逆転
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幾らなんでも、妻が不倫に走っていたなら、あんな言い方は出来ないだろう。
甘いですか?甘いですよね。私もそう思います。
でも、その時は、それならそれでいい。その時は私の腹は決まっている。
そうなのです。私は この結婚を失敗だと、もう心の中では結論を出していたのです。
私には少し抜けているところがあっても、もう少し優しい女性が合っているのだと思っています。
私はある決断をしていました。
子供達が高校を卒業したら、離婚も含めたこれからの話し合いを持とうと。
私のそんな考えを見透かすように、次の日は、私が帰宅すると妻は既に家に居て、珍しく頭を下げてきます。
「貴方、昨日はあんな言い方して御免なさい。
悪いとは思っているの。でも、私は素直に認められないのよ。分かっているんだけど出来ないの。
貴方に嫌な思いをさせてると思うわ。本当にごめんね。
それで、昨日の事なんだけど、なるべく残業はしないようにする。
今日、部長に御願いしたら了解してくれたの。
でも、水曜日だけは残業してくれって。貴方、週に1日だけは許して」
そんな妻の態度に面食らった私は、またしても妻のペースに乗せられてしまいます。
「週に1日くらいならしょうがないな。後の日は俺にはまだしも、子供達の事はちゃんとやってくれよ」
「分かっています。任せてちょうだい。貴方は仕事に打ち込んでね」
週に1度残業で遅くなる。それを許可した私。
もしも妻は、私が疑念を抱く様な事をしているのなら、それを了解したのも同然でしょう。間抜けな話です。
しかし、水曜日の残業と指定されたのなら、証拠を掴むのも容易になったのが事実です。
まあ、機会が来たらそうしよう。疑念が、また頭をもたげますが面倒臭いのです。
離婚と言う言葉が頭に浮かんだ時から、何事にもこんな感じで後回しにしてしまいます。
こんな私に、あの妻は、どんな感情を抱いているのでしょう。きっと、面白みのない情けない、ものぐさな男と映っている事でしょう。
でも、初めからこんな男だった訳ではありません。私も言う事は言っていたのです。
しかし、その結末が私の望んでいるものとは違い、気持ちが疲れてしまったのでしょう。
こんなところを他人が見たら、きっと うだつの上がらない駄目亭主に映るのだろうなと思います。
子供達にも、もっと男らしく遣り合えばいいのにと言われるほどですもの。
でも疲れた。本当にそんな事に疲れた。
何時か、そんな時が来たら俺も男だ。きちんと落し前は付けると思っていても、中々そんな時は訪れませんでした。
いや、そんな時も きっと逃げてしまうのだろうとさえ思ったものです。
--------------------
妻の残業の水曜日がやって来ました。
やはり、帰宅は私よりも遅いようです。
食事は娘達が用意してくれるので困りはしません。
私は帰宅後の妻の様子を細かく観察してやろうと思っています。
10時をとうに回って妻は帰宅しました。
やはり、私には視線を合わさず浴室へと向います。
「食事はすんだのか?少し話しでもしないか?帰るそうそう風呂でもないだろう」
「後にしてくれる。汗を掻いて気持ち悪いのよ。シャワーを浴びてくるから少し待ってて」
「そんなに汗を掻く季節でもないだろうに」
私は妻に疑われているんじゃないのかと思わせたかったのです。
どんな表情をするだろうか?
「そんな事言ったって、気持ち悪いんだからしょうがないでしょう。すぐに出るわよ」
妻は その時も私と視線を合わせようとはしません。
シャワーから上がった妻に職場の事を聞くと、やはり余り話したがりません。
勤め初めと違い、今は仕事は楽しいけれど、それだけ責任も持たされて家庭では仕事の話しはしたくないそうです。男が言うような事を言っています。
それにしても、勤めて1年足らずで そんなに責任のある仕事を任されるもなのか?
会社にも色々あるでしょう。ましてや、妻の務め先はそんなに大きな会社ではありません。
自分で言うように、男以上の仕事をするなら そんな事もないとは言えませんが。
でも私は疑っています。
そんな目で妻を見ているのですから、それからも言い争いは幾度かありました。
--------------------
あからもう4年が経ちました。
娘達も大学に通うようになり、私が以前から、心に決めていた時期が来ているのです。
妻はと言うと、娘達に手が掛からなくなったのをいい事に、週1回の残業の約束を全く守らなくなっています。
その事をきっかけに、妻と互角に向かい合う覚悟を遂に決めました。
残業で遅くに帰宅した妻に私は声を掛けます。
「もう、仕事を辞めてもいいんじゃないのか?
俺も もういい年だ。家に帰って自分で食事の用意をするのはきつい。
約束通りに週1回の残業で済まないなら仕事は考えてくれないか?」
「食事の用意なら、あの子達にしてもらえばいいじゃない。あの子達も もう大人なんだから そのくらいさせてよ」
「あいつらにも事情があるだろう。バイトで遅かったり、勉強も忙しい。そう毎回頼んでもいられないよ」
その時、妻は言わない方がいい事を口にします。
「そんなに私が仕事をするのが嫌なら、別れてもいいのよ。子供達も もう大学に入ったし理解してくれるわ。私は離婚してでも仕事を続けたいの」
「そうか。俺達の生活よりも仕事がそんなに大切か。分かった。考えてみるよ」
「えっ?」
妻は私がこんな反応をするとは思ってもいなかったのでしょうか?さすがに私の目を唖然とした表情で見返しました。
私はそんな妻を無視して寝室に向かいます。
私の表情は妻とは逆で、満面の笑みが浮かんでいる事でしょう。
私から言わなければならない事を妻が口にしたのです。私は何一つ面倒な事をしなくていいのです。
もし、このまますんなり離婚となっても、慰謝料だの何だのと煩わしい事もあるでしょう。
その時は、少しでも有利な立場に越した事はありません。
妻が私が疑っているような事をしているのなら、証拠を掴む事も必要です。
その事については、1ヶ月前に興信所に頼んであります。
1ヶ月分ともなれば、かなりのお金も掛かりますが、そのくらいのへそくりは持っていました。
多額の慰謝料を払わずに、まして相手の男から慰謝料を取れる事を考えると安いものでしょう。
私は翌朝、何か言いたげな妻を避け出勤しました。
帰りに興信所に寄るのが楽しみです
--------------------
仕事も そこそこに定時で、退社した私は、興信所の椅子に座っていました。
こんな場所に居る事が心臓をバフバフさせています。
その結果は、残念な事にと言うのか、予想通り、見知らぬ男とホテルに入るところと、出て来た現場が写真に写されていました。
セックスの現場が映っている訳ではないのですが、妙に嫌らしい写真なものですね。
妙に腹が立つのを不思議に思います。私は非常に不愉快にな気分です。
「この男は、奥様の会社の部長です。当然、この年ですので妻子持ちです。
まあ、ダブル不倫と言う事ですか。
言いにくい事ですが、大分前からの関係なようですよ。
詳しい事は調書に記載されておりますので」
調査員は淡々と話します。こんな事は日常茶飯事なのでしょう。
私は不思議と笑みがこぼれました。
しかし、その笑みは妻が離婚を口にした時とのものとは違い、背中に冷たい汗が流れるような不快なものです。
きっとプライドの高い私は、この調査員の前で冷静な男を装いたかったのでしょう。
思い通りの結果でしたが、何故かショックなものです。それも思いの他大きなものでした。こんな感覚を覚えるとは思ってもいなかった。
何処かで、妻の事を信頼していたのでしょうか?そんな事はありません。
私は かなり前から疑念を抱き、そのまま何もしないで ほったらかしにしていたのですから。
私の食事の仕度も週に半分もしない、夜の営みも妻が残業を口実に帰りが遅くなるようになってから、片手にも満たない位しかないのです。
疑わない方が可笑しなものですよね。
それでも、私は妻が不倫をしていようがいまいが、どうでもいい事だったはずです。
>>次のページへ続く
「食事の用意なら、あの子達にしてもらえばいいじゃない。あの子達も もう大人なんだから そのくらいさせてよ」
「あいつらにも事情があるだろう。バイトで遅かったり、勉強も忙しい。そう毎回頼んでもいられないよ」
その時、妻は言わない方がいい事を口にします。
「そんなに私が仕事をするのが嫌なら、別れてもいいのよ。子供達も もう大学に入ったし理解してくれるわ。私は離婚してでも仕事を続けたいの」
「そうか。俺達の生活よりも仕事がそんなに大切か。分かった。考えてみるよ」
「えっ?」
妻は私がこんな反応をするとは思ってもいなかったのでしょうか?さすがに私の目を唖然とした表情で見返しました。
私はそんな妻を無視して寝室に向かいます。
私の表情は妻とは逆で、満面の笑みが浮かんでいる事でしょう。
私から言わなければならない事を妻が口にしたのです。私は何一つ面倒な事をしなくていいのです。
もし、このまますんなり離婚となっても、慰謝料だの何だのと煩わしい事もあるでしょう。
その時は、少しでも有利な立場に越した事はありません。
妻が私が疑っているような事をしているのなら、証拠を掴む事も必要です。
その事については、1ヶ月前に興信所に頼んであります。
1ヶ月分ともなれば、かなりのお金も掛かりますが、そのくらいのへそくりは持っていました。
多額の慰謝料を払わずに、まして相手の男から慰謝料を取れる事を考えると安いものでしょう。
私は翌朝、何か言いたげな妻を避け出勤しました。
帰りに興信所に寄るのが楽しみです
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仕事も そこそこに定時で、退社した私は、興信所の椅子に座っていました。
こんな場所に居る事が心臓をバフバフさせています。
その結果は、残念な事にと言うのか、予想通り、見知らぬ男とホテルに入るところと、出て来た現場が写真に写されていました。
セックスの現場が映っている訳ではないのですが、妙に嫌らしい写真なものですね。
妙に腹が立つのを不思議に思います。私は非常に不愉快にな気分です。
「この男は、奥様の会社の部長です。当然、この年ですので妻子持ちです。
まあ、ダブル不倫と言う事ですか。
言いにくい事ですが、大分前からの関係なようですよ。
詳しい事は調書に記載されておりますので」
調査員は淡々と話します。こんな事は日常茶飯事なのでしょう。
私は不思議と笑みがこぼれました。
しかし、その笑みは妻が離婚を口にした時とのものとは違い、背中に冷たい汗が流れるような不快なものです。
きっとプライドの高い私は、この調査員の前で冷静な男を装いたかったのでしょう。
思い通りの結果でしたが、何故かショックなものです。それも思いの他大きなものでした。こんな感覚を覚えるとは思ってもいなかった。
何処かで、妻の事を信頼していたのでしょうか?そんな事はありません。
私は かなり前から疑念を抱き、そのまま何もしないで ほったらかしにしていたのですから。
私の食事の仕度も週に半分もしない、夜の営みも妻が残業を口実に帰りが遅くなるようになってから、片手にも満たない位しかないのです。
疑わない方が可笑しなものですよね。
それでも、私は妻が不倫をしていようがいまいが、どうでもいい事だったはずです。
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