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叶わない夢を見続ける少年の物語
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32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:09:36.220 ID:bBdKFIo+0.net
空を飛ぶことへの憧れ、乗り物への好奇心。

ジョンは はじめて飛行機に乗った時、パイロットになりたいと思ったらしい。

俺も最初はそうだった。


そんで、一度そう思ったら色々興味がわいてくるんだよな。

どうしたら飛行機を操縦できるのか、とか。

パイロットってどんな人なのか、とか。


それで、調べていくうちにすっかりその虜になってしまう。

俺とジョンはとことん似たもの同士だった。



33 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:11:02.640 ID:bBdKFIo+0.net
みんなは高校生のころ、俺みたいに こんなはっきりした将来の夢をもっていたか?

もちろん、いることにはいるんだろうけど、そういう人は結構少なかったんじゃないかな。

実際、俺の周りにそういう人は少なかったし。


だから、こうやって夢を語れるっていうのは俺にとってすごい嬉しいことのはずだったんだ。

本来ならば、な。



34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:11:56.742 ID:bBdKFIo+0.net
でも俺はその時、嬉しいとも楽しいとも思わなかったんだ。

皆はさ、目が見えないパイロットが操縦する飛行機に乗りたいと思うか?

実際に、パイロットになるには厳しい身体検査がある。

その検査は、一見なんの以上もない健康な人でも半数しか受からないほど厳しい検査だ。


両眼視力はもちろん、片目視力、空間把握能力、色覚、平衡感覚…

パイロットになるにあたって、目が見えないのは致命的だったんだ。

最初こそ俺と面を向かって話していたジョンだが、いつの間にかジョンは壁に向かって喋りかけていた。



35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:12:50.720 ID:bBdKFIo+0.net
俺は考えてみた。

もし、今この時点で俺がパイロットになれないということが確定したら、俺はどうするか。

死ぬ。以上だ。

それだけ、俺は妥協を許さない性格だったんだ。



36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:14:15.293 ID:bBdKFIo+0.net
ジョンは飛行機について語るのが好きだった。

そして、俺はそれを聞くのが好きだったんだ。

「僕はボーイング777-400 を操縦してみたいな。その理由はあーたらこーたら。」

とか、「エアバスの飛行機には基本的に操縦桿がないんだよ。全部ジョイスティック。しってた?」

とか。

とにかくジョンの飛行機に関する知識はすごかった。



37 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:15:41.981 ID:bBdKFIo+0.net
なんでこんなに飛行機について色々知ってるのか一度聞いたことがあるんだが、ジョンは小型機のコックピットに何度も乗ったことがあるらしいな。


アメリカでは結構いろんな人が小型機を運転できるんだとか。

ジョンは小型機パイロットの友達にコックピットに乗せてもらっていると言っていた。

へえ、そりゃすげーや。





38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:16:52.511 ID:bBdKFIo+0.net
ある日、俺らは飛行機のシミュレーションゲームをやってみた。

ジョンはすごい喜んでたな。

なんせ、目が見えないジョンにとってこれがはじめてのビデオゲームだったとか。


俺がジョンに現在地とかの情報を説明して、ジョンが俺に次は何をするだとかの手順を教えてくれる。

きっとそのゲームをしている間は、俺たちは最高のパイロットコンビだった。

「僕たち、きっと素晴らしいパイロットになれるね。」

ジョンは呟いた。

それにたいして俺は、「そうだな。」としか言ってやれなかったな。



39 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:17:40.845 ID:bBdKFIo+0.net
でもやっぱりゲームは楽しかった。

同じ空港へのアプローチを何度も繰り返して、悪天候での着陸も試してみて。

今思えば、あんなクリア条件もタスクもないゲーム、何が楽しいんだろな。

でも、あの時は時間さえ忘れるくらいに楽しいと思っていたんだ。



40 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:18:40.655 ID:bBdKFIo+0.net
「ジョンはパイロット以外になってみたい仕事はないの?」

「もし僕がパイロットになれないのであれば、生きている意味がないよ。」

「…」

ある日、ジョンとマリンさんの会話が聞こえてきた。


俺は聞いていない、理解していないふりをして自室にむかった。

そんで俺はベットの上で考えたんだ。

数か月前まで俺たちは面識すらなかった。

1年が過ぎて俺が帰国すれば、接点なんてなくなる。

ジョンなんていわば他人も同然なんだ。


俺は自分に言い聞かせたよ。

でもそしたらあの時の、胸を締め付けられるような苦しみは一体なんだったんだろうな。



41 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:19:55.807 ID:bBdKFIo+0.net
ちょうど、ジョンの16の誕生日のことだった。

アメリカでは16の誕生日は一つの大きなイベントらしくて、大人になったことを意味するらしい。

タバコとか酒とかは21かららしいけど、16で運転免許がとれるようになったり選挙権が与えられたりするんだとか。

マリンさんは、それをちょうどジョンの人生の分岐点にしようとしたらしい。


ジョンに本当のことを伝えたんだ。

視力がないとパイロットにはなれないこととか、いろいろ。

ジョンは全部を聞く前に それどころではなくなっちゃってさ。

こんなのは間違っていると泣きわめくジョンを、俺は見ていられなかった。



42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:21:20.881 ID:bBdKFIo+0.net
マリンさんの気持ちも分かるよ。

どうせいつかは直面する日が訪れてしまうんだ。

それは後になるほど言いづらいもんな。

実際に今回も、マリンさんは心を相当痛めたと思う。


でもやっぱり自分の子供は大切だもんな。

ちゃんと将来生きていけるような、もっとマシな夢を持ってほしかったんだろうな。

その日ジョンは、マリンさんに不満を吐き続け、俺を嘘つきと罵り、その焦点の合っていない目からは夥しい量の涙を流していた。



45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:24:23.956 ID:bBdKFIo+0.net
俺はその日の夜、ベットの中でなかなか眠れずに考えていた。

ジョンに言われたことを思い出したんだ。


「僕はパイロットに憧れていたけど、でも薄々本当はなれないことに気づいていた。

でもシオン君が、僕たちはいいパイロットになれると言ってくれたんだ。

僕が頑張って勉強したパイロットの知識をすごいと言ってくれたんだ。

本当に僕がパイロットみたいだって言ってくれたんだ。

だから、僕も本当にパイロットになれると信じたんだ。

なんで生半可に期待を持たせたんだ、この嘘つき」

って。




46 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:25:17.313 ID:bBdKFIo+0.net
正論だった。

俺は、ジョンが笑顔になってくれることが嬉しかった。

俺のおかげでジョンが笑ってくれてるんだって勘違いしていた。

でも、ジョンは俺が創ってきた笑顔の分だけ傷ついた。


俺はこの家に来るべきではなかったんだ。

唯一の救いは、この時すでに帰国の直前だったことだな。



47 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:26:04.744 ID:bBdKFIo+0.net
それからは俺たちは特に何も話さずに帰国の日を迎えた。

留学中にできた友達は、涙を流して俺を見送ってくれた。

また戻るの意味をこめて「I’ll be back (アイル・ビー・バック)」と親指を立てた時は皆で笑いあったりもした。



48 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:27:15.761 ID:bBdKFIo+0.net
でも、ファミリーとはそうはいかなかった。

どこか気まずくて、会話が生まれない。


マリンさんは長々と「この家に来てくれてありがとう」的なことを言っていたけど、それが本心なのか俺は疑ってしまった。

弟にはもう「グッバイ」くらいしか言わなかったっけ。

1年間お世話になったのに、謝らなきゃいけないのに、最悪だよな。俺は。



49 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:28:32.836 ID:bBdKFIo+0.net
帰り道。

いくら飛行機が好きな俺でも約14時間の空の旅。

俺は何もしていなかった。

何だろう、後味が悪いって言うのかな。

とにかく、何かをする気がおきなかったんだ。


そこでふと気づいた。

「ん?リュックに何か入ってる…?」

俺のリュックには、側面にペットボトルか何かを入れるためのスペースがあった。

そこに封筒が入っている。

俺はそれを開封し、中に入ってた手紙を読んだんだ。





50 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:31:15.035 ID:bBdKFIo+0.net
「シオン君へ

 最後に、あんなことを言ってしまってごめんなさい。

私は動揺していて、本心ではないことも言ってしまったんです。本当にごめんなさい。

僕は、シオン君にはすごく感謝してるんです。

私の母は体が悪く、家事をこなせない日があります。シオン君はそれを手伝ってくれました。

私たちが旅行に行ったことを覚えていますか?その時、シオン君は私たちの重い荷物を運んでくれました。

そして、毎日放課後に一緒に遊んだことを覚えていますか?シオン君が紹介してくれたビデオゲームはとても面白かったです。

できることなら、また二人で遊びたいです。私の話は誰もがつまらないと言います。でも、シオン君は楽しそうに私の話をきいてくれました。

僕はまだ、パイロットになることを諦めきれませんw。

僕は、パイロットになるために視力が必要だなんて思っていません。

私は、盲目の人のための空間を把握する機械を開発しますw。

シオン君の話を聞いて、改めてパイロットになりたいと思ったんです。

僕は言ったでしょう?パイロットになれない人生は意味がないと。僕は僕なりに頑張ってみます。

シオン君は僕を応援してくれました。

僕の諦めかけていた人生に意味を与えてくれました。シオン君と出会えて良かった。

この1年間は、これから僕が生きていく一生の中で、特別な思い出になります。さようなら。


ジョンより」



51 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:32:42.437 ID:bBdKFIo+0.net
俺は飛行機の中で何度もこの手紙を読んだ。

やがて飛行機は日本に着いた。

俺はその手紙を大事にリュックにしまい、飛行機から降りた。




52 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:34:16.354 ID:bBdKFIo+0.net
「おう、俺。どうだったよ。この一年。」

「お帰り、俺。アメリカ楽しかった?」

本当に久しぶりに両親の顔を見た。

そっか。帰ってきたんだな。日本に。


でも今は再開を喜ぶより、帰国を祝うよりも言いたいことがある。

俺は声高らかにこう言ったんだ。

「最高の、1年だった!」と。




54 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:35:17.539 ID:bBdKFIo+0.net
“Dear John”

俺はそう書いて手が止まった。

「はは。はははは!」

俺はもうおかしくて笑いが止まんなかった。



55 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:36:01.428 ID:bBdKFIo+0.net
「全く一緒じゃねぇか!俺らは。」

今までに書いた手紙をかき集めて、手中に収める。



56 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:36:57.996 ID:bBdKFIo+0.net
「ジョン。お前、こんな気持ちだったのかよ!」

机をたち、歩き出す。



57 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:37:30.869 ID:bBdKFIo+0.net
「ああ、思い出したよ。」

持っていた手紙を、全部ごみ箱に放り投げた。



58 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:38:24.551 ID:bBdKFIo+0.net
「やっぱり、あれは…」

ただ歩くこともままならない体で、俺は夢中で松葉杖をついた。



59 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:39:11.206 ID:bBdKFIo+0.net
「やっぱり、あれは最高の1年だった!」

そう言って俺は家を飛び出した。



60 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2022/01/23(日) 17:40:37.926 ID:bBdKFIo+0.net
「俺さ、パイロットになる夢、諦めねーよ。」

なんのことかも説明しないで俺は勝手に語る。


「今はこうやって足が使えないけどさ、義足やら何やらで代用できないかなw」

俺がいきなり語りはじめて皆困った顔してたなw


「そりゃいまの技術じゃ無理だけどさ、将来、本物の足みたいに動く義足が開発されるかもしれないじゃん。」

誰かが言う。もし開発されなかったら…?って。


「そん時はそん時だよw」

だって…

「俺が作ればいいんだよ!」




>>次のページへ続く
 
カテゴリー:読み物  |  タグ:すっきりした話, 青春, これはすごい,
 


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