涙の色は赤がいいだろ?
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63 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:39:40.07 ID:msabUvV8.net
少し時間が経って落ち着いてから、俺は一つのことを決めた。
明日彼女に真実を聞こう。
割のいいバイトが終わって嫌だったからじゃない、俺は ただこのバイトがなんだったのか気になってしょうがなかった。
もし、彼女がバイトを募集したんだとしたら、一体なんのために そんなことをしたのか。
ここまでバイトを続けたんだ、それくらい知る権利はあるはずだ。
64 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:40:30.49 ID:msabUvV8.net
その夜は疑問と推測が頭の中を蠢いてあまり眠れなかった。
だかそれも明日はっきりするはずだ。
一体彼女が何者なのか。
65 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:41:00.11 ID:msabUvV8.net
次の日、朝起きると俺はすぐに公園に向かった。
さすがにこんな早い時間から公園にはいないだろうと思ったが、それなら待てばいい。
とにかく俺は早く真実を知りたかった。
66 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:41:25.33 ID:msabUvV8.net
公園に着くと、驚くことに彼女は もうそこにいた。
「おはようございます、やっぱり来ちゃいましたか」
来ちゃった? どういう意味だ?
聞きたいことは たくさんあったが、俺はとりあえず彼女の隣に座った。
「随分早いんだな」
「公園の主ですから」
そう言った彼女の顔は、前のような得意げな顔ではなく、ただただ、悲しそうな顔だった。
67 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:41:59.44 ID:msabUvV8.net
「来てすぐで悪いんだが、一つ聞きたいことがある」
ここまでくると、俺にはもう確信があった。彼女バイトについて何か知っているという確信が。
「……」
彼女は何も答えなかった。
俺はその沈黙をイエスと受け取り、さっき得た確信を口にした。
「君があのバイトを募集したのか?」
68 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:42:25.61 ID:msabUvV8.net
「……少し違います、私が募集したわけではありません」
彼女は未だ悲しそうな顔で、とても小さな声を出してそう言った。
「どういうことだ?」
「すみませんでした、私は今まであなたを騙してたんです」
「だから どういうことなんだ? 本当のことを教えてくれないか?」
俺はもう、思ったことを全部口に出していた。
いつもなら もっと考えてから話すのに、今はそれができなかった。
69 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:42:47.70 ID:msabUvV8.net
「そうですね、まずあなたの正体から話しましょうか」
「正体?」
どういうことだ? 俺の正体って、俺には正体だとかそんな大層なものはない。
そもそも なんで俺の話になるんだ?
わけがわからなかった。
「そうです、正体です。あなたの正体は……」
彼女は少し話すのをためらっているように見えた。
少しして、何か決心をしたような目になって彼女は口にした。
70 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:44:09.54 ID:msabUvV8.net
「あなたの正体はレンタルフレンドです」
少し時間が経って落ち着いてから、俺は一つのことを決めた。
明日彼女に真実を聞こう。
割のいいバイトが終わって嫌だったからじゃない、俺は ただこのバイトがなんだったのか気になってしょうがなかった。
もし、彼女がバイトを募集したんだとしたら、一体なんのために そんなことをしたのか。
ここまでバイトを続けたんだ、それくらい知る権利はあるはずだ。
64 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:40:30.49 ID:msabUvV8.net
その夜は疑問と推測が頭の中を蠢いてあまり眠れなかった。
だかそれも明日はっきりするはずだ。
一体彼女が何者なのか。
65 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:41:00.11 ID:msabUvV8.net
次の日、朝起きると俺はすぐに公園に向かった。
さすがにこんな早い時間から公園にはいないだろうと思ったが、それなら待てばいい。
とにかく俺は早く真実を知りたかった。
66 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:41:25.33 ID:msabUvV8.net
公園に着くと、驚くことに彼女は もうそこにいた。
「おはようございます、やっぱり来ちゃいましたか」
来ちゃった? どういう意味だ?
聞きたいことは たくさんあったが、俺はとりあえず彼女の隣に座った。
「随分早いんだな」
「公園の主ですから」
そう言った彼女の顔は、前のような得意げな顔ではなく、ただただ、悲しそうな顔だった。
67 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:41:59.44 ID:msabUvV8.net
「来てすぐで悪いんだが、一つ聞きたいことがある」
ここまでくると、俺にはもう確信があった。彼女バイトについて何か知っているという確信が。
「……」
彼女は何も答えなかった。
俺はその沈黙をイエスと受け取り、さっき得た確信を口にした。
「君があのバイトを募集したのか?」
68 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:42:25.61 ID:msabUvV8.net
「……少し違います、私が募集したわけではありません」
彼女は未だ悲しそうな顔で、とても小さな声を出してそう言った。
「どういうことだ?」
「すみませんでした、私は今まであなたを騙してたんです」
「だから どういうことなんだ? 本当のことを教えてくれないか?」
俺はもう、思ったことを全部口に出していた。
いつもなら もっと考えてから話すのに、今はそれができなかった。
69 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:42:47.70 ID:msabUvV8.net
「そうですね、まずあなたの正体から話しましょうか」
「正体?」
どういうことだ? 俺の正体って、俺には正体だとかそんな大層なものはない。
そもそも なんで俺の話になるんだ?
わけがわからなかった。
「そうです、正体です。あなたの正体は……」
彼女は少し話すのをためらっているように見えた。
少しして、何か決心をしたような目になって彼女は口にした。
70 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:44:09.54 ID:msabUvV8.net
「あなたの正体はレンタルフレンドです」
72 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:45:05.15 ID:msabUvV8.net
私は昔から友達がいませんでした。
周囲に馴染めなくて一人で ずっと本を読んでいるような子供だったと思います。
家族も、父は割と大きな会社を経営していて家に帰ってくるのは夜遅く、母は私が物心つく前に死んでしまったので、私は広い家で ずっと一人でいました。
73 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:45:32.51 ID:msabUvV8.net
中学生になっても、高校生になっても それは変わらず、私はずっと人と関わらないままでした。
74 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:45:51.47 ID:msabUvV8.net
ただ、こんな私にも親しい友人や、温かい家族がいる生活に憧れがありました。
学校で友達と意味もなくお喋りしたり、そのことを家族と話したり、そんな生活をしてみたいと思ってたんです。
75 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:46:46.93 ID:msabUvV8.net
そんなある日、テレビで『レンタル家族』というものの特集をやってるのを見ました。
レンタル家族とは その名の通り、家族の代わりをしてくれる人の、貸し出しサービスのことです。
お葬式とか結婚式での家族の代わりや、忙しい両親のために子供と遊ぶなど、他にもレンタルフレンドやレンタル彼氏とかもいるらしく、寂しい人の心を埋めるサービスだとのことでした。
76 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:46:59.81 ID:msabUvV8.net
そのテレビではレンタル家族について、批判的に特集されてたんですが、何を思ったんでしょうかね、私にはレンタル家族がすごくいいものに見えたんです。
私の心を埋めてくれるのは これだと思ったんですよ。
77 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:47:46.20 ID:msabUvV8.net
その後すぐ私はレンタル家族を派遣する会社に電話しました。
そして父のいない休日にレンタル家族に来てもらうことになりました。
78 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:48:09.93 ID:msabUvV8.net
レンタル家族は本当の家族のように私に接してくれました。
一緒にご飯を食べたり、お料理をしたり、それは私にとって全部初めてのことでした。
79 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:49:42.57 ID:msabUvV8.net
それからは私は父がいない日は、ほとんどレンタル家族に来てもらうようにしました。
その時間は本当の家族のようで、本当に楽しかったです。
レンタル母とお裁縫したり、レンタル父とテレビを見たり、家族とすごすのは こんなに楽しいんだと思いました。
80 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:50:05.11 ID:msabUvV8.net
でも所詮それは幻にすぎませんでした。
時間になるとレンタル家族は帰っちゃうんですよ、そしてその後 私は、広い家にただ一人とりのこされるんです。
その時間ほど虚しいものはありませんでした。
81 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:51:11.07 ID:msabUvV8.net
そんなことを何回も繰り返すうちに、私は一体何をしているんだろうと思うようになりました。
なんで こんな虚しいことをしてるんだ? と。
私はレンタル家族の派遣をやめにしました。
82 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:51:28.80 ID:msabUvV8.net
だけど私はレンタルサービスをやめようとは思いませんでした。
もうあの寂しい生活に戻るのは嫌だったんです。
だから今度こそ上手くやろうと決めました。
83 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:52:01.59 ID:msabUvV8.net
思えば家族という深すぎる関係をレンタルするのには無理があったんです。
だから友達にすることにしました。
そして今度は、相手に自分がレンタルフレンドだと知らずに、私と話して欲しいと思いました。
84 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:52:22.30 ID:msabUvV8.net
レンタル会社にそう頼むと、一つ案を出してくれました。
それは、普段レンタルフレンドをしてるわけではない何も知らない人を、どこかに呼び出して そこにずっといてもらうバイトとしてお金を払い、私もそこに行き そこでお話をするということでした。
85 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:54:07.12 ID:msabUvV8.net
その後 友達になれるかは私次第と言われ、少し不安もありましたが、私はそれを頼むことにしました。
86 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:54:35.18 ID:msabUvV8.net
そしてバイトをしてくれる人も見つかり、場所も人気のない公園に決まりました。
そして決行の日、私は彼に話しかけました。
87 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:55:02.07 ID:msabUvV8.net
「涙の色は赤がいいと思うんですよ」
88 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:55:59.97 ID:msabUvV8.net
「これがこのバイトの真実です、本当にすみませんでした。私はお金で買ったんです、あなたを。最低ですよね……」
俺は何も言うことができなかった。
真実は俺が想像していたよりも あっけなく、それなのに悲しいものだった。
89 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:57:05.60 ID:msabUvV8.net
なんかもっと大きな陰謀とか謎がこのバイトにはあると思ってた。
その想像に比べたら よっぽど簡単な真実のはずなのに、それなのに俺にとってこれは とても悲しいものだった。
90 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:57:27.77 ID:msabUvV8.net
「本当にごめんなさい…… もうここには来ません、あなたの前にも現れません。
本当にすみませんでした。
私には無理だったんですね、友達とか家族とか。
私はそんなもの望んじゃいけなかったんです」
そう言い残すと彼女は走って公園から出て行った。
91 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:58:13.01 ID:msabUvV8.net
俺はそれを止めることができなかった。
なんて言ったらいいか わからなかったんだ。
最低なのは俺の方だ、こんな時かける言葉もわからず、引き止めることもできない。
本当、最低だ……
92 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:59:48.23 ID:msabUvV8.net
気づくと もう日が落ちて、暗くなっていた。
彼女が公園を出て行ってから もう何時間も経ったのに、俺は まだここから動くことができなかった。
俺は いつまでここにいるんだろうか。彼女を追いかけるのか、家に帰るのか、どっちかでもすればいいのに。
俺はどっちもできないんだ。
ここにいたって何にも変わらないのに。
本当、俺は弱いな……
93 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:00:50.83 ID:msabUvV8.net
「どうしましたか? こんなところで」
突然横から声が聞こえた。
顔を上げてみてみると、そこには二十代後半くらいの男性がいた。
「大丈夫ですか? 何かあったんですか?」
大方、ベンチに座って俯いてる俺を見て、心配になって声をかけたんだろう。
おせっかいな人もいるもんだな。
94 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:01:41.51 ID:msabUvV8.net
俺は誰とも話したくなかった。
何も考えたくなかった。
だから、この人にどっかに行ってもらうためにも、頭によぎった一つの言葉を そのまま言った。
95 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:02:36.06 ID:msabUvV8.net
「涙の色は赤がいいだろ?」
96 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:03:17.08 ID:msabUvV8.net
なんでこの言葉を選んだのだろう?
彼女の顔が頭に浮かんだ。
まぁ、いい。なんにしろ、こんなわけのわからないことを言われたら、危ないやつだと思ってどこかへいくだろう。
97 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:04:23.17 ID:msabUvV8.net
しかし彼の反応は俺の予想とは違っていた。
「なるほど、なかなか面白い考えですね。確かに、涙の色が赤だと便利かもしれません。助けを求める涙として目立ちますしね」
なんなんだこの人は、こんなヤバそうな奴にこんなわけわからないこと言われたんだぞ、普通逃げるだろ。
98 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:05:00.60 ID:msabUvV8.net
「まぁ、貴方がなんで そう思ったのかはわかりませんが、一つだけわかるとしたら貴方に何か悲しいことがあったってことですかね」
「へっ?」
俺の口から間抜けな声が漏れていた。
どういうことだ?
「だってそうでしょ、悲しいことがなかったら涙の色の話なんてしませんよね?」
男性の言葉に一人の少女の顔が頭をよぎった。
99 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:05:31.73 ID:msabUvV8.net
「そうか、そうだ、そうだったんだ」
今度は大きな声が俺の口から出た。
「どうしましたか? 急に?」
男性は、突然叫んだ俺に驚いたようだ。だがそんなことはどうでもいい。
100 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:05:56.61 ID:msabUvV8.net
そうだよ、そうだったんだ。悲しくなかったら涙の話なんかしないんだ。
涙の話なんかどうでもよかったんだ。彼女は俺にSOSを出してたんだ。
助けて、と。
101 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:06:28.00 ID:msabUvV8.net
彼女の顔を思い出す。
すると その笑顔の裏に、真剣な顔の裏に、得意げな顔の裏に、いろんな顔の裏に隠したその目には、赤い涙が流れていた。
彼女は いつも赤い涙を流してたんだ、ずっと。
何が言葉は嘘をつく、だよ。涙だって我慢しちゃうんじゃないか。
102 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:07:08.50 ID:msabUvV8.net
「どうしました? 大丈夫ですか?」
男性が俺に話しかけていた。
「はい、貴方のおかげでわかりました。ありがとうございます」
俺は早口で そう返した。
一刻も早くここから去りたかったからだろう。
「そうですか、なんのことかわかりませんが、力になれたのならよかったです」
男性は少し戸惑いながらも そう言った。
103 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 21:07:39.78 ID:msabUvV8.net
「本当にありがとうございます、あの、お名前聞いてもいいですか?」
「私は磯崎です。これは私の想像ですが、多分貴方にはこれから大変なことが待っているんでしょう。どんなことかはわかりません。でも、私も応援してます。頑張ってください」
磯崎さんは とても優しい顔でそう言った。
「ありがとうございます、磯崎さんですね。それじゃあ自分はもう行きます、本当にありがとうございました」
俺はそう言いながら、もう走っていた。
彼女のもとに行くために。
彼女のSOSに応えるために。
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