全部吐き出して緊張感が切れたせいだろう、彼女は部屋に戻る道中ずっと可愛い寝息を聞かせてくれた。
俺は歯を食い縛り睡魔に耐えつつ部屋に辿り着き、一緒のベッドで泥の様に眠った。
夕方頃起きだして二人で買い物に出る、まず中古ソフト屋のワゴンセールでイージーライダーのビデオを買った。
スーパーで晩の食材を揃えた後、彼女にせがまれてバイク屋にハーレーを見に行く事にした。
彼女は店員を引きつれて、あれこれ跨がったり俺に跨がらせたり質問したりしていた。
どうやら彼女は俺を洗脳してハーレー乗りにさせたいらしい、買ったらあたしにもたまに乗らせてねとか言ってるし・・・。
俺『でもそんなに乗りたきゃ、自分で買って乗ればいいんじゃないの?』
彼女『だって・・・、あたしにはもうあの子(彼女のバイク)が居るもん』
俺『俺だって(ry』
彼女『だって熊男さん、オン車も一台欲しいなってこないだ言ってたでしょ。』
俺『そりゃー、確かにそうは言ったけどさ・・・』
彼女『熊男さんが乗ればかっこいいだろ〜な〜(はぁと)』
とまあ下心丸出しで口説かれていたのだが、俺と彼女では鈴鹿4耐でのグン&ヒデヨシ組以上に体(ry・・・まあ色々試してみた。
その結果あるモデルなら、無理すれば何とか二人とも乗れそうな感じだった。
だが当時の俺は、前の年に四輪を買い替えたばかり。下手な四輪より高価なバイクを買う余裕なんて無かったし、彼女には悪いが全く欲しくもなかった。
粘る彼女の首根っ子を引きずりバイク屋を後にした、その小さい手にはしっかり見積もり書が握り締められていたのだが。
つづく
部屋に帰って缶ビールを飲みながら夕食、片付けおわると並んで座ってイージーライダーを見た。
『アメリカってテント無しで野宿しても平気なのか!?』
『おおっ!ジミヘンの曲も使われてたんだな〜俺好きなんだよ!、おまえパープルヘイズって曲知っ(ry』、
筋とはあまり関係ない部分にばかり気を取られつつ見終ったが、その時は正直あまり面白くないなと思った。
でもだだっ広いアメリカ大陸を楽しそうに走る映像を見ていると、何年か前に一度だけソロでツーリングした北海道が思い出されてくる。
北海道のあの真っすぐな道を、キャプテン・アメリカとビリーの様に。
彼女と二人で笑い合いながら走る姿を思い浮べ、俺は少しだけニンマリした。
そんなこんなで夜も更けて、明日の仕事の為に床に就いた。もちろん彼女と一緒だ、俺は彼女を抱き寄せて(ry
・・・・それまでの俺の人生の中で、一番長く感じた日がようやく終わろうとしていた。
つづく
秋の日は釣瓶落としと言うが、雪国では秋そのものが釣瓶落とし。
短い秋が終わればすぐ冬だ、そうなればもうバイクは強制的に春まで冬眠になってしまう。
走りだめと言わんばかりの頻度で、休みの度に二人でツーリングに行った。
そして時にはかなり遠くまでキャンプをしに行く事もあった。
野宿初体験だった彼女、最初は何をしたらいいかわからず、現場ではおろおろするばかり。
だが二回三回と回数を重ねて行く内に、だんだん要領が良くなってきた。
そして雪国の短いシーズンが終わる頃には、テントの設営から撤収までスムーズにこなせるいっぱしの野宿ライダーに成長?していた。
そしてやがて冬が来る、雪国で冬の遊びと言ったらスキー・スノーボードだ。
毎週のように二人でゲレンデに通いつめ、バイクに乗れない時期もそれなりに楽しく過ごせていた。
その為さほどバイクに乗れないストレスを感じる事なく、バイクシーズンを目前に控えたていた頃の事。突然俺に、ある転機が訪れた。
つづく