ハーレー話が一段落すると、また話が元に戻った。
彼女『でも周りにバイク乗る人が誰も居なくてねぇ、いつも一人で走ってた。
バイクは楽しいんだけど、仲間と楽しそうにしてるバイク乗り達を見てるとちょっと寂しくなったりもしたよ。』
俺『(うんうん)無言で頷く』
彼女『そんなときに、あたしの部署に新人が配属されたの。地方出身の男の子、二つ年下でひょろりと背が高い子。そう、熊男さんと同い年。
その子が高校時代に原付乗ってたって言ってたのね、大きいバイクにも乗りたいとか言っててね。
二人でバイクの話ばかりしてたわ、それでそのうち自然に付き合うようになって・・・・それがいまの夫』
俺『・・・・・』
彼女『付き合い初めて、すぐ彼も免許とって。二人であちこち走ったわ、そのまま付き合い初めて何年か経った。』
彼女『んで、一昨年プロポーズされた。田舎に戻って家業を継がなきゃならない、俺と一緒に来てくれって・・・悩んだけど、去年の春結婚してこっちに来た。』
彼女『彼の実家近くのアパートで、暮らし始めたんだけど・・・』
そこからは、特に話すのが辛そうだった。
彼女『楽しかったのは最初だけ、一ヵ月もすると様子がおかしいのに気付いたわ。
私がいる時には携帯の電源を切るようになって、パチンコしに行くと言って頻繁に出掛けるようになった』
つづく
彼女『でも去年の夏に、あいつが風呂に入ってるときに携帯のメールを調べてみたの。
たまたま電源切るの忘れてたみたい、すんなり見れたわ。
そしたら出てくる出てくる、浮気の証拠なんてもんじゃないわね。』
彼女『二人の将来を真剣に考えたいとか、奥さんには申し訳ないんだけどとか・・・
なんか浮気って言うより・・・本気で私と別れさせて一緒になりたいみたいだった』
彼女『風呂からあがってすぐに問い詰めたわ、するとあいつ即座に土下座して私に謝ったの。
ただの女友達なんだ、本気になられて俺も困ってる、もう絶対会わないし連絡もしないから信じてくれって私に言ったわ』
彼女『それで、今回だけは許すって事にしたの。
でもそれから夫婦仲がぎくしゃくしはじめて・・・
また一人でバイクに乗ることが多くなったの、そんな時に一人で道の駅にいる私をナンパしてきた、おっかない顔した大男が熊男さん・・・』
俺『うぅ・・・ナンパのつもりでは無かったのだが・・・』
彼女『いえ、間違いなくナンパされましたw』
つづく
彼女『女一人でバイク乗ってるとね、男の人に声かけられるなんて事はしょっちゅう。
でも連絡先教えたのは熊男さんが初めてだったのよ、なんかこの人いいなあ〜って思ったから。』
俺『光栄ですw』
ちょっとおどけて言うと、彼女の表情が少し柔らかくなったような気がした。
彼女『でもその後も夫婦仲は相変わらずね、良く言えば淡々と、でも今考えると惰性で一緒に暮らしてるような感じだったわね。
でもその時はね、別れる気は全然無かったの。
・・・・(言いにくそうに)だって好き合って一緒になって、こんな遠くまでおヨメに来たのよ。』
俺『それはまあ・・・そうだろな』
彼女『だから熊男さんの事は気になってたんだけど、会わないでただのメル友で居ようと思ってた。
また会っていっぱい話せば好きになっちゃいそうな気がしたし、好きになると今よりもっと辛くなるから・・・
何より熊男さんに悪いと思ったし、でも結局はこうなってるんだけど(苦笑)。
何より今はぎくしゃくしてても、夫婦でお互いに努力してれば、また昔みたいに仲のいい二人に戻れると信じてたから・・・・』
ここでふと時計を見ると十二時を回った所だった、俺は無言で立ち上がって台所に行った。
やかんで湯を沸かし、なんて事無いスーパー産ブレンドのコーヒー豆を取出す。
カフェイン中毒の俺と彼女、かなり濃いめにいれたコーヒーをゆっくり飲んだ。
夜はまだまだ長くなりそうだった。
つづく