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涙の色は赤がいいだろ?
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36 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:21:53.09 ID:msabUvV8.net
「聞いてますか?」
俺が考え事をしているうちに、彼女の話は もう始まっていたようだ。俺の肩を揺さぶりながら そう聞いてきた。
「ああ、涙の話だよな」
「はい、やっぱり赤がいいと思うんですよ」
「SOSのサインとして目立つからだよな」
「はい」
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:22:31.52 ID:msabUvV8.net
ここで一つ疑問が芽生えた。
「でも、それなら何で赤なんだ。目立つ色なら他にいくらでもあるだろ?」
俺は その疑問を彼女にぶつけた。
彼女と話していると、素直な子供のように疑問をすぐ口にしたくなる。多分、彼女が明確な答えをくれるからだろうな。
38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:23:48.48 ID:msabUvV8.net
「そうですね、逆転クオリアって知ってますか?」
「確か自分が見ている色と、他人が見ている色は違うかもしれないってやつだよな?」
クオリア、確かそんな話だった覚えがある。
「その通りですね。私が「赤」だと教えられてきた色、例えばイチゴ、そして私が「緑」だと教えられてきた色、スイカとかですかね、イチゴとスイカこれを私は「赤」と「緑」として教えられてきました。
そしてそれは他の誰かも同じで、イチゴを「赤」、スイカを「緑」だと認識しています。
でも、私が見ている「赤」を他の誰かは私が「緑」だと思っている色で認識しています。
しかし、その私が「緑」だと思っている色は、その人の中では「赤」と名付けられているため、表面上の色の名前としては一緒で、会話にも差し支えはありません。
でも、見えている世界の色は全然違う。そんな話ですね」
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:22.43 ID:msabUvV8.net
「ああ、でもそれがどうしたんだ、今回の話と関係あるか?」
「つまりですね、意味があるのは「赤」という色ではなくて、「赤」という言葉だということです」
どういうことだ? それは同じ意味じゃないのか? 彼女の言いたいことが よくわからなかった。
「聞いてますか?」
俺が考え事をしているうちに、彼女の話は もう始まっていたようだ。俺の肩を揺さぶりながら そう聞いてきた。
「ああ、涙の話だよな」
「はい、やっぱり赤がいいと思うんですよ」
「SOSのサインとして目立つからだよな」
「はい」
37 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:22:31.52 ID:msabUvV8.net
ここで一つ疑問が芽生えた。
「でも、それなら何で赤なんだ。目立つ色なら他にいくらでもあるだろ?」
俺は その疑問を彼女にぶつけた。
彼女と話していると、素直な子供のように疑問をすぐ口にしたくなる。多分、彼女が明確な答えをくれるからだろうな。
38 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:23:48.48 ID:msabUvV8.net
「そうですね、逆転クオリアって知ってますか?」
「確か自分が見ている色と、他人が見ている色は違うかもしれないってやつだよな?」
クオリア、確かそんな話だった覚えがある。
「その通りですね。私が「赤」だと教えられてきた色、例えばイチゴ、そして私が「緑」だと教えられてきた色、スイカとかですかね、イチゴとスイカこれを私は「赤」と「緑」として教えられてきました。
そしてそれは他の誰かも同じで、イチゴを「赤」、スイカを「緑」だと認識しています。
でも、私が見ている「赤」を他の誰かは私が「緑」だと思っている色で認識しています。
しかし、その私が「緑」だと思っている色は、その人の中では「赤」と名付けられているため、表面上の色の名前としては一緒で、会話にも差し支えはありません。
でも、見えている世界の色は全然違う。そんな話ですね」
39 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:22.43 ID:msabUvV8.net
「ああ、でもそれがどうしたんだ、今回の話と関係あるか?」
「つまりですね、意味があるのは「赤」という色ではなくて、「赤」という言葉だということです」
どういうことだ? それは同じ意味じゃないのか? 彼女の言いたいことが よくわからなかった。
40 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:24:52.40 ID:msabUvV8.net
「悪い、もう少し具体的に言ってもらっていいか?」
「そうですね、じゃあ赤色と聞いて何を思い浮かべますか?」
「そうだな、イチゴとかトマトとかか?」
「ふふっ、あなたが食いしん坊さんだということはよくわかりました」
いたずらっぽく笑いながら彼女はそう言った。
「いや、別にそういうわけじゃ……」
食いしん坊のレッテルを貼られるのは嫌なので、とりあえず否定はしといた。
41 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:25:25.25 ID:msabUvV8.net
「すみません、冗談ですよ。そのですね、じゃあ、赤色で危ないものといったら どうでしょうか?」
「危ないものか…… 赤信号とか、……そうか血か」
「正解です。そう、血ですね。血の色が「赤」と呼ばれていることが大切なんです」
「確かに血には危機感を覚える。だから赤がいいのか」
「そうです、別にあなたにとっての「赤」が私にとっての「緑」だとか、そんなことは どうでもいいんです。
血の色が「赤」と呼ばれている。
そして血が流れていると人は危ないと判断する。この二つが大切なんです。
何色に見えていようと、涙が血と同じ色なら、人はすぐにその人のSOSに気づいてくれるでしょ?」
42 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:25:53.81 ID:msabUvV8.net
「なるほどな、確かになかなか面白い話だな」
「どうですか? これで赤がいいと思ったでしょ?」
彼女の話は筋が通っていたし、納得もした。それでもやっぱり俺の心は変わらなかった。
「筋は通ってるんだ、納得もしてる、でもやっぱりなんか違う気がするんだよな」
上手く言葉をまとめることができなさそうだったので、そのまま口にした。
43 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:26:48.96 ID:msabUvV8.net
「そうですか…… 残念ですね。でも負けませんよ。必ず納得させてみせます」
また、いたずらっぽく笑ったその顔に、俺は見惚れていた。
「どうしたんですか? 聞いてますか?」
見惚れて、止まったままの俺に彼女が問いかけてきた。
「ああ、大丈夫だ。そうだな、望むところだ。納得させてみてくれ」
「はい、もちろん」
そう笑いながら言った、その笑顔に俺はまた見惚れた。
「そうですね、じゃあこんな話があります……」
44 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:27:18.98 ID:msabUvV8.net
それから毎日俺は公園に行き、彼女と話をした。
話の内容は涙の色の話だけではなく、お互いのことや、他愛もない話などいろいろ、本当にたくさん。
彼女と話す時間は俺にとってだんだん大切なものになっていき、普段人と喋る機会の少ない俺は、この時間だけが人と関わる時間になっていた。
45 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:27:48.46 ID:msabUvV8.net
もちろん、その間もバイトは継続しており、この前、今までのバイト料が本当に振り込まれた。
46 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:28:41.74 ID:msabUvV8.net
「これでどうですか? やっぱり赤がいいでしょ?」
七月が終わる頃になっても、涙の色の話に決着はつかず、俺たちは まだ話し合っていた。
「そうなんだけど、でもやっぱりなんか違うんだよな」
「またそれですか…… あ、もしかして私と話していたいから、わざと納得しないでいるんですか?」
彼女はニヤニヤ笑いながらそう聞いてきた。
最近では、彼女はこんな風に俺を からかうようにまでなっていた。
いつもなら すぐ否定するんだが、今日は少しだけ仕返しをしてみたくなったので、俺は真剣な顔で、「そうかもな」と言った。
47 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:29:15.09 ID:msabUvV8.net
そしたらさ、笑っちゃうよ、頬を赤くしながら、「ど、どうしたんですか急に」だってさ。
その顔があまりにも可愛かったから、俺は もう少しだけからかうことにした。
「いや、その通りかもしれないと思ったんだ。一緒にいるのが楽しいから、話を続けていたいから否定してるのかなと思ってな」
「そ、そうですか…… ありがとうございます……」
なぜか少し伏し目がちに彼女はそう言った。
その顔に俺は、冗談だとも言えなくなり、しばらく沈黙が続いた。
48 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:31:08.03 ID:msabUvV8.net
沈黙を破ったのは携帯が鳴る音だった。
携帯を開くと、今日のバイトの終わりを告げるメールがそこにあった。
49 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:31:38.26 ID:msabUvV8.net
毎回思うんだが、バイトが終わる時間は、一体どういう基準で決められているんだろうか?
いつも終わる時間はバラバラで、何の規則性もない。どこかで俺を見張って時間を決めているんだろうか?
そう思って周りを見渡したが、そんなことができるような場所は、どこにもなかった。
50 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:33:00.06 ID:msabUvV8.net
「どうしたんですか?」
急にキョロキョロした俺を見て不思議に思ったんだろう、彼女がそう聞いてきた。
「いや、なんでもない……」
そう言おうとして、一つアイデアが浮かんだ。
もしここで この子に、このバイトのことを相談したら、きっといい解答を導き出してくれるのではないだろうか。
今までの会話からわかったことだが、この子は頭がいい。
その目は いつも真実を見透かしているように見えた。そんな彼女なら何かわかるかもしれない。
51 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:33:32.61 ID:msabUvV8.net
バイトのことは口外するなと言われている。
だが、まわりに監視がいるわけでもなさそうだし、ここで話してもバレることはないだろう。
それにいくら割がいいとはいえ、俺はこのバイトのことを不気味に思い始めていた。
さっき監視はいなさそうと言ったが、監視がいないなら一体何のためにこんなことをしているんだ?
いい加減はっきりさせるべきなのかもしれない。バイトを続けるにしても辞めるにしてもだ。
その足がかりにでもなるならと、俺は彼女に相談することにした。
52 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/12(土) 20:34:06.62 ID:msabUvV8.net
「なぁ、相談があるんだけど、いいか?」
意を決して彼女にそう聞いた。
「相談ですか…… いいですよ、私で力になれることなら何でも言ってください」
彼女は力強い目でそう言ってくれた。
「実は……」
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