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十年前から電話がかかってきた
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27 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:20:10.08 ID:9FeM9uJP.net
「俺だってわからないよ。さっき言った通り、電話が鳴ったから でたら君につながった。わけがわからないよ、ホントさ」

「じゃあ何で そんな冷静なんですか? おかしいでしょ、普通もっと取り乱しますよ」

彼女は取り乱した声でそう言った。

俺も普通こうなるはずなんだろう。

でも彼女の言う通り、俺は不思議と冷静だった。


28 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:20:49.18 ID:9FeM9uJP.net
「何でだろうな。未来人の余裕とかじゃないか」

「どういうことですか?」

「ほら、未来から電話がかかってきたとなると驚くけどさ、過去からだと そこまででもなくないか? なんとなくさ」

「意味がわかりません。普通どっちでも驚きます」

ごもっともだ。

でも自分自身でもわからないんだからしょうがない。

想定外すぎることが起こると、人間は案外冷静でいられるのかもしれないな。

「とにかく お互い何かわかってることを話しましょう。こうなった心当たりとか何かありませんか?」


29 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:21:11.64 ID:9FeM9uJP.net
そこからいろいろ話したが、結局原因らしい原因は見つからなかった。

「とりあえず、今日はもう遅いですし また明日電話します。多分もう一度かけられますよね?」

「ああ、さっきもつながったし大丈夫なんじゃないか?」

さっき話している時に間違えて俺が電話を切ってしまったが、着信履歴からかけ直すとまた2006年の彼女につながった。

だからきっと大丈夫だろう。


30 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:21:40.75 ID:9FeM9uJP.net
「そうですね、じゃあまた明日」

「また明日」

俺が言い終わる頃には電話は もう切れていた。




31 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:22:00.19 ID:9FeM9uJP.net
そのあとは時間も遅く、疲れていたのもあって布団に入ると すぐ眠りに落ちた。


32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:22:15.56 ID:9FeM9uJP.net


「冒険しようぜ!」

朝、携帯の鳴る音で目が覚め、彼女かなと思って出たら、聞こえてきたのは よく知る男の声だった。


33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:22:41.43 ID:9FeM9uJP.net
「意味がわからないんだけど」

「だから、冒険しようってことだよ。楽しそうだろ?」

「いい加減、わかるように話してくれないかな? 桐島」

「だから冒険だって」

いつまでも、話さない桐島に俺はだんだんイラついてきた。

「もう、切るね。じゃあ」

「待って、待てって。ちゃんと話すから」

「最初からそうしてくれないかな?」

「悪かったって」


34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:23:16.59 ID:9FeM9uJP.net
桐島は いつものような お気楽そうな声で、『冒険』とやらのことを話し始めた。

「冒険っていうのはな、宝探しのことだ」

「抽象的な表現がまた別の抽象的な表現になっただけなんだけど? もっと具体的に話してくれないかな? 」

正直もう、いい加減にして欲しかった。


35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:23:37.90 ID:9FeM9uJP.net
「そうだな、具体的に言うとタイムカプセル探しだな」

「タイムカプセル?」

「そうだ」

「タイムカプセルなんて埋めた覚えないんだけど?」

言葉の通り、そんな青春の塊みたいなものを埋めた覚えは一切なかった。

「ああ、俺もないぞ」

きっぱり言い切るその姿は いっそ清々しかったが、本格的にわけがわからなくなってきた。


36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:24:12.60 ID:9FeM9uJP.net
「お前大丈夫か? 埋めてもないタイムカプセルを探せるわけないだろ?」

至極まっとうな意見のはずだ。

埋めてもないものは掘り出せない。

「俺たちじゃなくて、昔の卒業生が埋めたらしいんだよ。それを掘ろうってことだ、わかっただろ?」

「もっとわからなくなったな。なんで他の人が埋めたタイムカプセルを俺たちが掘るんだよ?」

俺は わからないを何回言えばいいんだろうか?『わからない』がゲシュタルト崩壊しそうだ。


37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:24:27.80 ID:9FeM9uJP.net
「実はさ、今年タイムカプセルを埋めて10年たったから掘り出す予定だったらしいんだ。

でも、人数が全然集まりそうになかったから中止になったらしい。それを俺たちが掘り出そうってことだ」

「だからなんでそうなるんだよ? 俺たちにはそのタイムカプセルになんの思い出もないだろ? そもそも何でお前そんなことを知ってるんだ?」


38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:25:16.50 ID:9FeM9uJP.net
「櫻子ちゃんに聞いたんだよ。昔タイムカプセルをうめたってな。あの人うちの学校の卒業生らしいぞ」

「櫻子ちゃん? 誰?」

聞いたことない名前が桐島の口から出ていた。

さっきから俺の言葉には何回クエスチョンマークが使われているんだろうか?




39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:25:54.09 ID:9FeM9uJP.net
「お前知らないのか? うちの学校の音楽の先生だよ。すごいかわいいって有名だぞ」

「知らないよそんなの、音楽の授業とってないし。そもそも、お前も選択音楽じゃないだろ?」

受けてない授業の教師になんて知ってるわけがない。そもそも俺は、隣のクラスの担任の名前すら知らない。


40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:26:09.97 ID:9FeM9uJP.net
「俺は、かわいい人のことは誰だって知ってるんだよ。まぁ、俺だってことを抜きにしても、あの人は結構有名だぞ。知らないお前の方が珍しいからな」

「あっそ」

もう俺は この話から興味を失っていた。

つまるところ、桐島の目的は そのタイムカプセルを掘り出して、その人の機嫌を取ろうというところなんだろう。

そんなことに、貴重な春休みを割くつもりは一切なかった。

その旨を桐島に伝え「一人でやれよ」と言って電話をきろうとした。


41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:26:46.83 ID:9FeM9uJP.net
「待てって、櫻子ちゃんのこと知らないならちょうどいいじゃん。これを機会に仲良くなろうぜ」

調子のいい桐島の声が聞こえた。


43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:27:12.26 ID:9FeM9uJP.net
「仲良くなりたいのはお前だけだろ。俺は一切興味ないから。だから一人で頑張れ」

「わかったよ。後で後悔しても知らないからな」

「絶対にないな」

そう言うと今度こそ電話をきった。


44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:27:30.46 ID:9FeM9uJP.net
しかし、あいつもよくやるよなと思う。

その先生が どんだけ綺麗なのかは知らないが、あいつのルックスや性格だったら、別にその先生じゃなくても たくさん相手がいるだろう。

唯一の問題は自由奔放なところくらいかな。

あれだけにはついていけない人がいるかもしれない。


45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:28:07.34 ID:9FeM9uJP.net
まぁ、そんなことはどうでもいいか。

俺にだってやることはあるからな。

やることといってもただ髪を切りに 行くだけだけど、それでも他人のタイムカプセル掘りよりは有意義なことだろう。




47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:28:35.23 ID:9FeM9uJP.net
そういうわけで、髪を切るために美容院まで来た。

ここは床屋というよりは美容院というべきところだろう。

誤解しないでほしいんだけど、別におしゃれに気を使ってるとかじゃないよ。

ただ子供の頃から髪を切る場所を変えてないだけだ。

そこだけはわかっておいてほしい。


48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:29:25.83 ID:9FeM9uJP.net
「いらっしゃいませー、カット?」

見知った顔の店員が聞いてくる。

「はい」

「じゃあいつも通り美咲ちゃんでいいよね?」

「はい」

「オッケー、じゃあちょっと待ってて」

美咲とは四年くらい前からこの店で働いている店員のことで、最近はずっと この人に切ってもらってる。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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