逆転
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専務に深々と頭を下げる。
「お前なぁ・・・・・頭を下げる相手が違うだろう」
この専務、少しは常識を持っているようだが、この短い会話から妻と岸部の関係が耳に入っていた事が推測出来ます。
結局は、同じ穴のムジナなのでしょう。
『旦那にばれたら大変な事になるぞ。女遊びも程々にしておけよ』
所詮そんな事で、お茶を濁していたのではないのでしょうか。
ひょっとしたら酒の席で、私達夫婦を酒の肴にしていたのかも知れませんね。
人の痛みは何年でも我慢出来ると言います。これが自分に降り掛かった火の粉なら、こいつらは どうアクションを起こすのでしょうか?
「専務さん、こんなのと話したってしょうがないでしょう。
もう一度お聞きしますが、貴方は私の話を聞いて責任を持って対処して頂けますか。
そうでなければ、私はこの会社の責任者と話がしたい」
専務は応接室から社長に内線で連絡を取りました。
何十秒かで この会社の責任者が現れましたが、この男の顔面は緊張で青白く見えます。やはり知っていたのでしょう。
この会社は乱れています。
私は妻と男の関係を、証拠を突き付けて話しました。
当然ですが、その場で2人に対する処罰が決まる訳がありません。
「責任を持って対処させて頂きたい。後日きちんとした報告をさせて頂きます」
こんなものでしょう。
この後、弁護士と相談するのか?それとも幹部会議でも開くのか?私には関係のない事です。
後日の報告とやらが楽しみなだけなのです。
仕事を早めに切り上げ、帰路に着きました。
--------------------
妻は どんな顔をして帰って来るのでしょうか?もしかしたら、帰って来ないのかも知れません。
妻が出て行く事が、私の最終的希望と思い込んでおりますが、今はいけません。もっと懲らしめてから放り出したいのですから。
家のドアを開けると、妻のパンプスが有ります。もう帰って来ているようです。
居間の方が何やら賑やかですが、決していい雰囲気ではないようです。
「ただいま」
私が帰ったのも気付かない程に、娘達の激しい言葉が聞こえます。
妻は娘達に かなり遣り込められていたのでしょう。
流石に勝ち気な妻も、今回の事は子供達に言い訳も出来ないのか、神妙な面持ちでうな垂れています。
私の帰宅に気付いた子供達がニッコリと出迎えてくれました。女は恐ろしい生き物なんですね。こんな状況で微笑む娘に女の凄ささえ感じます。
「お父さん、お帰りなさい。私達2人でご飯の用意をしたのよ。お母さんたっらボーとしちゃって何にもしないんだもの」
妻は俯いたまま顔を上げようとはしません。そりゃあそうでしょう。
ここで娘達と和やかにされていたら、堪ったものではありません。
私が何気なくテーブルの上に目をやると、3人分の用意だけです。
「お父さん、先にお風呂にする?それとも食べちゃう?」
子供達の手料理とあっては、まず食事でしょう。手際よく用意された物を見ても妻の分がありません。
私のそんな思いを察したのか、長女が言います。
「お母さんは勝手に食べるんだって。先に頂きましょうよ」
その言葉に、俯いたままの妻の肩が震えます。
この子達も妻に反乱を起こしたようです。
それにしても、よく帰って来たものです。私なら敵前逃亡間違いなし。
娘達は、妻を完全に無視して今日の状況を楽しげに私に話しながら食事をしていました。
そんな状況に居た堪れなくなくなった妻は居間を出て行きました。
それを横目で見ていた次女が、私に声を落とし話しかけます。
「お父さん、これからどうするの?やっぱ許せないよね?」
そう問い掛ける表情が長女同様、若い時の妻によく似ているのです。妻の遺伝子は私よりも強いのでしょうね。
大学生と言っても、まだ幼さの残るこの子には、大人の世界を理解するのは無理な事だと思います。
この場で『こんな事が起きる前から、お母さんの性格が好きじゃなくて別れたかった』等とは当然に言えません。
子供の何か寂しそうな表情に、静かに微笑む事しか出来ませんでした。
娘達の本心は、出来れば離婚等して欲しくはないのだと思います。
どんな間違いを犯したにしろ、妻は この子達にとって母親である事に変わりはないのですから。
家庭とは、色々な問題が次から次に襲って来て、それらを必死で乗り切って来た者達に与えられるオアシスなのかもしれません。
だからこそ、何ものにも掛け替えのない所なのだと思うのです。
私は何不自由の無い生活を子どもの時から送って来ました。そればかりに一から創り上げる努力をして来なかったのかもしれません。いや、創り方を知らなかったのです。
子供達の気持ち・・・私に重くのしかかって来ました。せっかく子供達が作ってくれた夕食も、砂を噛むように味気のない物になってしまいました。
--------------------
夕食後、私は風呂に入って これからの事を考えましたが、どうしても、子供の顔が浮かんでしまいます。
妻と別れる事に何の抵抗もないと言ったら嘘になりますが、痛みを伴うものではありません。
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妻は どんな顔をして帰って来るのでしょうか?もしかしたら、帰って来ないのかも知れません。
妻が出て行く事が、私の最終的希望と思い込んでおりますが、今はいけません。もっと懲らしめてから放り出したいのですから。
家のドアを開けると、妻のパンプスが有ります。もう帰って来ているようです。
居間の方が何やら賑やかですが、決していい雰囲気ではないようです。
「ただいま」
私が帰ったのも気付かない程に、娘達の激しい言葉が聞こえます。
妻は娘達に かなり遣り込められていたのでしょう。
流石に勝ち気な妻も、今回の事は子供達に言い訳も出来ないのか、神妙な面持ちでうな垂れています。
私の帰宅に気付いた子供達がニッコリと出迎えてくれました。女は恐ろしい生き物なんですね。こんな状況で微笑む娘に女の凄ささえ感じます。
「お父さん、お帰りなさい。私達2人でご飯の用意をしたのよ。お母さんたっらボーとしちゃって何にもしないんだもの」
妻は俯いたまま顔を上げようとはしません。そりゃあそうでしょう。
ここで娘達と和やかにされていたら、堪ったものではありません。
私が何気なくテーブルの上に目をやると、3人分の用意だけです。
「お父さん、先にお風呂にする?それとも食べちゃう?」
子供達の手料理とあっては、まず食事でしょう。手際よく用意された物を見ても妻の分がありません。
私のそんな思いを察したのか、長女が言います。
「お母さんは勝手に食べるんだって。先に頂きましょうよ」
その言葉に、俯いたままの妻の肩が震えます。
この子達も妻に反乱を起こしたようです。
それにしても、よく帰って来たものです。私なら敵前逃亡間違いなし。
娘達は、妻を完全に無視して今日の状況を楽しげに私に話しながら食事をしていました。
そんな状況に居た堪れなくなくなった妻は居間を出て行きました。
それを横目で見ていた次女が、私に声を落とし話しかけます。
「お父さん、これからどうするの?やっぱ許せないよね?」
そう問い掛ける表情が長女同様、若い時の妻によく似ているのです。妻の遺伝子は私よりも強いのでしょうね。
大学生と言っても、まだ幼さの残るこの子には、大人の世界を理解するのは無理な事だと思います。
この場で『こんな事が起きる前から、お母さんの性格が好きじゃなくて別れたかった』等とは当然に言えません。
子供の何か寂しそうな表情に、静かに微笑む事しか出来ませんでした。
娘達の本心は、出来れば離婚等して欲しくはないのだと思います。
どんな間違いを犯したにしろ、妻は この子達にとって母親である事に変わりはないのですから。
家庭とは、色々な問題が次から次に襲って来て、それらを必死で乗り切って来た者達に与えられるオアシスなのかもしれません。
だからこそ、何ものにも掛け替えのない所なのだと思うのです。
私は何不自由の無い生活を子どもの時から送って来ました。そればかりに一から創り上げる努力をして来なかったのかもしれません。いや、創り方を知らなかったのです。
子供達の気持ち・・・私に重くのしかかって来ました。せっかく子供達が作ってくれた夕食も、砂を噛むように味気のない物になってしまいました。
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夕食後、私は風呂に入って これからの事を考えましたが、どうしても、子供の顔が浮かんでしまいます。
妻と別れる事に何の抵抗もないと言ったら嘘になりますが、痛みを伴うものではありません。
しかし、どうであれ、形を成して来た家庭を壊してしまう事には抵抗感がない訳でもありません。
あく迄も、何処迄、も平凡な男なのです。
それでも、妻のやって来た事が許せないでいます。
浮気をした事を言っているのではありません。
一緒になってからずっと今迄、私の男としてのプライドをないがしろにして来た事が許せません。
自分の我を通し過ぎた事が許せません。
共に創り上げて行く家庭と言うものを、独裁者の如く牛耳って来た事に憤りを感じるのです。
私に責任がなかったとは思っていません。
そう言う点では、妻に申し訳がなかったと思いもします。
それでも一体感を感じる事が出来ません。
--------------------
風呂から上がり、髪を乾かして寝室に向かいましたが、妻の気配が感じられません。
居場所がなく、客間で息を殺しているのでしょう。
自分がやった事を深く反省しているのでしょうか?きっと違うでしょう。反省する位なら、こんなに私達を欺くなんて出来ないはずです。
私が妻の会社を出てから、どんな事があったのでしょうか?あの馬鹿男と、どんな相談をしたのでしょうか?
私はベットに入りました。ほどなくして、寝室のドアがノックされます。
「貴方、お話があります。鍵を開けてくれないかしら」
妙に声を落としています。子供達に聞かれたくないのでしょう。
「俺は話したくない」
思い切り冷たく言い返します。
「そんな事言わないで開けて」
妻は何の話をしたいのか?
どんなに言い訳をしても、私の心に届くはずもないのに。小娘ではない妻が、その位の事は分かるでしょう。
それでも何故、私に話しがあるのと言うのでしょうか?妻の口から別れを言い出すのであれば楽なのですが・・・・・
私は妻との離婚を望んでいたのですから、今回の出来事は引き金でしかありません。
それは、彼女との生活が苦痛を伴うものだったからに他ありません。
じゃあ、何故そんなに苦痛だったのか?
何処の家庭にも不満はあるでしょう。
その不満が苦痛と思えるのは真正面から問題に対峙して来なかったからです。どんな時も事なかれ主義を通し過ぎたのでした。
そうさせたのは妻の性格の厳しさにあったと思うのですが、それは言い訳なのでしょう。
ただ、日常的にそんな不満が蓄積して行ったのは確かなのですが、そこを反省しないで、妻の事を拒絶していては駄目なのですよね。
だって、これからも同じ間違いを犯しかねないでしょう?
私は寝室の鍵を開けました。
今日は妻と本音で対峙します。
--------------------
「いまさら何の話がある?まあいい。聞いてやるから勝手に話してろ」
私はぶっきらぼうな言い方ではありましたが、妻の目を真正面から見ながら話しかけました。
「貴方・・・・貴方・・・
私何から話せばいいのか・・・・
貴方に話さなければならないけど・・・・
私、何処から話したらいいのか分からなくて・・・・」
>>次のページへ続く
あく迄も、何処迄、も平凡な男なのです。
それでも、妻のやって来た事が許せないでいます。
浮気をした事を言っているのではありません。
一緒になってからずっと今迄、私の男としてのプライドをないがしろにして来た事が許せません。
自分の我を通し過ぎた事が許せません。
共に創り上げて行く家庭と言うものを、独裁者の如く牛耳って来た事に憤りを感じるのです。
私に責任がなかったとは思っていません。
そう言う点では、妻に申し訳がなかったと思いもします。
それでも一体感を感じる事が出来ません。
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風呂から上がり、髪を乾かして寝室に向かいましたが、妻の気配が感じられません。
居場所がなく、客間で息を殺しているのでしょう。
自分がやった事を深く反省しているのでしょうか?きっと違うでしょう。反省する位なら、こんなに私達を欺くなんて出来ないはずです。
私が妻の会社を出てから、どんな事があったのでしょうか?あの馬鹿男と、どんな相談をしたのでしょうか?
私はベットに入りました。ほどなくして、寝室のドアがノックされます。
「貴方、お話があります。鍵を開けてくれないかしら」
妙に声を落としています。子供達に聞かれたくないのでしょう。
「俺は話したくない」
思い切り冷たく言い返します。
「そんな事言わないで開けて」
妻は何の話をしたいのか?
どんなに言い訳をしても、私の心に届くはずもないのに。小娘ではない妻が、その位の事は分かるでしょう。
それでも何故、私に話しがあるのと言うのでしょうか?妻の口から別れを言い出すのであれば楽なのですが・・・・・
私は妻との離婚を望んでいたのですから、今回の出来事は引き金でしかありません。
それは、彼女との生活が苦痛を伴うものだったからに他ありません。
じゃあ、何故そんなに苦痛だったのか?
何処の家庭にも不満はあるでしょう。
その不満が苦痛と思えるのは真正面から問題に対峙して来なかったからです。どんな時も事なかれ主義を通し過ぎたのでした。
そうさせたのは妻の性格の厳しさにあったと思うのですが、それは言い訳なのでしょう。
ただ、日常的にそんな不満が蓄積して行ったのは確かなのですが、そこを反省しないで、妻の事を拒絶していては駄目なのですよね。
だって、これからも同じ間違いを犯しかねないでしょう?
私は寝室の鍵を開けました。
今日は妻と本音で対峙します。
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「いまさら何の話がある?まあいい。聞いてやるから勝手に話してろ」
私はぶっきらぼうな言い方ではありましたが、妻の目を真正面から見ながら話しかけました。
「貴方・・・・貴方・・・
私何から話せばいいのか・・・・
貴方に話さなければならないけど・・・・
私、何処から話したらいいのか分からなくて・・・・」
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