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十年前から電話がかかってきた
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68 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:38:49.71 ID:+f+v9oqV.net
「わかりました。じゃあ、こうしましょう。私は女の子の目線であなたの相談に乗ります。
その代わりあなたは男の子目線で私の相談にのってください。そして二人で告白を成功させましょう」
彼女の声は「いいアイデアでしょ?」とでもいうように自信満々だった。
こんなにコロコロ声の調子が変わるなら、表情はもっとコロコロ変わるんだろうな。
「どうですか、これなら天使でしょ? 恋のキューピッドになってあげますよ」
69 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:39:21.19 ID:+f+v9oqV.net
「なんでそうなるの? 俺、一言も告白したいなんて言ってないんだけど?」
「しないんですか? しないと何も始まりませんけど?」
その言葉に俺は少しドキッとした。
なんでさっきまでふざけてたくせに、急に本質をつくようなことを言うんだろうか?
苦手だ、こういうタイプは。
70 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:39:43.22 ID:+f+v9oqV.net
「わかったよ。よろしくお願いします、天使さん」
少しふざけて言ったのは精一杯の強がりだ。
本当はそんな余裕なんて どこにもないのにさ。
「決まりですね。『さくらんぼ作戦』始動です」
「さくらんぼ? 何それ?」
「知らないんですか? 大塚 愛」
「知ってるけど。古くない?」
「二年くらい前ですかね」
そういえば、彼女は十年前にいるんだったな。くだらない話をしすぎて忘れてた。
「わかりました。じゃあ、こうしましょう。私は女の子の目線であなたの相談に乗ります。
その代わりあなたは男の子目線で私の相談にのってください。そして二人で告白を成功させましょう」
彼女の声は「いいアイデアでしょ?」とでもいうように自信満々だった。
こんなにコロコロ声の調子が変わるなら、表情はもっとコロコロ変わるんだろうな。
「どうですか、これなら天使でしょ? 恋のキューピッドになってあげますよ」
69 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:39:21.19 ID:+f+v9oqV.net
「なんでそうなるの? 俺、一言も告白したいなんて言ってないんだけど?」
「しないんですか? しないと何も始まりませんけど?」
その言葉に俺は少しドキッとした。
なんでさっきまでふざけてたくせに、急に本質をつくようなことを言うんだろうか?
苦手だ、こういうタイプは。
70 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:39:43.22 ID:+f+v9oqV.net
「わかったよ。よろしくお願いします、天使さん」
少しふざけて言ったのは精一杯の強がりだ。
本当はそんな余裕なんて どこにもないのにさ。
「決まりですね。『さくらんぼ作戦』始動です」
「さくらんぼ? 何それ?」
「知らないんですか? 大塚 愛」
「知ってるけど。古くない?」
「二年くらい前ですかね」
そういえば、彼女は十年前にいるんだったな。くだらない話をしすぎて忘れてた。
71 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:40:04.16 ID:+f+v9oqV.net
「好きなの? 大塚 愛」
「まぁ、それなりには。それに『さくら』は私にとって特別なんです」
「どういうこと?」
「秘密です。女の子に秘密はつきものでしょ?」
ただの想像なんだけどさ、きっと彼女は今人差し指を口に当ててると思うんだよね。
得意げな顔でさ。
うん、絶対そうだと思う。
73 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:40:22.64 ID:+f+v9oqV.net
「それより、2016年ってどんな曲が流行ってるんですか? すごい気になるんですよね」
「昨日も言ったけどさ、そういうのは言っちゃうのマズいだろ? ほら、歴史とか変わっちゃたら困るでしょ?」
だから俺たちは名前すら名乗らないまま恋愛話までしているわけで、よくよく考えると かなり変な状況だな。
「えー、ケチ。少しくらいいいじゃないですか」
「ダメだって。そうだ、そっちは どんなのが流行ってるの? 音楽だけじゃなくて、他にもいろいろ」
74 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:41:07.22 ID:+f+v9oqV.net
「うーん、そうですね、さっきも言いましたけど、大塚愛だったら『プラネタリウム』ですよね。『さくら』だったらケツメイシかな。あとは『粉雪』とか『青春アミーゴ』ですかね」
聴いたことある曲がたくさん並べられた。
「音楽以外だったら、『オリラジ』が最近ノッてますね。ドラマは『1リットルの涙』ですね。後『電車男』も」
彼女は次々と懐かしい言葉を羅列していった。懐かしい言葉のオンパレードだな。
彼女と話してるとタイムスリップしてるみたいだよ。まぁ、半分してるようなもんだけどさ。
75 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:41:23.60 ID:+f+v9oqV.net
「あー、あと、あれも好きです。ほら、なんかアニメの、『一万年と二千年前から愛してる』ってやつ。なんでしたっけ?」
「『創世のアクエリオン』?」
「それです、なんかいいですよね響きが」
76 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:41:56.51 ID:+f+v9oqV.net
「なんか、すごい懐かしい気持ちになれたよ。ありがとう」
「そうですか、だったらそっちのことも少しくらい教えてくれてもいいと思うんですけどね」
また勝手な想像だけど、今度はきっと口をとがらせていると思うな。
「そうだな、じゃあ一つだけ、『PERFECT HUMAN』を覚えておくといいよ」
これだったら歴史に影響は それほどないだろうし、言っても問題ないだろう。
「なんですか? それ。完璧人間?」
「うん、完璧人間。覚えといて」
「わかりました」
彼女は不思議そうな声で応じた。
77 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:42:14.61 ID:+f+v9oqV.net
そんな話をしているうちに時間は過ぎていき、もう今日は遅くなってしまったので、続きは明日にすることになった。
79 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:42:37.81 ID:+f+v9oqV.net
*
「まず、あなたは二つのハンデを背負っていることを理解してください」
「ハンデ?」
次の日、夜になったので彼女に電話すると、『さくらんぼ作戦』の恋愛講義が始まった。
「はい。まず、その美容師さんとあなたが会うときはどんなときですか?」
「どんなって、髪を切りに行った時だろ?」
美容師なんだから当然といえば当然だ。
「それが一つ目のハンデです」
「なんで? むしろ、会う理由があるんだからいい方のハンデじゃないか?」
世の中には好きな人と会う理由を必死で考えている人なんて ごまんといるしな。
そう考えたら、会う理由が簡単につくれるのはプラスなはずだ。
80 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:43:10.80 ID:+f+v9oqV.net
「あなたが髪を切るときは、言い換えれば その美容師さんが仕事中のときということです。
仕事が絡むと恋愛は難しくなると言われているのを知っていますか?
仕事中は頭がそっちに集中していて、異性のことを深く意識しないようになるからです。
美容師のような技術職では尚更そうなります」
確かにそうかもしれないと思ったが、これくらいなら別にたいした問題じゃ――
「『たいした問題じゃない』そう思いましたか?」
俺の思考を先読みしたかのように彼女は口にした。
81 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:43:38.63 ID:+f+v9oqV.net
「そうですね、確かにこれは そこまで大きな問題ではありません。大事なのはもう一つの方です」
もう一つの問題。
それは、多分俺もわかっていた。
俺と美咲さんの間にある大きな壁。
82 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:43:54.32 ID:+f+v9oqV.net
「もう一つのハンデは、年齢です。あなたは学生で、美容師さんは働いている。
同じ学生の私が言うことじゃないかもしれませんが、社会人と学生では価値観も話題も時間だって違います。
一つ一つは小さな違いでもそれが たくさんになれば、それは埋められない差になります。
これを埋めるのは相当難しいことだと思います」
年齢、それが大きな障害になることはわかっていた。
仕事中だとか そんなことは頑張ればなんとかなるんだろう。
だけど、年齢の差はどう頑張ったって埋められない。
俺が歳をとることも、美咲さんが若返ることも絶対にできない。
83 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:44:22.08 ID:+f+v9oqV.net
「要するに望みはほぼゼロってことだな……」
そうだ、最初からわかってたんだ。
それなのに彼女と話して、もしかしたらと思ってしまった。
そんなわけないのに。
84 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 22:44:44.32 ID:+f+v9oqV.net
「無理だってわかってたはずなのにな、ちょっと舞い上がってたみたいだ…… もう、終わりにしよう。そっちの話聞くよ、磯崎先輩だっけ?」
「なんでですか?」
彼女は刺すような声で聞いてきた。
「あれ、磯崎じゃなかったっけ?」
確か磯崎だったはずなんだけど、記憶力にはわりと自信がある方なんだ。
「そうじゃなくて、なんで諦めるんですか?」
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