復讐に最高の一発を見舞った話
ちょっと暴力と汚い話含む。
俺は中学生の頃太ってて、定番の軽い虐めみたいなのにあってた。
学校帰りに後ろをついてきて 遠くからデブだの豚だのと叫んでくるのがメインな虐め。
本命のいじめられっ子が別に居て 俺はサブで虐められてるって感じで、まあ自殺とか考えるほどじゃなかった。
ただ腹は立つし 当然辛い。
他のクラスに友達は居たから何とか学校には通って
たが、やっぱ登下校は最悪の時間だった。
そんな時、若干中二病的なのが入ってた当時の俺は『いつかあいつらをボコってやる』という願望、ないし妄想をはじめて 布団を縛った簡易サンドバックをカーテンから吊して人を殴る練習をするという行動にハマってしまった。
それもジャブを沢山撃つと疲れるというデブ思考で、やってたのは構えて思いっきりボコっと殴って戻るというループ。
最初は指と手首が痛くなったりもしたんだが慣れて来る内にそれもなくなり、ボクシング漫画を参考にひたすら布団を殴ってた。
しかし そんな練習をしたところで実際いじめてくる奴を殴りに行く勇気はない。
目の前で やられるならともかく遠くから悪口を叫ばれてるだけだからイライラだけが募って それの発散で更に布団を殴る。
まあそんな毎日だった。
それが ある日の下校途中、いつも通りに後ろから悪口を叫ばれたんだが、なんかちょっと違う。
いつもデブだの豚だの叫んでる奴をAとしておくが、Aが普段より大勢のグループと一緒に歩いてたんだ。
他のクラスの友人の前で『虐めやってる俺ら格好良い』アピールでもしてたんだと思う。
その日の俺は たまたま凄く眠くて、その上 他の奴らも笑ってるもんだから滅茶苦茶イライラしてた。
そんな状況でだ。周りに受けたのに気をよくしたんだろうか、Aが俺の方に走ってきて わざわざ前に立って俺の進路を遮って「デーーブwwww」って叫んだんだ。
もの凄く腹の立つ顔をしてたことをよーく覚えてる。
その瞬間、俺の体は見事に動いてくれた。
素人そのまんまの構えをすっと取り、漫画で得た知識から腹と腰にしっかりと力をこめて
左手を引く反動で肩をぐるりと回転させながら捻りを入れて右手を突き出し
軽く開いた足の間で体重を滑らせ、デブだブタだと言われる重みの全てをこめて
Aの腹に練習通りの全力右ストレートを叩き込んだ。
普通なら怯えて上手くやれなかったと思うんだが、イライラしてた上に滅茶苦茶眠かったせいで 体に染みついた動きが そのまま出たんだと思う。
いつもは毛布を殴ったボフって音がして軽く受け止められる所、
鈍い音と ぐにょっと柔らかい感触がリアルに右手に伝わって
鬱陶しいドヤ顔してたAの顔が ぐしゃっと歪んで体がくの字に折れ曲がって、
そこでようやく やべっ やっちまった って気がついたぐらい素の行動。
慌てて「あ、ごめん……」って言いかけた直後、Aが凄い勢いで口から給食を吐いた。
俺は やべえやべえって焦ると同時に、ざまあ見ろカスが、雑魚じゃねえか、みたいな気持ちも凄くあって、苦しむAを見てニヤついてたと思う。
すぐに他の奴らが駆け寄ってきたんだが 咳き込みながら吐くAとワンパンでKOしてニヤつく俺に近寄れず微妙な距離で見てるだけだった。
んで 結局怖くなって逃げたんだけど、当然すぐに親同伴で学校に呼び出された。
俺が虐められてることを知ってて何もしなかったクソ女担任がどうして殴ったんだと色々言ってきたが 両親に虐めのことは何も打ち明けてなかったのに、
親父が
「息子が虐めにあってることは わかってたくせに殴った理由を聞くなんてお前は正気か」
って担任を怒鳴りつけた。
虐めを知られてたことに びっくりして、でも何か凄く安心して、虐めが始まってから初めて泣いた。
俺が虐められてることも手製サンドバックを毎日殴ってたことも両親にはバレバレだったらしい。
思い出せば なんか気遣われてたし色々言われてたと思う。
布団殴るのに夢中で気付いてなかったけどw
親父は「いい音がするようになってきたから そろそろだと思ってた」って笑ってた。
最終的には大人数が一緒にいたのが幸いして Aがくだらない虐めを日常的にやってたのが確認されて 事情を聞いたAの親に逆に謝られて(暴力は云々みたいなのは当然あったが)その件は それで落ち着いた。
その後Aが俺に悪口を言ってくることはなかったが、俺は子供からみたら『こいつヤベエ』って思うぐらいには堂に入った一発を放っていたらしく
クラス内で友達は出来ず、腫れ物みたいに扱われる微妙な中学生活だった。ただのデブなのに。
最近ワンパンマンって漫画を教えられて ふっと思い出しただけなんだが、今思い出しても あの時の歪んでいくAの顔は痛快だったよ。
今こんなことやったら絶対注意レベルじゃ済まないんだろうけどなぁ。