三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
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116 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:40:40.53 ID:LZSY7jKs.net
「それまでさ、Mからの話でしか事情を知らなかったし その話も曖昧だったりで、よく理解してなかったんだけどさ。
だけど両親のあの言葉聞いた瞬間、なんつーか まあ……さぞ孤独だろうな、ってね。
家族に話しかけるの、あいつは常に敬語だったしなあ」
なんだか、じわっと喉の奥が痛くなった。
「あいつは、もうこの家にいるのは無理だと感じて絶縁を決意したらしい。
あんなもん見た後じゃ、俺はその決断に賛成だったし あいつもこれで踏ん切りがついていいだろうなと思ってた。
でも、そうじゃないんだよなあ。
あいつにとって自分の存在価値は、いつまでたっても大人の都合どおりの"いい子"であることなんだ。
だから、両親や知人の望みどおりにならなかった自分は、家族にとっての裏切り者で、存在価値ナシなんだとさ」
「それ、本人が言ったの…?」
「うん。普段口が重いぶん、酔うと気前よくしゃべるんだよ、あいつ」
「なんだ、わりと簡単な構造してるんだ…」
「ただ、具体的にどんなことをされたかは話そうとしないから暴力があったのかとか、そこらへんは俺も知らない。精神的なネグレクトは、確実にあっただろうけど」
117 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:41:13.62 ID:LZSY7jKs.net
家族との関係の中で、「存在価値ナシ」というレッテルを自らに張ったM君。
彼の貧しい生活は、どうやら そこからきているようだった。
だったら、あとは彼のレッテルを「存在価値アリ」に張り替えればいいだけだ。それが難しいことには、私には思えなかった。
だけど。
「そんな上手くいけばね…」
O君は、あんまり明るくない声で言った。
「そりゃ時間はかかるかもだけど…
でもちょっとずつでも、自信を取り戻していければいいんじゃないかな。
M君にはO君みたいないい友達もいるわけだし!
及ばすながら、私もいるけどさw」
「でも本当はMさん、自分に存在価値ナシとは思ってないですからねー」
それまで黙ってO君の話を聞いていたSさんが、また唐突になんか言い出した。
「それまでさ、Mからの話でしか事情を知らなかったし その話も曖昧だったりで、よく理解してなかったんだけどさ。
だけど両親のあの言葉聞いた瞬間、なんつーか まあ……さぞ孤独だろうな、ってね。
家族に話しかけるの、あいつは常に敬語だったしなあ」
なんだか、じわっと喉の奥が痛くなった。
「あいつは、もうこの家にいるのは無理だと感じて絶縁を決意したらしい。
あんなもん見た後じゃ、俺はその決断に賛成だったし あいつもこれで踏ん切りがついていいだろうなと思ってた。
でも、そうじゃないんだよなあ。
あいつにとって自分の存在価値は、いつまでたっても大人の都合どおりの"いい子"であることなんだ。
だから、両親や知人の望みどおりにならなかった自分は、家族にとっての裏切り者で、存在価値ナシなんだとさ」
「それ、本人が言ったの…?」
「うん。普段口が重いぶん、酔うと気前よくしゃべるんだよ、あいつ」
「なんだ、わりと簡単な構造してるんだ…」
「ただ、具体的にどんなことをされたかは話そうとしないから暴力があったのかとか、そこらへんは俺も知らない。精神的なネグレクトは、確実にあっただろうけど」
117 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:41:13.62 ID:LZSY7jKs.net
家族との関係の中で、「存在価値ナシ」というレッテルを自らに張ったM君。
彼の貧しい生活は、どうやら そこからきているようだった。
だったら、あとは彼のレッテルを「存在価値アリ」に張り替えればいいだけだ。それが難しいことには、私には思えなかった。
だけど。
「そんな上手くいけばね…」
O君は、あんまり明るくない声で言った。
「そりゃ時間はかかるかもだけど…
でもちょっとずつでも、自信を取り戻していければいいんじゃないかな。
M君にはO君みたいないい友達もいるわけだし!
及ばすながら、私もいるけどさw」
「でも本当はMさん、自分に存在価値ナシとは思ってないですからねー」
それまで黙ってO君の話を聞いていたSさんが、また唐突になんか言い出した。
118 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:41:37.90 ID:LZSY7jKs.net
「Mさんは、存在価値ナシってレッテルが張られた自分に、存在価値を見出してるはずですよ。
本当に自分に存在価値がないと思ってたら、人はなかなか生きていけませんから」
「え…どういうことですか…?」
「Mさんは、子どものころから親に半ば捨てられていて、ずーっと"お前に存在価値はないよ"というメッセージを受け続けてきたわけです。
言い換えれば、Mさんにとっては自分には存在価値がないんだと認識することだけが親と共有できる唯一のものであり、接点でもあったわけです。
要は、親にとっての"いらない子"であり続けることだけが彼にとっては"自分の両親の子"であり続ける、唯一の方法なんです。
だからそのレッテルを無理に剥がしたりしたら、絶対に駄目だと思います」
119 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:42:03.07 ID:LZSY7jKs.net
「え…っと、意味がよくわからないです…。
M君は、自分から親に見切りをつけたわけだし、もうそういうこだわりがなくなったから、縁を切ったんじゃ…」
「子どもはみんな、無条件に自分を認めて受け入れてくれる、親という後ろ盾があるからこそ、安心して社会へ出て行けるんです。
親から認めてもらえなかった子どもは、いつまでも親を卒業できないまま親に認めてもらうためだけの人生を送ることになります。
人生は、ステージをすっ飛ばしてクリアすることはできないんです。
今でもMさんは、親から認めてもらうことだけを生きる目的にしてると思いますよ」
120 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:42:27.89 ID:LZSY7jKs.net
「でも……親に認めてもらいたいなら、絶縁なんてしないんじゃないでしょうか?
M君が どんな生活をしていようと、両親はもう、M君のことを見ていないんですよ?」
「でもMさん、自分から絶縁することで、親の望みを叶えてあげてますよね。
いらない子である自分を親元から排除したし、なおかつ、自ら家を出ることで、世間体を気にする両親の名誉も守った」
「えっ、そんな………こと、しますかね……??それは単なる偶然というか…」
こじつけでは?という言葉が、喉まで出かかっていた。
「私がMさんのこと言い切っちゃマズイでしょうけど、少なくとも私はしました、そんなことを。
父の暴力に耐えている母に、自分も暴力を受けることで認めてもらおうとしてたんです。
殴られた跡をさりげなく母に見せたり、いろいろしました。思ったような反応はありませんでしたけど」
「そんな…」
121 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:42:54.95 ID:LZSY7jKs.net
「まあ、そういうことをやるのは無意識なんです。親に認めてもらおう!なんて意識しながらやってるわけじゃない。
私の場合、カウンセリングで そういう構造がわかってなんとか離脱しましたけど自覚がなければ、そこから離脱することはまずできないと思います。
だって自分の無意識が、好きこのんでやってることですから。
表面的には、どうして私ばっかりこんな目に遭うの?って思ってたんです。
それなのに、別れられないんですよねー。
やっぱり好きだから別れられない、なんて思ってましたけど。
でも ほんとは違って、私にとってカレは親に認めてもらうための道具でしかなかったんです。
親に認めてもらう前に、道具を手放すわけにいかなかったんですよねー。
一方的に私ばかり殴られて、はたから見れば被害者です。
でも、私はそうやってカレを利用して、むしろカレに私を殴らせていたんです。
カレが改心なんかして、殴ってくれなくなったら困るんです。
だから、絶対に反省や更生のチャンスなんて与えずに、ただ耐える。
カレはカレで、私を殴ることで何かしら得ていたんでしょうね。
共依存とはそういう関係です。
お互いを、自分が生きるための道具としか見ていない人間関係です」
122 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:43:19.46 ID:LZSY7jKs.net
正直に言います。
私、このときSさんに ちょっとイラっとしてました。
どうしてこの人は自分の話ばっかりするんだろう。
私に知識をひけらかしたいの?
M君と重ねて、自分に同情でもしてほしいの?
だとしたら、とんだお門違いだ。私はM君の話をしにきたんだから。
そんな気持ちが態度に出てたと思う。
このときの私は、たぶんものすごい感じ悪かった。
123 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:43:44.17 ID:LZSY7jKs.net
「すみません、共依存のことはわかったんですけど… それはM君と、どう関係するんでしょうか?」
「Mさんが私と同じように、親から認めてもらいたいと思っているなら それが無意識であればあるほど、彼は人を道具にし続けるだろうなってことです。
現実の行動として、彼は絶縁までしてますし表面上は、自分は親から完全に自立したと思っているでしょうね」
「それは………M君が共依存だってことですか?私はそうは思いませんし、もし無意識がそうであっても、そんなに問題にすることでもないように思えるんですけど。
別にそれで困ったことが起きてるわけでも、何でもないですし」
「喪子さん、矛盾している」
Sさんにバシッと言われた。
「Mさんについて困ったことが起きてるから、今日はうちに来たんですよね?」
「そ、そうですけど…」
124 :1@\(^o^)/:2017/01/03(火) 20:44:11.70 ID:LZSY7jKs.net
そうだけど、そうじゃないんだ。
私はその話をしに来たんだけど、その話がしたいわけじゃない。
話だけなら、Sさんの話はまるで池上彰のように、丁寧でわかりやすかった。
それなのに、なんとも言葉にできないモヤモヤに支配されてSさんに対するイライラばかりが募っていく。
「私はM君の生い立ちとかが知りたかっただけで…その確認がとれたから、別にそれでいいかなって。
誰かにM君の評価をしてほしいわけじゃない…。
それは、私自身がM君と付き合って見極めることだと思うから」
「生い立ちの確認とれればいいってことはMさんがネグレクトされてたのがわかってよかったー、ってことですか?」
「何ですかそれ!?そんなんじゃないですよ!!」
「じゃあ、何です?」
何です?と問われて、たじろいだ。だって自分でも一瞬、「じゃあ何なんだ?」ってなったから。
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