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あなたの知らない世界
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466 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:38 ID:sjh1JPwQ
「ああそうか。でもそんなの取っといてあるかなあ。」
「早く探せ!」
「それが人に物を頼む態度か!」
「いいから早くしてくれ!」
親父は舌打ちして、乱暴に受話器を置く。その様子が受話器を通して耳に伝わってきた。遠くで母親を呼ぶ声がする。
親父が戻ってくるまでの時間が待ち遠しい。
467 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:42 ID:sjh1JPwQ
「おう、あったぞ。」
「教えてくれ!」
私は親父が読み上げる千春の自宅の住所と電話番号を書き留めた。
「ところで何が届いたんだ。」
「ああ何かえらく高級なチョコらしいな、確か”デコバ”とか言う・・」
「”ゴディバ”じゃないのか?」
千春は私をはじめ家族全員が甘党である事を知っていた。
「ああそれそれ。母さんが喜んでたぞ。後で手紙書くって言ってた。お前からもお礼言っとけ。」
「わかった。悪かったな。」
「ああそうか。でもそんなの取っといてあるかなあ。」
「早く探せ!」
「それが人に物を頼む態度か!」
「いいから早くしてくれ!」
親父は舌打ちして、乱暴に受話器を置く。その様子が受話器を通して耳に伝わってきた。遠くで母親を呼ぶ声がする。
親父が戻ってくるまでの時間が待ち遠しい。
467 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:42 ID:sjh1JPwQ
「おう、あったぞ。」
「教えてくれ!」
私は親父が読み上げる千春の自宅の住所と電話番号を書き留めた。
「ところで何が届いたんだ。」
「ああ何かえらく高級なチョコらしいな、確か”デコバ”とか言う・・」
「”ゴディバ”じゃないのか?」
千春は私をはじめ家族全員が甘党である事を知っていた。
「ああそれそれ。母さんが喜んでたぞ。後で手紙書くって言ってた。お前からもお礼言っとけ。」
「わかった。悪かったな。」
468 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:44 ID:sjh1JPwQ
「用事はそれだけか?いいなら切るぞ。」
「親父」
「何だ」
「今度帰る時何か買ってってやる。何がいい?」
「めずらしいじゃないか、そうだな・・んじゃ”万寿”がいいな。」
「マンジュ?」
「久保田の万寿だ。酒屋に行ってそう言えば解る。」
「わかった。買ってくよ。」
「母さんの奴、最近徳用の焼酎ばっかり買ってきやがんだよ。未だに酒と焼酎の違いが解ってない。お前からも言ってやってくれ。」
「まあ仲良くやってくれ。んじゃあな。」
何も言わず親父から電話を切る。これが親父の悪い癖だ。
この3週間後、まるで親父に騙されたかの様に財布の中身から1万3000円が消えていった。
472 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:47 ID:sjh1JPwQ
電話はしなかった。この日私は会社を休んだ。
直接千春の自宅まで向かった。千春と同じ事をしてみようと思った。
玄関のチャイムを鳴らす。
しばらくして千春の母親が出てきた。
私は自分の名を告げ、千春を呼び出してもらった。
すると母親は微笑み、千春を呼びに行った。千春の母親は全てを悟っているようだった。
千春は驚くだろうか?
あの日から5日間が経過していた。
474 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:50 ID:sjh1JPwQ
千春が階段から駆け降りて来た。千春の部屋は2階らしい。
「良ちゃん?!」
千春が驚いていた。
「どうして?」
ジーンズに真っ白なブラウス。
ラフな格好だが、そんな姿が千春には一番似合っている。
「”デコバ”のチョコレート悪かったな。お袋が喜んでたそうだ。」
「ゴディバでしょ」
千春が笑顔に変わった。
皮肉にも2度に渡り二人を引き合わせたのは親父だった。
476 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 17:55 ID:sjh1JPwQ
「こんな所まで・・電話してくれればそっち行ったのに・・」
「俺と同じ思いをさせてやろうと・・」
「上がって」
千春の部屋に初めて入った。
整理整頓という言葉が最も似合う、千春らしい部屋だった。
壁にかかるコルクボードは、私と千春の写真で埋め尽くされていた。
その全てが幸せの絶頂の二人を映し出していた。
やがて千春がコーヒーを両手に2階に上がってきた。
478 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:00 ID:sjh1JPwQ
「座って」
「あ、うん。」
「初めてだね。部屋入るの。」
「綺麗にしてるんだな。」
「私A型だもん」
しばらく沈黙した。先に切り出したのは私の方だった。
「ずっと千春の事を考えてた。」
「私も良ちゃんの事考えてた」
「やっぱり千春が好きだ。別れたくない。」
「・・・・・・。」
千春がうつむいた。
「彼女はいいの?」
「あんなの嘘だ。彼女なんかいないよ。」
千春が顔を上げる。既にその瞳には涙が溜まっていた。
479 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:02 ID:sjh1JPwQ
「私を許せるの?」
千春は涙声だった。
千春は私の前で随分と惨めな思いをした筈だ。随分と傷ついた筈だ。
それでも千春は私を必要としてくれた。
「もう許すとか許さないとかどうでも良くなった。千春が居てくれればそれでいい。」
「良ちゃん・・」
「一緒に暮らそう千春」
483 名前: 良介 投稿日: 03/07/04 18:07 ID:sjh1JPwQ
一年後・・
二人は千春の実家へ向かっていた。
一年前のこの日、二人はその場所から再出発した。
そしてその場所は、また新たな生活を始めるために最初に行かなければならない場所だ。
「俺殴られないかな?」
「解んない。うちのお父さん空手やってるからなあ・・」
「うわぁ・・胃が痛い。お前守ってくれよ。」
「大丈夫だよ。何となく話しておいたから。怒ってなかったよ。」
「そうだといいけど・・」
結婚するにはいささか若い二人だ。しかし、急がなければならない。
千春のお腹の中に新しい生命が宿った。
>>次のページへ続く
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