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鬼畜
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「さすが30歳を過ぎて大学に合格した秀才。言い分けまで考えて有ったのか?それなら先週の旅行は、誰と行ったのか言ってみろ。全て聞いたぞ」

「それは・・・・・・・」

「2人だけで旅行に行って、身体の関係はないなんて、よく言えるものだ。それを俺に信じろと言うのか?30歳を過ぎた女と、20歳を過ぎた男が一夜を共にして、何も無かったと言うのか?」

「でも本当に身体の関係は無いの。それだけは信じて。お願い、信じて」

「俺が若い女と旅行に行ったら、裕子は信じられるか?」

「信じられないかも知れない。でも本当に何も無かったの。お願い、信じて」

「それなら、どうして旅行など行った?」

「別れる為に・・・・・・」

「別れる為に旅行に行った?意味が分からん。奴との事を、最初から詳しく話してみろ」

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入学して1ヶ月もすると皆それぞれ友人が出来て、何人かで連れ立って昼食をとる様になりました。

しかし、妻は それを羨ましく思っても、歳が違う事もあって、すぐには皆に溶け込めずに、いつもベンチで一人パンを齧っていたそうです。

彼もまた大人しい性格で友達が出来ずに、妻同様一人でポツンと昼食をとっていましたが、友達がいない同士、いつしか一緒に学食や近くファーストフードで食事するように成りました。

その後、徐々に2人は皆に溶け込んで お互いに友達も出来たのですが、仲間と食事に行ったりする時は、自然と隣の席に座り、講義の空いた時間や学校が終ってから、2人で喫茶店に行ったりする仲になっていきます。

服装や化粧が派手に成っていったのは この頃からで、おそらく妻は彼に気に入られようと必死だったのでしょう。

大学では、次第に恋人同士になる者も少なくなく、妻は、その様なカップルを見ていると正に青春だと思えて羨ましく、彼を好きとか嫌いとかではなくて、一緒にいると自分にも青春が戻って来た様に感じたと言います。


彼との仲がより親密に成ったのは、彼の車から妻が降りてくるのを、私が目撃した日からでした。

その時、彼は急に車を止め、妻に好きだと告白したのです。

若い男から好きだと言われて妻も悪い気がするはずも無く、その後はお互いを名前で呼び合い、学校以外では腕を組んで歩いたりもしました。


「ごめんなさい。若い子に好きだと言われて、有頂天になっていました。あなたの事も考えずに、恋愛ゴッコを続けてしまいました」

「恋愛ゴッコで、旅行まで行くのか?」

最初、何も考えずに その様な仲を楽しんでいた妻も、次第に罪悪感が大きくなって、この様な関係はやめようと言ったそうです。

「私には夫や子供がいるのを知っているので、彼も当然遊びだろうと思っていたら、

今まで女の人と付き合った事の無い彼は、私の事を真剣に想っていて、隠しているのが辛くて別れると言うなら、あなたに私と別れてくれと頼みに行くと言いました。

あなたから私を奪いたいと言いました。

この様な事をしていたと、あなたに知られたくなかった私は、どうにか説得したのですが、その条件が、最後の思い出作りに旅行に行く事でした」


「ほーう。でも奴らの話だと、その後も別れた様子は無かったよな?」


「彼はそれでも諦めてくれなかったので・・・・・・・・・」



妻は手を繋いだ事は有っても、身体の関係どころかキスもしていないと言い張り、私も喫茶店での彼の言葉を思い出すと、小さい声ながら、確かに友達の言っている事を否定していました。

「哲也さん。もう一度裕子にチャンスをあげて。もし裕子の言っている事が嘘だと分かった時は、哲也さんが出て行かなくても親子の縁を切って、裕子に出て行ってもらいます」

「お母さん。仮に身体の関係が無いとしても、俺を裏切った事に変わりは無いのです」

そう言いながらも母の言葉で少し冷静になると、もう一度妻を信じたい私がいます。

「分かっています。それは これから一生掛かっても償わせます。だからお願い。子供達の為にも、もう一度だけ」

母の言う通り 子供達の事を考えれば、勢いだけで軽率な行動も取れません。

「裕子、嘘は無いな?今の話に少しでも嘘が有れば、俺達は本当に終わりだぞ」

「ありがとう。一生掛かっても償わせて下さい。ありがとう。ありがとう」

私は暫らく様子を見ようと思いましたが、全て信じて許した訳では有りません。

妻に限って、そこまではやっていないと信じたいのですが、例え身体の関係が無かったとしても 妻の言った『彰君が好き』と言う言葉が、頭の中から消えないのです。

身体でも、妻の愛を確かめたいのですが、完全に信用する事など出来ない私は、2人が裸で絡み合っている姿ばかりが浮かび、とても抱く気には成れません。

「今日は学校に行かないのか?」

「行ってもいいのですか?」

当然、大学は辞めさせる気でいたのですが、このまま彼との接点が無くなっては、一生、妻の真意が闇の中に葬り去られる気がして、妻の本当の気持ちを探りたくて続けさせる事にしました。

(安定した家庭や子供達を捨てる事が出来ないだけで、本当は彼を愛してしまったと確認出来れば、俺は満足なのだろうか?)

妻と彼が顔を合わす事は最も嫌なはずなのに、私は壊れ始めていたのでしょう。

「奴とは一切言葉を交わすな。メールも駄目だ」

「・・・・・はい」

仕事中も、2人がラブホで抱き合っている姿が浮かび、早く帰って妻に今日1日の事を聞きたくて仕方が有りません。

「一言も言葉は交わしていないだろうな?携帯を見せてみろ」

携帯には、妖しい物は有りません。妖しい物が無いと言うよりは全て削除されていて、彼とのメールは何も残っていないのです。

「奴との今までのやり取りは、その都度消していたのか。この調子だと、今日のも消したかも知れないな」

「ごめんなさい。今日メールは来ませんでした。勿論私からもしていませんし、話もしていません」

「でも、奴の電話番号とメールアドレスは消せないようだな」

「それはゼミの連絡用に・・・・。彼だけで無く、ゼミの仲間は全て入っています」

そのことが面白くない私は、そのまま妻の携帯から彼に電話を掻けました。

「裕子か?旦那とはどうなった?」

「裕子?何を言っている!今からすぐに来い。慰謝料の話をしたい」

「あなたやめて!もう彼には関係ない。私が悪いの。私が償って行きます」

妻の彼を庇う態度で、更に私は壊れて行きます。

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彼がやって来たのは、それから2時間も経ってからで、しかも父親と母親が一緒です。

「おうおう。やる事は一人前なのに、責任を問われれば、パパとママが一緒か」

「責任はとります。裕子と一緒になって、2人で償って行きます」

その言葉で私が立ち上がろうとすると、その前に中学の教頭をしているという父親が、平手で頬を叩きました。

「まだそんな事を言っているのか!その話は出て来る前に終っただろ!」

「彰ちゃんに これ以上付き纏わないで。あなたの様な、夫も子供もいながら何人と浮気しているか分からないような女で、彰ちゃんの経歴に傷を付けられたくないの。あなたの様な女に引っ掛かった彰ちゃんが可哀想だわ」

小学校の教師をしているという母親は泣きながら、その後も妻に罵声を浴びせ続けました。

「馬鹿息子を庇う、親馬鹿の話は もう済んだか?慰謝料として500万。不服なら裁判をする。話は以上だ」

「何を馬鹿な事を。息子は何も悪い事をしていないのに、何が慰謝料だ」

「2人は旅行に行った事は認めている。あんた達は、本当に何も無かったと信じているのか?」

「あなた、私達は本当に・・・・・・」

「喧しい。そんな事は裁判長が判断してくれる」

「お前達夫婦は美人局だな」

「そう思うなら、告訴してみろ。本当は慰謝料なんかどうでもいい。ただお前の馬鹿息子が、人妻にこう言う事をしたと公にしたいだけだ。

美人局でも脅迫でも何でもいいから訴えろ。警察沙汰になって事が大きくなれば、逆に俺は嬉しい」

「あなた。彰ちゃんの将来には代えられないわ。手切れ金を払いましょう」

「そうだな。悪い事はして無いから慰謝料ではなくて、手切れ金として明日30万持って来る。これで文句は無いな」

「それで、もう彰ちゃんに関わらないで」

「言っただろ?俺は金が目的では無いと」

「欲の深い奴だ。20万上乗せして50万くれてやる。これ以上の脅しには乗らない。

だいたい夫婦が上手く行っていれば、こんな事には成らなかった。これは旦那にも責任は有るのだぞ。旦那がしっかりしていないから、女房が男に走ろうとする」

「俺が何をした。俺は被害者だ。お前達の馬鹿息子に家庭を壊された被害者だ」

大事な一人息子を散々馬鹿息子と言われて気に触ったのか、父親の顔が見る見る真っ赤に成って行きます。

「何が被害者だ。被害者は息子だ。何も知らない初心な息子を誘惑して、おまけに夫婦の揉め事に巻き込み、本当にいい迷惑だ。話は終った。もう帰る」

一方的にそう言い残すと、息子を引っ張るように連れ帰りました。

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彼等が帰った後も私の怒りは収まらず、何も言わずにただ泣いていただけの妻に当たってしまいます。

「どうして俺が、美人局呼ばわりをされなければ成らない。お前が浮気したのは俺のせいか? 俺が何かしたから奴と旅行に行ったのか?」

「ごめんなさい。私が悪いの。ごめんなさい」



妻を責め続けていて1時間ほど経った時、妻の携帯が鳴ったので私が見ると、清水君と表示が出ています。

「おい、携帯に出ろ」

恐る恐る妻は出ると、すぐに私に携帯を渡しました。

「彼が、あなたに、代わって欲しいと・・・・」

「僕と裕子は愛し合っています。償いはして行きますから、2人の愛を邪魔しないで下さい。おねがいですから裕子と別れて、自由にしてあげてください」

「正気か?だいたい、本当に償いをする気が有るなら、今すぐ死んで詫びろ」

「裕子。奴は裕子と愛し合っているから、別れてやってくれと言ってきたぞ」

「嘘です。私が愛しているのは、あなただけです。彼が一方的に、そう思い込んでいるだけです。電話を切って。お願いですから、電話を切って」

妻は携帯を取り戻そうと、必死の形相で私に掴み掛かってきます。何か話されては、不味い事が有るのだと思った私は、妻を片手で突き飛ばしました。

「おい、聞いたか?裕子はお前など好きでは無いと言っているぞ」

「そんな筈は無い。僕達は約束したんだ」

「約束?」

「これは絶対に誰にも言わないと約束していたけれど・・・・・・・。

これを知られたら僕とは終ってしまうと言われたけれど・・・・・・・。

僕達は1ヶ月以上前から身体でも愛を確かめ合っていた。

旅行で泊まったホテルでも、朝まで何度も確かめ合った。

その時、僕の腕の中で裕子は言ってくれたんだ。

いつか旦那と別れて、僕と一緒に成ってくれると言ってくれたんだ。

だから僕を愛していないなんて嘘だ」


私はあまりの事に持っていた携帯を床に落してしまい、携帯を拾おうとした妻の頬を張り倒しました。


「奴が全て話した。

1ヶ月以上前から身体の関係が有ったのだな。

旅行では朝までしていたそうだな。

その時、将来奴と結婚する約束までしたそうじゃないか。嘘ばかり吐きやがって。

上手に騙せたと、腹の中で俺を笑っていたのだな」


頬を押えて座り込んでいた妻を心配して、駆け寄っていた母は大きな声を出して泣き出しました。

「裕子、そうなの?私も騙していたの?裕子、裕子ー」


「ごめんなさい。ごめんなさい。

知られれば、あなたを完全に失うと思った。

知られてあなたに離婚されると思うと怖かった。

私はあなたを愛しています。私はあなたと別れたくない。

彼に言った事は嘘です。そうでも言わなければ、終って貰えなかった。ごめんなさい。ごめんなさい」


おそらくセックスをしている最中に、彼に迫られたのでしょう。


『終って貰えなかった』と言う言葉から、朝まで何度も繰り返された激しいセックスを想像してしまい、更に怒りが増していきます。

「裕子が言う通り、俺達はもう終った。裕子が子供達の顔を見られるのも、今日が最後だ」

「いや、いやー」

私が寝室に入って1時間もすると泣き声は聞こえなくなり、妻の軽自動車のエンジン音がしました。

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「お母さん、裕子は?」

「約束通り、この家を出て行ってもらいました。ただ・・・・・・・・完全には見捨てられなくて、取り合えず妹の家に行かせました。ごめんなさい」

親子なら当然の事でしょう。私に約束をしたと言っても、娘は可愛く心配なのです。

私は聞いてあった彼の自宅に電話をすると、出たのは あの母親でした。

「馬鹿息子から電話が有って、身体の関係を認めたよ。妻は家から放り出した。1つの家庭を壊した責任は重いぞ。必ず馬鹿息子の人生を潰してやる」

「彰ちゃんを、どうしようと言うの?警察に脅迫で届けるわよ」

「どうとでもしろ。俺はもう人生を捨てた。これからは、あの馬鹿息子に復讐する為だけに生きる」


翌日は、土曜日なのを忘れていたほど、精神的にまいっていました。

「休ませて貰おうと思って会社に電話したのですが、誰も出ませんでした。今日は土曜日だったのですね」

「哲也さんをこんなにも苦しめて、本当にごめんなさい。

その上、言い辛いのですが、子供達を連れて今日1日、裕子の所に行かせて下さい。

子供達も何か感付いていて、朝から凄く寂しがるのです。必ず子供達は連れて戻ってきますから」


「旦那は半年間、海外に単身赴任でしたよね?お母さんさえ良ければ泊めて貰って、裕子の真意を聞いてきて下さい。俺も一人で考えてみたいから」

母には上手い事を言いましたが、私は復讐の方法を考えたかったのです。私の復讐の相手は妻と彼と、私を罵った彼の両親です。

しかし、いくら考えても壊れてしまった私には、全員殺してしまう事しか思い浮かびません。

それを思い止まらせていてくれているのは、子供達の存在だけです。

一人でいると、どうしても妻と彼の痴態を想像してしまい、身のやり場が有りません。

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カテゴリー:復讐・倍返し  |  タグ:浮気・不倫, これはひどい,
 

 
 
 
 

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