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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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193 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:32:19.42 ID:LZSY7jKs.net
「もうさー、そんなに自分を誤魔化さなくってもいいんだよ! もういい、十分だよ!M君はこれまで、本当によくやったよ!」


事前に考えておいて、言おうと思ってたことはまだまだあった。でもこれを言ったら「言い尽くしたなー」と思えた。

私が我慢するとか、諦めるんじゃくてさ。

固まったように動かず、しゃべることもできないでいる彼を見ているうちに これはもう、M君の変えようのない生き方なんだなあって、いきなり納得できた。

だったら そんな彼の人生に、皮肉でもなんでもなく、せめて「天晴れ」と言ってあげたくなったんだ。

「…これで私の言いたいことはおしまいです。あとはM君次第だよ」


「…………ごめん、別れよう」


それがM君の答えだった。



194 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:33:19.99 ID:LZSY7jKs.net
「うん、わかった。いままでありがとうね」


「ごめん」


「えー、最後がごめんはやだなー。なんか他のこと言ってよw」


「…………ごめん」


あのとき変わりたいと私に言ったM君は、他でもない、自分に負けてしまった。何よりも彼自身が、それを嫌というほど自覚している。

M君は、うつむいてると言うよりうなだれていた。その姿にじわっと涙が出てきて、それを隠して荷物をまとめた。




195 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:35:05.70 ID:LZSY7jKs.net
だっけどさー! マンガや映画だったら ここで終わりなのにさー!


そこから二人で廊下歩いて行かなきゃならないんだよねー。

そのあとは、受付でお会計もしなくちゃならないのよ、現実は。

しかもカウンターで、よくあるあの儀式がはじまっちゃってさ。

「俺が」

「呼び出したんだから、私が」

「いいから」

「せめて割り勘で」

「ほんとにいいから」



196 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:07.34 ID:LZSY7jKs.net
M君の顔に似合わないゴツい手が、私の手をお財布ごとバッグに押し戻した。

「一緒にケーキ食べられなかったお詫び。ずっと気になってたから」

ケーキ? 私、今日ケーキ食べるなんて言ってないよね???

………………あーーーー。

涙腺が緩んで、私は小走りで店の外に出た。



197 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:39.32 ID:LZSY7jKs.net
M君は甘党で、特にケーキが大好きだった。

他の食べ物はあんまりでも、ケーキだけには身を乗り出した。

だからよく、二人でケーキ買ったり作ったりして食べてたんだ。


でも、そうだ。いちばん最初のケーキだけは、一緒に食べられなかったんだっけ…


なんでそんなこと、いま言うんだよう。ずっと気にしてたなんて、馬鹿だなあ。

…でも、M君らしいや。



198 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:00.73 ID:LZSY7jKs.net
店から出てきたM君に、私は駐車場のあっちのほうからべっこり頭を下げた。

泣き顔は見られたくなかったんだ。

M君がどんな顔してたかはわからない。

視界が歪んでたからね。


バイバイ、M君。


終わったー、私の恋。




199 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:25.06 ID:LZSY7jKs.net
それからは、いろんな人に報告しまくった。

そうすることで気持ちに整理をつけたかった。

湿っぽいのはいやなので、「これは空元気だよ!」とか言いながら。


だけど、やっぱりSさんのときだけは、少し泣いてしまった。

「そのうちご飯食べにきてくださいね」とだけSさんは言ってくれた。

でも積極的に行く気にはなれなかった。だってSさんのダンナはM君の親友だから。

M君の気配のあるところには、しばらく近づきたくなかった。



200 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:14.83 ID:LZSY7jKs.net
それから半年くらいかな。

私は落ち込んだ気持ちを引きずるでもなく、わりと普通にすごしていた。

最後に言いたいこと言えたせいか、後悔や未練はほとんどなかった。


そんなある日、部屋で優雅にスルメをしゃぶっていたら、携帯が鳴りだした。

んー?名前が表示されてないなあ

知らない人からの電話には出ませーん

なんかしつこいねー、頑張れー

…………………あはん!?


「もっ、もしもし!」

「もしもし、あのー、Mですが」


「どうしたの!?元気だった!?私は元気だよ!どうしたの!?元気!?私は元気!」

軽くパニクってましたすいません。


「そっか、ならよかった」

久々に聞けたM君の「そっか」が嬉しかった。



201 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:54.82 ID:LZSY7jKs.net
「いま大丈夫かな?」

「大丈夫だよー」

スルメ食ってただけですから。


「えーと……ごめん、出てもらえないと思ってたんで、あせってるな」

独り言みたいにM君が言った。


「大丈夫だよー、落ち着くまで待つから」

「ごめん。えーと…あー、いまなにしてた?」

「それを聞くか!?」

「あ、ごめん」

なんか「ごめん」ばっかだなー。



202 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:17.87 ID:LZSY7jKs.net
「ユーミンの歌であったよね。あなたと別れてからはキレイでいようとしてたのに どうして私、今日に限ってサンダル履き!?ってやつ」


「ああ、あったね」


「スルメ食ってました」


「スルメwwww」

あー、笑ったあ〜。スルメ、グッショブ。


「それで?突然どうしたの?」

「あのー………じつは伝えたいことがあって」


「えー、なに?」

「うん………それで電話したんだけど」


「えー、なになに?」

「ええと………じつは…さ…」

M君は電話の向こうで深呼吸してるみたいだった。それを聞いてたら、私もドキドキしはじめた。




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 相手の過去, メンタル, メンタル,
 


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