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イケメン同期に振り回された俺の人生について語る
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143 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:43:25.16 ID:7U2DNARy.net
「努力してできるなら、とっくにそうしてるよ。そうしたいよ。僕だって普通に女の子に恋をして幸せな人生を送りたかったのに。それができないから、これまで ずっと悩んできたんじゃないか。」

普段の温厚な白石では考えられないくらいのトーンに、俺は完全に押されてしまって、謝ることしかできなかった。


「ごめん…。」

「せっかくの旅行なのにって、言いたいのはこっちだよ…。」


その言葉を最後に、白石は口を開かなかった。

俺から顔を背けて窓の外を見たまま、何も話さなかった。

行きには気分を盛り上げてくれたCDだけが、ひとり楽しそうだった。



144 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:44:22.32 ID:7U2DNARy.net
「ごめん。」

沈黙を破ったのは、白石だった。


「やつあたりした。ごめん。」

さらに、そう続けた。

視線は窓の外に向けたままだったが、声のトーンは落ち着いていた。

やっとふたりの間の緊張が解けてホッとした俺も、「俺もごめんな。自分勝手だった。」と謝った。


「この二日間の全部、楽しみにしてたから・・・。ショックだったんだよ。」


視線を車内に戻してはくれたものの、白石は悲しそうにそう言った。

その悲しそうな顔を見て、俺はものすごく申し訳なくなった。



145 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:45:10.41 ID:7U2DNARy.net
俺はあえて大きな声で、この空気をかえるために言った。

「よし、じゃあ今日は全部お前に合わせるよ! いまから戻って行きたいとこ全部行ってもいいし、海でも山でも温泉でも映画でも、何でも付き合う。」


パッと空気がかわった。

白石の怒りオーラがシュンと消えた。

よかった、なんとか元の白石に戻ったようだ。

行きたいところたくさんあるんだろ、というと、うーんうーんと悩んで、結果、出てきたのはこれだった。

「ねえ、じゃあ、ディズニーシー行きたい。」



146 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:46:08.46 ID:7U2DNARy.net
「おま…。いま、まだ群馬県だぞ…。」

「なんでもって。海でも山でもって。」

「男ふたりでディズニーって・・・。」

「海もあるよ。山もあるよ。ディズニーシー。」

「俺ディズニーシー行ったことないんだけど・・・。」

「ちょうどいいじゃない。夕方から入れる安いチケットあるよ。」

「最初はデートで行きたかったんだけど・・・。」

「デートじゃん、いまこれ。」

「勘弁してくれよぉーー。」

そして俺たちの車は、舞浜行きとなったのだ。



147 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:47:34.93 ID:7U2DNARy.net
道中は、白石のディズニーシー紹介を聞いて少し気分が上がっていたが、いざシーのエントランスを目の前にすると、急に現実味を帯びて冷や汗が出た。

大丈夫か。男ふたりでディズニーシーなんて大丈夫なのか。

……ええい覚悟を決めるんだ俺!

こちとら、男ふたりでプリキュア映画見に行ってんだ。いまさら恥もへったくれもあるか。

ウェルカムトゥー東京ディズニーシー!!



148 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:48:35.26 ID:7U2DNARy.net
結論からいうと、ディズニーシーは最高に楽しかった。

抵抗を感じたのは最初だけで、1時間もすれば気にならなくなった。

みんな楽しむことに精いっぱいで、誰もほかの人なんか気にしちゃいない。

男連れだと、次なに行くとか、なに食べるとか、何の気も遣わなくて楽でもあった。

ポップコーンのバケットを首から下げて、キラキラ光るおもちゃを買って、夜が更けると街並みがライトアップされて、歩いているだけで現実を忘れられた。

昼にはあんなにギスギスしてたとは考えられないくらい、俺たちは はしゃいでいた。

やっぱり、俺たちは、こうじゃなくちゃな。



149 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:49:30.83 ID:7U2DNARy.net
夜の水上ショーも終わって、閉園時間まであと1時間もない。

俺たちは薄暗い海賊船の上で、遠くで光るイタリアの街並みを見ていた。

この夜が終わってしまうのがもったいなくて、二人とも口数が少なかった。

「いつかこれ、大切な人に渡そうと思ってたんだ。」

そのときに白石がくれたのは、思い出のクリスタルコミューンだった。

知り合って初めてちゃんと見たプリキュア、Splash☆Starの変身アイテムだ。

俺はフラッピ、白石はチョッピ。

はじめてココロパフュームを見たときはヤバイと思っていたけど、プリキュアでずっと見ていた変身アイテムが実物として手元にあると、こんなにも楽しい気持ちになるとは、当時の自分は考えもしなかったな。



150 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:50:07.41 ID:7U2DNARy.net
この二日間は、本当にいろんなことがあった。

楽しんだり気持ちよかったり怒らせたり仲直りしたり、いろんなことがあった中でも、この海賊船の出来事は、俺の中で、強い思い出となっている理由がある。

白石が、はじめて、俺のことを「大地」と呼んだからだ。



151 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:52:21.16 ID:7U2DNARy.net
それまで頑なに「石黒くん」を通してきた白石だったから、てっきりプリキュア好きとして、いつか初代8話のオマージュでも仕掛けてくるんじゃないかと思っていたが、あっさり呼んじゃうとは。

その話をしたら、ああーー!!と、海賊船内に響き渡る声で絶叫した白石。

「なんで思いつかなかったんだろう!!悔しい!!」

そういって本気で悔しがっている姿が何だかおかしくて、笑いながら、白石の手をひっぱって、冗談めかして言った。

「行くぞ、健太郎。」

大地と健太郎の夏の思い出が、幕を閉じた。

■つづく■



152 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/20(土) 02:55:33.67 ID:7U2DNARy.net
つづくばっかりですんません・・・。

当時の日記から ひっぱってきてるんですが、色々端折ってもこんなにまとめるのが大変だとはww

ここにきて ようやく2/3です。

続きは日曜日に、最後まで必ず!



167 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/02/21(日) 22:30:13.99 ID:NLJ5egQ1.net
石黒に振り回される白石、石黒に振り回される俺たち。


170 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/22(月) 21:43:33.82 ID:358xs2sq.net
遅くなってすんません(´゚д゚`)

まさかの書き溜め消える事件が(´゚д゚`)

原作に追いつかないようにノロノロやるアニメみたいな感じで書き溜めつつ投稿するので ちょっとペース遅いですヨロシクです・・・(´゚д゚`)



171 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/22(月) 21:44:38.39 ID:358xs2sq.net
キュアミューズが黒から黄色に変わり、季節が夏から秋に変わったころ、ひとり深夜の横浜で、健太郎が車で迎えにきてくれるのを待っていた。

土地勘のないこの街で、終電を逃してしまったのだ。


正確に言うと『あえて終電を逃した』んだが、失敗だった。

本当だったら、今夜はホテルでお楽しみのはずだったんだが・・・。

半袖では すでに厳しい気温の中、身体を縮こまらせて、ひとり反省会をしていた。



173 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/22(月) 21:54:41.67 ID:358xs2sq.net
ちゃんとバイバイもしなかったから、もう二度と連絡はないと思っていた。

そんな彼女から「この前はありがとね」とメールが来たもんだから、俺は舞い上がった。

あの夏、ラフティング旅行で一晩をともにした、あの女の子からだった。



毎日のようにメールをして、ほとんど彼女みたいなもんだった。

彼女は横浜の近くに住んでたから、みなとみらいの話になって、俺いったことないから行ってみたいなって、デートになって。

終電間際まで一緒にいたらさ、普通ホテルコースじゃん。

なんで帰っちゃうんだよ。

俺なにか まずったかなぁ。



174 :石黒 ◆5w9kBvAhHY @\(^o^)/:2016/02/22(月) 22:04:59.59 ID:358xs2sq.net
そんな感じで健太郎に泣きついたら、車で迎えに来てくれることになったのだ。

実家住まいとはいえ、親御さんの車を出してもらったのは申し訳なかった。

健太郎が運転する車の中で、今日の失敗談について笑って話したら、「そっか、大変だったね。」と穏やかに聞いて、慰めてくれた。

これだけで俺は、今日の虚しさが救われた。


「お前ほんといい奴だよなぁ。健太郎が女だったら、ぜってー彼女にすんのに。」

俺はマジな気持ちで言ったんだが、笑って流された。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 純愛, 胸キュン,
 


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