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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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195 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:35:05.70 ID:LZSY7jKs.net
だっけどさー! マンガや映画だったら ここで終わりなのにさー!
そこから二人で廊下歩いて行かなきゃならないんだよねー。
そのあとは、受付でお会計もしなくちゃならないのよ、現実は。
しかもカウンターで、よくあるあの儀式がはじまっちゃってさ。
「俺が」
「呼び出したんだから、私が」
「いいから」
「せめて割り勘で」
「ほんとにいいから」
196 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:07.34 ID:LZSY7jKs.net
M君の顔に似合わないゴツい手が、私の手をお財布ごとバッグに押し戻した。
「一緒にケーキ食べられなかったお詫び。ずっと気になってたから」
ケーキ? 私、今日ケーキ食べるなんて言ってないよね???
………………あーーーー。
涙腺が緩んで、私は小走りで店の外に出た。
だっけどさー! マンガや映画だったら ここで終わりなのにさー!
そこから二人で廊下歩いて行かなきゃならないんだよねー。
そのあとは、受付でお会計もしなくちゃならないのよ、現実は。
しかもカウンターで、よくあるあの儀式がはじまっちゃってさ。
「俺が」
「呼び出したんだから、私が」
「いいから」
「せめて割り勘で」
「ほんとにいいから」
196 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:07.34 ID:LZSY7jKs.net
M君の顔に似合わないゴツい手が、私の手をお財布ごとバッグに押し戻した。
「一緒にケーキ食べられなかったお詫び。ずっと気になってたから」
ケーキ? 私、今日ケーキ食べるなんて言ってないよね???
………………あーーーー。
涙腺が緩んで、私は小走りで店の外に出た。
197 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:36:39.32 ID:LZSY7jKs.net
M君は甘党で、特にケーキが大好きだった。
他の食べ物はあんまりでも、ケーキだけには身を乗り出した。
だからよく、二人でケーキ買ったり作ったりして食べてたんだ。
でも、そうだ。いちばん最初のケーキだけは、一緒に食べられなかったんだっけ…
なんでそんなこと、いま言うんだよう。ずっと気にしてたなんて、馬鹿だなあ。
…でも、M君らしいや。
198 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:00.73 ID:LZSY7jKs.net
店から出てきたM君に、私は駐車場のあっちのほうからべっこり頭を下げた。
泣き顔は見られたくなかったんだ。
M君がどんな顔してたかはわからない。
視界が歪んでたからね。
バイバイ、M君。
終わったー、私の恋。
199 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:37:25.06 ID:LZSY7jKs.net
それからは、いろんな人に報告しまくった。
そうすることで気持ちに整理をつけたかった。
湿っぽいのはいやなので、「これは空元気だよ!」とか言いながら。
だけど、やっぱりSさんのときだけは、少し泣いてしまった。
「そのうちご飯食べにきてくださいね」とだけSさんは言ってくれた。
でも積極的に行く気にはなれなかった。だってSさんのダンナはM君の親友だから。
M君の気配のあるところには、しばらく近づきたくなかった。
200 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:14.83 ID:LZSY7jKs.net
それから半年くらいかな。
私は落ち込んだ気持ちを引きずるでもなく、わりと普通にすごしていた。
最後に言いたいこと言えたせいか、後悔や未練はほとんどなかった。
そんなある日、部屋で優雅にスルメをしゃぶっていたら、携帯が鳴りだした。
んー?名前が表示されてないなあ
知らない人からの電話には出ませーん
なんかしつこいねー、頑張れー
…………………あはん!?
「もっ、もしもし!」
「もしもし、あのー、Mですが」
「どうしたの!?元気だった!?私は元気だよ!どうしたの!?元気!?私は元気!」
軽くパニクってましたすいません。
「そっか、ならよかった」
久々に聞けたM君の「そっか」が嬉しかった。
201 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:38:54.82 ID:LZSY7jKs.net
「いま大丈夫かな?」
「大丈夫だよー」
スルメ食ってただけですから。
「えーと……ごめん、出てもらえないと思ってたんで、あせってるな」
独り言みたいにM君が言った。
「大丈夫だよー、落ち着くまで待つから」
「ごめん。えーと…あー、いまなにしてた?」
「それを聞くか!?」
「あ、ごめん」
なんか「ごめん」ばっかだなー。
202 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:17.87 ID:LZSY7jKs.net
「ユーミンの歌であったよね。あなたと別れてからはキレイでいようとしてたのに どうして私、今日に限ってサンダル履き!?ってやつ」
「ああ、あったね」
「スルメ食ってました」
「スルメwwww」
あー、笑ったあ〜。スルメ、グッショブ。
「それで?突然どうしたの?」
「あのー………じつは伝えたいことがあって」
「えー、なに?」
「うん………それで電話したんだけど」
「えー、なになに?」
「ええと………じつは…さ…」
M君は電話の向こうで深呼吸してるみたいだった。それを聞いてたら、私もドキドキしはじめた。
203 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:39:43.94 ID:LZSY7jKs.net
「あのー、俺さ」
「うん」
「俺さ、俺………えー…あのー………ね」
「うん?」
「あれなんだよ、ええと……そのー……俺さ」
「うん」
「えーーーーー」
「うーーーー?」
「…………………ああ…やっぱだめだ話せない…」
「話したくないなら無理しないでいいじゃんw」
「話したくないわけじゃない。わざわざ電話したんだし…ただ、頭ん中真っ白になっちゃって…なにも言葉が出てこない」
204 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 21:40:06.54 ID:LZSY7jKs.net
「じゃあさー、私が話してもいい?」
「どうぞ」
「たぶんいまM君は、私になにかを話しておかなきゃ!ってなってて、それで緊張しちゃってるんでしょ?
でも私、たぶんM君が思ってる以上に、M君のこといろいろ知ってると思う。
今さらだけど謝っとくね。黙っててごめんなさい」
「ん?どういうこと?」
「ずっと内緒にしてたけど、付き合ってたころね、私O君にM君のこと相談してたんだ」
「Oに?俺の?なにを?」
「一番は…M君のおうちのこと」
受話器の向こうが、一瞬だけ無音になった。
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