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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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145 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 04:23:23.71 ID:muQilJab.net
「でも、だって、」

「心の中ででも憎まれてる相手と仲良くなんかできないだろ?」

動揺した俺は、反論を試みた。

「死ねって思われながら、友達でなんかいられないし」


「逆に聞くけど、どうして自分を憎む相手と仲良くしようと思うの?」「そういう性癖?」

「いや、それは・・・・・・」

俺は はっとしながらも、性癖なんて言葉をさらりというレイにどぎまぎした。



146 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 04:44:54.77 ID:muQilJab.net
「でも、こんな俺と友達でいてくれるだけありがたいっていうか・・・・・・」

「ぼっちはいやだし」

「そいつにも いいところはあるし」

俺が思い浮かべていたのは、もちろん あいつだった。俺がいじめられた瞬間、何の関係もなかったかのように振る舞ったあいつ。

少なくとも、俺は友達のつもりだった。よく知らないアニメの話にもつきあって、もっとわからない声優?の写真集も一緒に買いに行った。

あいつらが俺をいじめてなきゃ、いまでも友達だったと思う。友達だと思ってる。

そう言うと、レイは冷ややかに言った。

「そう」

「じゃ、その人は さっきの暴言の対象外なのかしら」「さっきの、俺を馬鹿にする奴らは死ね、っていう」



147 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 04:50:29.83 ID:muQilJab.net
「それは・・・・・・」

俺は口ごもった。

「それは勢いで言ったっていうか、なんていうか」

「〈本心〉じゃない?」「だから、許される?」

それだけでも皮肉だって言うのに、レイはもっと辛辣に言った。

「それとも、自分だけは許してあげる?」「いいのよ、誰でも自分には甘いものだから」



148 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 04:58:50.47 ID:muQilJab.net
「他人の臭いは気になるけど、自分の臭いは気にならないのね」

「でも、そういうものよ」

「それなら、問題は臭いじゃないわ」

「他人の臭いを気にすること。そう思わない?」


「俺もほかの奴らと同じだって言うのか?」「俺を馬鹿にする奴らと?」


「違いがあるなら、そうね」

レイは俺の問いを暗に肯定して言った。

「あなたは誰よりも自分のことを大切に思ってる」「そういうことかしら」



149 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:00:07.23 ID:muQilJab.net
「俺が、自分のことを大切に思ってる?」

意味がわからずに、俺は聞き返した。

だって、俺はたった三日前、自殺しようとした人間だ。この世から自分を抹消しようとした人間だ。それが、自分を大切に思ってるって?

本当に意味がわからない。



150 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:06:15.81 ID:muQilJab.net
「あなたは脆い」

レイは言った。

「それは、あなたが脆くありたいと思っているから」「そのほうが格好がいいと思っているから」


「そんなこと・・・・・・」


「あなたは傷つきやすい」

俺を無視してレイは続けた。

「それはあなたが敏感でありたいと思っているから」「それが自分の特性で才能だと思っているから」



151 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:11:59.30 ID:muQilJab.net
「そんな、才能なんて・・・・・・」

否定しながら、俺は思い当たる節を感じていた。

他人の心が読める俺。そうして読めてしまうからこそ、敏感で傷つきやすい俺。

悪意の中を他人が平気で生きていられるのは、俺のように鋭敏ではなく、鈍感だからだ。

俺はそう感じていた。



152 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:14:56.87 ID:muQilJab.net
「けど、それが俺だよ」

確かめるように、俺は言った。

生まれつき鈍感で身勝手な奴らがいるように、俺は生まれつき鋭敏で繊細なんだ。

そういうこともあるだろ?

足が速いとか、遅いとか、そういうような、生まれ持っての違いってのは。



153 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:24:48.30 ID:muQilJab.net
「違う」

「そんなのは ただの恥ずかしい妄想よ」

「あなたがそう信じ込んでいるだけ」

「人間なんて、みんなそう変わらない」

「あなたも普通の人間の一人」


「普通の人間って・・・・・・」

俺は少し傷ついた。そして、傷ついたと感じた自分が嫌だと思った。けど、嫌だと思った自分も嫌に感じて・・・・・

それはつまり、俺は自分が特別な人間だと思いたがってるって証拠だった。



154 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:30:01.15 ID:muQilJab.net
「でも、でも、俺は生きる価値があるって」

情けないかもしれないけど、俺は確認するようにそう言った。

それは俺が特別である証拠に思えた。

〈あなたには生きる価値がある〉

そういってくれたレイは、少なくともそう思ってくれてるはずだ。

そして、レイは俺の思った通りに答えてくれた。

「ええ」
「そう言ったわ」

けど、それからこう続けた。

「でも、それはあなたがほかの人間と比べて特別だ、という意味じゃない」



155 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:41:34.74 ID:muQilJab.net
じわり、苦いものが胸に広がった。

俺は特別じゃない。

そう言われたことは、俺にとって「死ね」と言われたのと同じだった。

〈現実〉を考えれば、俺がレイにとって特別じゃないだなんて、当たり前のことだろう。

俺はたった数日前に出会った、しかも顔も見えないチャット相手なんだから。

けど、俺の関心がほぼ100%レイにあるというのに、レイはそうじゃないってことが、俺には我慢できなかった。

ほんと どうしようもないな、俺。



156 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 05:53:19.50 ID:muQilJab.net
「じゃ、君が言う〈生きる価値がある〉って、人間全員のことなのか?」

むっとした俺は言った。

「人類愛的な、っていうかさあ」

女子に「好き」って言われて舞い上がってたら、「あ、異性としてじゃなくて人間性が」とか言われた気分だった。

いや、全然好きとか言われてないだろ、昔の俺よ。。。。。。



158 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 06:10:04.34 ID:muQilJab.net
「生きる価値のない人間なんていない」

「前にも言ったはずよ」

「だから、俺にも価値がある?」

「そう」

「だから、自殺はいけない?」

「正しくない選択だと思うわ」

「じゃあさ、正しい選択って何だよ」

「正しい選択をするには、あなたの〈答え〉が」

「違う。俺じゃなくて、君の思う正しい選択って?」

ふてくされ気味の俺は、レイを遮って聞いた。俺がレイの「特別」じゃないなら、焦らされるのは面倒だった。

それに、そんなことを聞いても、どうせレイは答えてくれないと思った。

けど、それは違った。



>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:すっきりした話, 修羅場・人間関係, ためになる話, これはすごい, ためになる話, ちょっといい話,
 


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