厨房3年の夏
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服のレパートリーが少ないせいか そのときもミニなもんだからパンツが丸見え。
白いパンツをじっと見ていたら「常在戦場」という言葉が頭の中をぐるぐるまわりはじめて、常在戦場、常在戦場、常在戦場、ここは戦場だ、チャンスは今しかない……勢いで告白していた。
おれ小6のときからずっと○○のことが好きだったんだよ。
5年後には絶対にTさんみたいな男になってみせるからおれとつきあってくれ、みたいな恥ずかしいことを堂々とよく口にできたもんだと今になっては思うが、それでも当時は必死の大冒険だったわけよ(w
彼女はぽかんとして、何が何だかわからないといったような顔。
意味が呑み込めると怒りだした。ヒステリーってこういうのをいうのか。
あんなに切れた彼女を見たことがなかった。
冗談じゃないわよ、と。人が苦しんでいるときに、よくもそんなことがいえたもんだ。
Tさんとあなたみたいな甘ったれを一緒にするな!
傷ついたなー。
そしてほんとにTさんに自分のことを聞いてくれたのかと疑われた。
Tさんに嫉妬してウソ八百を並べているのではないかと。
ここでおれも切れた。人の好意を無にしやがって。初めての大喧嘩。
彼女が家に来なくなった。淋しかった。告白したことを後悔した。
すべてを忘れて勉強しようと思った。
実際、勉強ははかどった。
Tさんから教えてもらった勉強法がよかったのだろう。
日に日に学力が向上して行くのが自分でもわかるくらいだった。
お盆がきて、夏祭りのある晩。
受験生に祭りはないと机に向かっていると、久しぶりに彼女からの電話が。
すぐ来い、という感じで呼び出された。
来て当たり前。来なかったら一生、口をきいてやらないぞという感じだった。
久々耳にした彼女の声。嬉しかった。なんだろう。告白に応じてくれるのか。
公衆電話からひと気のない廃材置き場へ。
服装はいつものミニ。おいおい、襲っちゃうぞなどと、それから聞かされることを知らないおれは浮かれていたよ。
今あいつと別れてきた、と彼女は口を開いた。
あいつとはTさんのことだった。
聞くと、あれから彼女はTさんとつきあいはじめたらしい。
全然、知らなかった。でも婚約者がいるんじゃと言いかけると、彼女がさえぎった。
奪ってやると思ったとのこと。
Tさんの婚約者は政治家のご令嬢だか何だかで、そんな女とだったら貧乏で苦労をしてきている自分のほうが内面も磨かれているし、Tさん自身も苦労人だから絶対に自分を選んでくれると彼女は信じていた。
今晩、その婚約者が夏祭りもあるのでTさんの地元に遊びにきたのだが、そのとき、二人でいるそのときに彼女はあいだに入った。
そしてTさんに問い詰めた。どちらが好きなのかと。
Tさんは迷いもせず婚約者のほうを選択した。
——つまりはそんな話だった。
なんだよ、突然呼び出されて失恋話の聞き役かよ、まったくいい迷惑だなと思いながらも気になることがひとつあった。
まさか、やってないよな。でも、彼女にどう聞けばいいのだろう。
そういう性的な話はしたことがなかったし、セックスという言葉さえ恥ずかしくて口にできない。頭の中は妄想が飛び交っているのに(w
おれはそんな厨房だった。セ、セ、セ……やっぱり言えない。
「あいつじゃなくて○○のことを好きになっていれば良かったよ」
そう言うと彼女は自分の不幸に酔ったかのように泣き出した。
よし、聞こうとおれは思った。で、Tさんと、その、やっちゃったの?
こくりとうなずく彼女。
それからずいぶんと聞きたくないことを聞かされたなー。どれだけ自分がTさんにつくしてきたか。
あれもしてあげた。これもしてあげた。それなのにどうして?……
むっつりスケベのおれは、あ、それフェラチオっていうんだよとか思いながら、あそこはびんびん(w 想像しちゃうと、どうしてもね。
で、頭の中ではけっこう冷静に落ちついて考えているわけよ。
よく、小説とかにこういうパターンがあるよな。
こういうときに優しくしてあげると、その流れでムフフなことがって。
今絶対そのパターンだよな、とここでまた「常在戦場」を思い浮かべる。
もう処女じゃないんだからあんがい簡単に……と妄想は大暴走。
でも かわいそうだよなと彼女を見ると、例によって足のあいだから白がのぞいている。
妄想と嫉妬で頭がごちゃごちゃになって思わずスカート中に手を入れたわけ。
おもいっきりひっぱたかれたわ。痛かったなー。
なんでTさんは良くて、おれはダメなんだよ……と言う勇気はなかったが。
気まずい沈黙。ああ、やっちゃった〜と後悔。
もう許してくれないだろうな。せっかく信頼して打ち明けてくれたのに、おれったらいきなりスカートの中に手を突っ込むんだもんな。バカだな、おれ。
彼女は油断も隙もありゃしないといったふうに足をきつく閉じると言った。
買ってこい、と。今すぐ酒を買ってこい。え、と聞き返すおれ。
「酒をおごってくれなかったら、あたしを襲おうとしたことをばらすぞ」
そう言うと笑った。
許してくれたのかと嬉しくなって酒屋に飛んで行ったよ。
ビールなんて飲むのは初めて。たぶん彼女もそう。
わーまずいというのが正直な感想。あんまり冷えてなかったし。
でもおれは大人なんだと誇示したくてぐいぐい飲んだよ。
そういえばTさんの飲み方はいかしてたな(死語)とか思い出しながら。
気持ちいいな、世界がまわってるよ。
なあに、どうでもいいじゃねえか。だって世界がとろけてるんだぜ。
ふたりでぶらぶらと歩いて、気づくと小学校の前にいた。
——小学生のときは楽しかった。お母さんも生きていたし。
将来、良いことばかりだと思ってた。悪いことなんてぜったいに起きない。
だってあたしの人生なんだから。いつかきっとすてきな王子様が現れて、あたしを夢の宮殿に連れていってくれる。
よくそんな空想をしていたの。
お母さんなんで死んじゃったんだろ。もういちど会いたいな。
ほら、○○覚えている? 運動会のときのこと。
○○ったらうちのお母さんが作ってくれたお弁当、あたしのぶんまで食べちゃって。
うっせー。かわりにおれの弁当をあげただろ。
いつのまにか校門を飛び越えていた。
泳ごっか! そう言うと彼女はプールの方へ走って行った。
おれはかなり酔いがまわっていて、千鳥足であとを追いかけると もう彼女は泳いでいる。
プールサイドに脱ぎ捨てられた彼女の衣服が。
「早く○○もー」と水の中から誘われた。
そうするのが当たり前のようにおれは服を脱いだよ。
ここで泳がないなんて、そんなのは人間じゃない。だって暑いんだから。
これは現実なんだろうか。それとも映画のスクリーンの中なのか。
おれはプールで泳いでいるのか。それともビールグラスに浮いているのか。
夏祭りの花火が遠くに見える。
しばらく泳いだら上がる。そしてまた泳ぐ。
ぼんやりと見える彼女の裸身。神々しいほどきれいだな。
ぜんぜんエッチな気がしなかった。
ヌードグラビアなんか、これに比べたら汚らわしいだけ。
いま成長しつつあるものだけが持つ美しさ。ふくらみきっていない胸。
花火があがったときだけいくらか鮮明に彼女が見えた。
疲れてふたり並んで甲羅干し。小学生に戻ったみたいに。
向き合うとお互い気恥ずかしい。また花火があがる。
おれはまだ十分には毛が生えそろっていなかったので見られたくなかった。
彼女を見て驚いた。おれの視線に気づいた彼女が恥ずかしそうに、
「あいつ変態なんだよ。あそこの毛、剃りたいって」と両手でその部分を隠した。
その恥じらう姿を見ていたら今まではなんともなかったのに急に反応して(w
彼女も気づいて、あっと小さな悲鳴を。
おれは駆け出してプールに飛び込んだ。それからしばらく上がれなかった。
全体力を使いきるまで泳ぎなさい、とか命令されたもんで。
へとへとになって上がると、彼女はもう服を着ていた。
Tさんのと比べられたら困ると思って、おれは急いでパンツを探した。
暗くてよく表情はわからなかったが、なんとなく彼女がにやにや笑っているような気がした。
オンナは強い、オンナは怖い、漠とした意識のうちでそんなことを思った。
なぜか彼女にはぜったい、この先かなわないだろうと予感した。
そして彼女はかならずこの失恋から立ち直る、いや、もう吹っ切れているのかもしれない。
花火が一発だけでは終わらないように。
厨房のおれは そんなことを格好つけて彼女に言ってみた。
今から考えると赤面ものだが、花火とキミがどうのこうのと(w
彼女は最初おれが何を言っているのかわからなかったが、なんとか説明すると「似合わないー」と大笑いされた。
そのあと、「ありがとう」という小声を聞いたのははたして夢か現実か。
眠る直前、Tさんのことを考えた。
つぎTさんに会ったら、どんな顔をすればいいのだろうか。
結局、誰が悪いのだろうか。
おれはTさんとどう接すればいいのだろうか。
さんの顔を正面から見れなかった。この人と彼女がセックスをしたのだ。
そう思うと、Tさんや彼女が おれなんかとは何光年もはなれた遠い存在に感じられるのはなぜだろうか。セックスって何だろう。
文学で描かれるセックスしかおれは知らなかった。
美しいものとして描く文学者もいれば、ことさら露悪的に書きなぐるものもいる。
両親がセックスして自分が生まれた。それはわかる。
しかし両親がセックスしている様は想像できない。
では、彼女とTさんがセックスしているすがたは?とおれは目の前のTさんを見る。
Tさんのたくましい裸体をイメージする。
このまえ盗み見た彼女のすんなりと細い身体を思い浮かべる。
このふたりがベットの上に置いてみると、やりきれない切なさが胸をしめつけた。
頭の中でからみあう二人。あまりにも細身の彼女が痛々しかった。
Tさんが悪い、とおれは決めた。いくらTさんだって、やって良いことと悪いことがある。彼女があんまりにもかわいそうだ。
その日の勉強が終了して、帰ろうとしているTさんをおれは呼びとめた。
「話があります」
Tさんは何のことだかわかったようだった。
無言のまま並んで歩いた。
おれは自分が何をしたいのかまだわかっていなかった。
公園についた。薄暗かった。電灯のそばのベンチに腰をおろした。
この男が憎たらしい、彼女はこの男にもてあそばれたのだ。
でもTさんのまえにでるとその威圧感というのだろうか。
辛酸をなめてきた人間の生命力のまえに言葉がうまく出てこない。
「ぼくは君に常在戦場という言葉を教えたよな。男は いつも戦場にいるつもりぐらいがちょうどいいという意味だ。
言いたいことがあったら正々堂々と言うのが男。
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