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十年前から電話がかかってきた
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166 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 23:21:28.78 ID:b4mXH4pv.net
ただ、そんな心の怪物はおさまることになる。
十五コール目、彼女の声が耳に響いた。
「はい」
その声を聞いた瞬間俺の心は驚くほどに落ち着いた。
167 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 23:21:45.28 ID:b4mXH4pv.net
「こんばんは」
「ああ」
彼女は少し泣いているように思えた。
その涙がどっちの涙かはわからなかった。
189 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:19:36.60 ID:3zc+EWgf.net
彼女の告白は成功したのか聞きたいのに、言葉が出なかった。
どんな声で、どんな風に聞けばいいのかわからない。
また怪物が出てきそうだ。
190 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:19:54.86 ID:3zc+EWgf.net
「フラれちゃいました。やっぱりうまくいきませんね」
俺が何も言えないでいると、彼女が精一杯取り繕ったかのような声でそう言った。
それを聞いた瞬間、正直に言うと俺は安心したんだ。
心の底からホッとした。
それは最低な感情で、でも怪物はそんな感情でしか去ってはくれなかった。
ただ、そんな心の怪物はおさまることになる。
十五コール目、彼女の声が耳に響いた。
「はい」
その声を聞いた瞬間俺の心は驚くほどに落ち着いた。
167 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/05/31(火) 23:21:45.28 ID:b4mXH4pv.net
「こんばんは」
「ああ」
彼女は少し泣いているように思えた。
その涙がどっちの涙かはわからなかった。
189 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:19:36.60 ID:3zc+EWgf.net
彼女の告白は成功したのか聞きたいのに、言葉が出なかった。
どんな声で、どんな風に聞けばいいのかわからない。
また怪物が出てきそうだ。
190 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:19:54.86 ID:3zc+EWgf.net
「フラれちゃいました。やっぱりうまくいきませんね」
俺が何も言えないでいると、彼女が精一杯取り繕ったかのような声でそう言った。
それを聞いた瞬間、正直に言うと俺は安心したんだ。
心の底からホッとした。
それは最低な感情で、でも怪物はそんな感情でしか去ってはくれなかった。
191 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:20:27.49 ID:3zc+EWgf.net
「そっか、俺もだよ。本当難しいよな」
何言ってるんだ俺は。告白することすらしなかったくせに。
俺にそんなことを言う資格なんかない、彼女と話す資格なんかないんだ。
192 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:20:43.83 ID:3zc+EWgf.net
「本当ですね。さくらんぼ作戦失敗です」
「そうだな。こういう時、あいつがいてくれると気持ちが軽くなるんだろうな」
「あいつって、前に行ってたタイムカプセルの人ですか?」
「ああ、あいつならなんとかしてくれる気がするんだ」
193 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:21:03.67 ID:3zc+EWgf.net
「そうですか。でも、タイムカプセルって面白そうですよね。私もやってみようかな」
「いいんじゃない。何入れるの?」
「私、日記書いてるんですよ。だから今日のこととか書いて、それを何年かたった時に見て懐かしむんです」
「そっか」
194 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:21:20.83 ID:3zc+EWgf.net
なんでもないような話をひたすら続けた。
お互い会話が途切れないように、ずっと話し続けた。
多分、二人とも分かってたんだと思う。
会話が途切れたら何が起こるかを。
195 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:21:47.42 ID:3zc+EWgf.net
そしてその時が訪れた。
不思議な沈黙。
今まで焦るように話してたのに、急に静寂が場を支配した。
お互いが探り合い、話し始めようとする。
196 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:22:05.66 ID:3zc+EWgf.net
「あのさ」
「あの」
二つの声が重なった。
197 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:22:25.79 ID:3zc+EWgf.net
「あー、ごめん。先どうぞ」
「すみません。そちらからどうぞ」
また重なる。
「いいよ。君から話して」
俺は先に話すのが怖くて逃げた。
198 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:26:02.64 ID:4ZfHDWbX.net
「じゃあ、あの……すみません、私嘘つきました。本当は告白なんかしてません、できませんでした」
なんとなくわかってた。
自分がそうだったからわかるんだ。
あの喋り方、あの雰囲気は前に進めなかった人のものだ。
でも、俺はそれを責めようとは思わない。
いや、責める資格なんかないんだ。
だって俺は、きっと彼女よりもひどい理由で告白ができなかったんだから。
199 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:26:22.70 ID:4ZfHDWbX.net
「うん、ごめん俺も……俺も告白してない。あと一言、一言だせばいいとこで日和ったんだ。怖くなった。本当、ダメだな」
そうだ、本当に俺はダメなんだ。
彼女に先に話させて、安心してから自分も話す。
そして その話した内容すら嘘なんだ。
本当はそんな理由なんかじゃない。
でも、それを言おうともしないんだ。
本当にずるい。
200 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:26:43.16 ID:4ZfHDWbX.net
「あー、やっぱ難しいな。勇気ってそう簡単に出ないよな。失敗したらとか考えちゃうと、怖くて踏み出せない」
「…………」
返事は返ってこなかった。
沈黙は怖い。
だから、俺は話すのをやめなかった。
一人で話し続けた。
201 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:27:01.38 ID:4ZfHDWbX.net
「あのっ!」
俺の声を遮って彼女が大きな声を出した。
「違うんです……私、違うんです」
「…………」
今度は俺が黙る番だった。
「私が……私が告白できなかった理由は……」
ダメだ。これ以上は聞いたらいけない。
そうわかってるのに、俺に彼女の言葉を止めることはできなかった。
202 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:27:38.87 ID:4ZfHDWbX.net
「その……先輩に会いに行ったんです。行ったのに、いざって時に、その……あなたの……」
止めなきゃいけないんだ。
でも、やっぱり俺には その涙交じりの声を遮ることはできなかった。
もしかしたら期待しているのかもしれない。
そんなのはダメなのに。
俺は卑怯だ。
203 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:27:55.16 ID:4ZfHDWbX.net
「あなたの……あなたのこと思い出して、それで……」
「わかってる! わかってるんだ。ごめん」
もう耐えられなかった。
自分の卑怯さに、ずるさに、汚さに。
そして、自分が満足するために俺は これからもっと最低なことを言う。
無責任で最低なことを。
204 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/06/01(水) 19:28:13.60 ID:4ZfHDWbX.net
「ごめん……俺が言わなきゃいけないんだよな。それなのに……それなのに俺は、全部君に言わせて。自分が傷つくのが怖いから、だから、無責任なことは言わないって言い訳して……最低だ」
彼女の泣き声が聞こえた。
これ以上は言っちゃいけないなんてわかってるんだ。
でも、自分を抑えるのはもう無理だった。
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