幼い頃に人間関係を学んでこなかった俺に、突然芽生えた恋心。
俺は気持ちを制御する術を全く知らなかった。
1日たてば、好きという気持ちに利息がつく。
日がたてば立つほどに好きになる。
あかねに対する新しい情報は、その内容の如何に関わらず、好きな気持ちの肥やしになった。
重ねて話す。
俺は あかねが好きだった。
なんとしても告白して、受け入れてもらいたかった。
失敗など許されなかったし、考えるだけで死にそうだった。
俺はもっと、もっととスペックを集め始めた。
勉強も部活もより一層磨きをかけたし、当時ブームだったロックバンドを組んで、ライブハウスで演奏するほど短期間で うでをあげ、固定のファンも数人できた。
優等生キャラにちょっと不良のテイストを混ぜた。
女の子に受けそうなものは、ひとつでも多く必要だと考えていた。
自信を少しずつつけた俺は、俺が あかねを好きで付き合いたいと思っていることを親友のKに相談した。
俺があかねの事を好きなことは、Kはとっくに気付いていた。
というより、クラスの誰もが うすうす感づいていた、いわば、公然の秘密であったらしい。
あとは、いつ告白するのか、早く告白しちゃえばいいのにね〜、とそんな感じだったらしい。
Kも、早く告白しちゃえよ、と言ってくれたし、俺も、後は勇気を出して告白するだけだ、それさえすませば あかねと付き合えるんだ、そう信じて疑わなかった。
1はもともと生真面目な性分なのかもね
猪突猛進型というか
>>75
そうだと思います。
そして、告白した。
電話をかけて、好きだったことを告げ、付き合って欲しい願望を伝えた。
あかねは一週間 返事を待って欲しいといった。
結論から言えば振られた。
あらら
俺はひとの気持ちなど何も分かっていなかった。
優しさや思いやり、といった相対化が難しいことよりも、履歴書に書けるような具体的な項目を掻き集めることが自分を良く見せる唯一だと信じていた。
一番良く見せられたものだけが、自由に好きなものを手に入れられるのだと信じていた。
普通に成長していれば おそらくこのような感覚は持ち合わせないだろう。
けれども、俺は人知れず「普通」に追いつかなければならなかった。