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死なせてしまった女に贖罪をさせてくれ
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117 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:43:43.65ID:COd6JsKY.net
Kは知らないといい、たかおではないかということで、俺の連絡先を聞き出し電話をしてきた、というのが顛末だった。



118 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:44:24.06ID:COd6JsKY.net
当時は まだ携帯電話が普及し始めの頃で、持っていない人間の方が多かったと思う。



119 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:45:00.08ID:COd6JsKY.net
俺は久しぶりにKに連絡をとった。

Kの話によると、あかねは就職後、勤め先の上司と不倫していたらしい。

その上司との不倫が奥さんにバレてちょとした修羅場があったそうだ。



120 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:45:52.12ID:COd6JsKY.net
あかねの友達とKの彼女が繋がりがあるらしく、Kの彼女からの情報だ。

上司は会社にもバレて自宅謹慎中。

あかねは、父親にバレてめちゃくちゃに殴られたらしい。

その3日後の家出ということのようだ。



122 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:46:37.74ID:COd6JsKY.net
俺は心配だった。

心配だったし、責任も感じていた。

俺が告白したことで、Kへの恋の道も絶たれ、高校最後の一年を陰湿ないじめで棒にふった。

それを助けてやることもなかった。

その、あかねが大変なことになっている。



123 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:47:37.52ID:COd6JsKY.net
そうはいっても、心配ではあったものの、俺には何をする事も出来なかった。

Kとも相談したがKも同じだった。



124 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:48:38.53ID:COd6JsKY.net
ひとりの大人が行方をくらまそうという意思を持って姿を消せば、それを捜し出す事は容易ではない。

また、捜し出したところで、では、その後の事は?と問われれば、答えも見つからない。



125 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:49:12.64ID:COd6JsKY.net
そもそも、どの立場から どのくらいまで首を突っ込んで良いかも、皆目、見当もつかなかった。



126 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:49:52.75ID:COd6JsKY.net
俺は、高校時代の友人として、心配なので 何か分かったら連絡して欲しいと、親御さんに伝えた。

そして、それぎり、何もできないでいた。

あかねのことは暫く沙汰もない状況が続いた。



127 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:50:20.95ID:COd6JsKY.net
ひと月程たったある日、あかねから電話がかかってきた。



128 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:50:55.94ID:COd6JsKY.net
「たかお君?久しぶり…。うちの親が、その…迷惑をかけちゃったみたいで…」



129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:51:52.73ID:COd6JsKY.net
俺は告白した時以来の心臓の高鳴りを覚えた。

あかねとの恋は、確かに終わったことだ。

新しい環境、新しい友達、初めての彼女。

他人との距離感とひとの心を相変わらず学問のように学んでは、それなりに順応していた自分は、



130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:52:33.71ID:COd6JsKY.net
けれども、その声を聞いただけで、あっというまに高校時代に引き戻された。



131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:53:10.50ID:COd6JsKY.net
高校のとき、あれ程聴きたいと切望していた声がいま自分の家の受話器から聞こえる。

そして、その声が発する言葉は、自分ひとりに向けられたものである。

その些細な事実が あの頃 どれほど欲しくて欲しくてたまらなかったことだろうか。



132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:53:46.32ID:COd6JsKY.net
暫くの沈黙があった。

俺は頭が混乱していたし、あかねは次の言葉を見つけられないでいた。

「元気?」

やっとのことで捜し出した、俺の精一杯の言葉だった。





133 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:54:58.58ID:COd6JsKY.net
うん…。たかお君は?」

「…。心配…、してたよ」

「ごめんなさい」

あかねの「ごめんなさいは」、正直つらかった。

振られた時と同じ声のトーンだったからだ。



135 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:55:48.92ID:COd6JsKY.net
けれども、あかねは きっとこの数日間、色んな人たちに何度も何度も「ごめんなさい」を言い続けたのだろう。

許される、許されないを別にして、何度も何度も。

客観的に見て、大して謝罪の対象にならないこの俺にまで「ごめんなさい」を言わなければならない。



136 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:57:12.83ID:COd6JsKY.net
切なかった。

力になりたかった。

「なあ、どっかで会わないか?」

自然に言葉が出てきた。



137 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:58:44.44ID:COd6JsKY.net
あかねが高校最後の年、いじめを受けていたのを知りながら、何もしなかった自分を思い出した。

何ができるわけではないのかもしれない。

でも、何かをするべきだったのだ。



139 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 03:59:44.11ID:COd6JsKY.net
あかねは会うことを承諾し、翌日、地元のファミリーレストランで待ち合わせることにした。



140 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:00:10.91ID:COd6JsKY.net
電話を切ってから、俺は頭がくちゃくちゃになる程、いろいろ考えた。

けれども考えを整理するには情報があまりにも少な過ぎた。

ただひとつの結論は、何があっても あかねの味方でいよう、ということだった。



141 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:00:47.35ID:COd6JsKY.net
数年振りに会ったあかねは、凄く綺麗になっていた。

美人か?と人に問えば 何を当たり前のことを、という答えが返ってくる。

贔屓目無しに、それ程、綺麗になっていた。



142 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:01:16.45ID:COd6JsKY.net
髪型もショートカットで相変わらずなのに、全てが洗練されていた。

メイクはしているよね?という程控えめだが、もともと、色白なので さほどする必要がないのかもしれない。

メガネはコンタクトにしたようだ。



143 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:01:53.40ID:COd6JsKY.net
俺は自分の近況を簡潔に話した。

また、あかねも知っているクラスのほかの奴らの近況を話した。

当たり障りのない話をして あかねの言葉を待った。

Kの話はしなかった。



144 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:02:27.19ID:COd6JsKY.net
あかねは ここ最近、自分の身の上に起こったことを話し始めた。

上司は10歳年上の妻子持ちだった。

会社の飲み会で密かに口説かれた。

会社で、他のひととは区別して、さりげなく優しくされた。

そして、あかねには特別重要だったこと。雰囲気がKに似ていた。



145 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/10(水) 04:03:35.92ID:COd6JsKY.net
あかねは悪いと知りつつ不倫にはまっていった。

俺は これからどうする気か尋ねた。

あかねは、今は話せないと言った。

俺に何か出来ることがあったら何でもいいから、教えてくれと頼んだ。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:青春, 修羅場・人間関係,
 


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