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涙の色は赤がいいだろ?
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105 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:09:34.09 ID:msabUvV8.net
でも、それでもいい。かっこよくなくても、主人公じゃなくても、彼女の居場所がわからなくてもいいんだ。

それでも俺は走り続ける。

彼女を見つけるまで走り続ける。

必ず彼女を見つけ出してみせる。


106 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:09:52.43 ID:msabUvV8.net
見つけ出した後どんな言葉をかけたらいいかなんてわからない、どうすれば彼女の赤い涙を止められるのかだってわからない。

それでも走るしかないんだ、俺は。


107 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:11:00.58 ID:msabUvV8.net
彼女を探し始めてから一時間、俺に主人公になるチャンスが与えられた。


108 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:11:24.75 ID:msabUvV8.net
「どうして ここがわかったんですか?」

彼女は涙で腫れた目を拭いながら、弱々しい声でそう言った。

「ここで俺は それらしい理由を言って かっこよくきめるべきなんだろうな、だけど残念ながら、適当に走り回って やっと見つけたんだ。俺にかっこよくきめるなんて無理みたいだ」

言葉の通り、俺には なんで彼女がこんな廃ビルにいるのか見当もつかない。

ただ、このビルの近くにぐしゃぐしゃになった、上から落ちてきたであろう看板があって、少し気になったから入っただけだった。

彼女を見つけられたのは看板のおかげだな。




110 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:12:37.66 ID:msabUvV8.net
「なんですか……それ。なんで追いかけてきたんですか? 私のあなたをお金で買ってたんですよ。最低な人間なんですよ? なのにどうして……」

彼女の目からは涙がこぼれていた。

俺にはその涙は、血のように濁った赤色に見えた。


111 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:13:08.47 ID:msabUvV8.net
「やっと見せてくれたな、涙」

「えっ?」

彼女は驚いたような顔で俺の方を見てきた。

「最初に会った時言ってたろ、悲しくないって強がったり、誤魔化したりしちゃう言葉の代わりに涙があるって。そんなこと言ったくせに泣かなかったじゃないか、ずっと我慢してただろ? 涙を」

そう、彼女はずっと嘘をついていた。ついてた嘘はバイトのことなんかじゃない。そんなことはどうでもいい。

彼女がついてたのは私は悲しくなんかないという嘘。この嘘だけは見逃すわけにはいかない。


112 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:14:13.11 ID:msabUvV8.net
「ずっと気付けなかった俺が言えることじゃないのかもしれない、でも言わせてくれ。

たとえ涙の色が赤じゃなくても、いや、涙すら我慢していたとしても、俺が必ず気づいてみせる。

お前が悲しんでいるなら、俺が必ず気づいてみせる。

だから、悲しい時は一人で抱えるんじゃなくて、俺に一緒に抱えさせてほしい。

バイトの嘘なんてどうでもいい、でも自分の悲しいっていう気持ちに、寂しいっていう気持ちに嘘はつかないでほしいんだ。

悲しい時は俺にも一緒に悲しませてくれないか?」


ここに来るまで彼女に何を話すのか ずっと考えていた。

でも、結局何を話していいのかわからなかった。

だから自分が思っていることを全部言うことにしたんだ。

飾らない俺の気持ち、かっこ悪くても これが俺の本心だ。


113 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:15:43.63 ID:msabUvV8.net
「なんなんですか……本当に…… ずるいですよ。

私のこと走り回って探してくれて……そんなこと言ってくれて……かっこよくないわけないじゃないですか。

なんでそんな……ずるいですよ……」


そう言った彼女の目から流れた涙は透明だった。


114 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:16:24.84 ID:msabUvV8.net
「なぁ、名前教えてくれよ、まだ知らないんだ」

「倉敷です……倉敷彩乃です」

「そうか、俺は楠――」

「知ってますよ、あなたの履歴書見ましたから」

彼女は涙でくしゃくしゃになった顔で、少し口元を緩めて、またいたずらっぽく笑った。

俺はその顔にまた見惚れた。


115 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:17:10.27 ID:msabUvV8.net
「なぁ、彩乃」

「なんですか」

「やっぱり俺の勝ちだな」

「なにがですか?」

唐突に切り出した俺に、彩乃は戸惑ったような顔で聞き返した。

「涙の色だよ、赤よりそっちのほうが綺麗だ」

「ホントずるいですね……雅也さんは」




116 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:24:11.13 ID:msabUvV8.net
これでおしまいです。

もし最後まで読んでくれた方が一人でもいたなら ありがとうございました。


前に書いた「ドッペルゲンガーと人生を交換した話」も読んでもらえると嬉しいです。

後、ツイッターもやっているのでフォローしていただけると嬉しいです。

http://twitter.com/yuasa_1224


117 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:25:21.88 ID:LJlJDrP4.net
面白かったで


121 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 23:57:05.83 ID:vfrxUwXy.net
感動した


122 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/13(日) 00:18:38.74 ID:BpLs/45C.net
面白かったぞい


123 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/13(日) 00:43:44.40 ID:4xG5GIH+.net
寝なきゃなのに読み耽ってしまった

良いものをありがとう


124 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/13(日) 00:49:10.08 ID:aOQVDot7.net
面白かったー!


 
カテゴリー:読み物  |  タグ:青春,
 


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