三十路の喪女に彼氏ができたときのお話
年内から ちょこちょこ書き溜めてたら超大作になったwww
こういうスレ立ては初めてですが、書き溜めたの投下してくので
喪女のさみしい妄想話とでも思って お付き合いいただけたら嬉しいです
ほんと、とにかく長いけどな!
遡ること数年前。
私たちにとっては、二十代最後の冬。
久しぶりに、高校時代の美術部仲良しメンバーで飲み会をやることになった。
卒業後も ちょくちょく集まってたんだけど やっぱり、就職や結婚で、男性陣とは段々と疎遠になっててさ。
でも女子会wは しょっちゅうやってたので、ある日のノリで久しぶりに男どもも呼んで、ちょっと早めの忘年会やろう!と。
そして その日の連絡で、Aちゃんは私に、ほぼ消えかけてた人の記憶を蘇らせた。
「なんかねー、意外な人が来ることになったんだけどさ」
「えっ!まさかの顧問しまピー登場!?」
「違うよw ほらー、いたじゃん?美術部の隠れキャラと呼ばれてた男子が」
「んん?…………………あー、M君?」
「うん。O君から誘ってもいいか聞かれてさ。断る理由も特になかったし…いいよね?」
「別にいいよ。私、あの人ちょっと苦手だったけどねw」
「そうねー、私もそんなに得意じゃなかったかなー。たぶんM君としても、O君が誘ったから来るんだろうし」
「あ〜。飲み会とか、絶対参加しなそうなイメージだよねえ」
「まあ お互いもう大人なんだし、そこらへんは上手くやろう」
「もちろん!楽しみにしてるよー」
M君は美術部員じゃなかった。
彼は、顧問しまピーと同じバンドのファンってことで仲良くしてて放課後の美術準備室で、いっつもしまピーのCD聞きながら本を読んでいた。
その彼にデッサンモデルを頼んで、準備室から引っ張り出したのがO君。
どうもM君の本を読む姿がO君の感覚にツボったっぽい。
M君、なかなかのイケメンだったんだ。
美術室に出てきたM君は、そのうちO君以外の男子とも打ち解けて
モデル契約が終わってからも、なんとなーく美術室に顔を出していた。
でも私は、どこか陰気でトゲトゲしさのある彼が、どーにも苦手だった。
その後も あまり接触なく卒業したので、私にとっては
M君=準備室で仏頂面してる怖くて邪魔な男子
それで全てだったんだ。
飲み会の当日。お店に着くのが遅れてしまった私に、Aちゃんからイマドコ電話が入った。
「ごめん、もうちょっとで着く!」
「うん、気を付けておいで。玉山鉄二もいるよ」
「……はい?」
店に着いて案内された個室のドアを開けると、なるほど、確かにいた。
メガネをかけた玉山鉄二が、そこに。
まーご想像どおり、それがM君の成れの果てだった。
「はい、あんたたち独身席ねー」
Aちゃんに押されてM君の隣に追いやられる。
この日集まったメンバー中、結婚のケの字すらないのは、私とM君だけだった。
「え、う、あ…どーもお久しぶり……玉山クン」
「お久しぶりです。まだ嫁入り前だから、名前変わってないはずなんですけどねw」
苦笑いしながら、私のために ちょっと体をずらすM君。
「Aちゃんなに言ってんだろ?と思ったけど、ほんと似てるね。どーして高校生のとき気づかなかったかなあ?」
「あー。あのころはまだデビューしてなかったもんで」
「ご本人様かww」
「はいはい、人の顔見下ろしてないでさっさと座る」
「あ、ごめんごめん」
M君の隣ということで ちょっと身構えたけど、冗談ぽくウザそうにされただけで、高校時代の陰気なトゲトゲしさはなかった。大人になって、ずいぶんと丸くなったんだなあ。
つーかこれ、あれだ。きっとよそでも玉山玉山言われまくってんだろうな…。
「でもほんと久しぶり。M君とは卒業以来だもんね。前はよくこういう飲み会やってたんだよ?来ればよかったのに」
「俺は部員じゃなかったから、やっぱり気が引けてさ」
M君はこの二年間、資格取得のために勉強漬けの毎日だったとのこと
そして試験終了して、それまでの断酒生活にサヨナラしようと
O君と飲む約束をしていたら、この飲み会の話がきた、と。
どうやらそんな流れで、偶然の参加だったようだ。
「なんかごめんね、部外者がいて」
「んん?だって男子とはまだ付き合いあるんでしょ?だったら部外者ってわけじゃないじゃないw」
ちょっと縮こまり気味なM君の態度に そんな遠慮しなくても、その顔ならわりとどこもフリーパスなのでは…?と思ったけども、話してるうちに段々と気づいた。
彼は、そういう馴れ馴れしさや、調子づいたところがない人だった。
久しぶりのM君はトゲトゲしさが抜けたどころか控えめな雰囲気の、感じのいいイケメンに進化していた。
きっと高校時代のぶっきらぼうな陰気さは大人としての落ち着きへ変化したんだろうな、と思った。