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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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136 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:49:49.91 ID:LZSY7jKs.net
………ああ、そうだったのか。

Sさんはずっと、自分やM君の話をしてたわけじゃないんだ。

Sさんは最初から、私の共依存の可能性を指摘していたんだ。

私はそれを受け入れたくなくて、あんなにイライラしてたんだ。

私が共依存? そんな馬鹿な!!

だけど私は、さっきのO君の問いかけで、はっきりと気づいてしまった。


そうなんだ。私がほしかったのは、M君が虐待されてたっていう情報だけ。

私がO君から聞きたかったのは、「あいつはおかしい」っていうお墨付きだけ。

だって、そのお墨付きがあれば、私は大手を振ってM君の世話が焼ける。

そうやってM君の世話を焼いてる限り、私はずっとM君のそばにいられる。

ずっとM君のそばにいるために、M君は、ずっと私を心配させてくれてなきゃ困る。

つまり私は、口ではいろいろ言いながら M君の生活を改善しようなんて、M君に変わってほしいなんて、本当は、これっぽっちも思ってはいなかったんだ…



137 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:50:20.33 ID:LZSY7jKs.net
M君は、私を初めて女として認めてくれた人。私は自分の女としての尊厳を保つために、M君が必要だったんだ。

ああ……みじめだな。

彼氏いない暦=年齢なんて、冗談めかして公言しながら本当は私、こんなにも自分のことを、みじめに感じていたんだ。

M君の生い立ちまで利用してでも、自分の中の"女"を守りたかったんだ。

そんなことをしなけりゃ、女としての自分を保つこともできないなんて……

これはもう、M君がどうとかいう問題じゃあない。私自身がこんな気持ちじゃ、彼と付き合うことなんてできやしない。

そう思った瞬間、寂しくて寂しくて、涙がボロボロこぼれてきた。

Sさんが「泣いちゃえ、泣いちゃえ」と、背中をさすってくれた。





138 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:51:05.71 ID:LZSY7jKs.net
「私ぃ…もうM君とはぁ、お付き合いできないですぅ」

「そうですか、うん、うん」

「だけどぉ……別れなくないんですぅ」


「うん、うん、わかります」

「私ぃ、どうしたらいいんでしょうかぁ」


「そんなこと、私は知りませんよ」

ぐはっ! 優しい顔をしたSさんから、心を突き飛ばされた。

「…………そりゃそーっすよねぇぇぇぇ」


「はい。そこは喪子さんの好きにしてください。て言うか、喪子さんの好きにしていいんです」


「でももう、自分がどうしたいのか、わからなくなっちゃってぇぇぇ」


「あのね、"わからない"のは、頭で考えちゃってるからです。

いま大事なのは、頭で考えた理屈よりも、心で感じる気持ちじゃないですか?

気持ちを感じるだけなら、いつだってできるはずですよ?」



139 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:51:39.36 ID:LZSY7jKs.net
「気持ちぃぃぃ」

「はい」

「私の気持ちはぁぁぁ」

「うん」

「………別れたくなんかないです。例え共依存と言われても、やっぱりM君が好きです。今の私にわかるのは、それだけみたいです…」


「だったら別に、別れる必要ないんじゃないですか?」


「でも、こんな浅ましい気持ちでM君と付き合っても…絶対にいい方向へなんて行きっこないです…」


「大丈夫ですよ、そんなの。実は男女の関係って、大抵が共依存なしには始まらないそうですよ?

だとしたら、共依存がなかったら、人類絶滅ですよ。

別に特別なものじゃないんです、誰の中にも多少はあるものなんです。

そうと自覚してるかどうかだけで、その後の関係は変わるもんですよ」



140 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:52:17.47 ID:LZSY7jKs.net
「私が頑張れば…なんとかなるでしょうか?」


「んー。喪子さんだけ頑張っても、どーにもならないでしょうねえ」


「………ですよねぇぇぇぇぇ」


「Mさんは、カウンセリングやセラピーでも受けるのがいいんでしょうけど」


「けど?」


「ああいうの、自発的に受けないと効果ないですしねえ」


「ああああぁぁぁ」



141 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:52:42.10 ID:LZSY7jKs.net
「そもそもですね」

「なんでしょうか」


「Mさんとお付き合いするのに、どうして喪子さんだけが頑張るんですか?」

「えっ?それは………」


「別にいーんじゃないですか?特に頑張らなくても」

「えっ?………いーんでしょうか???」


「うん。頑張れって、誰が言ったんですか?」

「誰がって…………あっ!?」


「はい?」

「…………言ってるのは、私だけですね」


「ですねー」

「そうか………別にいいんだ、頑張らなくても」


Sさんは、すごかった。話していると、自分の脳みその表面に凝り固まっている思い込みだの偏見だのが、ガンガン剥がれ落ちていくみたいだった。




143 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:53:26.79 ID:LZSY7jKs.net
「そんなこと言えば、私なんか思い込みで生きてきた典型例ですよ。

Mさんが何人も彼女作ってきたのだって、たぶんそう。


Mさんは、人間関係の基礎となる親子関係が彼一人だけ見捨てられることで成り立っていました。

だから彼には、人間関係とは相手から見捨てられて一人ぼっちでいることだ、という観念が植えつけられているんだと思います。

でもずっと見捨てられ続けた彼は、もう人から見捨てられることには耐えられない。

自分が見捨てられないために一番いい方法は見捨てられる前に、自分から相手を見捨ててしまえばいい。

それがMさんの一年タイマーの正体だと思います」



144 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:53:59.45 ID:LZSY7jKs.net
「彼には、お付き合いの内容は、あまり重要じゃないのかもしれません。

"自分は見捨てられなかった"という事実だけが、彼に安心感を与えているんでしょう。

そして そうやって別れた結果、親に教え込まれた人間関係である「一人ぼっちでいる」という状態を維持することもできるわけです。

相手に別れる気があるかないかは、彼にとって問題ではないんです。

自分の中の、"見捨てられたら どうしよう"という不安に突き動かされて、"教えられたとおり、自分は一人でいるよ"と見てもいない親に証明してるだけ。

それは言ってしまえば、Mさん一人の思い込みによる妄想です。

彼は、自分が作り出した妄想に縛られて、一人で悩んでいるんです」



145 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:55:08.36 ID:LZSY7jKs.net
「喪子さん、人を束縛するのはね、社会とか規則とかよりも圧倒的に、自分自身なことが多いんです。

だけど そうやって自分で自分を束縛しないと、生きられない人生もあるんです。

大げさに聞こえるでしょうけど、それが生きる術になってしまう人もいるんです。

Mさんにとっては、自分を存在価値ナシというレッテルで束縛することが きっとその環境を一人ぼっちで生き抜くための術だったんでしょう。

だから、Mさんのレッテルを無理矢理剥がして変化を迫るのは彼に死ねと言ってるのと同じになる可能性があるんです。

だって彼は、いまだに自ら一人ぼっちになって生きていこうとしてるわけですから。

お二人には酷でしょうけど、Mさんは、誰かと仲良くはなれても共に生きることはできない人なんですよ。

自分の妄想の世界の中で、目の前にいもしない親に忠誠誓って生きてるんです。

だけど、それこそが、お二人が大好きなMさんなんです。


人が人を変えることはできません。

自分しか、自分を変えられる人はいないんです。

できるのは、相手の存在をそのまんま認めることです。付き従うでも、巻き込まれるでもなくて。

私は、そうやって相手を尊重しあうのが、愛なんじゃないかなって」




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 相手の過去, メンタル, メンタル,
 


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