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突然の海外赴任
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「それは何だ?」
数ヶ月前から、妻の様子がおかしいと気付いたそうです。
それは、私がいつ戻ってきてもおかしくない時期になり、妻がまた迷い出したのだと思い、もう昔の妻では無いと分からせる為に、銀行に来る時以外はあの様な格好を強要したのです。
もう私の妻では無く、稲垣のものだと分からせる為に、脅したり宥めたりしながら説得して、あの様な格好をさせたそうです。
稲垣の話を聞いていて、妻の陰毛があの様な形に剃られていたのも、同じ理由だと思い、
「あそこの毛を剃ったのも同じ理由か?」
「はい。最初は化粧や髪型、髪の色も変えさせ、あの様な格好をさせるだけで効果が有ると思っていましたが、それらはどれも、ご主人が帰って来る前に直そうと思えば、直せる物ばかりだと気付きました。
髪も切って染め直せば良いし、化粧はすぐにでも直せます。服や下着も捨てれば良い。それで不安になって。」
「智子は素直に剃らせたのか?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「言わなくても、後で智子に聞けば分かる事だ。
今おまえから聞くのと、後で智子から聞くのでは、俺の怒りも違う。
話せない事は話さなくてもいい。おまえが決めろ。」
「最初は ホテルで身動き出来ないように縛り、嫌がる智子さんを無視して・・・・・・・・・・すみませんでした。」
『最初は』と言う事は1度だけで無く、何度かその様な行為をされたという事です。
その時の妻の姿を想像すると不憫だと思いましたが、私を裏切っていた事とは別問題で、妻を許す事など到底出来ません。
セックスの本当の良さを覚えてしまっていた、妻の身体では仕方の無い事かも知れませんが、積極的に快感を得ようとしている姿を想像すると、妻が本当に騙されていたとしても、許す気になどなれません。
気持ちと身体は違うと思いたいのですが、妻が上になり下になり、ある時は、後ろからも突かれ、自らも腰を使っている姿を想像するだけで、許す気にはなれません。
「あの様な格好をさせて、この事が発覚しても良いと思っていたのか?現にお袋が妻の異変に気付いた。
それに、毛を剃ってしまっては私が帰って来たらばれる恐れが有っただろ?」
「最初の頃は知られる事が1番怖かったです。いいえ、ずっと怖かった。
でも、それ以上に智子さんが離れて行く事の方が怖く、その時はその時で どうにかなると思いました。」
あの計算高い稲垣が、妻が離れて行くかも知れないと思った時、感情だけで動きました。
この事からも、やはり今は奥さんの手前言っているだけで、本当は妻の事を今でも愛していて、まだ諦めてはいないのでは無いかと疑ってしまいます。
今はじっと台風が通り過ぎるのを待っているだけで、まだ諦め切れていないのでは無いかと疑ってしまいます。
そう思うと、益々妻とは離婚出来ません。
妻があの様な状態になったのは、長年信じていた稲垣に裏切られていたと、知った事からだと想像はつきますが、
この男なら、私達を欺いて少しでも穏便に済ます事が出切る様に嘘をついたとでも言い、また妻に取り入る事は容易い事でしょう。
妻に対する未練や情も有るのですが それ以上に、誰に何と言われようとも、妻と この男が自由になり、幸せになる事だけは我慢出来ないのです。
稲垣は勿論ですが、もしも別れる様な事になれば、妻にも幸せにはなって欲しくないのです。一生後悔して、苦しんで欲しいのです。私は、そんな、くだらない男なのです。
妻があの様な状態になって寝ている事自体、妻の身勝手な甘えだと思えてきて 起こしに行ったのですが、妻はベッドに寝て壁を見たまま、私を目で追う事もしません。
「おまえも座敷に来い。おまえからも聞きたい事は山ほど有る。」
--------------------
やはり妻は、私の存在など気付いていないような様子で、一人言の様に呟きました。
「彼も同じだった。父や義兄と同じだった。」
そう言うとまた目を閉じて眠ってしまい、このままでは妻が壊れてしまうと感じたのですが、私にはどうする事も出来ません。
稲垣夫婦が帰り、私も少し眠っておこうと横になったのですが、色々な思いが交錯して、眠る事が出来ずに朝を迎えてしまいました。
この様な人生の一大事にも関わらず、いつまでも会社を休む訳にもいかないと、仕事の事が気になりだし、結局 母に妻の事を頼んで出社しました。
この様な私を自分でも情け無く思いますが、後の生活の事まで考えてしまうのです。
妻や娘と離れる様な事にでもなれば働く意欲など無くなり、仕事など辞めてしまうかも知れないのに、会社に行ってしまったのです。
しかし、この様な状態では、まともな仕事など出切るはずも有りません。
何度か仕事を抜け出して、母に電話をして妻の様子を聞いたのですが、妻の状態は 変わる事は有りませんでした。
私を気に掛けてくれている上司が昼休みに、「どうした?家庭で何か有ったのか?」ずばり言い当てられた私は、この上司だけには話しておこうと。
「はい。帰国してから妻と少し・・・・・・・・・。」
それだけで上司は悟ったかのように。
「そうか。俺も昔単身赴任をしていた時に、女房と色々有った。
今回の事は あんな遠くに赴任させた俺にも責任が有る。
君がいないのは仕事上痛いが、決着が付くまで休暇を取れ。」
「しかし・・・・・・。」
「男にとって仕事は大事だが、家庭有っての仕事だ。後は俺が上手くやっておく。」
私は上司に感謝し、言葉に甘えて急いで家に帰りました。
--------------------
家に帰ると そのまま寝室に行き、妻に何度も呼びかけたのですが、一瞬目を開くだけでまたすぐに瞼を閉じてしまいます。
「私が話し掛けても、ずっとこんな状態だよ。トイレに行く時でも、まるで夢遊病者の様だし。一度医者に診てもらったほうが、良いのではないのかい?」
「あの様な格好をさせて、この事が発覚しても良いと思っていたのか?現にお袋が妻の異変に気付いた。
それに、毛を剃ってしまっては私が帰って来たらばれる恐れが有っただろ?」
「最初の頃は知られる事が1番怖かったです。いいえ、ずっと怖かった。
でも、それ以上に智子さんが離れて行く事の方が怖く、その時はその時で どうにかなると思いました。」
あの計算高い稲垣が、妻が離れて行くかも知れないと思った時、感情だけで動きました。
この事からも、やはり今は奥さんの手前言っているだけで、本当は妻の事を今でも愛していて、まだ諦めてはいないのでは無いかと疑ってしまいます。
今はじっと台風が通り過ぎるのを待っているだけで、まだ諦め切れていないのでは無いかと疑ってしまいます。
そう思うと、益々妻とは離婚出来ません。
妻があの様な状態になったのは、長年信じていた稲垣に裏切られていたと、知った事からだと想像はつきますが、
この男なら、私達を欺いて少しでも穏便に済ます事が出切る様に嘘をついたとでも言い、また妻に取り入る事は容易い事でしょう。
妻に対する未練や情も有るのですが それ以上に、誰に何と言われようとも、妻と この男が自由になり、幸せになる事だけは我慢出来ないのです。
稲垣は勿論ですが、もしも別れる様な事になれば、妻にも幸せにはなって欲しくないのです。一生後悔して、苦しんで欲しいのです。私は、そんな、くだらない男なのです。
妻があの様な状態になって寝ている事自体、妻の身勝手な甘えだと思えてきて 起こしに行ったのですが、妻はベッドに寝て壁を見たまま、私を目で追う事もしません。
「おまえも座敷に来い。おまえからも聞きたい事は山ほど有る。」
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やはり妻は、私の存在など気付いていないような様子で、一人言の様に呟きました。
「彼も同じだった。父や義兄と同じだった。」
そう言うとまた目を閉じて眠ってしまい、このままでは妻が壊れてしまうと感じたのですが、私にはどうする事も出来ません。
稲垣夫婦が帰り、私も少し眠っておこうと横になったのですが、色々な思いが交錯して、眠る事が出来ずに朝を迎えてしまいました。
この様な人生の一大事にも関わらず、いつまでも会社を休む訳にもいかないと、仕事の事が気になりだし、結局 母に妻の事を頼んで出社しました。
この様な私を自分でも情け無く思いますが、後の生活の事まで考えてしまうのです。
妻や娘と離れる様な事にでもなれば働く意欲など無くなり、仕事など辞めてしまうかも知れないのに、会社に行ってしまったのです。
しかし、この様な状態では、まともな仕事など出切るはずも有りません。
何度か仕事を抜け出して、母に電話をして妻の様子を聞いたのですが、妻の状態は 変わる事は有りませんでした。
私を気に掛けてくれている上司が昼休みに、「どうした?家庭で何か有ったのか?」ずばり言い当てられた私は、この上司だけには話しておこうと。
「はい。帰国してから妻と少し・・・・・・・・・。」
それだけで上司は悟ったかのように。
「そうか。俺も昔単身赴任をしていた時に、女房と色々有った。
今回の事は あんな遠くに赴任させた俺にも責任が有る。
君がいないのは仕事上痛いが、決着が付くまで休暇を取れ。」
「しかし・・・・・・。」
「男にとって仕事は大事だが、家庭有っての仕事だ。後は俺が上手くやっておく。」
私は上司に感謝し、言葉に甘えて急いで家に帰りました。
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家に帰ると そのまま寝室に行き、妻に何度も呼びかけたのですが、一瞬目を開くだけでまたすぐに瞼を閉じてしまいます。
「私が話し掛けても、ずっとこんな状態だよ。トイレに行く時でも、まるで夢遊病者の様だし。一度医者に診てもらったほうが、良いのではないのかい?」
母に帰ってもらい、椅子に座ってじっと妻を見ていたのですが、昨夜は眠れなかった事も有り、知らぬ内に眠ってしまい、気が付くと窓の外は暗くなり出しています。
妻を見ると目は開いているのですが、じっと天井を見たままでした。
妻のこの様な姿を見せる事に抵抗は有ったのですが、娘を会わせてみようと思って実家に行くと、娘は私を見つけて抱き付いて来たので、私は涙を堪える事が出来ません。
手を繋いで帰る途中、娘に お母さんが病気になったと話し、それを聞いた娘は走り出したので私も後を追いました。
娘は寝室に入ると妻に駆け寄り、顔を覗き込んで、
「お母さん。お母さん、大丈夫?」
娘の声を聞いた妻は一瞬ビクッとし、夢から覚めたかの様に娘を抱き締め、稲垣夫婦に連れ帰ってもらってから初めて、声を出して泣きました。
「理香、ごめんね。ごめんね。」
--------------------
今夜は、私と妻の間で寝たいという娘の希望を叶え、ベッドで川の字に成って寝たのですが、娘が眠ると妻が、
「あなた、ごめんなさい。私は昨日からずっと、もう一人の自分と会っていました。もう1人の私と話しをしていました。
それで分かった事が沢山有ります。聞いて頂けますか?」
私と妻は娘を残してキッチンに行き、向かい合って座りました。
「もう少し落ち着いてからの方が良いのではないか?」
「いいえ、今聞いて欲しいのです。
私はずっと自分に嘘をついていました。若い頃から自分を偽って生きて来たと分かりました。
今聞いてもらわないと、また自分に嘘をついてしまう。あなたにも嘘をついてしまう。」
私は聞くのが怖かったのです。
私の想像通りの事を言われるのではないかと思い、聞きたくは無かったのです。
しかし、知りたい欲望の方が勝ってしまい。
「そうか。それなら聞こう。」
「私は若い頃から、彼の事が好きだった様な気がします。
彼には典子さんという婚約者がいたので、彼を兄でもない父でも無い、訳の分からない存在にしてしまっていましたが、本当は愛していたのだと思います。
姉の所を飛び出して、その夜 抱き締められてキスをされ、凄く嬉しかったのは彼を愛していたからだと思います。
あなたと付き合う様になったのも、彼に勧められたからです。
このままでは男性恐怖症に成ってしまうかも知れないから、一度デートに応じてみるのも良いかもしれないと言われたからです。」
私は、稲垣の存在自体が無ければ、こんな事にはならなかったと思っていましたが、皮肉なもので、稲垣がいなければ私達が夫婦になる事も無かった訳です。
「稲垣を忘れたくて俺と付き合ったのか?奴を忘れたい為に、好きでも無いのに俺と結婚したのか?」
いつの間にか、稲垣の奥さんと同じ様な事を訊いています。
「私は自分を変えたいから、お付き合いを承諾したと思い込んでいましたが、本当は そうだったのかも知れない。彼を忘れたくて付き合ったのかも知れない。
でも結婚したのは あなたが好きになったからです。あなたを愛したからです。それだけは信じて。」
信じたいのですが、これもまた稲垣が奥さんに言った言葉と同じでした。
立場は違っても、私達夫婦と稲垣夫婦は似ているのかも知れません。
違いと言えば、奥さんは2人の関係を疑いながら、ずっと苦しんで来たのに対して、私は稲垣の存在すら知らずに、のうのうと生きて来た事です。
「9年前に あなたを裏切った時も、私は確かに精神的に少しおかしかったし、あなたと喧嘩をして自棄になってはいたけれど、
彼の言う事を100パーセント信じた訳ではなかった様な気がします。
彼の言う事を信じよう。あなたとの子供が欲しくて、我慢して抱かれるだけで、決して彼に抱かれたい訳では無いと自分に信じ込ませていただけで、彼の事をまだ愛していて、抱かれたかったのかも知れない。
自分に対して必死に言い訳をしていただけで、彼の愛を身体で感じたかったのかも知れません。」
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