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「こっから先は、見せてあげない」
そう言って香織は、アルバムを閉じた。
「乙女の秘密があるもんね〜」
「あっ!ズルイ!」
そう言って香織の方を見た時、すぐ側に香織の顔があって驚いた。
慌てて目を伏せた俺。
「ねぇ俊ちゃん・・・」
香織の呼び掛けに、再び顔を上げた俺。
目の前に香織の顔。
「あたしの事・・・キライかな?」
「キライな訳・・・ないじゃん・・・」
「ホントに?」
「あぁ・・・」
「じゃ何であの時、あんなに大声出して否定したかなぁ?」
「だって・・・俺なんかと・・・香織ちゃんが嫌かと・・・」
目を伏せて呟いた俺の唇に、温かくて柔らかい感触が急に。
「あたしの・・・ファーストキスだかんね」
目の前の香織が笑った。勿論俺もそうだったけど。
「ケーキの・・・味がしたよ」
そう言って笑う香織。
「俊ちゃん・・・ケーキの味、分かった?」
「いや・・・」
「え〜っ!?マジで?」
「うん・・・」
「じゃ俊ちゃん・・・今度は俊ちゃんが・・・ねっ?」
目を閉じた香織の唇に、俺はそっと唇を重ねた。
確かに香織の言うように、イチゴのケーキの味がした。
でもイチゴのケーキよりも、今この瞬間、香織と唇を重ねあってる事のほうが、俺にとっては嬉しい事だった。
「2回もしちゃったね」
そう言って笑う香織。
「あぁ・・・」
「俊ちゃん、何であたしの顔見ないの?」
「だって・・・」
「何よ?」
「恥ずかしいのと・・・」
「何?」
「胸が・・・見えてる・・・」
前屈みになった香織の襟元から、しっかりと谷間が見えていた為、俺は香織の方を見れないでいた。
「えっちぃ〜」香織はそう言い、一瞬だけ体勢を変えたが、また前屈みに戻った。
「ホントは見たいくせに」
きっと香織、俺を見て笑ってる。だから尚更、俺は香織を見れないでいた。
左手をふいに、香織に取られた。
香織は両手で俺の手を掴むと、それを自分の胸に持っていった。
初めて触れる、柔らかい感触。
「あたしも・・・恥ずかしいよ・・・」
その言葉に香織を見ると、香織も赤い顔をしていた。
「直接・・・触っていいかな?」
コクリと頷く香織。
だが襟元からは手が入らず、俺はパジャマのボタンに手をかけた。
「全部は・・・ダメ。恥ずかしいから・・・」
上2つだけボタンを外し、俺はそこから手を入れた。
もっともっと柔らかい感触。
香織は時々、「アッ・・・」とか「ウッ・・・」とか声を洩らした。
俺は香織に、3度目のキスをした。
香織は俺の頭を抱いてきた。
俺も胸から手を外すと、香織の腰を抱いた。
この日、一番長いキスだった。
「Bまでしちゃったね」
香織の部屋を出る俺の耳元で、香織がそう囁いた。
「あぁ」
俺は短く答えた。
玄関まで見送ってくれた香織が、
「明日・・・一緒に行こうね」と言った。
「それから・・・」
「なに?」
「香織ちゃんよりも・・・香織がいいな」
香織はそう言うと、赤い顔をして舌を出した。
1学期が終わり、香織は高校を退学した。
陸上を辞めた為に特待生ではなくなり、学費も高く距離も離れた学校ではなく、近くて安い高校に通いなおす為だ。
始業式の日、俺の高校に転校生が入った。
勿論香織だ。
結構可愛い香織はたちまち、数名の男にアタックされたらしい。
でも香織は「彼氏います」と、全て断った。
その彼氏が俺だなんて。
この事実は程なく、我が校の「7不思議」に数えられる事になった。
キスしたり、(服の上から)胸を触ったりは、何度かあった俺達だが、なかなかその先には進まなかった。
既に双方の親公認の仲になり、双方の家には行っていたが、「節度は守れ」と父親から言われたせいか、先に進めないでいた。
勿論俺、したくない訳じゃない。
でもした事なかったし、そう言った雰囲気に持ち込む事も出来なかったし、そうする場所もなかったし。
2年生になり、付き合いだして1年が経過しても、俺は童貞だったし、香織もバージンのままだった。
だからと言って、慌てるような事もなかったし、その必要もなかった。
香織と付き合ってるだけで、俺は良かった。
1年生の女の子(陽子)から、俺は告白された。
俺、生徒会の役員だったし、成績も良かったから、見た目は良くなくても、ある程度は目立った存在ではあった。
だからだろうと思うが、でも俺は、それを断った。
勿論 香織がいるから。
でもその子、断ったにも関わらず、かなり積極的だった。
「じゃ、ファンならいいですか?」
そう聞かれ、「いいよ」と答えたのが悪かったか・・・
校内で俺に話しかけて来たり、遠くから大声で声をかけてきたり。
通学時にも同じ電車に乗っては、俺と香織の間に割って入り、俺と香織を苦笑いさせた。
香織は香織で、「可愛い子だね〜」と意に介す様子もなく。
「浮気しちゃダメだよ〜」とは言うが、きっとその言葉は、本気ではなかったと思う。
ある日、生徒会の会合で遅くなった俺。
ただでさえ遅くなったのに、定期を学校に忘れてる事に気付き、慌てて教室まで戻った。
そうしてやっと学校を出た所で、陽子に会った。
香織は遅くなるのが分かってるので、とっくに家に帰ってる。
だけど陽子はファンだからか?こうして時々いるんだよね・・・
ま、いつもの事と俺は諦め、駅に向って歩き出す。
その少し後ろを陽子が歩いていた。
その時だった。
「おう、高校生カップルか?」
「だめだね〜学生は勉強しないと!」
ガラの悪そうな4人組が、俺達を見てそう言ってた。
「こんな可愛い彼女を従わせて、キミ、亭主関白?」
そう言いながら近付いて来た。
そして次の瞬間、そのウチの一人が陽子のスカートをめくった。
「キャーッ」しゃがみ込む陽子。
しかし、しゃがみ込んだ陽子を囲み、尚も4人がスカートを持ち上げようとしている。
「やめて下さい」
気が弱い俺も流石に、4人に向って大声を上げた。
「なにぃ?」
数秒後にはボコられて、俺は地面に蹲っていた。
「あんたの出方次第で、こいつ許してやってもいいよ」
4人がそう、陽子に言ってる声を聞いた。
程なく俺は抱え上げられ、どこかに連れて行かれる。
通りからまるで見えない、資材置き場の裏に連れて行かれた。
地面に叩き付けられ、悶絶する俺。
「やめて下さい」
泣き叫ぶような陽子の声がした。
「分かった、分かった・・・お前の出方次第だったよね・・・」
その声の後に、腹部を蹴り上げられた俺。
「大人しくしないと・・・またやっちゃうよ」
我に返った時、辺りは既に暗かった。
しかしすぐ側で、下卑た男たちの声と、くぐもった声。
スカートを捲し上げられ、胸を露出した陽子がいた。
一人のモノを咥え、一人のモノを握らされてる。
一人に胸を弄られ、もう一人にはスカートの中を。
「何やってんだ!」
俺は叫んだが、散々やられた体が言う事を聞かず。
例え言う事を聞いたとしても、俺が勝てる相手ではなかったが・・・
「おっ!彼氏が気付いたようだね・・・」
「もう少し待ってろ!すぐ済むから。」
一人に腹を蹴り上げられ、再度悶絶する俺。
だが、意識ははっきりしていた。
悲しい目をした陽子が時々、俺に目をやってるのが分かった。
そして男の腰の動きが早くなり・・・
「1滴残らず飲むんだぞ」
陽子はコクンと喉を鳴らした。
「俺達だけ楽しんでも悪いからね〜」
一人が俺に近付き、また腹を蹴った。
そして俺のズボンに手をかけ。
「パンツは彼女に脱がさせてやろうぜ」
陽子が連れて来られ、俺の側に座らされる。
そして一人がまた、俺の腹を蹴る。
「脱がせ!」
力なく、俺のパンツを脱がす陽子。
「咥えろ」
逃れようとしたが、胸を踏まれて動けない俺。
「大きくなったか?」
陽子は一端口を離し、「はい」と答える。
「じゃ、跨がれ」
陽子の血の気が引くのが分かった。
「跨がれって言ってんだろ!」
4人は陽子の足を無理矢理開き、俺の上に乗せた。
そして・・・
ずぶずぶと言った挿入感と、陽子の悲鳴。
しかし陽子の悲鳴はすぐに、男たちの手でかき消された。
二人掛かりで陽子の体を上下させ、そして程なく・・・
俺は陽子の膣内に、精液を吐き出してしまっていた。
男たちに開放された後、自分の服の乱れも直さぬまま、陽子は俺を気遣ってきた。
「俺がもっと強かったら・・・」
陽子に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
俺の顔の血をハンカチで拭う陽子。
「ごめん・・・」
俺はそう言うのが精一杯で。
でも陽子は、「いいんですよ」と、涙を流しながら笑った。
この事を俺は、香織に告げた。
話しを聞いた香織は、「陽子ちゃん・・・可哀想・・・」と絶句した。
程なく俺は、香織と別れた。
陽子と付き合う為に。
一番好きな女は、紛れもなく香織だった。
でも自分のせいで、俺は陽子を傷付けてしまった。
その事に対し、俺は責任を感じていた。
別れを告げると香織は、笑って「うんっ」と言った。
涙を流しながら。
「君を俺に守らせてほしい」
陽子にそう告げた時、陽子は涙を流して抱きついてきた。
俺の胸で泣きじゃくる陽子に、俺は「強くなるから」と誓った。
陽子は「うんうん」と頷いた。
毎朝、5kmのランニング。
そして夕方は、空手の道場に通う日々。
入門当初は、小学生にすら勝てなかった俺。
でも3ヶ月後には、中学生に勝てるようになっていた。
しかも半年後には、大人の有段者相手でも負けなかった。
毎日毎日、ひたむきに稽古をした俺。
そんな俺に師範が、「よく頑張るね」と言った。
俺は俺の稽古に、毎日ついて来る陽子を見て、「彼女の為ですから」と師範に言った。
「そっか」
師範はそう言うと、優しい顔をした。
久しぶりに、香織に会った。
学校で時々、顔を合わす事はあったが、お互いに目を背けていた。
朝のランニングが済み、家に戻ろうとすると香織がいた。
「頑張ってるみたいね」
香織の笑顔を見たのは、別れた日以来だった。
「あぁ」
「顔つきが最近、たくましくなってきたよ」
「ありがと」
「陽子ちゃんと仲良くやってんの?」
「あぁ」
「そっか・・・じゃ、頑張ってね」
たったそれだけの会話だった。
たったそれだけの会話だったけど、俺はやっぱ、香織が好きだと気が付いた。
陽子とは時々、キスならばした。
でも胸を触ったりとか、それからやりたいとは思わなかった。
きっかけがきっかけだけに、傷つけたくないと思ってた。
ちゃんと責任を取れるようになって、それからだとも思ってた。
それから・・・
あの4人組の身元が分かった。
学校周辺では有名らしく、リーダー格は「梅田」と言うらしい。
仕事もせず、パチンコ店なんかに毎日出入りしてるらしい。
腕に自信がついた俺は、復讐しようと思った事がある。
でも陽子に止められ、思い直した。
「復讐なんか、絶対に考えないで」
そう懇願されると、何も出来なかった。
空手に熱中しすぎて勉強が疎かになり、2年時にT大確実と言われてた俺だが、3年時は特進からも外れてしまった。
それでも3年の2学期以降、なんとか持ち直し、同じ六大学のR大に合格した。
陽子も特進で、T大も固いと思われるが、来年はあえてT大を避け、R大を受験すると言う。
ま、1年の差はあるが、俺の後を追うって感じかな。
香織は・・・
噂で聞いた程度だが、私立はR大に合格したらしいが、地元国立にも受かっており、そっちに行くと思う。
それから、梅田の事を新聞で見た。
梅田は喧嘩して刺されて、あっけなく。
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