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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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179 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:12:36.40 ID:LZSY7jKs.net
その言葉ではっとした。
そうだ。私はいつも、自分がM君に合わせるべきなんだと、どこかで思ってた。だってM君は不幸な生い立ちなんだから。
だから私が我慢しなくちゃって、ずっと思ってた。
でもそれって、M君を見下してることにならないか………? 私はM君が可哀想だから好きになったんじゃない。
彼にはいいとこがいっぱいあって、私はそこを好きになったんだ。
その気持ちこそが私の原動力で、一番最初は生い立ちなんて関係なかったはず。
言いたいことは言っちゃわなきゃ気が済まないはずなのに いつの間にか、私は自分の気持ちを どこかに置き去りにして、自分を誤魔化していたんだ。
M君のやり方に、いつの間にか倣っていた。
よし、戻ろう。
こんなの私じゃないや。本来の私に戻ろう。
初めのころの目線の高さで、もう一度M君に向き合おう。もう逃げないで全力でM君にぶつかろう。
もしこれで最後になっても、思い残すことのないように。
180 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:13:05.70 ID:LZSY7jKs.net
きちんと話し合おうよと、メールでM君を呼び出した。
どこで会うかは結構悩んだ。Sさんからさりげなく「できれば人の多い所がいいですよ」と忠告されていた。
それだけしか言われなかったけど、どういう意味かはわかった。だからM君の部屋じゃだめだ。
かと言って、ファミレスやカフェでしたい話の内容じゃないし。でも初の私の部屋で、別れ話するんじゃ私的にヘビーすぎる…
悩んだすえ、カラオケボックスを利用することにした。個室だけど、外に出れば人はたくさんいる。
当日、M君を奥にして、私は入り口に近い方の席に座った。
そんなことを考えなくちゃならないのは悲しかったけど でもつまり、そういうことなのだと痛感させられた。
まあ結果的には杞憂に終わったんだけど。
その言葉ではっとした。
そうだ。私はいつも、自分がM君に合わせるべきなんだと、どこかで思ってた。だってM君は不幸な生い立ちなんだから。
だから私が我慢しなくちゃって、ずっと思ってた。
でもそれって、M君を見下してることにならないか………? 私はM君が可哀想だから好きになったんじゃない。
彼にはいいとこがいっぱいあって、私はそこを好きになったんだ。
その気持ちこそが私の原動力で、一番最初は生い立ちなんて関係なかったはず。
言いたいことは言っちゃわなきゃ気が済まないはずなのに いつの間にか、私は自分の気持ちを どこかに置き去りにして、自分を誤魔化していたんだ。
M君のやり方に、いつの間にか倣っていた。
よし、戻ろう。
こんなの私じゃないや。本来の私に戻ろう。
初めのころの目線の高さで、もう一度M君に向き合おう。もう逃げないで全力でM君にぶつかろう。
もしこれで最後になっても、思い残すことのないように。
180 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:13:05.70 ID:LZSY7jKs.net
きちんと話し合おうよと、メールでM君を呼び出した。
どこで会うかは結構悩んだ。Sさんからさりげなく「できれば人の多い所がいいですよ」と忠告されていた。
それだけしか言われなかったけど、どういう意味かはわかった。だからM君の部屋じゃだめだ。
かと言って、ファミレスやカフェでしたい話の内容じゃないし。でも初の私の部屋で、別れ話するんじゃ私的にヘビーすぎる…
悩んだすえ、カラオケボックスを利用することにした。個室だけど、外に出れば人はたくさんいる。
当日、M君を奥にして、私は入り口に近い方の席に座った。
そんなことを考えなくちゃならないのは悲しかったけど でもつまり、そういうことなのだと痛感させられた。
まあ結果的には杞憂に終わったんだけど。
181 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:13:29.05 ID:LZSY7jKs.net
その日のM君は、なんちゅーか影が薄かった。ああ、この人はこんなに弱い人だったんだなあ。
自分のしたことで、こんなにダメージ受けてしまうなんて。
相変わらず無表情のM君に、私から切り出した。
「このあいだは ごめんね!カッとして、言いたいことばっかり言っちゃった。
だけど、今日も言いたいこと全部言いたくて呼んだんだ。
ムカつかせたらごめん。でも、言う。
私、こないだのM君の言葉が本心だとは思えないんだ」
「どうしてそう思うの?」
M君は私のほうを見ない。テーブルだけを見つめていた。
ものすごいしゃべりにくくて、気持ちが萎えてくる。 これはいかーん!と思って、私は彼の手を見つめてしゃべることにした。
指だけが、叱られてる子どもみたいにそわそわ動いてたからね。
183 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:15:09.72 ID:LZSY7jKs.net
「だってM君、私と付き合うときに、自分を変えたいって言ったじゃない。
私には あのときのM君が嘘をついてたとは思えないんだよ。
私、私を理由にして別れようとする、こないだのM君よりも
自分自身を理由にして、付き合いたいって言ってくれたM君のほうが信じられるんだ」
「言ったね、そんなこと。でも、どっちの俺も俺だよ?」
「わかってるよ。だから困るんじゃないか。
私、べつにM君と別れたくなくて こんなこと言ってるわけじゃないんだよ。
今日で おしまいになる覚悟はちゃんとできてる。
だけどその前に、私はM君の本当の気持ちをちゃんと知りたいんだ」
「俺の気持ちは、こないだ言ったよね?」
「私のために別れるってやつ?
私、あんなのじゃ全然納得できないよ。 私が知りたいのはもっと単純なことなんだよ。
M君が、いま、私を好きなのか嫌いなのか。それだけ。
あれから散々考えたけど、私は やっぱりM君のこと大好きだよ」
いまさらですが。私はそれまで、一度もM君から好きだと言われたことがありませんでした。
それに気づいたときはキツかったですわー。
本当に、ずーっと私の片思いだったんだなあ、と。
185 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:16:03.21 ID:LZSY7jKs.net
「だけど俺、ひどいことしたよね?」
「うん、ショックだった。いっぱい泣いたさ」
「だったら、そんなやつとは別れたほうがいいだろ?」
「そんなねー、論破するようなこと言ったってねー、私がM君を好きだって気持ちは、M君には変えられないよ?」
「だけど別れてもいいと思ってるんだろ?」
「そうだね。私が付き合いたいのは、私のことを好きなM君だから。
M君が私のこと嫌いって言うのなら、しかたないよ、ここですっぱり別れよう。
だから、私はM君の気持ちを聞きたいんだよ。私のこと好きなのか、嫌いなのか」
189 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:28:47.09 ID:LZSY7jKs.net
「俺は…」
そのまま、M君は黙り込んだ。
私も黙ってM君の言葉を待った。
隣の部屋から、やけに上手な「冬のリヴィエラ」が聞こえてきた。くそったれーと思った。
190 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:29:03.43 ID:LZSY7jKs.net
そして、小一時間は経ったかなというころ。
「………俺のわがままに、喪子を付き合わせるわけにはいかないから」
やっと出たM君の言葉はそれだった。
また、聞こえがいいだけのただの正論。中身のない、空っぽな言葉だった。
192 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:31:11.58 ID:LZSY7jKs.net
「言ったでしょ。それはM君のせいじゃない、私の選択だよ?」
「だけど俺のせいで、喪子の時間を奪ってしまうのは…俺には責任がとれない」
「私の人生の責任は、私がとります」
「だけどそれで、喪子の出会いのチャンスを潰してしまったら…」
「勝手な想像で勝手に私の将来潰さないでよ、ムカつくなー!」
M君はまた黙り込んだ。相変わらずうつむいてたけど、口をパクパクさせてた。
なにか言おうとして言えないでいるみたいだった。なんか酸欠の金魚みたい。
まるでそうしないと生きていけないみたいに口をパクパクさせてM君は私に反論しようとしている。
なんだか、それを見ていたら、急に思ってもなかった言葉が出てきた。
193 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:32:19.42 ID:LZSY7jKs.net
「もうさー、そんなに自分を誤魔化さなくってもいいんだよ! もういい、十分だよ!M君はこれまで、本当によくやったよ!」
事前に考えておいて、言おうと思ってたことはまだまだあった。でもこれを言ったら「言い尽くしたなー」と思えた。
私が我慢するとか、諦めるんじゃくてさ。
固まったように動かず、しゃべることもできないでいる彼を見ているうちに これはもう、M君の変えようのない生き方なんだなあって、いきなり納得できた。
だったら そんな彼の人生に、皮肉でもなんでもなく、せめて「天晴れ」と言ってあげたくなったんだ。
「…これで私の言いたいことはおしまいです。あとはM君次第だよ」
「…………ごめん、別れよう」
それがM君の答えだった。
194 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:33:19.99 ID:LZSY7jKs.net
「うん、わかった。いままでありがとうね」
「ごめん」
「えー、最後がごめんはやだなー。なんか他のこと言ってよw」
「…………ごめん」
あのとき変わりたいと私に言ったM君は、他でもない、自分に負けてしまった。何よりも彼自身が、それを嫌というほど自覚している。
M君は、うつむいてると言うよりうなだれていた。その姿にじわっと涙が出てきて、それを隠して荷物をまとめた。
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