだった。
「もう一度言うわ」「私は大丈夫」「どうかしてるのは、あなた」
箸を持った手が、宙で止まった。
>>次のページへ続く
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