戦い
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そう言われて私が怯んだ隙に、用意してあった手錠をされてベッドの上につながれ、口にはガムテープを貼られましたが、自由な足で蹴ったりして抵抗すると。
「そんなに暴れて大丈夫か?いくらその手錠には痕が付かない様に、柔らかい布が付いていると言っても、そんなに暴れると付くぞ。両手首に痕が残ればあいつはどう思うかな?」
抵抗出来なくなった私の足も片方ずつ縛られ、その後 課長に夜まで抱かれました。
「それは完全な犯罪じゃないか。どうして警察に行かない。今からでも行こう。」
「あなた、ごめんなさい。警察には行けません。
証拠も有りません。課長に都合が良い様な写真も撮られました。
私の事がみんなに知られてしまう。その上課長の犯罪は成立しない。」
「どうしてだ?写真があれば尚更証拠になる。」
妻が泣いて答えないので、焦れた私は、車で野田のアパートに向かいました。
アパートに着くと野田の車は止まっているのですが、明かりが点いているのは1部屋だけで、野田の部屋も真っ暗でした。
一応部屋の前まで行ってチャイムを鳴らしましたが、やはり留守のようです。
しばらく車で待っていましたが、たまに通る人が不振な目で見て行くので、車を違う所に止め、時々、野田のアパートの前を通って、明かりが点いていないか確かめていると、ようやく4回目で明かりが点いていたので、
部屋の前まで行きチャイムを鳴らしました。
出てきた野田は呑みに行っていたようで、酒の匂いがし、少し酔っているようです。
「久し振りだな。今年になって電話もしていないので、懐かしく感じるよ。
君が来たという事は、ばれてしまった様だな。
確かに美鈴とまた関係を持ってしまった。
慰謝料でも何でも払う。裁判にしてもらってもいい。
それより離婚してくれないか?君が離婚を承諾してくれれば、美鈴と再婚する約束もしている。」
野田の勝ち誇った顔を見て、気が付くと殴り倒していました。
「また暴力か?もっと殴れ。俺にはもう怖い物は無い。会社をクビになってもいいと思っている。怪我をさせられたら今度は警察に行く。」
「何が警察だ。ふざけるな。」
倒れている野田を思い切り蹴りました。
「もっと殴れ。蹴れ。あんたが刑務所に入っている間、邪魔者がいなくて、美鈴と自由に逢える。」
殺したいと思いましたが、現実には そこまで出来る勇気が無く、その代わり、足腰が立たなくなるまで殴るつもりでした。
しかし私が警察に行っている間、妻が無理やりされている姿が浮かび、無抵抗の野田に対して、ストーカーの様な不気味な怖さを感じ。
「勝手にしろ。お前のやった事は脅迫と強姦だ。美鈴を連れて警察に行く。」
「脅迫?強姦?何か勘違いしていないか?これは美鈴も合意の上だ。美鈴がそう言ったのか?」
「去年撮った写真で脅し、強引に関係を持っただろ。そしてまた写真を撮ってそれで脅した。卑怯な奴だ。絶対に許さん。」
「いくら俺でもそんな犯罪の様な事はしていない。第一その様な事をすれば、美鈴に嫌われてしまう。たとえあんた達が離婚しても、俺と結婚して貰えなくなる。」
野田は奥の部屋に行き、しばらくして、持って来た封筒を私に手渡し。
「これは私達二人だけの思い出だから、他の奴には見せたくなかった。
しかし、脅迫だの強姦だのと言われ、卑怯者と思われるよりはましだから見せてやる。
これを見てから判断してくれ。
確かに美鈴が来ても何もしなければ良かった。我慢出来なかった俺の責任も大きい。
俺は逃げも隠れもしない。
まずはこれを見てくれ。・・・・・・そうか、美鈴はその様な事を・・・・・・・・・。」
野田お得意の嘘だと思っても、頭が混乱して訳が分かりませんでした。
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5月9日(日)の1
家に戻ると日付が変わっていました。
妻は、寝ずに待っていて、私の顔を見ると少しほっとした表情をしましたが、妻が貰ったのと同じ封筒を持っているのに気付き、私の所まで走ってくると、奪い取ろうと必死でしたが、私が手を上げて届かないようにすると。
「それは見ないで。お願いです。それは違います。脅されて、課長が都合の良いように撮られた物です。」
「離せ。見られて困る物なのか?俺は野田を信用していない。しかし俺には見る権利が有る。」
私の力には勝てずに、諦めた妻は泣きながら寝室に走って行きました。
私はなかなか見る勇気が出ずに、しばらくテーブルに置いた封筒を見詰めていましたが、ようやく決心して、中の写真を取り出すと、それは、妻と野田との行為中の写真でした。
これには日付が入っていて、全て妻が最初に呼び出されたと言っていた4月17日の物でした。
テーブルに並べると6枚有り、ベッドの上で大きく足を開き、自分の指で中心を開いて、中まで見せている物が2枚。
自分でローターを一番敏感な所に当てている物。
中心に先が埋もれた真っ黒なバイブを自分で持っている物。
あとは野田で有ろう男の上に跨っている物が2枚です。
しかし、この6枚の写真は、妻のバッグに入っていた物と違い、有ろう事か写っている妻は、全てカメラの方を見て微笑んでいる様に見えます。
これを見て私の頭は、益々混乱して、整理が付きません。
妻と野田が関係を持ったのは、写真からも動かせない事実です。
しかし、妻が言う様に脅されて、無理矢やりされたのか、または野田の言う様に、私に知られて咄嗟についた嘘なのかでは、大きな違いが有ります。
強姦にしろ、不倫にしろ、野田は許す事が出来ず、何らかの報復はするつもりですが、その事がはっきりしないと、私の対処の仕方も違ってきます。
勿論妻を信じたいし、今まで野田のして来た事から考えても、妻を信用しなくてはいけない事は分かっています。
しかし、昨年の不倫についてこの1年で、全て事細かに話してくれたと思っていたのですが、写真を撮られていた事は聞いていませんでした。
そこへまた、この6枚の写真に写っている妻の表情を見て、完全には妻を信用出来なくなっているのも事実です。
寝室に行き、ベッドで泣いている妻に、
「このままでは俺達は終わりだ。
終わりと言うよりも、写真を見て、終わらせた方が楽になれるという思いも少し有る。
美鈴がまだ俺と一緒にいたいと思っているなら、泣くのを止めて詳しく説明してくれ。
俺よりも野田と一緒になりたいのなら説明はいらない。
リビングで待っているから、話せるようになったら来てくれ。」
私は、ソファーに寝転んで待っていると、その内眠ってしまいました。
以前なら とても眠れる状況では無いのですが、この様な事に慣れてしまったのでしょうか?
こんな時に眠れる自分が分かりません。
妻に肩を揺すられて目覚めると、もう夜が明けようとしていました。
「あなた、ごめんなさい。もう泣きません。
今度の事は あなたに疑われても仕方の無い事です。
どの様な理由でも、私が課長のアパートまで行き、抱かれたのは事実です。
脅されて、毎回最初どんなに抵抗しても、最後には感じてしまいました。
あなたに離婚と言われても仕方が無いほど気持ち良くなってしまいました。
でも私は別れたくない。信じて下さい。
前回と違い、脅されなかったら関係を持つ事は絶対に無かった。
感じさせられても、また会いたいと思った事は1度も無かったです。
また、その時の写真を渡されて、呼び出されるのが嫌だった。
課長を殺したいとか、自分も死んでしまいたいと思った事も何回か有ります。
あなたを裏切りたくなかった。
でも、子供達に私のあんな姿を見られる事は、何をされるより嫌でした。
殺されるより耐えられない事でした。疑いを晴らしたい。
何でも話します。信じて。私を信じて。」
妻の強い口調から、信じたい気持ちは有りましたが、私には聞きたいことが山ほど有り、
「去年の事を全て詳しく話してくれたと思っていたが、どうして写真を撮られていた事だけは隠していた?」
「ごめんなさい。あんな写真を撮るなんて。あんな普通では考えられない事までしていた事を、言い辛くて。」
「はー。お前の普通の基準が分からん。縛られ、後ろに指を入れられて、感じてしまった事は話せてもか?
野田が処分したと言っていたので、隠しておけば知られる事は無いと思った訳だ。
俺は今まで、野田との事を全て話せと言ったはずだ。今までに聞いていれば、今度の事は防げたかも知れない。
この分だと、まだ隠している事が有りそうだな。」
「他には有りません。本当です。ごめんなさい。ごめんなさい。」
「聞きたい事は、まだ沢山有る。しかし腹が減ったから、その前に何か作ってくれ。」
こんな時にもお腹は減ります。以前なら食欲も無かったのでしょうが。
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5月9日(日)の2
「片付けは後にしろ。俺には時間が無いから、早くここに来い。
野田に抱かれたのは、何日と何日だ?
それと何処で抱かれた?
まだ1ヶ月も経っていないから覚えているだろ?」
「・・・はい・・・・。4月17日から5月1日まで、毎日課長のアパートで、それと5月6日7日です。ごめんなさい・・・・・・・。」
「生理の日もか?」
「・・・・・・その間は手や口でさせられ・・・・・・。」
「・・・・・・何だそれは・・・・・・・。でも俺が電話した時は、必ず家にいたよな?」
「あなたは、平日は夜の10時。休みの日は夜7時にしか電話をして来なかったので、それまでには帰してもらっていました。」
「それも野田の指示か?」
「いいえ、課長は、あなたに知れて離婚になった方がいいと言いました。
あんな写真を撮られていた事を今更言い難く、その事を あなたに知られず解決しようとして、もっと酷い状況になり、また嘘をついて誤魔化そうとしました。
1度嘘をつくと、その嘘がばれないように、またそれより大きな嘘をつかなければならなくなり、結局あなたを傷つけてしまいました。
私が馬鹿でした。ごめんなさい。ごめんなさい。
元は、と言えば去年、あんな男とは知らずに、あなたを裏切った事が既に間違いでした。
あなたが言っていたのも聞かず、そんなに酷い人では無いと思っていた私が馬鹿でした。
今頃分かっても遅いですね。ごめんなさい。ごめんなさい。」
確かに妻を見ていて、野田に対しての好きとかいう、恋愛感情は もう無いと思っていました。
しかし、嫌いな訳では無いと思っていたので、妻の話が本当ならば、野田の正体を知って、殺したいほど嫌いになった事は、身体の関係を持たれた事を除けば、私にとっては良い事でした。
しかし、信用し切れない私がいます。
「まだ聞きたい事は沢山有るが、少し出かけてくる。」
話が聞きたくて、また野田の所に向かいました。野田の顔を見れば、また手が出てしまいそうです。
しかし、手を出してしまえば、まともな話は聞けないと思い、また、どの様な事が有っても、
妻の裸の写真を持たれているのは耐え難いので、妻の画像を残らず消してこようという目的の為にも、冷静でいようと心に誓いました。
チャイムを鳴らすと、待っていましたと言わんばかりに部屋の中に通され、アイスコーヒーを出してくれました。
「また来ると思っていたよ。まさかもう慰謝料の話では無いだろ?写真の事では無いのか?」
「ああ。写真を全て返せ。あとパソコンに取り込んである物と、デジカメの記憶媒体もだ。」
「君が帰ってから俺も考えた。知っている通り俺も妻に浮気された。
相手が妻の裸の写真を持っていたら、どうしていただろうと。
きっと殺したくなる。違うか?いくら快感を高める為のお遊びだと言っても度が過ぎた。
君にとっては耐えられないだろう。
済まなかった。許してくれ。
プリントして有る物はもう無い。
パソコンの中も全て削除した。デジカメはこれだ。全て削除してある。
そう言っても、今までの君と私の関係では信用できないだろ?
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