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HIVの彼女と俺の話
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79 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 12:56:46.32 ID:2XgQnOVE0
本当は岡山に引っ越したいくらいの気持ちだったけど、そんな訳にもいかないのがこの世の中

俺はこの間に遠距離恋愛している人たちを本気で尊敬したよ

ハッキリ言って拷問に近いw

アキが岡山に帰ってから1ヵ月経ったころ

俺は土日を利用して岡山に向かった

東京から岡山への旅これから慣れていかなくちゃいけないし、アキに会えると思うと新幹線での移動の時間も全く苦ではなかった

1ヵ月ぶりにアキに会えるってだけでドキドキした

今まではこんな感覚ではなかったけど

確かに今思い返してみれば早く約束の集まる日にならないかなぁ…って毎回思ってたわ





81 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 12:58:09.62 ID:2XgQnOVE0
岡山に到着してアキに連絡をすると、駅まで迎えに来てくれていたらしく改札口ですぐに会えた

久々に見るアキは最高に可愛かった

でも心なしか以前より痩せた気がする

俺「夕食はすませたの?」

アキは無言で首を横に振った

俺「どこかで食べる?」

アキ「うーん、私お腹減ってないし俺君ホテルとってあるでしょ?ゆっくりしたいな。ごめんね」

なんだか元気がないアキ

そんなことは気にも留めず鼻息荒くなる俺wwwwww





82 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 12:59:03.66 ID:2XgQnOVE0
部屋に着くなりアキはすぐに座り込んだ

アキ「俺君…話があるんだ。ちょっといいかな」

俺「どうしたの?」

アキの顔色が悪い

この世の終わりみたいな表情をしていた

(俺、ふられるのかな…)と頭によぎった

やっぱり遠距離恋愛っていうのは無理なのか
と悟った俺

しかし予想とは全く別次元の言葉がアキの口から出てきた



アキ「私、HIVなんだよね…」








84 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:01:08.94 ID:2XgQnOVE0
金属バットで殴られたような衝撃

言葉が出なかった

アキ「ごめん」

アキはそう言って泣き崩れた

俺と出会うよりも以前に付き合っていた男性から、去年連絡があったらしい

検査してみてほしいとの事で、不安ながらも検査をしたら陽性

そんな大変な事が発覚したのにも関わらず

アキはその間も顔色何一つ変えずに俺たちと集まって笑顔を振りまいていたらしい

かわいそすぎる





85 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:02:13.31 ID:2XgQnOVE0
スクリーニングも確認検査も陽性で、感染していることは間違いないらしい

だけどそれがなんだ?たかがHIVだからって何?何も変わらない

俺「アキ、教えてくれてありがとう。伝えるの辛かったと思うけどよく頑張ったね」

アキ「ごめん…」

俺「なんで謝るの?俺がアキに対する気持ちは変わらないよ。何も気にする事は無い。俺には詳しい事は分からないけど治療だってできるんでしょ」





87 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:03:16.45 ID:2XgQnOVE0
アキはただ泣いていた

俺はそんな弱ったアキを抱きしめるあげる事しかできなかった

実は内定をもらったとこには就職していなかった

健康診断の結果、後日内定が取り消しになったらしい

アキとミホは大学で保育の学科を先行していて、内定先も幼稚園だった

普通のOLとかならまだしも、保育と言う現場だから内定取り消しになることは本人も分かっていたという

だけど、夢をあきらめきれないアキは会社側に事実は黙っていた





89 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:04:17.21 ID:2XgQnOVE0
自分がHIV感染者という重圧と内定取り消し、それに付け加え俺

アキの心の中は不安と罪悪感と迷いで押しつぶされそうになっていた

俺の中でのアキへの気持ちは変わることはないけど、アキはそんな俺とは裏腹に身を引こうと考えていたらしい

だから、何も伝えることなく

新幹線の見送りも拒否してひっそりと岡山に帰ってこようとしていたって訳





90 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:04:55.58 ID:2XgQnOVE0
俺自身がアキの負担になるわけにはいかないけど、俺にはアキを放っておくことなんて出来なかった

俺はアキのために何かできることはあるのか

考えても考えても答えは見つからない

アキ「ミホとアツシには黙っておいてくれないかな?」

俺「わかった」

アキ「私…、この先どうすればいいのかな?」

アキはとにかく泣いていた

俺はどうすることもできなかった








91 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:06:15.77 ID:2XgQnOVE0
日曜日の夕方に俺はとりあえず東京に帰った

アキ一人を置いてくのはものすごく心配だったし、こんなに大事な時に一緒にいてやれない自分の無力さに腹が立った

東京に帰ってきてすぐに会社に有給申請を出して1週間の休みをもらった

だけど帰ってきてからは一度もアキから連絡が来ないい

電話もつながらない状態だった

アツシやミホに言って連絡してもらおうかとも思ったけど、意味深な事をして余計な心配をかけたくなかったから、それはできなかった





94 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:08:04.45 ID:2XgQnOVE0
俺が岡山に行けるのは有給申請が通った3日後

もどかしかった

爺ちゃんが会社の会長なんだけどHIVの彼女が!!!って泣きつくわけにもいかないしね

とにかくこの間にHIVの事を調べるだけ調べつくした

どの様な治療があってどのくらい費用がかかってどれくらい生きられるのか

そもそもアキ自身はちゃんとHIVの事を理解しているのか?

アキの両親はこの事を知っているのか?

いずれにしてもちゃんと病気と向き合わなくてはいけない

ミホにアキの実家の住所を聞いた

サプライズでプレゼントを贈りたいから教えてくれないか?と聞いたところすんなり教えてくれた

1度遊びに行ったことがあるらしく聞いてもないのに近所の事まで教えてくれた

いずれ、ミホとアツシにも話さなくちゃいけないときが来ると思うと胸が苦しくなった





95 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:08:39.16 ID:2XgQnOVE0
3日後、岡山に向かった

前回向かった時とはまるで違った

全く苦にならなかった時間が地獄の様に長く感じた

とにかく俺は俺にできることをやるしかない

新幹線の中で一人で考え込んでいると不安ばかりが押し寄せてくる

もしかしたら、俺を振りたくてHIVと嘘をつきアツシともミホとも絶交して岡山で新たなエンジョイライフを楽しんでるんじゃないか?とかそういう事まで考えてしまうような心境だった





97 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:09:27.04 ID:2XgQnOVE0
到着して一目散にアキの実家へ向かった

すごく立派な一戸建

インターホンを押すときはさすがに緊張した

まさかこんな形でアキの両親や家族と会う事になるとは思っても居なかったからね

「ピンポーン」

「はい、どちらさまですか?」

「突然申し訳ございません。アキさんの友人の○○と申します。アキさんはいらっしゃいますか?」

「少々おまちください」

緊張した

インターホンの声はアキではなかった





99 :名も無き被検体774号+:2013/03/26(火) 13:10:44.96 ID:2XgQnOVE0
玄関から出てきたのはアキのお母さんだった

アキ母「どうも初めまして。あなたが俺君なのね?アキの母です」

俺「初めまして。○○です」

アキ母「どうぞ、あがってください」

リビングに案内された

アキの姿は無かった

アキ母「遠かったでしょ」

俺「いえ、全然大丈夫です」

アキ母「俺君の事はアキからよく聞かされているわ。ここ2.3年、東京から帰ってくる度に楽しそうに話すのよ」

俺「そうですか!アキさんにはいつもお世話になっています。」

アキ母「お茶煎れるからその辺に座ってて!」

俺「あ、お気遣いなく。あの…アキさんはお出かけですか?」

この質問をした途端に、アキのお母さんは黙った

すごく怖い沈黙だった






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