そのような事を考えると、妻の言う様にキスしていたように見えたのは私の見間違いかも知れないとも思いましたが、
どう見てもシートベルトを直していたようには見えませんでした。
結局、妻が昔のように優しかったのは三日間ほどで、
暫らく自重していた夜の外出も、また以前の状態に戻ってしまったので、
思い余って詩織の家に電話を掛けてしまいます。
「うちには来ていませんよ。美味しいパスタの店が出来たとか言っていましたから、三人で街まで行っているんじゃないですか」
健二が家にいた事で少し安心しましたが、その時横から女性の声が聞こえます。
「誰から〜?」
すぐに受話器を塞いだのか、それ以上は聞こえてきませんでしたが、確かに若い女性の甘えたような声でした。
詩織の家は男の子3人なので、詩織が外出していれば母親以外に女性はいません。
しかし母親にしては声が若く、何処かで聞いた事のあるような声でしたが、
受話器を通してでは多少声が変わるので思い出せません。
妻の声で無かった事だけは確かだったのですが、
詩織が妻と出掛けているとすれば誰なのか。
聞き覚えがあると言っても仕事柄この村の人とは殆ど話した事があるので、
誰かは分からなくても妻ではなかった事で安心してしまい、
酔いも手伝って知らぬ内に眠ってしまいましたが、
しばらくして帰ってきた妻に起こされます。
「恥ずかしい事はやめてよ。用があれば携帯に電話してくれればいいでしょ」
「友達といる時はマナーモードにしているから気付かなかったと言って、掛けてもほとんど出た事が無いじゃないか」
妻は俯きましたが、すぐにまた顔を上げて怒った顔に戻ります。
「その事はもういいけれど、そんなに大事な用って何だったの!」
「鮭缶をつまみに飲もうと思ったら、缶きりの場所が分からなかった」
「そんなのはお母さんに聞けばいいでしょ」
確かにこのぐらいの用で電話される事は、疑われているようで嫌だったのかも知れませんが、
眠っている私を起こしてまでも顔を真っ赤にして怒る妻に、不信感は更に強くなりました。
普通、調査をするなら専門家を頼むのでしょう。
しかし、このような田舎では隣の町にもそのようなところは無く、
電話で頼んでも調べてくれるかも知れませんが、
怪しいところも多いと聞くので会わずに電話で依頼するのは不安です。
それにこのような田舎では、知らない人間がうろつくだけでも噂になります。
下手をして妻の浮気を調査していると村の人間に知られただけでも噂が噂を呼び、
私は養子の上に妻を寝取られた情けない男という烙印を押され、
この村にいる限り一生そのような目で見られるでしょう。
その時、私は世間体や噂ばかりを気にして、
妻の浮気についてはそれ程の悔しさは無い事に気付きます。
それどころか誰にも知られない保障があれば、むしろ浮気でもしていてもらった方が、
家での立場が優位に立てるのではないかとさえ考えていた事に気付きます。
身体の裏切りをされている事について、それ程の悔しさが無いのは、
妻が私と付き合う前に、おそらく何人もの男と関係があったと想像出来る事もあったのでしょうが、
心の裏切りをされている事に対してもそれ程の悔しさが無いのは、
それだけ妻への愛情が薄れてしまっていたのでしょう。
情や未練が無いと言えば嘘になりますが、やはり昔のような愛情は持てません。
それで、私は妻の行動を徹底的に調べてみようと思いましたが、
田舎の夜は早く、夜間の交通量は一気に減るので尾行は無理です。
それならばホテルで張り込もうと、妻が出掛けた日に三日も先回りして通いましたが、それらしい車は来ませんでした。
すると夜私が出掛けている事を母から聞いた妻は、逆に私を疑ってきます。
「私が出掛けた日に限って何処に行っているの!まさか女?」
「馬鹿を言え」
お前とは違うという言葉は飲み込みました。
「星を見に行っている。民家などから離れていて、少しの明かりも漏れてこない真っ暗な場所でないと、星はきれいには見えないから」
私は中学の頃に天体に興味を持った時期があり、
お小遣いを溜めて買った思い出の天体望遠鏡だったので、
古い上に安物でしたがいつか我が子も興味を持つかと思って持ってきていました。
天体について少しは知識もあったので、妻に星の話をして信用させます。
「分かったわ。私は興味ないからその話はもういい」
ここ三回はたまたま男と会っていなかったのか、
あるいは会っていてもホテルに行かなかっただけで、車の中か何処かで。
それとも浮気は私の考え過ぎなのか。
しかし、状況証拠は嫌というほどあります。
大好きなセックスの回数が激減。
夜になると頻繁に出掛ける。
下着がかなり派手になった。
出掛けるとほとんど携帯が繋がらない。
そして農道での、キスをしていたような怪しい行動。
その他にも疑えば怪しい事は色々あります。
私はホテルの近くで張り込むのを諦め、
次に妻が出掛けた日に詩織の家に行ってみました。
詩織の家は農業をしていて、一本道の先にある一軒家なので、
近くまで車で行くと気付かれる可能性が高く、
離れた所に車を止めて結構な距離を歩いて行くと、
敷地内にある離れにも明かりがついています。
その場所から見渡す限り妻の車は無く、
見えているのは車庫代わりの納屋から少し頭を出している
軽トラックとその前に置かれた詩織の車。
それと庭に置かれたご健二の黒い車が確認出来ましたが、
その車を見ていて私は重大な事に気付きます。
そう言えば健二の車は黒でした。
それはこの辺り全てを仕事で回っている私も知っていた事なのですが、
妻に言われた時にはそこまで考えませんでした。
あの時、妻が助手席に乗っていた車は、黒ではなくて紺です。
妻は暗くて黒か紺など見分けがつかないと思ったのかも知れませんが、
形は似ていてもあの時の車は確かに紺色の車でした。
それはバックミラー同士が擦らないか、ずっとそればかり見ながら通ったので、
バックミラーは車体と同色のはずなので間違いありません。
だとするとあの車は誰の車で、運転していた男は誰だったのか。
運転していたのが健二ではないとすれば、詩織の家に電話で確かめて、
もらって良いと言った妻の、あの自信は何処から来たのか。
念のためにもっと近くで車の色を確認しようと、
隠れるように離れの軒先に入ると中から女性の妖しい声が聞こえてきます。
「これ以上ダメ〜・・・・おかしくなっちゃう〜・・・・・ヒィ〜」
それは正しくあの時の声で、私はその場から離れられません。
「また声が大きくなってきたぞ。そろそろイクのか」
「ヤメテ・・・・・そんなにされたら声が出ちゃう・・・大きな声が出ちゃう」
「出せよ。思う存分大きな声を出してもいいぞ」
「ダメ・・・・恥ずかしい・・・・詩織やおばさん達に聞こえちゃう」
当然、相手は詩織さんだと思っていましたが、
詩織やおばさん達に聞こえてしまうと言う事は詩織ではありません。
「かまわないさ。みんなに厭らしい声を聞かせてやれ」
「ダメ・・・・イヤ・イヤ・イヤ・イヤ・イヤ・・・イヤ〜」
「また逝ってしまったのか?毎度の事だが香澄は可愛い顔に似合わず、イク時には凄い声を出すな」
「香・・・・・」
私は声が出そうになって、慌てて手で口を塞ぎます。
母屋には詩織と義理の両親、それに子供達までいるというのに、
このような場所で他の女を抱く健二に驚きましたが、
相手は自分の妻の親友の香澄だと知って更に驚きは大きくなりました。
しかも、健二はその事を隠すどころか、香澄の厭らしい声を母屋にいる家族に聞かせようとしているのです。
「だって健二さんのオチンチン硬くて凄いんだもの。
やっぱり若いと違うわね。
こんなオチンチンが側にあるのに、
どうして詩織が浮気したのか分からないわ」
健二は詩織よりも4歳上だと聞いていたので40歳のはずですが、
香澄の夫である幸三は一回り上の48歳だと聞いているので、
幸三と比べれば健二の事を若く感じるのでしょう。
「詩織の事は言うな!」
「ごめんなさい・・・・えっ?・・・まだだったの?・・・ちょっと待って・・・・イヤ・・・・イヤ」
「詩織の事は言わない約束だろ?罰として今度はこうして」
「ヒッ・・・イヤ・・・この格好はイヤ・・・奥まで・・・奥まで感じちゃう〜」
「口では嫌だと言いながら、香澄のオマンコは俺のチンチンを逃がさないように締め付けているぞ。よし、この大きなオッパイもこうしてやる」
「優しく・・・優しくして〜・・・・・イヤ・・イヤ・・・」
私は香澄の身体を思い浮かべていました。
彼女は童顔で可愛い顔をしているのですが、
胸が大きくて歩いているだけでも揺れてしまいます。
その事を気にしているのか、普段はダボッとしたトレーナーなどを着ている事が多いのですが、
夏になって薄着になると隠し切れず、我が家に遊びに来た時も彼女の胸が気になって仕方ありません。
「今夜は許してと言っても許さないぞ。こうするとどうだ?」
「ヒィ〜・・・ちょっと・・・ダメ・ダメ・・・またイッちゃうよ〜・・イヤ・イヤ・・・・奥でイッちゃう・・・・・ヒィィィィィィ」
確かに感じてきた時の香澄の声は凄まじく、本当に母屋まで聞こえてしまいそうでした。
この事で私の頭は混乱してしまいます。
健二と香澄が出来ている。
それなら三人で出掛けると言って出て行った妻は、今何処で何をしているのか。
話の内容から詩織が浮気していて、その事を健二も知っているようです。
それを知っていて香澄を抱いている。
このような場所でするぐらいなので、香澄と健二の関係を詩織も知っているのでしょう。
仲の良い三人の内の二人が浮気しているとすれば、妻だけが何も無いとは考え辛いです。
それなら妻の相手は誰なのか。
一番可能性が高いのは、あの時見た紺色の車の持ち主。
私の頭に一台の車が浮かんでいました。
私の頭に浮かんだのは香澄の夫である幸三の車です。
妻はあの時、健二を香澄の夫だと言い間違えました。
それはあの時一緒にいたのが、健二ではなくて幸三だったから。
幸三の車はセダンタイプの車で、少し大きさが違うだけで健二の車と同じメーカーなので似ています。
幸三の車も黒っぽい色で、確かモスグリーンか紺だった。
香澄の家に行くために車に戻ろうとすると、
流石に自分から抱かれに来ている事を詩織の両親に知られるのが恥ずかしいのか、
来る時には気付かなかったすぐ近くの脇道に、隠すように香澄の軽自動車が止めてありました。
私は香澄の家に急ぎましたが、途中の道にも香澄の家にも妻の車はありません。
しかし、幸三の車も無かったので、念のためにホテルまで車を飛ばしましたが、
そこにも妻の車や幸三の車はありませんでした。
私が釈然としない気持ちのまま家に戻ると、
妻も帰って来たばかりのようでまだ車に乗っていて、
私の車のライトに照らし出された妻の車は、
車体の下半分に泥のような物がついています。
妻は何処を走ってきたのか。
田舎と言っても、今では細い農道までもがほとんど舗装されています。
確かに昨日は雨でしたが舗装されている道を走っていれば、
これほど泥を跳ね上げる事は考えられません。
それによくよく考えると、これほど酷くは無いにしても、何度かホイールなどに泥がついていた事があります。
ここら辺りで舗装されていなくて妻が走れるような道。
細い山道などは舗装されていない所もいくつかありますが、
運転の下手な妻には入って行くのは困難です。
だとするとある程度道幅のある田畑などに通じる私道。
私の中では、既に答えが出ていました。
あの時の車はおそらく幸三の車で、妻は舗装されていない道を何度か走った事がある。
それは香澄の家の、ビニールハウスに通じる道だと思いました。
香澄の家も農家なのですが、主にビニールハウスでトマトなどの栽培をしています。
そこは妻達がキスをしていたと思われる場所からも近く、
香澄の家からは少し離れているために、
仮眠出切るようになっている小さなプレハブが建っていて、
お茶を沸かしたり出来るようにプロパンガスのボンベを置いてくれているので、
私もボンベの交換に行った事があって以前から知っていました。
それで次に妻が出掛けた日にその場所に行ってみると、
案の定黒っぽいセダンが止まっているのが見えます。
夜でも仕事で来るなら軽トラックで来ているはずで、
プレハブには明かりもついていたので私は公道に車を止めて、
80メートルほどの舗装されていない私道を歩いて近付くと、
公道からではプレハブが邪魔で見えない所に妻の車も止めてありました。
「真希・・・もっと動け・・・もっと腰を使え・・・・そうだ・・・・」
「ア〜ン・・・こう・・・こうですか・・・アッ・アッ・アッ・・・・」
「それにしても真希は美人だな。美人は顔を歪めて悶えていても美人だ。それに真希は美人の上にこんなにもスケベだ」
「スケベなんかじゃ・・・・アッ・アッ・アッ」
「美人でドスケベ。香澄が浮気してくれなかったら、真希のような美人とは一生オマンコなど出来なかったな。最初は頭にきたが、今では香澄に感謝だ。それ、それ」
「イヤ・・動かないで・・・アン・・私が動きますから・・アッ・・アッ・アッ」
そのプレハブの窓にはカーテンなどは無く、
覗いてみると幸三の突き出たお腹の上に妻が跨っていて、
腰だけを激しく前後に動かしていました。
私は計画通り証拠の写真を撮ろうとカメラを構えましたが、カメラを持つ手が震えます。
そうです。私は怒りで手が震えていたのです。
しかし、この怒りは何なのか自分でも分かりません。
まだ妻を愛していて、私は嫉妬して怒っている。
それとも、ただの独占欲から来る怒りなのか。
私は数枚の写真を撮ると、
窓ガラスを割って怒鳴り込もうと下に落ちていた石を握り締めましたが、
その時幸三の口から更に驚きの言葉が飛び出しました。
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