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私の「初めて」の話をしようと思う
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35 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 14:53:13.00 ID:d7vBTGF30.net
「なにができんの」

「……オセロかトランプ」

やつは呆れた顔をしたけど ちょっと考えてから

「それなら一回チャンスやるよ、退屈しのぎになってもらおうか」

と言って車椅子を動かしはじめる

私は その後ろを松葉杖でついていく



38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:00:20.45 ID:d7vBTGF30.net
小児病棟の最上階に やつの病室があった

ちょっとしたデザイナーズマンションかってくらいきれいな個室だった

窓からは何もない街がよく見えた

やつは棚からオセロボードを引っ張り出す

テーブルに置いたオセロボードをはさんで私たちは座った



39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:03:20.67 ID:d7vBTGF30.net
結論から言うとお話にならなかった

「オセロなんて五年ぶりくらいだ」

なんて言ってたくせにタムラはボロクソに強かった

というより、やってるうちに どんどん歯が立たなくなってった

たぶん、あるゲームのコツをつかむ勘みたいなものが そもそもずば抜けてんだと思う




40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:06:49.26 ID:d7vBTGF30.net
しまいにはハンデをもらったけど それでも負けた

角をとればオセロは有利になるって言いますよね

だから最初から二つ角をもらった状態で始めたんだけど それでもありえないくらい負けた

タムラには どんなに優勢だろうと容赦というものがなかった



41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:10:06.48 ID:d7vBTGF30.net
結局一回も勝てないまま その日は終わった

「いい暇つぶしになったろ」

タムラに笑いながら言われて私は死ぬほど悔しがりながら自分の病室に戻った



44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:16:48.30 ID:d7vBTGF30.net
三日のあいだ私は自分の部屋から出なかった

看護師が具合でも悪いのか心配したけど そんなんじゃない

私もそれなりに負けず嫌いだし意地はある

付け焼刃は承知で ひたすらオセロの戦術を勉強した

勉強してみると基礎のキソでも知らないことがたくさんあって びっくりした

なんでもいいから一回はタムラに勝たないと気が済まない



45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:23:34.91 ID:d7vBTGF30.net
三日後

私はタムラの病室に押しかける

やつはパソコンを鬼みたいな目で睨みつけて何かをしていた

邪魔できる雰囲気では到底なくて、私はしょうもなく突っ立っていた

タムラにようやく気づかれたのは小一時間たったころだった

「また来ると思ってたぜ」

小一時間気づかなかったくせによく言うもんだ



46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:29:01.60 ID:d7vBTGF30.net
「このあいだの続きをしにきた」

「三日間なにもしてなかったわけじゃないよな」

私はうなずく

テーブルには この間からしまわれていないのだろうオセロボードが載ってた

今回は初戦からハンデをもらうことにした

私の黒番でゲームを始める

開始三秒で目の色が変わったタムラをつくづくと私は見た




47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:34:31.97 ID:d7vBTGF30.net
「三日間何もしてなかったわけじゃなさそうだな」

タムラは笑いながら言ったけど たぶんほんとは死ぬほど悔しかったんじゃなかろうか

わずかに黒が白を上回った盤面を田村は じっと見下ろしていた

「もう一回だ」

タムラが言うままにもう一ゲーム戦う

タムラが白番、私が黒番をとって


結果はタムラの完勝だった



48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:44:28.96 ID:d7vBTGF30.net
その日はじめてタムラは私にコーラをおごった

自販機で350ml缶を二つ買って、病棟の廊下のベンチに座って飲んだ

「タムラって絶対コーラなんて飲んじゃダメそうな体してるよね」

私はずっと思っていたことを言った

「飲んでも飲まなくても どのみちダメだから関係ねーんだ」


「?」

「イチローが毎朝カレー食うのと一緒だ」


「そうなの?」

「そうだよ、毎朝カレー食って毎試合ヒット打ってんの」


「タムラの場合は それがコーラなわけだ」


「そういうこと」

「でも飲むのもやはりよくないと」


「そう」

タムラはため息をついた

「俺ハタチになる前に死ぬからさ」



49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:54:20.35 ID:d7vBTGF30.net
タムラの病気は もう治る見込みのないものだった

生まれて間もなくそれがわかって、タムラの親はタムラを病院に放り込んだ

手切れ金であるかのように高い金を払って

けれどそれ以来 ほとんど病院に顔を見せに来たこともないらしい


生まれつき欠陥を抱えた心臓と、ガラの悪い勝負事好きの親父連中と、世界のどこにもつながるパソコンとに恵まれて、タムラは病院で12年間すくすくと育った、のだそうだ



50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 15:59:43.47 ID:d7vBTGF30.net
以来 私たちは ときどき暇を見てつるむようになった

オセロをやり、コーラを飲み、話すことがあれば話をした

医者も看護師もいい顔はしなかった

回診のたびに ずいぶん冷たくされたものだ


一人でいるときはオセロの定石を勉強し、iPodで音楽を聴いた

タムラ相手だと いくら勉強しても しすぎにはならない

タムラのほうは片手間でやってたのかもしれないけども


私の入院生活は そんなふうに回っていった



51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2015/06/20(土) 16:08:26.17 ID:d7vBTGF30.net
手術から数週してリハビリが始まる

その頃にはタムラのほうからも暇があると私のところにやってくるようになっていた

タムラは何が面白いのか私のリハビリの様子をずっと眺めていた

「歩けるようになるのか、お前は」

「いずれ、順調にいけばね」

「俺は めんどくさいから歩くの諦めたんだよね」


タムラが訊いてもいないのに そんなことを言うのは珍しい気がした


「俺ね、死ぬまでで一回、チェスでてっぺん獲ろうと思ってる」


「てっぺん?」

「世界一とかなんとか」

「本気?」

タムラは無言でうなずいた




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:泣ける話, 青春, これはすごい,
 


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