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25 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:11:27.65 ID:mR9MWEUH0.net
俺と樋口、焦りながら綺麗な景色を探す。

俺「どうせなら夕日の絵とかにするか!?」

樋口「承った。」

俺「あそこでいいだろ!あの公園の東屋!他にも絵描いてる人いるぞ?」

樋口「OK、マスター」

相変わらずこいつキャラ安定しないなぁと思いつつ、途中にあった結構大きめな公園にある東屋から見える景色を絵に描くことに。



28 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:27:35.09 ID:mR9MWEUH0.net
田舎の公園だからだろうか、かなり広かった。

芝生に遊具、ベンチなどもあり、しっかりと整備されている立派な公園だった。

これは絵を描いてる人がいてもおかしくないなぁ。と、芝で走り回ってる子供たちの声を聞きながら思った。



29 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:28:11.01 ID:mR9MWEUH0.net
東屋で絵を描いている人に近づく。一人の女の子だった。俺らと同じくらいの歳かな。

芝生には子供たちがいるものの、東屋近くには人が少なかったためかなり目立った。

しかも長年使ったような立派なイーゼルを立ててまるで画家のような数の沢山の筆で絵を描いていた。

肩までかかるくらいの黒髪と画家姿が良く似合う女の子。さすがにベレー帽は被ってなかったが。



30 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:28:43.92 ID:mR9MWEUH0.net
俺 樋口「ごめんなさーい!ここ、俺らも使っていいかな?絵を描きたくて。」と話しかける。

女の子は大人しそうな見た目に反して

女の子「君たちも絵を描くの〜?」

と元気に答えた。





31 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:29:42.28 ID:mR9MWEUH0.net
俺たちは、合宿でここに来た美術部ということ、昼間サボりすぎて今急いで描かないといけないことを伝えると、女の子は笑って

女の子「一緒に描こうよ〜!」

と言ってくれて助かった。



32 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:31:20.71 ID:mR9MWEUH0.net
俺と樋口は少ない残り時間で急ぎながら、だけど女の子と喋りながら絵を描いた。

ここら辺は夕日が良く見えるんだよ〜、とか

筆は何使ってるの〜、とか、話してた。

女の子が使ってる筆やイーゼルは年季が入っていたが、道具に詳しくない俺らから見てもいい物だと分かった。



33 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:32:52.13 ID:mR9MWEUH0.net
急いでいるなら普通無言で描くだろうが、ついついこの女の子と話してしまうのは、この子が結構可愛かったからだろう。

そこまでコミュ力が高くない俺らでもついつい話してしまった。

本当はこの子を描いたりしたら絵になるんだろうなぁ…って思ってみたり。



34 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:36:00.65 ID:mR9MWEUH0.net
すると、話しながらも内心は急いでいたのか

樋口「よし描き終わった!イッチ、あと君!お先に失礼するぞwww」

と樋口が雑に道具を片付けて先に走って民宿へ向かって走り去ってしまった。

時計を見る。

俺を置いて先に帰った裏切り者はギリギリ間に合うだろうが、今から片付けて帰ってもどうせ間に合わない。

女の子と2人きりの状況を作ってくれた樋口に一周まわって感謝しつつ、時間は諦めて絵と女の子との雑談に力を入れることにした。



35 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:37:28.08 ID:mR9MWEUH0.net
女の子「あの子先帰っちゃったじゃん。君は間に合うの〜?」

俺「もう諦めたよwww どうせならもう少しゆっくりしてくよ」

女の子「暇してたから嬉しいよ〜」



36 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:37:46.40 ID:mR9MWEUH0.net
今まで急いで乱雑に描いていた絵とは別にどうせなら久々にしっかりとした絵を描いてみることにした。

普段はこんなことしないだろうが、何となく。

女の子「あら、ちゃんと描くんだ〜。ちゃんと描いたら上手いんじゃないの?」

俺「サボり部員だけど絵が苦手な訳じゃないからなwww 君より上手いかもね。」

と冗談を言い、絵を再び描き始めた。



37 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:38:23.11 ID:mR9MWEUH0.net
君より上手いかもと言う表現を冗談にしたのは言うまでもなく、この女の子の絵には目を見張るような魅力で溢れていたから。

絵の具をちょこんとつけ、筆で慣らすだけで いつの間にか立派な夕焼け空を描いてしまう女の子の技術は、まるで魔法のようだった。

絵を描くのが好きだった訳では無いが、小さい頃から絵の上手さにはかなり自信があった俺が今までサボらず必死に描いてもここまで魅力的な絵は描けないだろう。



38 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:40:47.27 ID:mR9MWEUH0.net
もし俺が絵を描くのが好きだったとしたら、この女の子の絵と実力に嫉妬していただろう。

だが、負けず嫌いな俺はこの子より上手に描いてやろうと思った。(サボり部員にそんなこと出来るわけないが。)

俺「どうせなら、君より上手に描くから。勝負しようよ。」

女の子「いいね〜。そういうの好きだよ?負けるつもりはないからね〜!」





39 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:41:06.19 ID:mR9MWEUH0.net
女の子も俺と同じく負けず嫌いだったらしい。

それから20分も30分も俺たちは無言で絵を描き続けた。

辺りが暗くなり、空がオレンジと紫で覆われる頃、完成したお互いの絵を見せあった。



40 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:41:25.56 ID:mR9MWEUH0.net
勝負はやっぱり完敗だった。

久々に本気で絵を描いたものの、自身はかなりあった。自分で言うのもアレだが、この俺の絵も他人に見せたらかなりの評価を貰えると思った。

だが完敗。

だが1番驚いたことは、俺の制服が絵の具で少し汚れていたこと。

今まで真面目に絵を描くことなんてほぼなかったから、服の汚れも気にしないほど集中して絵を描いたというのは新鮮だった。



41 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:41:57.13 ID:mR9MWEUH0.net
女の子「これは私の勝ちかな〜!」

俺「認めたくないけど俺の負けだな。もう1回やらないか?」と俺がムキになったところで、

女の子「時間見てみなよ〜!そろそろ戻らないと叱られるよ〜?」


俺顔面真っ青。冷や汗ダラダラ。

民宿への集合時間30分以上過ぎてたwww。



42 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:42:25.71 ID:mR9MWEUH0.net
俺「嘘だろやばいぞwwwwwwそろそろ戻らなきゃな!」

と、さっきの裏切り者のように雑に道具を片付けて足早に去ろうとした。

俺は絵を描いてる途中の雑談で、この女の子がよくここで絵を描いてること、小さい頃から絵が好きだということ、俺の1つ年下の高校一年生だということを知った。でも肝心なことをまだ聞いていない。



43 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:42:59.06 ID:mR9MWEUH0.net
俺「君、名前はなんて言うの?」

走りながら女の子に聞いた。一昔前のナンパのセリフみたいで少し緊張した。

美凪「ミナギ!美しいに凪で!ミナギ!」

美凪は走る俺に大声で叫んだ。

前に見た恋愛小説でこんなシーンあったっけ?

やっぱり青春してるな〜とか思いながら。



44 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:43:40.17 ID:mR9MWEUH0.net
俺「俺の名前はイッチだから!」

と俺も走りながら。

まさか俺の人生でこんな少女漫画みたいな自己紹介があるとは。と、クスッと笑ってしまった。



45 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 15:46:19.48 ID:mR9MWEUH0.net
休憩挟みながら

こんな感じでぼちぼち続けます。

完結は絶対させるので。



51 :名も無き被検体774号+:2021/08/14(土) 16:29:59.66 ID:mR9MWEUH0.net
民宿に帰ると、ミーティングはとっくに終わっており夕食の準備が始まっていた。

大急ぎでみんなの元へ駆け寄る。

樋口「遅すぎござるよwww先生には何とか誤魔化しておいたぞwww」


裏切り者なんて言ってごめんよ。こいつは神様か。一生の友になるだろう。

樋口のおかげで少し注意されるだけで済んだから、樋口には後でジュースを奢ってやろう。




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:人生・生活  |  タグ:これはすごい, 感動・泣ける話,
 


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