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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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506 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 03:48:20.39 ID:XaM2as0z.net
どうする?ちゃんとパンクしたか、確かめるか??

俺は迷った。

もう一回同じ通りを通ったら怪しまれるだろうか?いや、誰にも見られなかったんだから、大丈夫か??

俺は散々迷った挙げ句、、、、、

結局もう一度、それを確かめに戻った。


通り過ぎざまに素早くタイヤを触ると、ぐにゃりとした感触が伝わってきた。

やった!!!!

俺は心の中でガッツポーズをした。



507 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 03:52:47.66 ID:XaM2as0z.net
よし、よし、よし、よし!!!

計画の第一段階をクリアした俺は ほっとした。よし、これで次はAを・・・・・・


〈なぜ?〉

気が緩んだせいか、レイの声が頭に戻った。

勝利に水を差された気分になり、俺は いらっとした。



508 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:00:09.11 ID:XaM2as0z.net
〈なぜ?〉

けど、頭の中の声が空気を読むことはなかった。


〈なぜ、あなたはAを殺さなければならないの?〉

もう、うるさいな。

俺は心の中でつぶやきながら、身を潜める予定のゴミ捨て場に向かった。

〈なぜ? 教えて〉

うるさいな。そんなもん決まってるだろ。

〈わからない〉

〈どうして?〉

どうしてもこうしてもないだろ、だってさあ・・・・・・

〈どうして?〉

〈あなたはもう、その必要がないのに〉

必要はあるよ。

〈なぜ?〉

なぜって、だって・・・・・・

〈なぜ?〉

なぜって・・・・・・




509 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:08:15.97 ID:XaM2as0z.net
しつこい声にいらいらしながら、俺はゴミ捨て場の横に座り込んだ。

ここでAを待ち、あとは この包丁で・・・・・・


カバンを開けると、まだ箱に入ったままの新品の包丁が銀色に光った。

俺はそのプラスチックの包装を解くと、素手でその柄を握った。

白木の柄は思ったよりも しっくり手に馴染んで、俺はこのまま、手袋をせずにAを刺そうと思った。

指紋だのなんだの、そんなことは もうどうでもいい。そのほうが うまくいくような気がしたからだ。



510 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:15:02.74 ID:XaM2as0z.net
俺は包丁をカバンに戻すと、体育座りでAが来るのを待った。

Aが引いてくるだろう、自転車の音に耳を澄ませた。

その瞬間までは、三十分くらいだと思われた。それまで身動きせずにいようと思った。

けど、背中をつけたコンクリの塀が冷たくて、俺はすぐに身体を前に傾けた。



511 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:23:22.56 ID:XaM2as0z.net
長かったな。

俺はAを待つ間、感慨深く考えた。

ここまで来るまで、大変だった。

部屋を出て、Aを見つけて、観察をして、計画を練って、筋トレまでして・・・・・・

こんなに ちゃんと努力したのは初めてだ。

俺は ため息に似た息をついた。

勉強だって、運動だって、俺は努力をしたことがなかった。

いや、そのときは努力したって思ってたけど、いま思えば、あんなの全然努力じゃない。

中間テストの範囲を書き出し、復習の予定を立てる、それだけで満足して何もやらない、結果、テストはぼろぼろ。

・・・・・・なんて当たり前だったしなあ。。。



512 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:32:14.14 ID:XaM2as0z.net
それが、いまやちゃんと計画を立てて、〈努力の可視化〉を続けてる。

学校のノートとは桁違いに、黒く埋まった記録ノートを、俺は思い浮かべた。

あれが努力だ。

間違いない、努力だ。

一つずつは小さくても、〈現実〉を変え、俺を変えてくれた。

俺は変わったんだ。変われたんだ。

〈おめでとう〉

さっきのレイの言葉が、やっと俺の心に染みこんだ。

〈あなたはもう、一人で立ち上がることができたのよ〉

〈おめでとう〉




513 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:34:49.39 ID:XaM2as0z.net
ありがとう。

俺は その祝福を素直に受け入れた。

ありがとう、全部レイのおかげだ。

レイがいなかったら、俺は何もできないままだった。

だから、ありがとう。



514 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:39:28.42 ID:XaM2as0z.net
〈さあ、そこから立ち上がって〉

レイは少し優しい調子で言った。


〈あなたはもう大丈夫〉

〈そこから立って、歩き出して〉

〈あなたの〈答え〉を探して〉

〈幸せになって〉

そのとき白い光が差して、俺は本当にレイがここに現れたのかと思った。

天使のように微笑むレイが、綺麗な白い光を その身にまとって。


けど、それは違った。

向こうの角を、一台のバイクが曲がっていっただけだった。



515 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:48:33.89 ID:XaM2as0z.net
「ありがとう」

「でも・・・・・・俺は、行けない」

バイクの音が遠ざかるのを聞きながら、俺は小さくつぶやいた。

本当に小さく、それは自分の耳にも聞こえないくらい微かな声だった。

「俺は、Aを殺さなきゃ」

〈どうしてなの?〉

レイもつぶやいた。


「どうしても」

俺は答えた。

「Aを殺さなきゃ、俺は前に進めないんだ」



516 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 04:55:24.57 ID:XaM2as0z.net
〈そんなことない〉

〈あなたは もう大丈夫〉

〈Aなんかのために、手を汚す必要はない〉


「違う」

「大丈夫とか、そういう問題じゃないんだ」

俺は自分で自分を抱きしめるように、腕に力を入れた。

そのときには、もうどうして自分がこんなにもAを殺すことに固執しているのか、その理由を理解していた。

「ここで逃げたら、俺はまた同じになる」

俺はつぶやいた。

「Aから逃げて、学校から逃げて、部屋にこもって、いままでと何にも変わらなくなっちまうんだ」

それが、俺が計画通りにAを殺そうとしている、たった一つの理由だった。




>>次のページへ続く
 
 


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