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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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33 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:14:14.02 ID:LZSY7jKs.net
「嫌味っぽい言い方してゴメン。

まあ追い返されたってことは、気にせず休めってことだよ。いい上司さんじゃないかw

ところで、はいこれ。ケーキと、その他いろいろ」


「いろいろ?」


「うん、あっためればいいだけのやつ。いらなかったら保存食にでもしてね」


「いらなくない…すごくありがたい」


「じゃ、早くよくなれよ!」

「え、ちょっと待った。あの、お代」

見れば、彼の手にはお財布が。



34 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:14:40.96 ID:LZSY7jKs.net
「いいよいいよ、お見舞いだよ。サンタさんからの生活感あふれるプレゼントじゃw」

「え、でもそれじゃあ……えーと、風邪うつるの覚悟で上がっていく?」

「ぜったいにヤダw早く寝ろw」


「だよね。えーと、その、あれだ…こんど酒……は、そっか、飲まないのか。じゃあ、年明けに、食事でも、ご一緒に」


なんだかやたら しどろもどろだった。あちゃー、病人に気をつかわせてしまった。

「うん、楽しみにしてるわw でもまずは、しっかり休んで風邪治せよ!」


このとき、食事のことは社交辞令としか思ってなくて なんか人助けしちゃったなあ!くらいの感覚だったのでした。



35 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:15:10.83 ID:LZSY7jKs.net
そんなだったので、なんの期待もせずに年末年始をすごして普通に仕事始めを迎えて、やっとお正月気分も抜けてきたころに突然メールでM君から食事のお誘いがきたときは

「ずいぶんと律儀だな〜」と思ってしまった。それとも、借りは返さないと気が済まないのかな?

どっちにしろ、彼とまたおしゃべりできるのは、私としては楽しみだった。

なので喜んでお受けしよう、とは思ってたんだけど……

一つだけ、気になることがあったんだ。



36 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:15:51.25 ID:LZSY7jKs.net
それは、お見舞いを届けに行ったM君のアパート。

失礼だけども、ボロだった。それも、かなりのボロ。着くなり「ほんとにここ!?家賃いくら!?」と思ったくらいボロ。

この業界、ものすごくお給料がいいわけでもない。もしかしてM君、あまりお金に余裕がないんじゃないか?

だってあのとき、すごく しどろもどろになってたし…

無理して食事に誘ってくれてるんだとしたら、どうしよう?

だけどせっかく誘ってくれてるのに、そんなんで断るのもないよねえ…。 と、まあ結局は、ご馳走になったんだけどさ。


今こうして振り返ってみると、私はこのときから、なにかボンヤリと感じとってはいたんだなあ、と思う。

そしてそのボンヤリは、やがて段々と形になっていくことになる。




37 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:16:50.10 ID:LZSY7jKs.net
M君の風邪は かなりしつこかったらしい。まずはじめに、お礼が遅くなったことを謝られた。

「参ったよ、年内で治ると思ってたのに。もう歳なのかなあ」

「栄養失調なんじゃないのー?」

冗談めかして言ったけど、M君、わりとやつれてた。

「俺、体調不良が顔に出るんだよね。でもあの差し入れは本当に助かった、実は食料が底をついてたので」

「ほかに誰か、助けてくれる人いなかったの?」

「うん、誰もいなかったねえ…」

「えー?イケメンのくせにー?」

「イケメン全員にそういう人徳が備わってると思うなよな」

「でもほら、そんな時に一番頼りになる人がいるじゃない」

「ん?誰?」

「家族だよ。電話すればよかったのに」

「あー。いまちょっと疎遠になっててね」

「あ、ごめん、そうなんだ」



38 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:17:39.17 ID:LZSY7jKs.net
そんなあいさつ代わりの会話をさっくり交わし、話題はまた音楽方面へ。

話してるうちに、昔CMで聞いてメロディーしか覚えていなかった曲をなんとM君がCD持っていることが判明して、私、大はしゃぎ。


「もうずっと気になってたんだよー!お願いです、CDを貸してください神様!!」

「…これでイヤだと言ったら鬼だよねw」

「うおおお、帰りにアパートまで取りに行ってもいい!?」

「えーと……後日じゃだめかな?」

「はああああン?なんでよ???」

「借りる分際で態度でけえなwいぶんと聞いてないから、きっとすぐには出てこないよ。一体どこに埋もれているやら…」

「そんなの、一緒に発掘するよ!」

「いや、勘弁してよ」



39 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:18:06.84 ID:LZSY7jKs.net
ピシャリとM君に言われて、はっとした。私、はしゃぎすぎて今かなり図々しいこと言った。

そうだよな…。私はM君の彼女でもなければ、友達ですらない。

ただちょっと差し入れをして、その借りをM君はこうして返してくれた。

CDを借りたら、返すときにまた私と会うことになる。

ましてや部屋に押しかけて、一緒に探すとか。

もう彼は、私に付き合う義理はないんだ。ちょっと話が合うくらいで、図に乗っちゃいけない。


「………ごめん!なんか私、馴れ馴れしいねw CDは、発掘終了後に気が向いたらでいいやw」

「え?」

M君はきょとんとしてからの態度急変の理由をすぐに察したようだった。



40 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:18:33.45 ID:LZSY7jKs.net
「そっか、ごめん、言い方悪かった。そういう意味じゃない。一緒に発掘してくれる、その気持ちはありがたいんだけどね…」


「……?なに?」

「………部屋が、とても汚いのですよ」

何故かゲンドウポーズで深刻な表情をするM君。

「そう?こないだお邪魔したときは、綺麗だったじゃない」

「あれは人に見せるエリアだから…その奥の生活エリアが、ちょっと」

「エリアわけされてるんだwでも私も人のこと言えないからなー」

「いや…いま喪子が想像した汚さとはレベルが違う。その程度の覚悟で入ったら、きっと後悔するよ」

「なんだそれ、どんなレベルだw」

「えーと、TSUTAYAの倉庫にホームレスが住み着いたレベル?」

「うわあ、なんかすごい具体的に映像が浮かぶwww」



41 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:18:58.78 ID:LZSY7jKs.net
「俺はもう、年単位で自分の部屋の床を見た覚えがない」

「ちゃんと掃除しろw」

「そこで掃除って言うのがね…必要なのは産廃業者だよ」

「威張るなwww」

「なんなら、自分の目で確かめてみる?」

「え………いいの?行っても?」

「いいの?って、俺が聞きたいよ……ほんと、マジで汚いぞ?」



49 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:26:05.50 ID:LZSY7jKs.net
M君の部屋は、汚いというのとはちょっと違った。

想像してたような、ゴミとか洗濯物が散乱してるような不潔さはなかった。一応、床も部分的には見えてたしね。

ただ、部屋のわりには大きすぎる本棚が一つ。

そこから溢れた本とCDとDVDが、床にうず高く積まれていた。

彼は、読書と映画と音楽をこよなく愛する、かたづけられない男だった。なるほど…TSUTAYAの倉庫ね。


私は映画は全然詳しくないけど、本は好き。

だからM君の蔵書量には驚いた。

「そっか…高校生のころも読書家だったもんね」

「忙しくて、いまは全然だけどね」

「あーでもこれで、えっちいのとか発見しちゃったら気まずいー」

「そこはひとつ、大人な対応で…」

「……………えええっ!M君、何これ!?」

見つけたのは、えっちいのではなくて、とある画家の画集だった。

私がご予算的にマゴマゴしているうちに販売終了してしまった限定版が、無造作に床に積まれていた。



50 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:26:38.18 ID:LZSY7jKs.net
「うわー!これ高かったでしょ?」

「あれ、喪子もその画家、好きなの?」

「うん!しかもフルセットだ〜。すげ〜」

「まーそういうのに散財できるのが、独身の醍醐味ですよ」

彼はその他にも、高額そうな画集から中古の文庫本までを、ガンガン床に積んでいた。

DVDも、私が全然知らない映画のボックスがいくつも並んでいた。

そして目的のCDはというと、一目で捜索を諦めるのにじゅうぶんな状態だった。


M君への貧乏疑惑は消えた。

これだけ趣味のものを溜め込んでいるとなると、生活苦ということはないだろう。

アパートがボロいのは、趣味にお金を回すためなのかもしれない。




51 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:27:04.38 ID:LZSY7jKs.net
堆積物を夢中で眺め倒している私に、M君が言った。

「なんか、久しぶりに自分以外の人が部屋にいるの見てると部屋の惨状が客観視できて、自分でも引くわ…」

「そこまで卑下することないよ、帰ったら靴下履き替えるけどw でもこの部屋、なんだかすごい落ち着くんだよねー」

「さては、何もない広い空間が苦手なタチだな?」

「ああ、それだw」


まるで図書館のようなその部屋は、乱雑ではあったけど それなりの秩序があって、妙なバランスで落ち着いていた。

なんだかそこに、M君の内面が現れているような気がした。


「じゃあ、CDはまた今度ってことで、本日は ご満足いただけましたかね?」

「うん、あのねM君、お願いがあります」


ちょっと思いきってみた。



52 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:27:29.34 ID:LZSY7jKs.net
「ん?なに?」

「私、またこの部屋にお邪魔しちゃ駄目かな?」

「駄目だよ」

「えっ、即答かい!」

「うん、ごめんね」

「じゃあ、私と友達になるとかは?」

「…友達」

「うん、友達。その先の下心、全くない」

「友達……は、どうかなあ」

M君は、飲み会の最初のときに見せたみたいな苦笑いをした。



53 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:27:58.09 ID:LZSY7jKs.net
「俺、友達はもう増やさないことにしてるからなあ」

「え、なにそれ。じゃあ彼女なら?」

「さっき自分で下心ないって言ったじゃないかw」

「うん、だって本当にM君の彼女になりたいとかじゃなくて ただ単に仲良くしたいと思ってるんだよ。M君、M君と私は、かなり気が合うよ」

「お。さすがですね、その押しの強さw」


この「さすが」は、私の職業柄をさしての言葉です。

押しが強いってより、言いたいことは言っちゃわないと気が済まないだけなんだけどね。

「だけど、今は仕事じゃないからね… 断られても押しかけたりしないから、大丈夫w」

こういうときの立ち直りの早さは、喪女歴の長さが物を言います。

さーて、あのCM曲のタイトルがわかっただけでもヨシとしよう、なんて思いながら、なるべく上手にさっぱりと立ち去る準備をしていたら。



54 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:28:24.41 ID:LZSY7jKs.net
「あのさ………俺、友達って、"なりましょう"ってなるもんじゃないと思うんだ」


そんなこと言われなきゃ、こんなこと言う気なかったんだけど。


「うん、まーそうかもしれない。でも、"増やさない"って決めるもんでもないと思うよ?」


よくわからなかったけど、この会話はM君にとって、なにか重要なものらしかった。


「そっか………ごめん。なんか俺、面倒くさいこと言ってるな」

「ううん、私が変なこと言い出したからだよ。こっちこそ、気を遣わせちゃってごめんね!私としては、今日が楽しかったからオッケーさw」

「CD、見つかったらメールする」

「えー、友達じゃないのに?w」

「………うん」



55 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:28:54.52 ID:LZSY7jKs.net
このとき、M君が何をどう考えてたのかは知らない。

だけどその後、CDが見つかったってメールがきて、また外で食事して それからは なし崩しに、なんとなーく呼んだり呼ばれたりして 時にはM君の部屋で、語らったりして。

つまり、私たちはいつの間にか、紛れもない友達関係になっていた。

まあ私としては、最初の望みが叶ったわけだから、何の文句もなかったんだけど。


でもだったら、あの日のM君のきっぱり拒絶は、一体なんだったんだろう……?という疑問と戸惑いが、私の中になかったわけではない。だけど そこに触れるのは大人げない気がした。

私は いろんなことをあんまり深く考えない、単純ノンキ。でもM君は反対で、繊細で思慮深く、ちょっと屈折したとこのある人。だからきっと、私では思いもつかないことを考えていたんだよ、うん。



56 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:29:17.71 ID:LZSY7jKs.net
正直に言います。


ガサツな私からすると、M君のそんな繊細さ、思慮深さは、時に複雑すぎて面倒で、臆病さを感じさせもした。

前にも書いたとおり、私の好みは、見た目も性格もごつくて男らしい人。

イケメンで、優しくて、控えめで、線の細いM君は、その対極。

失礼ながら、私には彼が ただの気弱な優男にしか見えていなかった。


同じように、M君だって私のことをガハガハよく笑ううるさい女って程度にしか見てなかったと思う。

そんなふうに、私たちは最初、お互いを異性としては全然見てなかったんだ。


それが あることをきっかけに、私の気持ちが大きく動いてしまったのです。



57 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 19:29:45.59 ID:LZSY7jKs.net
飲み会からは、半年以上たったころだったかな。

M君の車で、ちょっと遠くの美術展に出かけたことがあった。

外で会うときは いつも現地集合、現地解散だったので おー、なんだかデートみたいですぞ!と、ちょっと浮かれた私。

それでバチでもあたったんだろーか。


帰りに寄ったコンビニで、私は自分で出したゴミを捨てようと、鍵を借りて車に戻った。

ゴミの入ったビニール袋を取って振り返ったら、隣の車に袋が当たってしまった。

そしたら その車から、わかりやすいDQNが降りてきた。二人も。




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:純愛, 相手の過去, メンタル, メンタル,
 


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