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死なせてしまった女に贖罪をさせてくれ
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128 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:50:55.94ID:COd6JsKY.net
「たかお君?久しぶり…。うちの親が、その…迷惑をかけちゃったみたいで…」



129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:51:52.73ID:COd6JsKY.net
俺は告白した時以来の心臓の高鳴りを覚えた。

あかねとの恋は、確かに終わったことだ。

新しい環境、新しい友達、初めての彼女。

他人との距離感とひとの心を相変わらず学問のように学んでは、それなりに順応していた自分は、



130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:52:33.71ID:COd6JsKY.net
けれども、その声を聞いただけで、あっというまに高校時代に引き戻された。



131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:53:10.50ID:COd6JsKY.net
高校のとき、あれ程聴きたいと切望していた声がいま自分の家の受話器から聞こえる。

そして、その声が発する言葉は、自分ひとりに向けられたものである。

その些細な事実が あの頃 どれほど欲しくて欲しくてたまらなかったことだろうか。



132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:53:46.32ID:COd6JsKY.net
暫くの沈黙があった。

俺は頭が混乱していたし、あかねは次の言葉を見つけられないでいた。

「元気?」

やっとのことで捜し出した、俺の精一杯の言葉だった。





133 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:54:58.58ID:COd6JsKY.net
うん…。たかお君は?」

「…。心配…、してたよ」

「ごめんなさい」

あかねの「ごめんなさいは」、正直つらかった。

振られた時と同じ声のトーンだったからだ。



135 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:55:48.92ID:COd6JsKY.net
けれども、あかねは きっとこの数日間、色んな人たちに何度も何度も「ごめんなさい」を言い続けたのだろう。

許される、許されないを別にして、何度も何度も。

客観的に見て、大して謝罪の対象にならないこの俺にまで「ごめんなさい」を言わなければならない。



136 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:57:12.83ID:COd6JsKY.net
切なかった。

力になりたかった。

「なあ、どっかで会わないか?」

自然に言葉が出てきた。



137 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:58:44.44ID:COd6JsKY.net
あかねが高校最後の年、いじめを受けていたのを知りながら、何もしなかった自分を思い出した。

何ができるわけではないのかもしれない。

でも、何かをするべきだったのだ。



139 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:59:44.11ID:COd6JsKY.net
あかねは会うことを承諾し、翌日、地元のファミリーレストランで待ち合わせることにした。



140 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:00:10.91ID:COd6JsKY.net
電話を切ってから、俺は頭がくちゃくちゃになる程、いろいろ考えた。

けれども考えを整理するには情報があまりにも少な過ぎた。

ただひとつの結論は、何があっても あかねの味方でいよう、ということだった。



141 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:00:47.35ID:COd6JsKY.net
数年振りに会ったあかねは、凄く綺麗になっていた。

美人か?と人に問えば 何を当たり前のことを、という答えが返ってくる。

贔屓目無しに、それ程、綺麗になっていた。



142 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:01:16.45ID:COd6JsKY.net
髪型もショートカットで相変わらずなのに、全てが洗練されていた。

メイクはしているよね?という程控えめだが、もともと、色白なので さほどする必要がないのかもしれない。

メガネはコンタクトにしたようだ。



143 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:01:53.40ID:COd6JsKY.net
俺は自分の近況を簡潔に話した。

また、あかねも知っているクラスのほかの奴らの近況を話した。

当たり障りのない話をして あかねの言葉を待った。

Kの話はしなかった。



144 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:02:27.19ID:COd6JsKY.net
あかねは ここ最近、自分の身の上に起こったことを話し始めた。

上司は10歳年上の妻子持ちだった。

会社の飲み会で密かに口説かれた。

会社で、他のひととは区別して、さりげなく優しくされた。

そして、あかねには特別重要だったこと。雰囲気がKに似ていた。



145 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:03:35.92ID:COd6JsKY.net
あかねは悪いと知りつつ不倫にはまっていった。

俺は これからどうする気か尋ねた。

あかねは、今は話せないと言った。

俺に何か出来ることがあったら何でもいいから、教えてくれと頼んだ。



146 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:04:11.44ID:COd6JsKY.net
何もない、ただKには黙っていて欲しいとのことだった。



147 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:04:48.81ID:COd6JsKY.net
俺は もう何も言わなかった。

言うべき事は あったのかもしれない。

ただ、Kの名前が出てきたことが この会合をお開きにさせる為の、あかねの合図のように思えた。



148 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:05:17.16ID:COd6JsKY.net
きっと上司は何を言ったとしても あかねとの事は遊びなのであろう。

あかねにしても上司に対して そこにKを重ねて代用していたにすぎない。

いずれにせよ、俺は このふたりのドラマの脇役ですらなかった。



149 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:05:51.46ID:COd6JsKY.net
俺は それ以上立ち入らなかった。

障りのない話をして、何処かで拾ってきたような凡庸な励ましで お茶を濁して別れを告げた。



150 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:06:31.55ID:COd6JsKY.net
それから数年、あかねとは会う事は無論の事、風のうわささえ耳に入る事はなかった。


数年後、突然、あかねからメールがやって来た。



152 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:07:14.65ID:COd6JsKY.net
「お久しぶりです。あかねです。覚えていますか?」



153 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:07:56.56ID:COd6JsKY.net
当時、俺はフリーターでバンドマンだった。

大学は中退し、新たなバンドを組み、いわゆるインディーズレーベルを立ち上げてバンド活動に忙しかった。



155 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:08:52.63ID:COd6JsKY.net
携帯ツールの劇的な変化、ネット社会の黎明期、高校の時は家の電話にかけて親の存在を気にしながら、喋ったもんだぜ、なんて若いやつらに言えば、昭和ですね、のやりとり。そんな時代だった。



156 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:09:24.03ID:COd6JsKY.net
何故俺の連絡先を知っているか、理由を聞けば、話は簡単だった。

当時、バンドのホームページを開設していて、その、ホームページの中の俺のブログにコメントを残すと俺のメールに送られてくる仕組みだった。



157 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:10:05.58ID:COd6JsKY.net
何故、俺のバンドを知っていたかというのは、検索でなんとなしに、Kの名前を捜してみて、その後、俺の名前を検索してみたらヒットしたというわけだった。



158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:11:05.03ID:COd6JsKY.net
「あたしが幸せだった頃を思い出してね、検索してみたらヒットしてびっくりしたの」

そんな内容のメールだった。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:青春, 修羅場・人間関係,
 


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