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三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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108 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:36:55.03 ID:LZSY7jKs.net
O君の奥さん、Sさんは、四つ年上の美人さんだった。
新婚当時のO君夫妻は、ちょっとしたトラブルを抱えてしまっていた。
その解決にM君の職業知識が役に立ったため、一肌脱いでくれたらしい。
解決までの半年間、ときどきO君夫妻は自宅にM君を招いて手料理を振舞ったりしていたそうだ。
SさんとM君は、そうやって何回か会ったことがある程度の関係。
それなのにSさんがM君に詳しいって、どういうこと? 最初のうち、私にはさっぱりわからなかった。
109 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:37:22.76 ID:LZSY7jKs.net
「喪子さん、共依存ってご存知ですか?」
Sさんの突然の質問から、その日の私の修羅場は始まった。
「………?はい。夫から暴力振るわれても、別れられない妻、みたいなやつですよね?」
「そうです。なんかすごいピンポイントな例えですねー。実は、私がそうなんです」
「え?…えっ!?」
思わずO君に目をやると、
「違〜う」
と心の底から憤慨したような顔をされた。
O君の奥さん、Sさんは、四つ年上の美人さんだった。
新婚当時のO君夫妻は、ちょっとしたトラブルを抱えてしまっていた。
その解決にM君の職業知識が役に立ったため、一肌脱いでくれたらしい。
解決までの半年間、ときどきO君夫妻は自宅にM君を招いて手料理を振舞ったりしていたそうだ。
SさんとM君は、そうやって何回か会ったことがある程度の関係。
それなのにSさんがM君に詳しいって、どういうこと? 最初のうち、私にはさっぱりわからなかった。
109 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:37:22.76 ID:LZSY7jKs.net
「喪子さん、共依存ってご存知ですか?」
Sさんの突然の質問から、その日の私の修羅場は始まった。
「………?はい。夫から暴力振るわれても、別れられない妻、みたいなやつですよね?」
「そうです。なんかすごいピンポイントな例えですねー。実は、私がそうなんです」
「え?…えっ!?」
思わずO君に目をやると、
「違〜う」
と心の底から憤慨したような顔をされた。
110 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:38:00.85 ID:LZSY7jKs.net
「あ、私の場合、夫じゃなくて初カレです。それまで優しい人だったのに、同棲した瞬間に豹変って、お決まりのパターンで」
「は、はあ…」
なんて答えていいのかもわからないし、なんで こんな話聞かされてるのかもわからないよ…。
でもSさんは、戸惑ってる私に構わず続けた。
「まあ、知り合って一ヶ月で同棲ってのが浅はかだったんでしょう。
でも当時は、家族に暴力振るう父から逃げたくて早く家を出ようって、それしか考えてなかったんです。
笑っちゃいますよねー。暴力から逃げようとして、別の暴力に自ら飛び込んだわけですから」
…………重い!聞き流すわけにもいかないけど、下手な反応もできないほど、重い!
「わ、笑い事ではないです…」
「あはは、そうですね。変な話してごめんなさいねー、聞きたくなかったら言ってくださいw」
「いえ、そういうわけじゃないですけど…」
111 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:38:23.51 ID:LZSY7jKs.net
「えーとね、つまり何が言いたいかって言うと
喪子さんがMさんに感じた違和感がですね、よくわかるんですよ。
もっとも、身に覚えのある私には、違和感じゃなくて"この人、仲間だ"っていうレーダーが働くと言いますか。
まー俗に言う、同じニオイがするってやつですかね」
「それは、つまり…M君も家庭で暴力を受けていた、と……?」
「暴力かどうかはわかりません。
でも家庭内で蔑ろにされてきた人って、なんとなくピンとくるんです。
初カレも問題のある家庭育ちだったんですけど、たぶん偶然ではなくてピンときたのを恋と勘違いしちゃったんですよね、お互いに」
「こいつ、会って二度めでMの家に問題があること言い当てたんだよ」
O君が口を挟んだ。
「あ、そうか…O君はM君ちがどんなだったか、知ってるんだ?」
「うん、ある程度までは」
112 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:38:49.27 ID:LZSY7jKs.net
O君の話によると、M君の実家の様子は私の想像と違っていた。
かなり裕福で、社会的な地位が高いご両親。
職業柄か人望も厚く、もし悪い噂をする人がいても その人のやっかみだろう、と言われてしまうくらい。一見、誰もが羨むような恵まれた環境。
けれどO君がM君から聞いた生い立ちは、羨ましいとは かけ離れていた。
子どものころ、入退院を繰り返す体の弱いお姉さんに、両親は付きっ切りだった。
それでM君は、物心ついたころには、知人の家に預けられていた。
その知人夫婦には子どもがなかったため、とても可愛がられた。と、なればよかったんだろうけど。
夫婦は、いずれM君を跡取りとして養子に迎えるつもりでいた。となれば、預かっているこの時期に、厳しく躾けなければ。
親元を離されたM君は、"子ども"ではなく"跡取り"として扱われた。
113 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:39:16.08 ID:LZSY7jKs.net
両親はその夫婦に頭が上がらない関係だったのでM君を養子に出すことに同意していた。
けれど、社会的地位が高く、人望が厚い両親は世間体というものをメチャクチャ重視する人たちだった。
「娘の病気のために息子を捨てた両親」なんて、世間から後ろ指さされたら困る。
だから養子に出すのは、M君が大学生になってから。
大人になったら"自分の選択"ということで、その実、有無を言わさず養子にいかせる。
二、三年でお姉さんの体調も安定したためM君は家に戻され、ようやく家族と暮らせるようになった。
けれど既に両親にとっての我が子とは、お姉さんだけになっていた。
M君は一時的に預かっているだけの存在でしかなかった。
114 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:39:42.33 ID:LZSY7jKs.net
M君は預かり物として、ある意味では大事にされた。
お行儀や作法を躾けられるのはもちろん、学業や素行だけでなく趣味や交友関係までもが厳しく制限される毎日。
M君いわく、それは教育というより、管理だったそうだ。
それでも、M君にだって自我は芽生える。
彼は高校受験にわざと失敗した。彼にとって、初めての反抗だった。
知人夫婦が望む高校に落ち、滑り止めの高校に通うこととなる。
が、その高校生活で、彼は人間的に大きく成長する。
自由でのんびりした校風だったその高校で彼は自分がいかに理不尽で窮屈な立場を強いられてきたかを自覚する。
115 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:40:10.94 ID:LZSY7jKs.net
そして高校卒業後の四年間は、O君宅を拠点にしてあちこち放浪。
定職にはもちろん就かず、バイトしながら食いつなぐ。
M君が意図していたかはわからないけど そんな彼を見限って、知人夫婦の方から養子縁組を断ってきた。
子どものころに預けられてから、約20年。M君は、これでようやく精神的にも家に帰ることができた。
その後、きちんと就職し、再び家族と暮らし始めたM君。
O君は、「やはり養子話がネックだったんだなー」と思っていたそうだ。
が、間もなくO君はM君から、引っ越しを手伝ってくれと頼まれる。
自立するのは年齢的になんの不思議もないので、O君も軽く了承した。
でもO君は、M君宅から引き上げるときのご両親の言葉で、なんとなく悟ったそうだ。
「私たちはお前を心配してたんじゃない、心配してやってたんだ」
「それなのに、この役立たず」
M君はすいませんでした、と一言残しただけだったそうだ。
116 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:40:40.53 ID:LZSY7jKs.net
「それまでさ、Mからの話でしか事情を知らなかったし その話も曖昧だったりで、よく理解してなかったんだけどさ。
だけど両親のあの言葉聞いた瞬間、なんつーか まあ……さぞ孤独だろうな、ってね。
家族に話しかけるの、あいつは常に敬語だったしなあ」
なんだか、じわっと喉の奥が痛くなった。
「あいつは、もうこの家にいるのは無理だと感じて絶縁を決意したらしい。
あんなもん見た後じゃ、俺はその決断に賛成だったし あいつもこれで踏ん切りがついていいだろうなと思ってた。
でも、そうじゃないんだよなあ。
あいつにとって自分の存在価値は、いつまでたっても大人の都合どおりの"いい子"であることなんだ。
だから、両親や知人の望みどおりにならなかった自分は、家族にとっての裏切り者で、存在価値ナシなんだとさ」
「それ、本人が言ったの…?」
「うん。普段口が重いぶん、酔うと気前よくしゃべるんだよ、あいつ」
「なんだ、わりと簡単な構造してるんだ…」
「ただ、具体的にどんなことをされたかは話そうとしないから暴力があったのかとか、そこらへんは俺も知らない。精神的なネグレクトは、確実にあっただろうけど」
117 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:41:13.62 ID:LZSY7jKs.net
家族との関係の中で、「存在価値ナシ」というレッテルを自らに張ったM君。
彼の貧しい生活は、どうやら そこからきているようだった。
だったら、あとは彼のレッテルを「存在価値アリ」に張り替えればいいだけだ。それが難しいことには、私には思えなかった。
だけど。
「そんな上手くいけばね…」
O君は、あんまり明るくない声で言った。
「そりゃ時間はかかるかもだけど…
でもちょっとずつでも、自信を取り戻していければいいんじゃないかな。
M君にはO君みたいないい友達もいるわけだし!
及ばすながら、私もいるけどさw」
「でも本当はMさん、自分に存在価値ナシとは思ってないですからねー」
それまで黙ってO君の話を聞いていたSさんが、また唐突になんか言い出した。
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