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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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539 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 12:28:14.29 ID:XaM2as0z.net
そのときは、テンションがおかしかったのもあって、俺はそれだけのことで、かなりの時間、笑ってた。なんかツボに入ったって言うか。
とにかく、俺は声を押し殺しながらも ひとしきり笑って、・・・・・・それから、パソコンに向かった。
レイはまだいるだろうか。
いや、いなくても謝っておきたい。
そう思った。
けど、次の瞬間、画面を見た俺は、目を疑った。
540 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 15:22:15.07 ID:XaM2as0z.net
画面からは、出かける前にしたレイと俺との会話がすっかり消えていた。
・・・・・・といっても、ログが消滅したわけじゃない。
そこには たくさんの言葉が並んでいた。
ただ、それは全部、見覚えのないものだった。
541 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 15:25:45.74 ID:XaM2as0z.net
そして、その中でも、俺の目をとらえて離さなかったのは、その一番最後に書かれた文字だった。
そこには、いつもの無表情キャラアイコンのついたレイの言葉で、こう書かれていた。
たった一言、
「さよなら」
と。
そのときは、テンションがおかしかったのもあって、俺はそれだけのことで、かなりの時間、笑ってた。なんかツボに入ったって言うか。
とにかく、俺は声を押し殺しながらも ひとしきり笑って、・・・・・・それから、パソコンに向かった。
レイはまだいるだろうか。
いや、いなくても謝っておきたい。
そう思った。
けど、次の瞬間、画面を見た俺は、目を疑った。
540 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 15:22:15.07 ID:XaM2as0z.net
画面からは、出かける前にしたレイと俺との会話がすっかり消えていた。
・・・・・・といっても、ログが消滅したわけじゃない。
そこには たくさんの言葉が並んでいた。
ただ、それは全部、見覚えのないものだった。
541 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/17(木) 15:25:45.74 ID:XaM2as0z.net
そして、その中でも、俺の目をとらえて離さなかったのは、その一番最後に書かれた文字だった。
そこには、いつもの無表情キャラアイコンのついたレイの言葉で、こう書かれていた。
たった一言、
「さよなら」
と。
547 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:21:03.85 ID:lfHPtk8i.net
〈さよなら〉
画面の一番下、最後に並んだその四文字を、俺は呆然と見つめた。
さよなら。
どうしてレイがそんな結論に達したのか、なぜそんなことを言うのか、それも俺がレイの言葉をやっと理解した、その日にどうして・・・・・・
548 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:23:11.91 ID:lfHPtk8i.net
俺はむさぼるように、〈さよなら〉以外の言葉を読んだ。
549 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:30:10.26 ID:lfHPtk8i.net
けど、そこに書いてあったのは、俺のことばかりだった。
俺がこの先どうしたら良いのか、どうやって〈答え〉を見つけるべきなのか、そしてどうやってそれを実現させたら良いのか。
レイ自身のことなんか、一言も書かれていなかった。
俺はいま、それが知りたいんだっていうのに。
550 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:40:54.97 ID:lfHPtk8i.net
「私はあなたの共犯になることを恐れたんじゃない」
けど、俺がレイを裏切り者だと叫んだことには、そんな返事がされていた。
「なんの証明もできないけれど、できたら信じて欲しい」
と。
551 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:51:39.55 ID:lfHPtk8i.net
「あなたは自分の力で立ち上がった」
「あなやはそのことに、自信を持っていい」
「誇りに思っていい」
文中で、レイは何度もそう言った。
そして、釘を刺した。
「あなたの成し遂げたことは、決してあなたの中から消えることはない」
「例え、無責任な誰かが、それを馬鹿にしても」
「努力する人間を笑うのは、何も成し遂げたことのない人間」
「自分の意志で、自分を変えたことがない人間」
「その人たちの声は大きいけれど」
「決してその声を聞かないで」
「覚えてる?」
「それは、道ばたに落ちてるイガ栗よ」
「あなたはそれを拾わないという選択ができる」
「〈現実〉を見て」
「外へ出て」
「あなたはあなた。それ以上も以下もない」
「そして、他人も他人。それ以上も以下もない」
552 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:57:56.40 ID:lfHPtk8i.net
そして、こう続けた。
「当たり前のことを、当たり前に受け止めて」
「おはよう、には、おはよう、で返す」
「それだけのことを」
「間違えたと思ったら、正して」
「正しいと思ったら、それでいい」
「相手と意見が違っても、悲しまないで」
「他人は自分じゃないのよ」
「違うのが当たり前、それだけのこと」
553 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:09:20.73 ID:lfHPtk8i.net
それから、俺の傷にそっと触れた。
「けど、あなたが当たり前に生きていても、理不尽な扱いを受けることがある」
「それがあなたにとってのA」
「学校でのいじめ」
「でも、それは交通事故のようなものだと考えてみて」
「あなたが正しく運転していても、ぶつかってくる車はある」
「あおってくる車もある」
「けど、みんながみんな そうじゃない」
「事故は目立つ」
「だから、みんなひどい運転をしていると思ってしまう」
「だけど、ほとんどの人間は正しく車を運転している」
「あなたが信じなければならないのは、その正しい運転をしている人たち」
554 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:18:46.38 ID:lfHPtk8i.net
「けど、それは難しい」
「さっきも言ったように、あなたを傷つける人の声は大きい」
「あなたに賛同する人の声は聞こえないか、聞こえても微か」
「信じようとしなければ、すぐに大声にかき消されてしまう」
「だから」
レイは俺を信じている。いや、信じる努力をいつでもしているんだ・・・・・・
・・・・・・・・俺は目を閉じ、いまにも消えそうに微かなレイの言葉に耳を傾けた。
「だから、少しずつでいい」
「当たり前に懸命に生きている人を信じて」
「私を、信じて」
555 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:21:39.19 ID:lfHPtk8i.net
「さよなら」
そして、レイはそう結んだ。
俺は一人、画面の前に取り残された。
556 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:25:02.12 ID:lfHPtk8i.net
どれだけそうしていただろう。
俺は微かな音にふと顔を上げた。
階段を上がる足音。
かちゃかちゃと食器の鳴る音。
親だ。
俺の飯を運んできたんだろうか。
俺はゆっくりと後ろを振り返った。
557 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:30:11.32 ID:lfHPtk8i.net
足音は、部屋の前でぴたりと止まった。
ドアの隙間に影ができた。
俺はさっき鉢合わせた母親の、驚いた表情を思い出した。
けど、今度は笑う気にはなれなかった。
〈おはよう、には、おはよう、で返す〉
〈そんな当たり前のことをして〉
レイの言葉が胸を満たしていた。
俺は椅子から立ち上がった。
そして、じっとドアを見た。
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