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233 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:04:02.24 ID:MzdjVTRc0.net
吉田は弾いていたギターを拭きながらケースにしまい、肩からがっしりと背負った。
佐野も外着に着替え終え、樋口も準備OKといった顔だった。
234 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:05:06.26 ID:MzdjVTRc0.net
吉田「まあ最後の夜だからな、民宿くらいいつか抜け出さねえとって思ってたんだよwwwwww」
佐野「俺らが問題起こさずに帰る訳にもいかねえだろ?」
樋口「当たり前だ!急ぐぞwww」
最終日の夜、合宿の最後に民宿を抜け出す。
それくらいするのが高校生だよなぁ。
行き先は皆分かっていた。もちろんあの東屋だ。美凪はまだいるはずだ。
235 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:06:08.00 ID:MzdjVTRc0.net
ミーティング開始5分前。入口からは人が多いため、抜け出せないことを分かっていた。
だから、部屋のベランダから非常用のロープを吊るし、4人で降りていく作戦を決行。
夏とはいえ夜の7時にもなると、空のほとんどが紫色で覆われており薄暗い。窓を開けると風で風鈴がチリンチリンと鳴り始めた。
236 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:07:25.87 ID:MzdjVTRc0.net
バレるかバレないかギリギリのスリルってものは、青春真っ只中の高校生には大好物。
みんなワイワイと騒いで興奮しながら、薄暗い中民宿を裏から抜けていった。
民宿前の道は直線で人の目が多いため、草を掻き分け林をぬけて、民宿の裏側にある川の上流から公園まで駆け下りることにした。
237 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:08:30.87 ID:MzdjVTRc0.net
川から公園に降りるのは かなりの大回りをしなければならなかったが、そんなこと気にならなかった。
川の水よりも速いんじゃないかというくらいみんな全力疾走。
岩を何個も乗り越えた。靴が水に濡れても関係なし。吉田が肩からかけているギターケースを岩にぶつけて叫んでいたが、止まらずに走り続けた。
吉田は弾いていたギターを拭きながらケースにしまい、肩からがっしりと背負った。
佐野も外着に着替え終え、樋口も準備OKといった顔だった。
234 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:05:06.26 ID:MzdjVTRc0.net
吉田「まあ最後の夜だからな、民宿くらいいつか抜け出さねえとって思ってたんだよwwwwww」
佐野「俺らが問題起こさずに帰る訳にもいかねえだろ?」
樋口「当たり前だ!急ぐぞwww」
最終日の夜、合宿の最後に民宿を抜け出す。
それくらいするのが高校生だよなぁ。
行き先は皆分かっていた。もちろんあの東屋だ。美凪はまだいるはずだ。
235 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:06:08.00 ID:MzdjVTRc0.net
ミーティング開始5分前。入口からは人が多いため、抜け出せないことを分かっていた。
だから、部屋のベランダから非常用のロープを吊るし、4人で降りていく作戦を決行。
夏とはいえ夜の7時にもなると、空のほとんどが紫色で覆われており薄暗い。窓を開けると風で風鈴がチリンチリンと鳴り始めた。
236 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:07:25.87 ID:MzdjVTRc0.net
バレるかバレないかギリギリのスリルってものは、青春真っ只中の高校生には大好物。
みんなワイワイと騒いで興奮しながら、薄暗い中民宿を裏から抜けていった。
民宿前の道は直線で人の目が多いため、草を掻き分け林をぬけて、民宿の裏側にある川の上流から公園まで駆け下りることにした。
237 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:08:30.87 ID:MzdjVTRc0.net
川から公園に降りるのは かなりの大回りをしなければならなかったが、そんなこと気にならなかった。
川の水よりも速いんじゃないかというくらいみんな全力疾走。
岩を何個も乗り越えた。靴が水に濡れても関係なし。吉田が肩からかけているギターケースを岩にぶつけて叫んでいたが、止まらずに走り続けた。
238 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:09:27.46 ID:MzdjVTRc0.net
樋口「夜の川怖ぇwww 流れ速すぎwww」
吉田「怖いならなんか弾いてやるよwww」
佐野「やめろ遅くなるだろwww」
とか笑いまくったな。結局、樋口が怖さを紛らわせるために大声で歌い始めた
マキシマム ザ ホルモンの 「ぶっ生き返す」をみんなで熱唱しながら走っていたwww
239 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:09:48.20 ID:MzdjVTRc0.net
樋口「キィオクノハカヴァニヴァラマカレタマルデセッメイノダストカンドゥノメイキュッ!wwwwwwwww」
俺「デスボイスやめろwwwwwwwww」
240 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:10:33.71 ID:MzdjVTRc0.net
そうして、いつもスイカをくれた農家のおじさんの家辺りまで川を降りてきた。
この頃には辺りも真っ暗になっていて余計不気味だった。
ここまで来ればあとはいつも通り公園までの峠道を登るだけだ。みんなコケたり何か落としたりしながらも走っていた。
241 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:10:49.44 ID:MzdjVTRc0.net
美凪に絵の楽しさを教わって、ついには夢も目標も出来た。
だが、友達とこんなに馬鹿なことをして笑い合うのは初日から変わっていなかった。
242 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:11:23.93 ID:MzdjVTRc0.net
俺「なぁ、お前ら、言ってなかったんだけどさ」
俺「あの子の名前、美凪って言うんだよ。美しいに凪で、ミナギ!」
樋口「はぁ!?!?なんで今まで言ってくれねえんだよwwwwww」
吉田「聞いてねえって、ずるいぞwwwwww」
佐野「知ってたなら言えよwwwwww」
243 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:11:47.31 ID:MzdjVTRc0.net
初日から知ってたってことは言わないでおこう。自分だけが名前を知っている優越感は十分味わった。
今は、より多くの友達が美凪の名前を呼んであげることが俺らにとっても美凪にとってもベストなのだろう。
244 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:12:05.43 ID:MzdjVTRc0.net
少し遠くに見える駅周りの繁華街の明かり、美凪と訪れたひまわり畑、樋口とも絵の勝負をした場所などを眺めながら走る。
夜なのに、そこら中の民家から風鈴の音が聴こえた。
245 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:13:14.25 ID:MzdjVTRc0.net
やっと公園に辿り着いた。
佐野が付けていた腕時計の針は7時30分を指していた。
東屋を目指してもう少し走ると、やっぱり人影が見えた。
美凪がしっかりとそこにいた事にもだが、一番は夜の東屋でなのに、美凪がもうタバコを吸っていなかったことに安心した。
もう寂しくはないんだなって思うと、えも言われぬ嬉しさが俺の全身を包んだ。
246 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:13:38.74 ID:MzdjVTRc0.net
美凪「やっぱり来た、待ってたよ〜!」
俺「おまたせ、最後の夜だからみんな連れてきたwwwwww」
樋口「久しぶり美凪ちゃんwww 民宿抜けてきたwww」
吉田「またギター弾きに来たぞwwwwww」
佐野「よし、樋口、花火だせ!」
樋口「そうだな、皆で花火でもやるかwwwwww」
247 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:13:59.47 ID:MzdjVTRc0.net
岩で傷ついた吉田のギターケースや佐野のボロボロのサンダル、樋口の擦り傷がいつもよりかっこよく見えたなぁ。
佐野がバケツを用意してきて、樋口がみんなに花火を配っていった。
線香花火とかロケット花火が詰まってたかなり大きい花火セット。
樋口、これを抱えながらよくここまで走れたな。
吉田のギターが、RADWIMPSの 「有心論」を奏でてるうちに俺も準備をしてしまおう。
248 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:14:57.37 ID:MzdjVTRc0.net
まずは一番大きいロケット花火を上空に打ち上げた。
これ、最後のシメでやるやつなんじゃないか?とツッコミ入れながら花火を眺めた。
まるで水彩のような鮮やかな色の花火が夜の空で弾けて、パァンと気持ちのいい音を鳴らす。
俺「すげえwwwwww 結構本格的だwwwwww」
美凪「こんな花火初めてやったなー!みんな、ありがとうー!」
249 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:15:13.10 ID:MzdjVTRc0.net
また、美凪が好きな物を語る時の口調ではしゃいでいる。
美凪が本当に楽しそうにするもんだから、皆で笑う。
250 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:15:42.30 ID:MzdjVTRc0.net
樋口「線香花火やるかwww」
佐野「最後で残るのは俺の花火だからなwww」
みんなに線香花火を配り、美凪が黄金に輝くライターで皆の花火に火をつけていく。
俺、ここでもう耐えられなかった。
この前までは寂しさや不安を紛らわせるためにタバコに火をつけていたのに、今では友達の線香花火に同じライターを使って火をつけている。
251 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:16:25.92 ID:MzdjVTRc0.net
樋口「どうしたイッチ、泣くなwwwwww」
吉田「寂しくなったか?」
俺「寂しくはないよ、美凪もそうだよな?」
美凪「うん、イッチはデザイナーになるからね!またいつか会えるからね〜」
俺「ちょ!まだ皆に言うなよやめろwww」
佐野「イッチ、まじかよすげえwwwwww」
樋口「イッチに将来の夢www 応援不可避www」
吉田「デザイナーになったら美凪ちゃんにも勝てるかもよwww 頑張れイッチwww」
252 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:16:57.68 ID:MzdjVTRc0.net
このことは翌日には美術部皆に伝わった。
特に中嶋先生がすごい感動してたのは言うまでもないなwww
253 :名も無き被検体774号+:2021/08/15(日) 22:17:17.57 ID:MzdjVTRc0.net
夜も深け、時刻は9時を過ぎていたと思う。時計なんて見なかったけど。
俺は気付けばまた筆を握っていた。とは言っても、いつもより簡易的なものだったが。
持ち運びやすいスケッチブックに、いつもより小さい水彩絵の具も広げた。
東屋からの景色は数え切れないほど描いたのだが、東屋自体の絵は一枚も描いていなかった。
だから、一枚でもいいから10日間の合宿で過ごしたこの不思議な空間を絵に残しておきたかった。
>>次のページへ続く
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