数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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391 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 04:54:39.70 ID:R20nqEHV.net
「タイヤをパンクさせたことはあるの?」
計画を伝えると、レイはいつものように冷静にそう聞いた。
「いや、ないよ」
俺は答えた。
「でも、練習するつもり」
当てはある。自分の自転車だ。
もうずっと使ってないから空気が抜けているかもしれないが、練習くらいにはなるだろう。
「練習?」
レイが言った。
珍しく動揺したような雰囲気に、俺は笑った。
「大丈夫だよ、家の自転車だから」
それから、少し考えて付け足した。
「計画の前に捕まるような真似はしないって」
自転車のパンクでも、何件も続けば警察が調べるかもしれない。
レイはそれを気にしてるんだろう。
392 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 04:59:12.51 ID:R20nqEHV.net
「そう」「それならいいけど」
レイに冷静さが戻った。
信用されてないな、そう思って俺は頬を膨らました。
そりゃ、レイは頭がいいけど、俺だって考えてるんだぜ、そう思った。
「それからさ」
俺は続けた。
「そろそろナイフを手にいれとこうと思うんだけど」
「どこで買えばいいと思う?」
「ホームセンターとかだと、足がつくかな?」
足がつく。
どうかツッコミは許して欲しい。ちょっと言ってみたかっただけだ。
393 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 05:09:07.13 ID:R20nqEHV.net
「それはないと思うけど」
レイは即座に否定した。
「夜中にでも買いに行かない限り」
「そうかな?中学生が包丁買うとか、怪しまれない?」
「親に頼まれた、とか言った方がいいかな」
「何も言わなくても大丈夫だと思う」
「そんなことくらいじゃ、誰も怪しまない」
「それより、時間」
「昼間にあなたは買い物に行けるの?」
「それは・・・・・・」
俺は もったいぶってから言った。
「やるよ。だって、そうしなきゃ、目的は達成できないわけだし」
いままでのあなたじゃないみたいね、冷ややかながらも、レイなりの褒め言葉を俺は期待した。
394 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 05:27:13.80 ID:R20nqEHV.net
「そう」
しかし、期待とは裏腹に、レイは気落ちしたように言った。
「なんだよ」
期待した分、俺は少し落胆して言い返した。
俺がつまずいていれば、根気よく諭してくるくせに、いざ俺が快調に進んだら落ち込むなんて、そんなことあるか?
「そりゃ、昼間買い物に行くなんて、簡単じゃないよ。夜中とは比べものにならないほど他人がいるし、知り合いに会うかもしれないし」
なんでちょっと「頑張ってる俺」を主張してんだ?
そう思いながら、俺は続けた。
「けど、行動しなきゃ。そうだろ?目的のためには、考えてるだけじゃダメだ。君がそう教えてくれたんだろ?」
「タイヤをパンクさせたことはあるの?」
計画を伝えると、レイはいつものように冷静にそう聞いた。
「いや、ないよ」
俺は答えた。
「でも、練習するつもり」
当てはある。自分の自転車だ。
もうずっと使ってないから空気が抜けているかもしれないが、練習くらいにはなるだろう。
「練習?」
レイが言った。
珍しく動揺したような雰囲気に、俺は笑った。
「大丈夫だよ、家の自転車だから」
それから、少し考えて付け足した。
「計画の前に捕まるような真似はしないって」
自転車のパンクでも、何件も続けば警察が調べるかもしれない。
レイはそれを気にしてるんだろう。
392 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 04:59:12.51 ID:R20nqEHV.net
「そう」「それならいいけど」
レイに冷静さが戻った。
信用されてないな、そう思って俺は頬を膨らました。
そりゃ、レイは頭がいいけど、俺だって考えてるんだぜ、そう思った。
「それからさ」
俺は続けた。
「そろそろナイフを手にいれとこうと思うんだけど」
「どこで買えばいいと思う?」
「ホームセンターとかだと、足がつくかな?」
足がつく。
どうかツッコミは許して欲しい。ちょっと言ってみたかっただけだ。
393 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 05:09:07.13 ID:R20nqEHV.net
「それはないと思うけど」
レイは即座に否定した。
「夜中にでも買いに行かない限り」
「そうかな?中学生が包丁買うとか、怪しまれない?」
「親に頼まれた、とか言った方がいいかな」
「何も言わなくても大丈夫だと思う」
「そんなことくらいじゃ、誰も怪しまない」
「それより、時間」
「昼間にあなたは買い物に行けるの?」
「それは・・・・・・」
俺は もったいぶってから言った。
「やるよ。だって、そうしなきゃ、目的は達成できないわけだし」
いままでのあなたじゃないみたいね、冷ややかながらも、レイなりの褒め言葉を俺は期待した。
394 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 05:27:13.80 ID:R20nqEHV.net
「そう」
しかし、期待とは裏腹に、レイは気落ちしたように言った。
「なんだよ」
期待した分、俺は少し落胆して言い返した。
俺がつまずいていれば、根気よく諭してくるくせに、いざ俺が快調に進んだら落ち込むなんて、そんなことあるか?
「そりゃ、昼間買い物に行くなんて、簡単じゃないよ。夜中とは比べものにならないほど他人がいるし、知り合いに会うかもしれないし」
なんでちょっと「頑張ってる俺」を主張してんだ?
そう思いながら、俺は続けた。
「けど、行動しなきゃ。そうだろ?目的のためには、考えてるだけじゃダメだ。君がそう教えてくれたんだろ?」
395 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 05:31:17.69 ID:R20nqEHV.net
「そう」「そうよ」
レイは答えた。けど、やっぱ どこかいつもと違う。
「どうしたんだ? もしかして、なんか調子でも悪r」
そこまで打ち込みかけたとき、画面がばっとスクロールした。
「ごめんなさい」「今日はこれで落ちる」「ナイフを手に入れたら教えて」「それじゃ」
396 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 05:43:33.78 ID:R20nqEHV.net
急ぐようにそう言うと、レイは消えた。
あとに残された俺は、あっけにとられて動かなくなった画面を見つめた。
一体どうしたっていうんだ??
俺、何か悪いこと言ったか??
ログを読み返して考えても、答えは出なかった。
というか、これまで俺がレイに吐いた暴言の数々を思えば、あれ以上のもんなんか滅多に出るはずがない。
「どうしたんだ?もしかして、なんか調子でも悪」
画面の下には、エンターキーが押されないままの俺の台詞が並んでいる。
もしかして、〈現実〉のレイに本当になにかがあったのか?
俺は久しぶりに心臓が嫌な音を立てるのを聞いた。
それから、俺が自分以外の人間の心配を・・・・・・
つまり、レイの心配なんかしたのは初めてじゃないか?
そう思った。
398 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 10:19:07.38 ID:R20nqEHV.net
レイは一体誰で、どんな人なんだろう。
いつの間にか気にしなくなっていた疑問を、俺は改めて自分に問い直した。
年は?
考えたくないが、性別は?
○○公園に来られるくらいなんだから、、近くに住んでる人なのか??
それから・・・・・・。
俺はいままでは気づかなかったことに、どきりとしながら、思った。
それから、俺と同じ時間帯に寝起きしてるなんて、レイは一体どんな生活をしてるんだ?
399 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 10:25:37.98 ID:R20nqEHV.net
まさか、レイも俺と同じ引きこもり??
一瞬、頭をよぎったのは、そんな考えだった。
が、俺はすぐに それを否定した。
だって、レイは俺が外に出るために協力してくれたんだし、何より、彼女が公園に現れたという〈証拠〉は俺が持っている。
俺は、クリアファイルに大切に仕舞って置いた紙片を取り出した。
〈レイ〉。
彼女があそこに現れた動かぬ証拠だ。
400 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 10:31:04.89 ID:R20nqEHV.net
それなら、レイは昼夜逆転の生活が普通、という生活をしている??
でも、それは どんな生活だろう。
夜勤をしているとか、夜間の学校に通ってるとか・・・・・・??
いや、それもおかしいだろう。
俺は自分の考えを自分で否定した。
だって、夜勤や夜間学校に行く人たちは、昼夜逆転の生活って点では正しい。
けど、その人たちは その夜の時間は、仕事場や学校にいるのだ。
俺の相手をしていられるはずがない。
401 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 10:39:58.60 ID:R20nqEHV.net
けど、昼間の仕事をしていたり、学校に通っている人も、それはそれで俺の相手をする暇なんかあるはずがない。
夜中に、何時間も、それも知りもしない俺の相手なんか・・・・・・
いやいや、俺を知ってたら尚更、こんな引きこもりの相手なんか嫌だろう。
それにそもそも、こんなに辛抱強く相手にしてくれる人を、俺は知らない。
親にだって腫れ物扱いされてるってのに。
うーん、俺は唸った。
レイの正体。
それは これまで気にせずにいられたことが不思議なほど、思わぬ難問だった。
402 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 10:46:35.22 ID:R20nqEHV.net
直接、疑問をぶつけてみたら、レイは答えてくれるだろうか。
チャットの無表情キャラのアイコンを眺めながら、俺は考えた。
いままで、レイが答えてくれなかった質問はない。
だから、もしかしたら答えてくれるかもしれない。
俺はしばらく考えた。
すると、〈考えるより、とにかく行動〉、レイの言葉が浮かんだ。
403 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 10:55:04.12 ID:R20nqEHV.net
よし、俺は考えるのをやめた。
このまま考えると、また負のスパイラルに入ってしまうことを、俺はもう嫌と言うほど知っていた。
そして、渦に引き込まれる前に、それを拒絶する術を身につけ始めていた。
口で言うのは簡単だけど、なかなか実行するのは難しいことだ。
考えたい、と思わないこと。
自分の世界にどっぷり浸かりたいという甘美な誘惑を振り切ること。
それは経験したことはないけど、きっと酒や煙草をやめるときと同じだと思う。
誘惑を拒絶する、意志の力が必要なんだ。
404 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 11:03:41.00 ID:R20nqEHV.net
俺はそうして考えるのをやめて、その代わりにこう決めた。
もう一度、レイと約束をしよう。
○○公園まで来てくれって、そう頼んでみよう。
そしたら今度こそ、俺は時間通りに そこに行くからって。
・・・・・・そうして現れたのが、脂ぎったオッサンだったら?
それが〈現実〉だ。
それに、こっちだって気持ち悪い引きこもりなんだからどっこいどっこいだろ?
だなんて、本当にそう思えたわけじゃないけど、でも、とりあえず俺はそれでレイの正体に決着をつけた。
その瞬間が来るまでは、レイには儚げな超絶美少女でいてもらうことにして。
405 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 11:26:52.65 ID:R20nqEHV.net
さて。
一息つくと、俺はノートの新しいページを開いた。
計画はいよいよ大詰めを迎えていた。
完全犯罪には、少しのほころびも許されないし、本番は一度きりだ。
こればっかりは練習するってわけにもいかないから、頭の中でイメージトレーニングを積むしかない。
それに、準備する品物のリストアップ。
ホームセンターにナイフを買いに行くのなら、他のものも いっぺんに揃えておきたい。
406 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 11:35:45.07 ID:R20nqEHV.net
まず、ナイフ。
俺は丁寧にノートにそう書き込んだ。
少し考えてから、括弧付きで
(できるだけ先の尖ったもの)
そう付け足す。
それから、千枚通し。
これは未だ実験はしていないが、タイヤをパンクさせるための道具だ。
ネットで調べたら、釘でパンクするというから、千枚通しも似たようなもんだろうと思った。
・・・・・・ちなみに、俺はその当時「千枚通し」という言葉を知らず、ノートには「たこ焼きをひっくり返す針」と、書かれている。針って。
407 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 11:40:13.37 ID:R20nqEHV.net
続けて、レインコート。
そう書いてから、俺は後ろに「?」を付けた。
返り血対策にいいと思ったのだが、晴れた日のレインコートは、いくら暗闇でも ちょっと不審すぎるだろうと思ったのだ。
透明の・・・・・・そう書き足してから、やっぱりぐちゃぐちゃと消してある。
そうだよな、透明のレインコートでも、本当にの意味での透明」じゃないもんな。
408 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 11:45:37.79 ID:R20nqEHV.net
それなら、返り血対策はどうしたらいいのか。
・・・・・・と、そこまで考えて、俺は首をひねった。
そんなに返り血って飛ぶもんなんだろうか。
パソコンで調べてみたが、そんな物騒な体験談が載ってるわけでもなく、俺はノートに「「返り血」と書いて、そこに大きく丸を付けた。
これはあとで調べるか、レイに聞いてみよう。
409 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 11:58:35.08 ID:R20nqEHV.net
>>407 ×本当にの意味での透明 ○本当の意味での「透明」
それから、手袋。
これもノートに書いてから、「?」を付けた。
手袋なんてものを思いついたのは、テレビでも漫画でも、「凶器の指紋」とか「指紋が出た」とか聞くからで、その「指紋」を残さないためには、手袋が必要だと思ったのだ。
けど、これもどうだろう。
警察の科学捜査の知識なんかゼロの俺は顔をしかめた。
俺はAに刺したナイフを そのままにするつもりはなかった。
だから、指紋のことは考えなくてもいいんじゃないかと思ったのだ。
けど、もしものことがあったら困るから、しておくに越したことはないか・・・・・・。
俺は「手袋」に付けた「?」を消した。
それから、もう少し考えて、「黒くてすべらない」と付け足した。
410 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 12:12:14.49 ID:R20nqEHV.net
もちろん、当時の俺は大まじめだった。
いまなら呆れるようなこのリストを、大まじめに考えて、丁寧にノートに書き付けたのだ。
それは、目標が目標だから、あまり褒められたもんじゃないことは確かだ。
でも、このリストを見るたび、俺は あのころを思い出す。
そして、少し懐かしいような、微笑ましいような、それでいて、息苦しくて胸が締め付けられるような、そんな気持ちになる。
これは、俺の過去の姿そのものだった。
それも とんでもなくリアルで、ありのままの。
ここには、まだ、あのときの俺がいる。14歳の少年の、あまりに純粋な闇がここに息づいている。
俺はそれを感じて、どうしようもなく胸が締め付けられるんだ。
411 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/14(月) 15:33:16.14 ID:R20nqEHV.net
けど、そのときの俺は、未来の俺からの視線なんて知るよしもなかった。
俺は自分では前向きに進んでいるつもりでいながら、その肝心の未来のことなんて、これっぽっちも考えていなかったんだ。
Aを殺す、という目標の後も続くだろう、自分の未来のことを。
俺の思考は、Aの殺害で止まっていた。
そして、その先は真っ白だった。
Aを殺して、それで自分が逮捕されなければ、それでいいんだと思い込んでいた。
物語のように、映画のように、画面に現れたエンドマークが、すべてを丸く収めてくれるんだと思ってた。
けど、それは違うんだって、〈現実〉では そんなことがあり得ないんだってことが、いまならわかる。
そして、それこそが、レイが本当に言いたかったことなんだってことも。
だから、俺が考えるべきは、目標の先のことだった。あのときは まだ白いままの、俺の未来のことだったんだ。
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