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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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34 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 03:58:59.95 ID:i0JLgPq+.net
なおX JAPANのなんとかと漫画家のなんとかは無事ドアノブで死亡できた模様


36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:16:39.31 ID:1+Q4FLW+.net
>>34
そうそう、ドアノブも聞くよな。

けど、あれってホントにできるのかって不安にならないか?

何て言うか、理論上はいけるんだろうけど、もっと確実性が欲しい、みたいな。


俺は深呼吸すると、部屋の真ん中でバンザイしながらピースした。目を閉じて、いえーい! って声には出さずに叫んだ。いま考えると、まじテンションおかしい。

それから、つけっぱなしだったパソコンを閉じようとした。

画面には、俺の書いた例の馬鹿みたいな台詞が二行、表示されていた。

レスは何にもついてなかった。



38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:22:36.27 ID:1+Q4FLW+.net
俺はその一瞬、何かを待った。


いまならわかる。いくらラリってるとはいえ、俺は寂しかったんだろう。

一人きりで死んでいくのが怖かったんだろう。

それがその一瞬に繋がったんだ。

けど、そのときの俺には もっと怖いものがあった。

それはこの興奮状態が消えてしまうことだ。死ねなくなってしまうことだ。

パソコンなんてつけっぱなしだって構わない。

早く、死ななきゃ。この感覚が消えてしまわないうちに。

そうして、画面から目を切ったときだった。



39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:26:29.30 ID:1+Q4FLW+.net
ぽーん

聞き慣れない音がした。

何も考えずに、俺は画面を振り返った。

そこには三行目の文字列が出現していた。

「何で死ぬの?」

それはシンプルな質問だった。



40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:32:00.30 ID:1+Q4FLW+.net
それを目にした瞬間、心の均衡がぐわっと崩れた。

自殺ハイが一気に消え、別の衝動が胸を襲った。

なぜ死ぬの、なぜ俺は死ぬのか、聞いてくれる人がいる。

知って欲しい、知ってくれ、俺がなぜこんなにまで追い詰められているのか知ってくれ

自殺なんていつでもできる、いまは ただこの人に知って欲しい

俺の指はキーボードに伸びていた。

この顔も名前も知らない誰かが、悪魔だということも知らずに。



42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:34:57.37 ID:1+Q4FLW+.net
「いじめ」

どんだけ急いてたのか、俺はそれだけ書いてエンターキーを押しちまった。

「いじめにあったから」

慌てて書き直して、もう一度エンターキーを叩いた。

口から心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらいどきどきしてた。



43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:43:49.42 ID:1+Q4FLW+.net
「へえ」

文字にしなくてもいいような言葉を、その人は表示させた。

俺は反射的にびくっとした。

これがいじめられっ子の性と言われれば そうかもしれないが、俺は相手が退屈そうだったり不満げだったりすると すぐにへりくだってしまう。

「いじめられて、不登校になって」

俺は頼まれてもない事情を打ち込んだ。とはいっても、こんなチャットじみたことなどしたことがないため入力速度は無茶苦茶遅い。

その上、文章をまとめるのもへたくそだ。

書いては消してを繰り返しているうちに、相手の文が表示された。



44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 04:49:41.74 ID:1+Q4FLW+.net
〈COKT93245さんが個人メッセージを求めています〉

それは誰でも見られるオープンチャットじゃなくて、プライベートなチャットへの誘いらしかった。

俺はおっかなびっくり、リンクになってるそのメッセージを押した。

〈KBES20341さんが入室しました〉

そんなメッセージが画面に現れた。

このKBなんとかってやつが自分を表してるってことに、俺は今さら気づいた。



45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:04:47.37 ID:1+Q4FLW+.net
「何で自殺したいの。教えて」

プライベートチャットに入ると、そんなメッセージが表示されていた。

メッセージの前にはアイコンがついていて、それはアンドロイドっぽい女の子の画像だった。

本当はアンドロイドじゃないのかもしれないけど、何て言うか無表情キャラ的な、綾波レイ的なって言えばいいかな。そんな感じの。

相手がそれを意識してるのかどうなのかは知らないし、ましてや相手の性別や年齢なんてわからなかったが、そのアイコンのせいで、台詞は抑揚のない例の感じで、俺の中で再生された。



46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:13:50.27 ID:1+Q4FLW+.net
「打つのが、遅いですけど……」

小心者の性で俺はそう断った。

「時間はあるから」

相手は気にしてないふうだった。

そして、口調はやっぱり綾波レイっぽかった。

……というか、当時は綾波を知らなかったから、いま思い返してみると、なんだが。

(ちなみに、その後名乗られた名前はあるが、仮の名前として、これからこのチャット相手をレイと呼ぼうと思う)



48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:23:07.70 ID:1+Q4FLW+.net
壊れた壁と、そこから垂れ下がった首つりのヒモをそっちのけに、俺はレイを相手に、夢中になって語った。

いじめが どんなにひどいものだったか。

それを見て見ぬふりする教師がどんなにクソなやつか。

遠巻きにするクラスのやつらも同罪だ、なんてぶちかましたりもした。


レイはそこにいることを示すように、時々「へえ」とか「そう」とか言うだけだった。

けど、俺はそれで十分だった。

この数時間だけでタイピングが目に見えて早くなるほど、俺はしゃべり続けた。



50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:31:08.44 ID:1+Q4FLW+.net
気づけば、タイピングのしすぎで手がだるくなっていて、眠気にも襲われてた。

けど、話すことが同じことばかりになってきても、俺は話し続けた。

初めて俺の話を聞いてくれるレイから離れちゃいけないと思った。


「もういっぺん聞くね」

それでも俺が沈黙しがちになった頃だった。レイがそう言った。

「何で自殺するの?」

こいつは人の話を聞いてなかったのか?俺は少しむっとした。

けど、すぐにレイは言葉を継いだ。

「どうして、いじめられたあなたが死んで、いじめたあいつらが生き続けるの?」



52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:38:05.38 ID:1+Q4FLW+.net
「え?」

「死は罰よ。そうでしょ、死刑は法律で一番重い刑罰なんだから」

「何だってそうでしょ。死ぬべきは悪いほうだって決まってる。なのに、どうしてあなたが死ぬの?あなたは悪いの?」

「いや、俺は悪くはないけど……」

「悪くないなら、どうして死ななくちゃならないの?」

「ほかに死ぬべき悪い人がいるっていうのに」



51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:37:28.47 ID:iZ1vhbeg.net
めちゃくちゃ読みやすいね

臨場感たっぷり

身辺整理中なので体験談は、とても助かります

ありがとう


53 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 05:49:01.10 ID:1+Q4FLW+.net
>>51
身辺整理はとりあえず思いとどまって下さい。そんな思いで書いてます。



他に死ぬべき悪って誰だ、こいつは何を言ってるんだ。疑問が頭を駆け巡ったが、答えは分かり切っていた。

「ねえ、これはゲームみたいなものだと思わない?あなたの命は一つ、相手の命も一つ。そのどちらかが失われなきゃならないなら、どっちが残るべきだと思う?」

感情の読み取れない、無機質な文字が俺の前に並んだ。

やっぱりだ。レイは、俺にあいつらを殺せと そそのかしている……?



54 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 06:00:16.45 ID:1+Q4FLW+.net
「そんなこと、わからないよ」

「俺はただ自殺するって決めて……」

「それに、そんなの犯罪だろ」

俺は話を戻そうとした。このままチャットを閉じるなんてことは、自殺を決行するよりも難しく感じられた。

レイはただそこにいて、俺の話を聞いてくれればいい。自殺したい俺の話を。

「犯罪?」

けど、レイは たじろぐことなく言った。

「私は犯罪の話なんか、してない」



55 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 06:13:54.11 ID:1+Q4FLW+.net
ログに証拠を残さないための発言だろうか。回らない頭でそう思ったが、どうやらそれは違ったようだった。

それどころか、レイの思考は ぶっ飛んでいた。

「犯罪というのは、法律に触れる行為のこと」

「けど、法律というものは国が大人数を統制するためのものであって、個人の〈正しさ〉とは乖離がある」

「それなら、あなたの自殺は正しい? それとも彼らの死が正しい?」

正しさ。

それは俺の思考にはなかった言葉だった。



59 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 11:29:10.74 ID:1+Q4FLW+.net
いじめっ子と、いじめられっ子。

そのどちらが正しく、どちらが正しくないのか。

死が正しくない者に与えられる処罰ならば、それを受けるべきはどちらなのか。

そんなの、決まってる。

「俺じゃない、あいつらだ」



60 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 11:42:09.39 ID:1+Q4FLW+.net
「じゃ、なぜあなたは自殺するの?」

レイの質問は振り出しに戻った。

「あなたは正しくない人たちに正しくない扱いを受けて、その上、正しくない終わりを選ぶの?」

「そんなこと言われても……」

ほかに何ができるってんだ。そう思うと、敗北感がこみ上げた。あれほど誇らしく崇高に思えた自殺が、負け犬のすることにしか思えなくなった。

いや、ハイな感覚でそれを見ないふりしてただけで、本当は俺も知ってたはずだった。

自殺は、この辛い現実から逃げ出す手段なんだって。俺はそれを選んだんじゃなく、選ばざるを得なくなっただけなんだって。



61 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 12:03:33.32 ID:1+Q4FLW+.net
「俺は、生きる価値のない人間なんだ」

それは深く考えて出た言葉じゃなかった。けど、自分のことを どんぴしゃで表した言葉だと思った。

俺は生きる価値のない人間だ。繰り返すと、自分が真っ暗な穴に落ちてくような気分がした。よくわからんが、概念化ってやつかな?

ある現象があるとして、それを言葉で定義した瞬間、理解できるようになる、みたいな。

生きる価値がない。俺は自分をそう定義すると同時に、本当に価値がないと思い込んじまったんだ。



62 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 12:14:46.01 ID:1+Q4FLW+.net
「俺は、最初から価値のない人間だったんだ。だから、あいつらが俺をいじめたとしても、それは仕方ないことだったんだ。

だって、俺に価値はないから。キモくて最底辺のクソだから。そうだ、俺はクソなんだよ。

だから死ぬんだ。こんなクソが生きてたら、みんなが迷惑だからさ!」


これでもかってくらい自分を貶めると、心臓が痛んだ。

けど、その痛みは快感でもあった。この期に及んで新しい性癖が開花したのかと思うくらい。


でも、その快感はレイの一言で吐き気に変わった。

「自殺の次は、自己憐憫?忙しそうね」



63 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 12:25:04.85 ID:1+Q4FLW+.net
何だよ、その言い方!俺は思った。でも、思っただけだった。

いまや俺の中は、虫のサナギ並みにぐちゃぐちゃだった。何にも形を成してないどころか、核もない、どろどろの液体だ。

チョウみたいな きれいなものになれるなんて これっぽっちも思ってないが、少なくともこの状態から抜け出すにはレイの力が必要だ。

……いや、というより、必要だと思い込んでいた。

俺はとにかく、レイに放置されたら どうなるかなんて想像もしたくなかったんだ。



64 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 12:29:49.39 ID:1+Q4FLW+.net
「数学は得意?」

レイは唐突な質問をした。

「いや、全然……」

そう答えると、レイは文字で笑った。

「だと思った。私は得意よ。順番に正しく考えれば、絶対に正しい答えが出るから」



65 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 12:37:24.00 ID:1+Q4FLW+.net
「どういう意味?」

「これは問題」「あなたは問題を抱えている」「私はそれを正しく解く手伝いがしたいだけ」

「どうして? 君には何の得もないだろ」

「そうね」

「なら、どうして」

「別に必要ないなら構わないから、そう言って」「すぐに消えるから」


そう言われてしまうと、俺は何も言えなかった。



66 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/04(金) 13:00:24.66 ID:1+Q4FLW+.net
「なら、考える時間をあげる」

黙った俺の隙を突くように、レイは言った。

「また明日。同じ時間に」

「ちょっと待って」

俺は慌ててタイピングしたが、レイが応えることはなかった。

俺の台詞を最後に画面は動かなくなった。


チャット画面を残したまま、俺はベッドにダイブした。

いつもなら漫画に埋もれてるはずの そこがきれいな理由を思い出しかけたが、それよりも断然眠気が勝った。

窓の外はすっかり明るくなっていた。小学生の甲高い声が路地に響いてうるさかった。けど、頭から毛布を被ると、光りも声も全部消えた。


レイは一体何者なんだろう。

俺は眠りに引き込まれながら、そんなことを考えた。

チャットアイコンのあの無表情キャラ、その背後には必ず現実の人間がいるはずだ。そんなことくらい馬鹿な俺にもわかってる。

けど、すでにレイはあの無表情キャラとして俺の中に存在している。動いている。まるでアニメキャラが そのまま飛び出してきたみたいに。三次元の法律や常識に縛られない、突拍子もない感覚を携えて。


そんなはずはない。そう思っても、俺はそんな想像を打ち消すことができなかった。



>>次のページへ続く
 
 


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