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今日、彼女の父親は死ぬ
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27 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:29:32.18 ID:7//OxQ26.net[22/87]
あまり大きい場所ではなかったけど、公園には割と人がいたな。
僕たちは空いているベンチに座って、話しを始めた。
28 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:30:05.59 ID:7//OxQ26.net[23/87]
「おいしいね、これ」
彼女は手に持っているソフトクリームを舐めながらそう言った。
これがまた、絵になるんだよな。
少女×ソフトクリーム×公園、ちょっと想像してみてよ、どんな美しい風景もこの光景には負けるんじゃないかなって思うよ、僕は。
29 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:30:33.62 ID:7//OxQ26.net[24/87]
「そうだな、店は怪しかったけどな」
ソフトクリームを買った店は、ログハウスで外から見ると謎の雰囲気を醸し出していた。
「確かに、でもああいうの男子は好きなんじゃないの? ほら、隠れ家って感じでさ」
まぁ、そう言われたら『男子』としては言い返せないところはあったね、僕もそういうのに憧れる『男子』の一人だったみたいだ。
31 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:31:02.54 ID:7//OxQ26.net[25/87]
「それにほら、お店の人もいい人だったじゃん。磯崎さんだっけ?」
「ああ、あの人はまさにいい人って感じだったな」
「でも意外だったな」
「意外?」
「あんたがあんなに人と話すとは思わなかった。ああいう話しかけてくる店員とか嫌いだと思ってたから」
32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:31:28.38 ID:7//OxQ26.net[26/87]
それは確かに自分でも不思議だった。
僕は基本内向的だからね、フレンドリーな人は苦手なんだ。
服屋とかで話しかけてくる店員は遠慮したいタイプだしね。
でも、あのお店であの人が話しかけてきた時、不快な感覚はなかったんだ。
あまり大きい場所ではなかったけど、公園には割と人がいたな。
僕たちは空いているベンチに座って、話しを始めた。
28 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:30:05.59 ID:7//OxQ26.net[23/87]
「おいしいね、これ」
彼女は手に持っているソフトクリームを舐めながらそう言った。
これがまた、絵になるんだよな。
少女×ソフトクリーム×公園、ちょっと想像してみてよ、どんな美しい風景もこの光景には負けるんじゃないかなって思うよ、僕は。
29 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:30:33.62 ID:7//OxQ26.net[24/87]
「そうだな、店は怪しかったけどな」
ソフトクリームを買った店は、ログハウスで外から見ると謎の雰囲気を醸し出していた。
「確かに、でもああいうの男子は好きなんじゃないの? ほら、隠れ家って感じでさ」
まぁ、そう言われたら『男子』としては言い返せないところはあったね、僕もそういうのに憧れる『男子』の一人だったみたいだ。
31 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:31:02.54 ID:7//OxQ26.net[25/87]
「それにほら、お店の人もいい人だったじゃん。磯崎さんだっけ?」
「ああ、あの人はまさにいい人って感じだったな」
「でも意外だったな」
「意外?」
「あんたがあんなに人と話すとは思わなかった。ああいう話しかけてくる店員とか嫌いだと思ってたから」
32 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:31:28.38 ID:7//OxQ26.net[26/87]
それは確かに自分でも不思議だった。
僕は基本内向的だからね、フレンドリーな人は苦手なんだ。
服屋とかで話しかけてくる店員は遠慮したいタイプだしね。
でも、あのお店であの人が話しかけてきた時、不快な感覚はなかったんだ。
33 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:31:50.52 ID:7//OxQ26.net[27/87]
「あの人がいい人だからじゃないか?」
結局、考えてもなぜあの人は大丈夫だったのかわからなかったので、思ったまま返事をした。
「そっか」
そう言った後、彼女の目は砂場を見ていた。
34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:32:47.32 ID:7//OxQ26.net[28/87]
砂場では、四十代くらいの男性と、小学生くらいの小さい女の子が遊んでいた。
多分親子だろう、誘拐犯と少女って線も捨てきれないけどね。
35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:33:19.90 ID:7//OxQ26.net[29/87]
それを見ている彼女を見て僕は少し迷ったが、話をすることにした。
「そういえば、僕たちがあの子くらいの時もここにきたよな、お前のお父さんと一緒にさ」
父親の話題を出していいかわからなかったが、この話をしないと前に進まないと思った、だからこの話をすることにしたんだ。
36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:35:08.31 ID:7//OxQ26.net[30/87]
「うん、そうだね」
彼女は少し暗い声でそう言った。普通の僕だったらこの少しの変化には気付けなかっただろう。
でも、虐待のことを知っている僕にはこの声がとても悲しい声に聞こえたよ。
「最近どうなの? お父さん。もうずっと会ってないけど」
僕はまだ話を続けることにした、できればここで虐待のことを打ち明けてほしかったんだ。
もう事件が起こる日まで時間がないからね。
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:37:30.08 ID:7//OxQ26.net[31/87]
でも、僕が望んだ答えは返ってこなかった。
「元気だよ、昔とあんまり変わってないんじゃないかな」
嘘だ、と思ったよ。そんなわけがないんだ。
でも僕にはそれ以上聞くことはできなかった。
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:40:00.42 ID:7//OxQ26.net[32/87]
その後、他愛もない話を少しして帰路に着いた。
「家まで送るよ」って言ったんだけど、途中で「ここでいいよ」と言われてしまった。
それが僕が嫌だからなのか、父親に会わせないようにするためかはわからなかった。
後者だといいなと思ったよ。
40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:41:20.61 ID:7//OxQ26.net[33/87]
その日から僕はとにかく彼女と話すようにした。
くだらない話ばっかりだったけど、彼女と話すのは楽しかったよ。それがどんな感情からくるものなのかは相変わらずわからなかったけどさ。
41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:42:14.32 ID:7//OxQ26.net[34/87]
でもさ、ただ楽しいとだけ言っているわけにもいかなかったんだ。
事件の日は刻々と迫ってきていたからね、このまま彼女が虐待のことを話してくれなかったら、強硬手段に出るしかなかった。
できれば、そうはならないでほしいなと思ってたんだ。
42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:42:33.61 ID:7//OxQ26.net[35/87]
それに彼女と話しているとたまにあの綺麗な笑顔が少しだけ曇る事があった。
とても些細な変化でそれに気付けたのは、僕が虐待のことを知っていたからだろう。
僕はあの悲しい顔をこれ以上見るのは耐えられなかったんだ。
だから一刻も早く彼女の本当の笑顔を取り戻したかった。
43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:43:19.06 ID:7//OxQ26.net[36/87]
そんな思いも虚しく、時間は無情にも過ぎていった。
そして事件が起こるであろう前日、僕は彼女を誘って河川敷に来ていた。
44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:44:04.40 ID:7//OxQ26.net[37/87]
もし、今日彼女が虐待のことを話してくれなかったら、もう無理やりにでも彼女と父親を引き離すしかないと、僕は思い始めていた。
その方法は思いつかないけどなんとかするしかない、そう思ってたんだ。
45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:44:41.61 ID:7//OxQ26.net[38/87]
河川敷についてから僕はずっと黙ってそのことを考えていたので、しばらく、来るときに買ったソフトクリームを舐める音だけが聞こえていた。
46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:45:07.05 ID:7//OxQ26.net[39/87]
最初に話し始めたのは彼女だった。
「あんたさ、最近どうしたの? なんか悩んでることがあるなら私に話してよ、話きくだけならできるからさ」
「えっ」
あまりに、唐突な彼女の質問に思わず声を出してしまった。
笑っちゃうよな、僕は彼女のことを心配しているつもりが、いつの間にか彼女に心配をかけてたんだ。
僕は最初、彼女の異変に気付くことができなかったのに、彼女は僕が悩んでいることに気付いてたんだ。
47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:45:59.31 ID:7//OxQ26.net[40/87]
「別に、悩みなんてないよ。そっちこそなんか悩んでることないの?」
彼女の殺人を止めるために悩んでるなんて言えるわけがなかったので、誤魔化して逆に彼女にも質問をした。
ただ、内心これで彼女が話してくれるとは思ってなかった。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:46:20.41 ID:7//OxQ26.net[41/87]
「実はさ……私、虐待されてるんだ、お父さんに……」
僕の予想とは裏腹に彼女はそう話し始めた。
なんで話してくれたのかはわからなかったが、こんな言い方はいけないのかもしれないけど、僕はそれが嬉しかった。
彼女が僕を頼ってくれたことが嬉しかったんだ。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:03.40 ID:7//OxQ26.net[42/87]
「いつから?」
僕は彼女の話を真剣に聞くように努めた。
「三年くらい前から。お母さんが死んじゃって、会社もクビになって、それから……」
50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/26(土) 20:47:21.82 ID:7//OxQ26.net[43/87]
彼女は虐待のことを全て話してくれた。
それは、とても辛いことだったと思う。
そんなことを話させてしまったんだ、絶対に彼女を助けなきゃいけないって思ったよ。
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