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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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550 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:40:54.97 ID:lfHPtk8i.net
「私はあなたの共犯になることを恐れたんじゃない」

けど、俺がレイを裏切り者だと叫んだことには、そんな返事がされていた。

「なんの証明もできないけれど、できたら信じて欲しい」

と。



551 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:51:39.55 ID:lfHPtk8i.net
「あなたは自分の力で立ち上がった」

「あなやはそのことに、自信を持っていい」

「誇りに思っていい」

文中で、レイは何度もそう言った。

そして、釘を刺した。


「あなたの成し遂げたことは、決してあなたの中から消えることはない」

「例え、無責任な誰かが、それを馬鹿にしても」

「努力する人間を笑うのは、何も成し遂げたことのない人間」

「自分の意志で、自分を変えたことがない人間」

「その人たちの声は大きいけれど」

「決してその声を聞かないで」

「覚えてる?」

「それは、道ばたに落ちてるイガ栗よ」

「あなたはそれを拾わないという選択ができる」

「〈現実〉を見て」

「外へ出て」

「あなたはあなた。それ以上も以下もない」

「そして、他人も他人。それ以上も以下もない」



552 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 03:57:56.40 ID:lfHPtk8i.net
そして、こう続けた。


「当たり前のことを、当たり前に受け止めて」

「おはよう、には、おはよう、で返す」

「それだけのことを」

「間違えたと思ったら、正して」

「正しいと思ったら、それでいい」

「相手と意見が違っても、悲しまないで」

「他人は自分じゃないのよ」

「違うのが当たり前、それだけのこと」




553 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:09:20.73 ID:lfHPtk8i.net
それから、俺の傷にそっと触れた。

「けど、あなたが当たり前に生きていても、理不尽な扱いを受けることがある」

「それがあなたにとってのA」

「学校でのいじめ」

「でも、それは交通事故のようなものだと考えてみて」

「あなたが正しく運転していても、ぶつかってくる車はある」

「あおってくる車もある」

「けど、みんながみんな そうじゃない」

「事故は目立つ」

「だから、みんなひどい運転をしていると思ってしまう」

「だけど、ほとんどの人間は正しく車を運転している」

「あなたが信じなければならないのは、その正しい運転をしている人たち」



554 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:18:46.38 ID:lfHPtk8i.net
「けど、それは難しい」

「さっきも言ったように、あなたを傷つける人の声は大きい」

「あなたに賛同する人の声は聞こえないか、聞こえても微か」

「信じようとしなければ、すぐに大声にかき消されてしまう」

「だから」

レイは俺を信じている。いや、信じる努力をいつでもしているんだ・・・・・・

・・・・・・・・俺は目を閉じ、いまにも消えそうに微かなレイの言葉に耳を傾けた。

「だから、少しずつでいい」

「当たり前に懸命に生きている人を信じて」

「私を、信じて」



555 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:21:39.19 ID:lfHPtk8i.net
「さよなら」

そして、レイはそう結んだ。


俺は一人、画面の前に取り残された。



556 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:25:02.12 ID:lfHPtk8i.net
どれだけそうしていただろう。

俺は微かな音にふと顔を上げた。

階段を上がる足音。

かちゃかちゃと食器の鳴る音。

親だ。

俺の飯を運んできたんだろうか。

俺はゆっくりと後ろを振り返った。



557 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:30:11.32 ID:lfHPtk8i.net
足音は、部屋の前でぴたりと止まった。

ドアの隙間に影ができた。

俺はさっき鉢合わせた母親の、驚いた表情を思い出した。

けど、今度は笑う気にはなれなかった。


〈おはよう、には、おはよう、で返す〉

〈そんな当たり前のことをして〉


レイの言葉が胸を満たしていた。

俺は椅子から立ち上がった。

そして、じっとドアを見た。




558 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:33:22.52 ID:lfHPtk8i.net
いつもご飯ありがとう。

レイの言う当たり前ってのは、そういうことだとぼんやり思った。

そして、俺はそう言うことができる。

そう思った。


何か気配を感じているのか、ドアの前の親も、そこからなかなか立ち去らなかった。



559 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:36:03.94 ID:lfHPtk8i.net
もしかして、親も俺と同じことを考えてるのかもしれない。

俺は ふとそう思った。


手に食事の載ったお盆を持って、どうしようかって。

俺に声をかけようか、ドアをノックしてみようかって、そう考えてるんじゃないかって。



560 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:39:59.49 ID:lfHPtk8i.net
ドアを挟んだ俺と親との葛藤?は、長く続いた。

いや、それは長く感じられただけで、本当は1分とか、そんなもんだったのかもしれない。

けど、結局、親はいつものようにお盆を廊下に置いて立ち去って、俺は一言も発しないまま、突っ立ってた。

当たり前のことって難しいな。

俺はのろのろと椅子に座った。



561 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/18(金) 04:44:44.29 ID:lfHPtk8i.net
それから、俺は覚えてしまうほどレイの言葉を読み返した。

とうとう睡魔に勝てなくなり、机に突っ伏しても、頭の中ではレイの声が淡々と流れていた。


自信を持って。

当たり前のことをして。

〈答え〉を見つけて。


それは冷淡だけど、優しい子守歌みたいな声だった。




>>次のページへ続く
 
 


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