金属バットで殴られたような衝撃
言葉が出なかった
アキ「ごめん」
アキはそう言って泣き崩れた
俺と出会うよりも以前に付き合っていた男性から、去年連絡があったらしい
検査してみてほしいとの事で、不安ながらも検査をしたら陽性
そんな大変な事が発覚したのにも関わらず
アキはその間も顔色何一つ変えずに俺たちと集まって笑顔を振りまいていたらしい
かわいそすぎる
スクリーニングも確認検査も陽性で、感染していることは間違いないらしい
だけどそれがなんだ?たかがHIVだからって何?何も変わらない
俺「アキ、教えてくれてありがとう。伝えるの辛かったと思うけどよく頑張ったね」
アキ「ごめん…」
俺「なんで謝るの?俺がアキに対する気持ちは変わらないよ。何も気にする事は無い。俺には詳しい事は分からないけど治療だってできるんでしょ」
アキはただ泣いていた
俺はそんな弱ったアキを抱きしめるあげる事しかできなかった
実は内定をもらったとこには就職していなかった
健康診断の結果、後日内定が取り消しになったらしい
アキとミホは大学で保育の学科を先行していて、内定先も幼稚園だった
普通のOLとかならまだしも、保育と言う現場だから内定取り消しになることは本人も分かっていたという
だけど、夢をあきらめきれないアキは会社側に事実は黙っていた
自分がHIV感染者という重圧と内定取り消し、それに付け加え俺
アキの心の中は不安と罪悪感と迷いで押しつぶされそうになっていた
俺の中でのアキへの気持ちは変わることはないけど、アキはそんな俺とは裏腹に身を引こうと考えていたらしい
だから、何も伝えることなく
新幹線の見送りも拒否してひっそりと岡山に帰ってこようとしていたって訳
俺自身がアキの負担になるわけにはいかないけど、俺にはアキを放っておくことなんて出来なかった
俺はアキのために何かできることはあるのか
考えても考えても答えは見つからない
アキ「ミホとアツシには黙っておいてくれないかな?」
俺「わかった」
アキ「私…、この先どうすればいいのかな?」
アキはとにかく泣いていた
俺はどうすることもできなかった