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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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151 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:58:50.85 ID:LZSY7jKs.net
「内容暗そうだしなー。今見るのには、どうかなあ」
「いーじゃん。たまには二人で落ち込もうぜいw」
と、押し切って見始めたんだけど。M君の言ったとおり、ものすごく暗くて救いがない映画だった。
あらすじをかいつまむと、
ある村に逃げてきた正体不明の女を、村人たちがかくまう。
女は恩を感じ、村人たちのお手伝いをしながら、村にとけ込んでゆく。
でも、女がマフィアに追われているとわかってから村人は女をかくまう代償をつり上げていき
やがて女は、男たちに体を弄ばれるまでに追い込まれる。
だけど、女を追っているマフィアとは、じつは彼女の父親だった。
父親に救い出された女は、迷ったすえに村人を全滅にしてしまう…
という話。
152 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:59:18.92 ID:LZSY7jKs.net
ひえ〜、なんじゃこりゃ、後味わる〜、と思っていたら
M君が無言で立ち上がってトイレに行った。
………………………。
………………………?
……………………あいつ、吐いてる!?
「どどどどど、どーしたの?ひょっとして、お昼に当たった!?」
その日の昼食は私が作ったので、ちょっと焦った。
「ごめん、違う…酔った…」
「あ、映像酔い?」
お酒は飲んでなかったし、前に映像酔いするって言ってたから、そっちかと思った。
でも、酔うような映像、どっかにあったっけ???
「映像じゃなくて………ストーリーがダメだった…」
「えっ、そんな………なにを繊細なことを!」
「俺が一番びっくりしてるよ…」
「内容暗そうだしなー。今見るのには、どうかなあ」
「いーじゃん。たまには二人で落ち込もうぜいw」
と、押し切って見始めたんだけど。M君の言ったとおり、ものすごく暗くて救いがない映画だった。
あらすじをかいつまむと、
ある村に逃げてきた正体不明の女を、村人たちがかくまう。
女は恩を感じ、村人たちのお手伝いをしながら、村にとけ込んでゆく。
でも、女がマフィアに追われているとわかってから村人は女をかくまう代償をつり上げていき
やがて女は、男たちに体を弄ばれるまでに追い込まれる。
だけど、女を追っているマフィアとは、じつは彼女の父親だった。
父親に救い出された女は、迷ったすえに村人を全滅にしてしまう…
という話。
152 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:59:18.92 ID:LZSY7jKs.net
ひえ〜、なんじゃこりゃ、後味わる〜、と思っていたら
M君が無言で立ち上がってトイレに行った。
………………………。
………………………?
……………………あいつ、吐いてる!?
「どどどどど、どーしたの?ひょっとして、お昼に当たった!?」
その日の昼食は私が作ったので、ちょっと焦った。
「ごめん、違う…酔った…」
「あ、映像酔い?」
お酒は飲んでなかったし、前に映像酔いするって言ってたから、そっちかと思った。
でも、酔うような映像、どっかにあったっけ???
「映像じゃなくて………ストーリーがダメだった…」
「えっ、そんな………なにを繊細なことを!」
「俺が一番びっくりしてるよ…」
153 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:59:31.70 ID:kzcuiiED.net
ドッグヴィルって書けばええやん
156 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:01:05.41 ID:LZSY7jKs.net
>>153
正解!
154 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:59:45.60 ID:LZSY7jKs.net
それからM君はぐったりしてしまった。
帰ろうか?と聞くと、まだいてほしい、と言われた。そんなことを言うのも、珍しいことだった。
しかたないので、M君が回復するまで、なにが彼にダメージを与えたのかを考えていた。
暴力シーンはあったけど、そんな過激だったわけじゃない。
第一、M君は結構グロ耐性はあるほうだから、あれくらいで吐くわけないし…
私が悶々としているうちに復活したM君は「口直しに他のものでも見るかー」と言いだした。
「え、ちょっと待って。あの映画の、どこがそんなにダメだったの??」
「ん?別にダメだったわけじゃないよ。ちょっと疲れてたのかな。
さてどうしようか、これ返して、何か借りてこようか」
………ちょっと疲れてると、吐くのかおまえは。
また いつもの誤魔化しが始まったようだった。全然違う話をし始めた彼に、置いてきぼりにされた気分になる。
155 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:00:40.27 ID:LZSY7jKs.net
「…ねえ、私、結構びっくりしたんだよ?何か理由があるのなら、教えてほしいな」
「何もないよ。びっくりさせてごめん。でも、本当に大丈夫だから」
「………おまえが大丈夫でも、私が大丈夫じゃねーんだよバカヤロー」
「なんだかやけに食いつくね…カッコ悪いから、早く忘れてもらいたいんですが」
「M君は、なんだかやけに誤魔化すね。それって、私には話せないってことなの?」
「うーん…別に、わざわざ話して聞かせるようなことじゃないんだよ」
「………いまM君、うぜえって思ってるでしょ」
「なんだそりゃ。思ってないよ」
「だけど、うざくしたくもなるんだよ」
「いや聞けよ。うざいなんて思ってませんって」
「だってM君はいつも、私にはなんにも話してくれないんだもん」
「……え」
157 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:01:40.90 ID:LZSY7jKs.net
「誰にだって話したくないことがあるのくらい、わかってるさ。
だけど、こんなになんでもかんでも話してもらえないとなんだか私はM君にとって、取るに足らない存在なんじゃ?
みたいな気がしてきちゃうんだよ」
「…そっか。俺、自分のこと話すの、あんまり得意じゃないからな…
そんな気持ちにさせてるとは思わなかった、ごめん」
「ううん。話してもらっても、私に何ができるわけじゃないからエラそうなことは言えないんだけどさ」
「そんなことはないよ」
「まっ、ちょっとそんなわけで、鬱屈しちゃってただけだから特にゲロった理由が聞きたいわけでもないのさw」
「………別に、話したくないってわけじゃないんだ。ただ、どう話せばいいのかがわからなくてさ…」
「そうやって話さないでいるうちに、きっと本当に話せなくなっちゃうんだよ。
そしてある日、僕は自分が思っていることの半分しか語ることのできない人間になっていることを発見した。やれやれ。」
「黙れ村上春樹。わかった、この際だからちゃんと話すよ。
………俺、あの主人公の女のことを、昔の自分に重ねて見てたんだ」
あ、大事な話が始まる、と思った。
158 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:02:07.34 ID:LZSY7jKs.net
「俺、家族とは仲が悪いって話、前にしたっけ?」
「うん?……疎遠になってるって聞いたよ」
突然始まった独白に、知らないふりをする後ろめたさがチクチクと。
「疎遠っていうか、ほぼ絶縁だね。昔から家族とは全然相性が合わなくて大人になってから、もう無理だと思って家を出たんだけどさ」
あ、そこはずいぶん豪快にはしょるんですね。
「やっぱり一応子どものころは、親に気に入られたくてさ。それで、いろいろやってはみたんだよ。
そのころの自分が、村人に取り入るために必死に尽くすあの女と重なったんだ」
私にはあの主人公、そんなふうには見えなかったけどなあ。
「だからたぶん感情移入しすぎたんだろうな。ラスト、女が村人を全滅させるシーンで、やめろ!って思ってさ。そんなことしたら帰れなくなるだろ!って…
まだそんな気持ちが自分の中に残ってたってのが、ちょっとね。自分でもびっくりするくらいショックだった」
159 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:02:34.60 ID:LZSY7jKs.net
ああ………。
自分から家族を見限ったつもりでいたのに、まだ帰りたがってる自分を見つけちゃった、ってことか。
Sさんが言ってたとおりだ。M君は無意識に、まだ親に認められたがってる。
自分から絶縁はしても、気持ちは まだ絶つことができていないんだ。
そしてそれは彼にとって、吐くほど拒絶したい気持ちだったってことだ。
「ごめん、喪子は家族と仲がいいから、こういう話は不愉快だろ?この歳で家族がどうのって…カッコ悪いの通り越して、みっともないよなw」
「そんなことないよ、話してくれてありがとう。でも…つらかったんだね、おうちのこと」
「まあ、全部俺が悪いんだけどね。俺の反発で あの人たちの家庭壊しちゃったんだから。俺がいなければ、もっと平和で幸せな家だったんだよ」
ああ、本当だ。O君が言ってたとおり、本当に全部自分が悪いってことになってるんだなあ…
その言葉は、まるでテンプレのようにスラスラと出てきた。たぶん、自分の中でずっと繰り返しているんだろう。
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