今日、彼女の父親は死ぬ
(2ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:45:07.05 ID:7//OxQ26.net[39/87]
最初に話し始めたのは彼女だった。
「あんたさ、最近どうしたの? なんか悩んでることがあるなら私に話してよ、話きくだけならできるからさ」
「えっ」
あまりに、唐突な彼女の質問に思わず声を出してしまった。
笑っちゃうよな、僕は彼女のことを心配しているつもりが、いつの間にか彼女に心配をかけてたんだ。
僕は最初、彼女の異変に気付くことができなかったのに、彼女は僕が悩んでいることに気付いてたんだ。
47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:45:59.31 ID:7//OxQ26.net[40/87]
「別に、悩みなんてないよ。そっちこそなんか悩んでることないの?」
彼女の殺人を止めるために悩んでるなんて言えるわけがなかったので、誤魔化して逆に彼女にも質問をした。
ただ、内心これで彼女が話してくれるとは思ってなかった。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:46:20.41 ID:7//OxQ26.net[41/87]
「実はさ……私、虐待されてるんだ、お父さんに……」
僕の予想とは裏腹に彼女はそう話し始めた。
なんで話してくれたのかはわからなかったが、こんな言い方はいけないのかもしれないけど、僕はそれが嬉しかった。
彼女が僕を頼ってくれたことが嬉しかったんだ。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:03.40 ID:7//OxQ26.net[42/87]
「いつから?」
僕は彼女の話を真剣に聞くように努めた。
「三年くらい前から。お母さんが死んじゃって、会社もクビになって、それから……」
50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:21.82 ID:7//OxQ26.net[43/87]
彼女は虐待のことを全て話してくれた。
それは、とても辛いことだったと思う。
そんなことを話させてしまったんだ、絶対に彼女を助けなきゃいけないって思ったよ。
51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:59.07 ID:7//OxQ26.net[44/87]
「ごめんね……こんな話しして、迷惑だよね」
彼女は目に涙を滲ませながらそう言った。
「そんなことない、話してくれてありがとう。なぁ、明日、家に行っていいか?」
「えっ、私の家?」
「ああ」
もうこれしかないと思ったんだ、明日、彼女が父親を殺す日、直接家に行って彼女を止める。
いや、彼女の父親の虐待を止める、そうしようと思った。
52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:48:22.51 ID:7//OxQ26.net[45/87]
「でも……」
彼女は言い淀んだ
多分僕に迷惑をかけたくないと思っているんだろう。
「これからとても無責任なことを言うけどいいか?」
「……」
彼女の返事を待たずに僕は続けた。
「多分、このことについて、お前はずっと悩んでたんだと思う。
僕があれこれ口を出していいことじゃないんだと思う。でも、僕はお前の力になりたい。
だから、 僕にお前を助けさせてほしい。そしてお前の笑顔をもう一度見させてほしいんだ」
53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:48:48.50 ID:7//OxQ26.net[46/87]
こうやって話すと、僕は相当かっこよく見えるだろうけど、多分僕は何回か噛んだし、実際はこんなにスラスラ言えてなかったと思うよ。
とにかく必死だったんだこのときは。
最初に話し始めたのは彼女だった。
「あんたさ、最近どうしたの? なんか悩んでることがあるなら私に話してよ、話きくだけならできるからさ」
「えっ」
あまりに、唐突な彼女の質問に思わず声を出してしまった。
笑っちゃうよな、僕は彼女のことを心配しているつもりが、いつの間にか彼女に心配をかけてたんだ。
僕は最初、彼女の異変に気付くことができなかったのに、彼女は僕が悩んでいることに気付いてたんだ。
47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:45:59.31 ID:7//OxQ26.net[40/87]
「別に、悩みなんてないよ。そっちこそなんか悩んでることないの?」
彼女の殺人を止めるために悩んでるなんて言えるわけがなかったので、誤魔化して逆に彼女にも質問をした。
ただ、内心これで彼女が話してくれるとは思ってなかった。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:46:20.41 ID:7//OxQ26.net[41/87]
「実はさ……私、虐待されてるんだ、お父さんに……」
僕の予想とは裏腹に彼女はそう話し始めた。
なんで話してくれたのかはわからなかったが、こんな言い方はいけないのかもしれないけど、僕はそれが嬉しかった。
彼女が僕を頼ってくれたことが嬉しかったんだ。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:03.40 ID:7//OxQ26.net[42/87]
「いつから?」
僕は彼女の話を真剣に聞くように努めた。
「三年くらい前から。お母さんが死んじゃって、会社もクビになって、それから……」
50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:21.82 ID:7//OxQ26.net[43/87]
彼女は虐待のことを全て話してくれた。
それは、とても辛いことだったと思う。
そんなことを話させてしまったんだ、絶対に彼女を助けなきゃいけないって思ったよ。
51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:59.07 ID:7//OxQ26.net[44/87]
「ごめんね……こんな話しして、迷惑だよね」
彼女は目に涙を滲ませながらそう言った。
「そんなことない、話してくれてありがとう。なぁ、明日、家に行っていいか?」
「えっ、私の家?」
「ああ」
もうこれしかないと思ったんだ、明日、彼女が父親を殺す日、直接家に行って彼女を止める。
いや、彼女の父親の虐待を止める、そうしようと思った。
52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:48:22.51 ID:7//OxQ26.net[45/87]
「でも……」
彼女は言い淀んだ
多分僕に迷惑をかけたくないと思っているんだろう。
「これからとても無責任なことを言うけどいいか?」
「……」
彼女の返事を待たずに僕は続けた。
「多分、このことについて、お前はずっと悩んでたんだと思う。
僕があれこれ口を出していいことじゃないんだと思う。でも、僕はお前の力になりたい。
だから、 僕にお前を助けさせてほしい。そしてお前の笑顔をもう一度見させてほしいんだ」
53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:48:48.50 ID:7//OxQ26.net[46/87]
こうやって話すと、僕は相当かっこよく見えるだろうけど、多分僕は何回か噛んだし、実際はこんなにスラスラ言えてなかったと思うよ。
とにかく必死だったんだこのときは。
54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:49:51.01 ID:7//OxQ26.net[47/87]
こうやって話すと、僕が相当かっこよく見えるだろうけど、多分僕は何回か噛んだし、実際はこんなにスラスラ言えてなかったと思うよ。
とにかく必死だったんだこのときは。
55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:50:38.52 ID:7//OxQ26.net[48/87]
「うん……ありがと。私を……助けて……」
僕の必死の叫びに彼女はそう答えてくれた。
僕に助けてほしいと言ってくれた。
それだけで僕は嬉しかったんだ。
56 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:51:02.59 ID:7//OxQ26.net[49/87]
「それから、今日は家に帰るな。僕と一緒にいよう」
もう彼女を家には帰したくなかった、
今日家に帰ってなにか暴力を受けるのが耐えられなかった。
「うん」
彼女は頷いてくれた。
そして、少しだけ笑ってくれた。
僕はこの笑顔を守らなきゃいけない、そう誓ったんだ。
57 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:51:34.43 ID:7//OxQ26.net[50/87]
この日は公園に移動して、一晩中話した。
このとき、やっと久しぶりに本当の彼女と会話できた気がしたな。
59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:52:10.10 ID:7//OxQ26.net[51/87]
次の日、事件が起こった日、朝から彼女の家に向かった。
彼女が父親を刺したのは、九月十七日の朝九時頃だと聞いていた。
そして、彼女の家に着いたのが八時五十分、彼女が父親を刺す正確な時間はわからなかったが、とにかくここから二十分くらいが勝負だった。
60 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:52:44.00 ID:7//OxQ26.net[52/87]
ただ、僕はこのときほぼ勝利を確信してたんだ。
このときの彼女の様子から父親を殺すとは思えなかったからね。
61 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:53:07.63 ID:7//OxQ26.net[53/87]
家に入ると、大きな男の声で怒声が響いた。
「おまえ、どこ行って……」
酒で焼けた声の主は僕を見て言葉を止めた。
「誰だ、お前」
「友達です、彼女の」
「何しに来た?」
彼女は僕の後ろで、僕の袖を掴んで震えていた。
だから僕は彼女を安心させるためにも、できるだけはっきりした声で目的を口にした。
「彼女を助けに来ました」
そう口にした次の瞬間、頬に激しい衝撃と痛みを感じた。
彼女の父親は、床に倒れこんだ僕の腹を続けざまに蹴り飛ばした。
62 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:53:56.25 ID:7//OxQ26.net[54/87]
情けないことに僕の身体能力は、酒に溺れた中年にさえ劣るようだった。
彼はなにか喚きながら僕を蹴り続けた。
何を言っているか聞き取る余裕はなかったよ。
まぁ、聞く価値もなかっただろうけどね。
63 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:54:25.12 ID:7//OxQ26.net[55/87]
彼女の父親の暴力は一秒の休みもおかずに続けられた。
毎秒生きているのが嫌になるくらいの激しい痛みが続いた。
僕は、とりあえず彼女に逃げてもらわなくてはいけないと思ったんだ。
もう声も出ないかもしれない、それでも目でだけでも逃げろと伝えたかった。
だから、暴力の嵐の中、彼女がいた場所を見た。
64 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:55:06.15 ID:7//OxQ26.net[56/87]
でも、そこに彼女はいなかった。
気付くと、僕への暴力は止まっていた。
いや、止めさせられていた、だな。
そしてすぐに、暴力の主の叫び声が響く。
彼の身体には包丁が突き立てられていた。
彼女は一度刺さった包丁をぬき、また刺した。
何回も何回も刺した。
時計の針は九時十二分二十一秒を指していた。
65 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:55:56.30 ID:7//OxQ26.net[57/87]
数分が経ち、全てが終わった後、僕は彼女に近づいた。
僕が何も言えないでいると、彼女が口を開いた。
「ごめんなさい……私のせいで、私が余計なことを言ったから、そんな傷を……本当にごめんなさい。お父さんじゃなくて私が死ねばよかったんだよね。私が死ねば……私さえいなければ、みんな……」
彼女は荒れた息で、血まみれになって、涙を流しながらそう言った。
66 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:56:21.38 ID:7//OxQ26.net[58/87]
僕は失敗したんだ。
彼女を助けられなかった。
それどころか彼女に助けられた、助けられてしまった。
彼女は僕のせいで父親を殺したんだ。
67 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:57:01.46 ID:7//OxQ26.net[59/87]
自分を呪ったよ、やり直しのチャンスを与えてもらって、それなのに僕は失敗したんだ。
もう一度戻らさせてくれ、そう思った。
今度はもう少しだけ前に戻してくれ、と。
そうしたら今度こそ彼女を助けてみせる。
だから戻らさせてくれ。
68 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:57:38.09 ID:7//OxQ26.net[60/87]
そして奇跡が起きる。
僕はもう一度時を巻き戻すことに成功した。
しかも、今度は事件が起きる一ヶ月前に。
69 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:58:02.30 ID:7//OxQ26.net[61/87]
だが、彼女を助けるという誓いが守られることはなかった。
僕はまた失敗した。
そしてまた戻った。
そしてまた失敗した。
また戻った。
また失敗した。
70 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:59:45.97 ID:7//OxQ26.net[62/87]
何回も何回も繰り返した。
それでも僕は彼女を助けることはできなかった。
何回やっても彼女は父親を殺した。
沖縄まで連れて行っても、縛って監禁しても、何をしても彼女は父親を殺した。
71 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:00:28.93 ID:7//OxQ26.net[63/87]
それで何回目かな、もう途中で数えるのもやめたからね、何百、いや何千かな。
そう何千回目かの巻き戻しが終わった時、もう僕は何をすればいいかわからなくなっていた。
いや、本当はわかってたんだ。
だって、よくある話だからね、結末だって簡単なんだ。
ただ、僕はそれをやりたくなかった。
だから、現実から逃げて何回も時を巻き戻してたんだ。
72 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:00:56.64 ID:7//OxQ26.net[64/87]
でも、もう逃げるのは止めにした。
これしかないんだと理解した。
もう終わりにしよう、そう思った。
73 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:01:15.46 ID:7//OxQ26.net[65/87]
「私が死ねばよかったんだよね」
彼女の言葉が頭の中をこだました。
75 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:02:24.66 ID:7//OxQ26.net[66/87]
僕は四年前に時を巻き戻した。
せめて彼女が虐待の痛みを知らない頃にしてあげたいと思ったんだ、ケリをつけるならさ。
76 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:02:50.15 ID:7//OxQ26.net[67/87]
街中を探し回った結果、彼女は父親と一緒に公園に来ていた。
77 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:04:41.21 ID:7//OxQ26.net[68/87]
僕は迷わなかった。
手に持った包丁で一切の迷いなく刺した。
彼女の悲鳴が響く。
それでも僕は戸惑うことなく何回も刺した。
刺した、刺した、刺した、刺した、刺した、
刺した、刺した、刺した、刺した、刺した、
刺した、刺した、刺した、刺した、刺した、
刺した、刺した、刺した、刺した、刺した。
そうして動かなくなった。
78 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:05:00.02 ID:7//OxQ26.net[69/87]
それから僕は医療少年院に送られた。
彼女を傷つけた罰をしっかり受けたかったんだけど、このときの僕の歳だと無理だったんだ。
80 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:05:40.95 ID:7//OxQ26.net[70/87]
そして時は流れ四年後の九月十七日、今、僕は昔住んでいた街に来ていた。
本来僕がここにいるのはありえないことなんだけどね、それなのに僕がここにいるってことは、多分僕の推測が当たっているからなんだろう。
81 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:06:16.21 ID:7//OxQ26.net[71/87]
僕の推測が正しければ僕は今日、また人を殺さなきゃいけない。
82 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:06:49.65 ID:7//OxQ26.net[72/87]
僕が殺人を犯した公園はすっかり寂れていた。
彼女とソフトクリームを食べた時は、わりと活気付いていたのに、今は人っ子一人もいなかった。
やっぱり人が死んだ公園っていうのは人が寄り付かなくなるもんなんだね。
83 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:07:30.14 ID:7//OxQ26.net[73/87]
それから僕はいろんなところをまわった。
懐かしいところがたくさんあったよ、僕は実際の歳よりもはるかに長い時間この街にいたからね、彼女との思い出もたくさん蘇ってきた。
84 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 21:08:33.96 ID:7//OxQ26.net[74/87]
そして九時、僕は橋の上から川を見ていた。
彼女が虐待のことを打ち明けてくれた河川敷の川だ。
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
