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俺を拾った女の話を書く
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98 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:46:44.40 ID:AvmYbN9t.net
一度目、二度目に共通して彼女に頼まれたこと、それは、彼女が好きだった俺の親友にだけは、話が漏れないようにしてくれ、ということだった。
彼女にとって親友は いつまでも特別な存在である事に、俺は人知れず傷ついていた。
99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:48:25.86 ID:AvmYbN9t.net
俺は彼女の頼みを一度目は守った。
けれども、二度目は裏切った。
拭いきれない親友への劣等感と嫉妬を事あるごとに思い出させる彼女の願いに、俺は冷静な判断を失っていた。
そして、彼女を傷つける目的で彼女との約束を破った。
やがて その目的は、彼女の自殺という形で果たされる。
無論それは俺が望んだ形からは かけ離れていた。
100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:49:10.29 ID:AvmYbN9t.net
みどりは押し黙ったまま真剣な表情で話を聞いていた。
101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:50:11.24 ID:AvmYbN9t.net
「その娘との最期のやりとりが少し形を変えて、今も時々夢に出てくるんだ。
彼女は電話をかけてきて俺を罵倒する。
弁解をしようとするが、俺の思いは声にならない。
声を出せないうちに呼吸も出来なくなっていく。
このままでは不味いという焦りから、ひたすらに声を出そう、声を出そうと繰り返す。
それでも やはり声は出ない。
そうしているうちに やっと目が覚めるんだ。」
102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:51:14.96 ID:AvmYbN9t.net
「あの、アーーッ!ってやつだよね」
そう、と俺は答えた。
「でも、その娘は本当に自殺だったの?死因は分からないって言ってたよね?」
一度目、二度目に共通して彼女に頼まれたこと、それは、彼女が好きだった俺の親友にだけは、話が漏れないようにしてくれ、ということだった。
彼女にとって親友は いつまでも特別な存在である事に、俺は人知れず傷ついていた。
99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:48:25.86 ID:AvmYbN9t.net
俺は彼女の頼みを一度目は守った。
けれども、二度目は裏切った。
拭いきれない親友への劣等感と嫉妬を事あるごとに思い出させる彼女の願いに、俺は冷静な判断を失っていた。
そして、彼女を傷つける目的で彼女との約束を破った。
やがて その目的は、彼女の自殺という形で果たされる。
無論それは俺が望んだ形からは かけ離れていた。
100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:49:10.29 ID:AvmYbN9t.net
みどりは押し黙ったまま真剣な表情で話を聞いていた。
101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:50:11.24 ID:AvmYbN9t.net
「その娘との最期のやりとりが少し形を変えて、今も時々夢に出てくるんだ。
彼女は電話をかけてきて俺を罵倒する。
弁解をしようとするが、俺の思いは声にならない。
声を出せないうちに呼吸も出来なくなっていく。
このままでは不味いという焦りから、ひたすらに声を出そう、声を出そうと繰り返す。
それでも やはり声は出ない。
そうしているうちに やっと目が覚めるんだ。」
102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:51:14.96 ID:AvmYbN9t.net
「あの、アーーッ!ってやつだよね」
そう、と俺は答えた。
「でも、その娘は本当に自殺だったの?死因は分からないって言ってたよね?」
104 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:52:13.31 ID:AvmYbN9t.net
死因は分からない、と俺は答えた。
ただ彼女の死が、彼女との最後のやりとりから一週間後であることは偶然とは思えなかった。
仮に彼女の死が自殺でなかったとしても、変わらない事実がひとつだけある。
それは、俺の悪意が彼女の人生の最期の出来事になってしまった、ということだった。
その負い目を俺は未だに拭いきれないでいる。
105 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:53:48.12 ID:AvmYbN9t.net
「嫉妬や劣等感に心が蝕まれたとき、その隙をついて悪意が生まれる事がある。
そのほんの少しの悪意が思いもしない結果をもたらすこともある。
その教訓だけは彼女との記憶の形見として持ち続けなければならない。
今はそんな風に考えているんだ。」
106 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:54:27.43 ID:AvmYbN9t.net
そう話すと、みどりの顔は暗く沈んでいった。目には涙が滲んでいた。
しばらく沈黙が続いた。
107 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:55:16.83 ID:AvmYbN9t.net
「正直、たかお君は悪くないとは思うけど、ごめん、今日は一緒に居られない。
うまく言えないけど・・・ごめんね」
109 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:55:47.05 ID:AvmYbN9t.net
突然、彼女は席を立って帰ってしまった。
110 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:56:32.81 ID:AvmYbN9t.net
俺は あまりに突然の出来事に動揺した。
動揺のあまり みどりを追うこともできなかった。
確かに気持ちの良い話ではない。人殺し、と思ったのだろうか。
あるいは昔のことを いつまでも女々しい奴、と呆れたのだろうか。
仕事で疲れて帰ってきたら こんな重たい話を、と腹を立てたのだろうか。
けれどもみどりは、俺は悪くないと言ってくれた。
何故 彼女は帰ってしまったのだろう。
111 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:57:18.26 ID:AvmYbN9t.net
そっとしておいた方がいいのかもしれない、そう考えたとき、みどりからのメールが来た。
112 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:58:07.84 ID:AvmYbN9t.net
「私たち、しばらく会わない方がいいかも。ごめんなさい。気持ちの整理ができたら きちんと話します。それまで待って下さい。」
頭が真っ白になった。
113 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:58:54.60 ID:AvmYbN9t.net
久しぶりに自宅に戻ってみると、部屋は まるで他人の様に俺を迎えいれた。
こんな部屋だったであろうか、微かな未視感を覚える。
部屋には必要なものが必要な分だけ置いてあった。
この曲のこのフレーズを聞いておけ、とDから渡された十数枚のCD。ドラムスティックと練習用パット。酒が数本。
あとは、冷蔵庫、ベッドなどの生活用家具。
飾りなど一切ない。事務所よりも無機質な空間はまるで自分自身を投影しているかの様だった。
114 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 01:59:40.91 ID:AvmYbN9t.net
それから一週間がたっても、みどりからの連絡は無かった。
彼女が待って欲しいと言った以上、待つしか方法が無かった。
途中に何度も挫けそうになった。携帯を開いては、電話番号を押し、最後の一押しで思い留まった。
他の人から電話に何度も落胆し、メールの送信ボタンを何度も見送った。
115 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:00:14.67 ID:AvmYbN9t.net
起きている時は みどりのことを考え、考え疲れると何も考えないでいた。
その繰り返しのあと、ようやく訪れた眠りには あの時の夢が いつも付いて回った。
頭がおかしくなりそうだった。
もう、嫌われても何でもいい、とにかく話がしたかった。
116 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:01:20.65 ID:AvmYbN9t.net
みどりと離れてから10日後、とうとう我慢できずに電話をかけてしまった。
117 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:01:58.82 ID:AvmYbN9t.net
繋がらなかった。送ったメールは未配信だった。
前にもこんな経験をした事がある。嫌な予感がした。
俺はみどりの部屋に向かった。
118 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:02:44.51 ID:AvmYbN9t.net
みどりの部屋についてインターホンを押す。
反応は無かった。反応がないというより、インターホンそのものが鳴らなかった。
電気が止まっているのだ。
ガスのメーターも閉栓中の札がかかっていた。
みどりは部屋を引き払っていた。
119 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:03:42.33 ID:AvmYbN9t.net
一体どういう事だ。
みどりに何があったんだ。
何がどうなってるんだ。
混乱の中、立ちすくんでいるとドアの新聞受けに封筒が挟んであるのに気付いた。
宛名は俺の名前になっていた。
封筒を開けると みどりから俺宛の手紙が入っていた。
俺は慌てて貪る様に手紙を読んだ。
120 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:04:26.30 ID:AvmYbN9t.net
突然いなくなって、ごめんなさい。メールでも電話でもなく、こんな形で話を伝える事を申し訳なく思います。本当にごめんなさい。
あなたが私の部屋に来るかどうかは、分かりませんが、それなのに この様な形を取ってしまったのは、私の中で あなたに本当のことを伝えるべきかどうか迷いがあったからです。
最後まで自分勝手ですね。
伝わらない方がいい、という自分と伝えるべきだという自分が戦ってます。だから、手紙をこんなところに置いていきました。
122 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:05:43.20 ID:AvmYbN9t.net
あなたと居酒屋で別れたあと、部屋に戻った私はすぐにCDの位置がずれている事に気づきました。
あなたが突然あんな話をするなんて、何かあったんだろうなと思って確認したからです。あなたは気づいてしまったんですね。
だから、あなたの後悔を話してくれた。
私も話さなくてはなりません。
全て正直に話します。
いままで嘘をついててごめんなさい。
123 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2017/05/21(日) 02:06:36.65 ID:AvmYbN9t.net
私は あなたのことを知っていました。
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