水遣り
(2ページ目) 最初から読む >>
\ シェアする /
100メートルばかりの距離を どんな風に歩いたのか覚えていません。
はずれたブラジャーはハンドバッグの中です。
一歩送る度、佐伯に愛撫され敏感になった乳首がブラウスに擦れ先程の快感を呼び起こします。
しとどに濡れた女陰は歩く度に くちゅくちゅと音を立てているようです。
玄関が見えると一気に現実に戻ります。
居間の灯りが点いていません。夫は未だ帰宅してないのです。
ほっとしました。シャワーを使います。シャワーの飛沫が乳首にかかり快感を弾き出します。
女陰からは止めどもなく愛液が流れ出します。
『どうしてしまったのでしょう私の体は?』
この体の変化が不思議なのです。
妻は膣に手をやります。クリトリスは自分の手でも、夫の圭一にも愛撫してもらった事はないのです。
右手は膣に左手は乳房に。
膣口を擦り上げ、乳房を揉みしだき夢中でオナニーをするのです。
妻にはオナニーの習慣はありません。結婚前に数度、その程度です、勿論 結婚してからは一度もありません。
オナニーで絶頂に達します。
一度では体が満足していないのが解ります。達した後も手が膣に乳房に伸びてしまうのです。
佐伯の名を呼びながら、何度も何度も絶頂に達しやっと体の火照りから解放されます。
こんなに体が求めるのは佐伯への思いが強いからだと妻は信じ込んでしまうのです。
佐伯は媚薬を使ったのです。ワインに混ぜて飲まされたのです。
佐伯は焦ってはいないのです。今日、行為まで及ばなかったのは、妻に佐伯を恋焦がれる思いを十分にさせたかったのです。
金曜日には、私の帰宅が10時以降になる事も妻から聞いて知っています。
妻がオナニーをする時間は十分あります。
そして佐伯の計画は まんまとその通りになったのです。
3時間程の持続性のある媚薬です。
食事を始めたのが6時半、今は10時、そろそろ薬の効果が切れる頃です。
着替えが終わり居間のソファーに座ります。
『さっきまでの私は何だったのでしょう?今の私は夫にどう映るのでしょうか?』
媚薬の効果が薄れ平常に戻った妻は急に心に痛みを覚えます。
--------------------
金曜日の夜は ほぼ毎週、得意先と懇談を兼ねた食事会です。
本当は早く帰りたいのです。
たまには金曜日の夜、妻とゆったりと過ごしたいのです。自然と帰り足が早くなります。
「只今」
「貴方、お帰りなさい。お疲れ様でした。お風呂にしますか?」
「そうしてくれ。飯はいい。客と食べてきた」
仕事から帰れば先ず風呂です。妻と過ごす時は清潔でいたい、そう言う気持ちがあるからかも知れません。
妻は常に私の後です。結婚して以来の習慣です。
バスルームに入ります。
『うん?』
タイルが、誰かが風呂を使った後の様に濡れています。
一瞬、女臭の様なものを嗅いだ気がしましたが、石鹸の強い匂いに紛れてしまいます。
『気のせいか』
「洋子、お風呂使ったか?」
「はい、今日棚卸しのお手伝いで汗をかいたの。先に使って御免なさい」
私の何気ない言葉に妻の表情が変わります。小さな事でも嘘が嫌いな妻です。嘘をつくのが辛いのでしょう。
私は その嘘が気づきません。
「いや、良いんだ。タイルが濡れていて気になっただけだから」
妻は その話題から逃げたいのでしょう、話を逸らします。
「貴方、ビールにしますか、それともウィスキー?」
「今日はワインが飲みたい。ワインにしてくれないか」
妻は目を伏せます。
「はい、解りました」
ワインの言葉で佐伯を思い出したのでしょうか、顔が朱色に染まります。
鈍感な私にも妻の様子の変化が解ります。ふっと物思いに沈んだ顔の中に、いつも以上の色気を漂わせています。
「顔が赤いが、どうかしたか?」
「棚卸しで疲れたみたい。でも大丈夫です。私もワイン頂こうかしら」
私にこれ以上 詮索されたくないのでしょう。顔の赤みをワインで相殺させます。
私は性への欲求は強い方ではありません。
いや、妻がセックスに興味が無いものと思い込み、自分の衝動を抑えているだけかも知れません。
しかし今日の妻の表情を見ていると抱きたい衝動が湧いてきます。
妻を寝室に誘います。
「おいで」
「疲れてるの。その気になれないわ」
私のベッドに体を横たえたものの、やんわり拒絶します。
ほんの1時間ほど前に4度も5度も達した体です。後には何も残っていないのでしょう。
それでも強引に口を吸い、乳房を愛撫します。
少しは感じたのでしょうか、妻の口から甘い香りが漂ってきます。妻は感じ始めると甘い吐息を漏らすのです。
膣の中に自分の物を収めると何か違う感じがします。いつもより熱く、少し緩い感じがします。愛液も多い様です。
しかも、いつもは私の背中を抱く妻の腕がありません。だらりとベッドの上に伸びたままです。
10数分かの結合の後、妻の膣に精を放ちます。
妻は達していない様です。
今時の高校生なら もう少しましな事をするでしょう。自分でも随分稚拙だと思う時があります。
『妻は達していなかった。どうして背中を抱かなかったのだろう?』
ふと疑問が湧きますが、仕事の疲れから睡魔に襲われ直ぐに眠ってしまいます。
自分のベッドに戻った妻は眠った私の横で冴え冴えとしています。
『勝手な人。私を置いていって。もう少しだったのに』
考えずとも、妻は私と佐伯の愛撫を比べてしまいます。
佐伯には乳首を愛撫されただけで達してしまう。乳首がこんなに感じるとは思ってもいなかったのです。
夫のそれは雀が啄ばむ程度にしか感じません。
佐伯の接吻はストレートグラス一杯にも余る量の唾液を流し込まれ、全身に疼きを走らせたのです。
舌と舌を絡み合わせ、痺れるほど思い切り吸われ、長い舌を差し込まれた時は脳を焼かれる思いでした。
佐伯の唾液、長い舌は、その経験が無い妻にとっては、ザーメン、男根に匹敵、いやそれ以上のものだったのです。
夫とのそれは ただ唇と唇を、舌と舌を合わせるだけです。
勿論、唾液を飲んだ事もありません。
愛する人との人との行為は それでも快感をもたらします。
しかし、佐伯の行為は次元が違います。
妻のメスの本能を掘り起こすのです。
--------------------
夫に対し酷い事をしてしまった、すまないと言う思いはあります。
しかし、まだ抱かれた訳ではありません。
そんな思いより、佐伯に植えつけられた快感の残滓の方が はるかに大きいのです。
たった一度、口を吸われ、乳首を愛撫されただけでこんなにも変わってしまった。
もし佐伯に抱かれたら、またどう変わっていくのでしょうか?
『佐伯に抱かれてみたい』
佐伯のまだ見ぬ男根に思いを馳せてしまうのです。
--------------------
明くる朝、目覚めて暫くすると昨夜の事が蘇ってきます。あれが現実の事だとは信じられません。
初めての食事で唇と乳房への愛撫を許してしまった、それも会社の上司にです。
自分がそんな事をする女だったとは とても信じられません。
今考えれば、代行の件にしても、何故断らずに佐伯の車に同乗してしまったのか、普段の自分からは想像も出来ない事です。
夫に抱かれた後、佐伯と比較してしまった事、佐伯を思い描いてしまった事、そんな自分を恥じ入ります。
媚薬を使われたとは知る由もありません。何も知らない人が媚薬を使われても大した効果はない様です。
その状況と”媚薬を飲んだ”と言う本人の意識が効果を高めるのです。
妻の場合は ”媚薬を飲んだ”意識はなくとも、最高級の料亭の個室での食事、佐伯による体へのタッチ、その後のリムジンでの帰宅、それも頼れる上司と二人きりです。
どんな女でも気分が高揚し 何がしかの期待感も生まれるでしょう。
佐伯の接吻がトリガーになり後は頂まで駆け上るだけだったのです。
媚薬の体への効果は3時間程度のものです。精神の高ぶりは もう少し続くようです。
しかし、精神への影響も無くなった今、妻は激しく後悔し、夫の顔を見る事もできません。
--------------------
その日の朝食が終わった後、二人でコーヒーを飲んでいます。
妻が淹れたコーヒーは いつもの休みの朝と同じ様に、変わらぬ朝の寛ぎを与えてくれます。
「洋子、今日は何か用事はあるか?」
『うん?』
タイルが、誰かが風呂を使った後の様に濡れています。
一瞬、女臭の様なものを嗅いだ気がしましたが、石鹸の強い匂いに紛れてしまいます。
『気のせいか』
「洋子、お風呂使ったか?」
「はい、今日棚卸しのお手伝いで汗をかいたの。先に使って御免なさい」
私の何気ない言葉に妻の表情が変わります。小さな事でも嘘が嫌いな妻です。嘘をつくのが辛いのでしょう。
私は その嘘が気づきません。
「いや、良いんだ。タイルが濡れていて気になっただけだから」
妻は その話題から逃げたいのでしょう、話を逸らします。
「貴方、ビールにしますか、それともウィスキー?」
「今日はワインが飲みたい。ワインにしてくれないか」
妻は目を伏せます。
「はい、解りました」
ワインの言葉で佐伯を思い出したのでしょうか、顔が朱色に染まります。
鈍感な私にも妻の様子の変化が解ります。ふっと物思いに沈んだ顔の中に、いつも以上の色気を漂わせています。
「顔が赤いが、どうかしたか?」
「棚卸しで疲れたみたい。でも大丈夫です。私もワイン頂こうかしら」
私にこれ以上 詮索されたくないのでしょう。顔の赤みをワインで相殺させます。
私は性への欲求は強い方ではありません。
いや、妻がセックスに興味が無いものと思い込み、自分の衝動を抑えているだけかも知れません。
しかし今日の妻の表情を見ていると抱きたい衝動が湧いてきます。
妻を寝室に誘います。
「おいで」
「疲れてるの。その気になれないわ」
私のベッドに体を横たえたものの、やんわり拒絶します。
ほんの1時間ほど前に4度も5度も達した体です。後には何も残っていないのでしょう。
それでも強引に口を吸い、乳房を愛撫します。
少しは感じたのでしょうか、妻の口から甘い香りが漂ってきます。妻は感じ始めると甘い吐息を漏らすのです。
膣の中に自分の物を収めると何か違う感じがします。いつもより熱く、少し緩い感じがします。愛液も多い様です。
しかも、いつもは私の背中を抱く妻の腕がありません。だらりとベッドの上に伸びたままです。
10数分かの結合の後、妻の膣に精を放ちます。
妻は達していない様です。
今時の高校生なら もう少しましな事をするでしょう。自分でも随分稚拙だと思う時があります。
『妻は達していなかった。どうして背中を抱かなかったのだろう?』
ふと疑問が湧きますが、仕事の疲れから睡魔に襲われ直ぐに眠ってしまいます。
自分のベッドに戻った妻は眠った私の横で冴え冴えとしています。
『勝手な人。私を置いていって。もう少しだったのに』
考えずとも、妻は私と佐伯の愛撫を比べてしまいます。
佐伯には乳首を愛撫されただけで達してしまう。乳首がこんなに感じるとは思ってもいなかったのです。
夫のそれは雀が啄ばむ程度にしか感じません。
佐伯の接吻はストレートグラス一杯にも余る量の唾液を流し込まれ、全身に疼きを走らせたのです。
舌と舌を絡み合わせ、痺れるほど思い切り吸われ、長い舌を差し込まれた時は脳を焼かれる思いでした。
佐伯の唾液、長い舌は、その経験が無い妻にとっては、ザーメン、男根に匹敵、いやそれ以上のものだったのです。
夫とのそれは ただ唇と唇を、舌と舌を合わせるだけです。
勿論、唾液を飲んだ事もありません。
愛する人との人との行為は それでも快感をもたらします。
しかし、佐伯の行為は次元が違います。
妻のメスの本能を掘り起こすのです。
--------------------
夫に対し酷い事をしてしまった、すまないと言う思いはあります。
しかし、まだ抱かれた訳ではありません。
そんな思いより、佐伯に植えつけられた快感の残滓の方が はるかに大きいのです。
たった一度、口を吸われ、乳首を愛撫されただけでこんなにも変わってしまった。
もし佐伯に抱かれたら、またどう変わっていくのでしょうか?
『佐伯に抱かれてみたい』
佐伯のまだ見ぬ男根に思いを馳せてしまうのです。
--------------------
明くる朝、目覚めて暫くすると昨夜の事が蘇ってきます。あれが現実の事だとは信じられません。
初めての食事で唇と乳房への愛撫を許してしまった、それも会社の上司にです。
自分がそんな事をする女だったとは とても信じられません。
今考えれば、代行の件にしても、何故断らずに佐伯の車に同乗してしまったのか、普段の自分からは想像も出来ない事です。
夫に抱かれた後、佐伯と比較してしまった事、佐伯を思い描いてしまった事、そんな自分を恥じ入ります。
媚薬を使われたとは知る由もありません。何も知らない人が媚薬を使われても大した効果はない様です。
その状況と”媚薬を飲んだ”と言う本人の意識が効果を高めるのです。
妻の場合は ”媚薬を飲んだ”意識はなくとも、最高級の料亭の個室での食事、佐伯による体へのタッチ、その後のリムジンでの帰宅、それも頼れる上司と二人きりです。
どんな女でも気分が高揚し 何がしかの期待感も生まれるでしょう。
佐伯の接吻がトリガーになり後は頂まで駆け上るだけだったのです。
媚薬の体への効果は3時間程度のものです。精神の高ぶりは もう少し続くようです。
しかし、精神への影響も無くなった今、妻は激しく後悔し、夫の顔を見る事もできません。
--------------------
その日の朝食が終わった後、二人でコーヒーを飲んでいます。
妻が淹れたコーヒーは いつもの休みの朝と同じ様に、変わらぬ朝の寛ぎを与えてくれます。
「洋子、今日は何か用事はあるか?」
「いいえ、有りません。何か?」
「うん、付合って欲しい所がある」
二人は車で出掛けます。県立公園です。
公園の中にグリーンセンターの建屋があり、その中に入ります。
「ネットで検索していたら、花の無料展示スペースが出ていたんだよ。この建屋の中にあるらしい」
この公園は県下でも大きな公園で、近い事もあり二人で時々遊びに来ます。グリーンセンターの中に入った事もあります。
以前は そういうスペースは無かったのですが、つい最近、中の一部を開放したようです。
「あら、ここが展示スペースだわ。バラが沢山出ているわ」
今は遅咲き薔薇のシーズンです。
薔薇の鉢には出品者の名札が貼ってあります。床に直置きしてあるもの、テーブル上に飾られてあるもの色々あります。
案内パンフレットを読んでみます。
「うーん、ここは一人5鉢まで、って書いてあるな」
「5鉢じゃ少なすぎるわ。20位あるわ、見てもらいたいなぁと思う鉢は」
「タダなんだから、あまり無理を言ってもしょうがない気がするが。もう一か所探しておいたから、そこへ行ってみよう」
「嬉しい。私の為に探してくれたの?」
「そうだ。僕の頭の中は何時も洋子の事で一杯だ」
「まぁ、そんな事を言って」
冗談めかした事を言っても妻は嬉しいのです。朝、出かける時は沈んでいた顔が明るく笑っています。
次の場所は大きな民家に手を入れて展示館として市が管理しているものです。
20畳位のスペースを1週間貸してもらえます。しかも無料です。予約は2か月前から早い者勝ちです。
管理人の方から上手い予約の方法を教えて頂きました。予約は問題ないでしょう。
「ここが良いわ。ここに決めた、貴方、有難う」
帰途、クリスマスローズの素晴らしさを延々と私に話して聞かせます。本当に嬉しそうです。
帰ると妻はクリスマスローズの鉢一つ一つに話しかけています。
「貴方達、展示会に出してあげるからね。 一生懸命、水遣りするからきれいにお花を咲かせてね」
それから1週間は何事も無く過ぎて行きます。
--------------------
次の週の土曜日の朝、夫は午前中出勤です。出勤と言っても自分一人の会社です。先週忙しかったらしく、整理をしに出かけただけです。
佐伯から渡された携帯に着信があるのに気がつきます。
会社を出れば、マナーモードにしておくように言われています。
発信者はTS、佐伯のイニシャルです。着信時間は昨晩の11時になっています。
『何かしら?』
休み前のしかも遅い時間に用もない筈なのにと思いながらも、発信します。
「佐伯だ」
「宮下です。昨晩は電話を頂いたのに気がつかなくて申し訳ありません」
「なにも誤ることはない。あんな遅い時間に電話した僕の方がいけない」
「済みません。何かご用ではなかったのですか?」
「いや、用は何もない。ただ、昨日こちらで良い話があったので、君に真っ先に聞いてもらいたかった」
「私なんかにですか?」
「君にだからだよ。女房がいれば、女房になんだろうが、生憎僕にはそう言う女性は居ない」
佐伯は5年前に離婚しています。離婚の理由は知りません。
頼れる上司からそう言われれば、悪い気はしません。
「お仕事うまく行ってるのですね。良かったですね」
「君にそう言ってもらえると、本当に嬉しいよ」
「昨晩は寝不足なんだ。君から電話がいつ来るかと待っていたんだ。少々、辛かった」
「これからは直ぐ出れる様にします」
就業時間外の、しかも社用でもない話、そんな電話に本来直ぐ出る必要はないのです。
しかし、正社員してもらったと恩を感じています。直ぐ出なければと思ってしまうのです。
妻は佐伯の仕掛けた罠に又一つ自分から嵌まってしまいます。
この時から妻は佐伯の携帯を肌身離さず持ち歩くようになります。
自分の携帯に着信音がなります。
「はい」
思わず、部長と言うところでした。電話は夫からです。
「洋子、昼飯の支度は終わったのか?」
佐伯との電話の後暫く ぼうっとしていました。 食事の支度どころではありません。
「いいえ、まだです」
「そうか、それでは外で済まそう。これから帰るから」
「ただいま、食事に行こうか」
「どう言う風の吹き回しですか、お昼を外でなんて」
「うん、仕事の延長の積もりで君に聞いてもらいたい事がある。それには外の方が良いと思ってね」
私は妻とUホテルと言う割と大きなビジネスホテルで食事をします。洒落たレストランが併設されています。
「また一つ良い話が纏まった。台湾の新しいメーカーの日本代理人になれそうだ。営業的な事は僕一人で大丈夫だが、処理とか書類の整理とかちょっと手に負えなくなりそうだ。それに経理も そろそろ中でやりたい」
「新しいお仕事がまた出来たのですか。良かったですね」
今、経理処理は定期的に税理士さんを頼んでいます。この機会に書類、帳簿の整理を含め経理も任せる人を一人雇おうと考えているのです。
それを妻にと思っています。
「一人雇おうと思っているのだが、どうだろう、君がやってくれないか。そうすれば、外に金が出ないし、君とずっと一緒に居られる」
「どれ位お給料払う積もりなんですか?」
「うーん、月10万円位かな。そんなに忙しい訳でもないし、パートで良いと思っている。」
「経理もでしょう?10万円じゃ無理よ。誰も来ないと思います」
「そうか、でも君なら大丈夫だろ10万円でも」
「私は経理の知識もないし、それに今の所を辞めれば その差は大きすぎます」
「経理は少し勉強すれば慣れるさ、そんなに処理件数は多くないから。15万円ならどうだ」
「大差ないわ。今のお仕事も面白くなってきたし辞めたくないの。もう少し頑張れって言ってくれたじゃない。とにかく一日でも早く自分の家が欲しいの」
家の事を出されれば、それ以上反論出来ません。結局、妻に押し切られます。
--------------------
次の週、二人の女性と面接します。
>>次のページへ続く
「うん、付合って欲しい所がある」
二人は車で出掛けます。県立公園です。
公園の中にグリーンセンターの建屋があり、その中に入ります。
「ネットで検索していたら、花の無料展示スペースが出ていたんだよ。この建屋の中にあるらしい」
この公園は県下でも大きな公園で、近い事もあり二人で時々遊びに来ます。グリーンセンターの中に入った事もあります。
以前は そういうスペースは無かったのですが、つい最近、中の一部を開放したようです。
「あら、ここが展示スペースだわ。バラが沢山出ているわ」
今は遅咲き薔薇のシーズンです。
薔薇の鉢には出品者の名札が貼ってあります。床に直置きしてあるもの、テーブル上に飾られてあるもの色々あります。
案内パンフレットを読んでみます。
「うーん、ここは一人5鉢まで、って書いてあるな」
「5鉢じゃ少なすぎるわ。20位あるわ、見てもらいたいなぁと思う鉢は」
「タダなんだから、あまり無理を言ってもしょうがない気がするが。もう一か所探しておいたから、そこへ行ってみよう」
「嬉しい。私の為に探してくれたの?」
「そうだ。僕の頭の中は何時も洋子の事で一杯だ」
「まぁ、そんな事を言って」
冗談めかした事を言っても妻は嬉しいのです。朝、出かける時は沈んでいた顔が明るく笑っています。
次の場所は大きな民家に手を入れて展示館として市が管理しているものです。
20畳位のスペースを1週間貸してもらえます。しかも無料です。予約は2か月前から早い者勝ちです。
管理人の方から上手い予約の方法を教えて頂きました。予約は問題ないでしょう。
「ここが良いわ。ここに決めた、貴方、有難う」
帰途、クリスマスローズの素晴らしさを延々と私に話して聞かせます。本当に嬉しそうです。
帰ると妻はクリスマスローズの鉢一つ一つに話しかけています。
「貴方達、展示会に出してあげるからね。 一生懸命、水遣りするからきれいにお花を咲かせてね」
それから1週間は何事も無く過ぎて行きます。
--------------------
次の週の土曜日の朝、夫は午前中出勤です。出勤と言っても自分一人の会社です。先週忙しかったらしく、整理をしに出かけただけです。
佐伯から渡された携帯に着信があるのに気がつきます。
会社を出れば、マナーモードにしておくように言われています。
発信者はTS、佐伯のイニシャルです。着信時間は昨晩の11時になっています。
『何かしら?』
休み前のしかも遅い時間に用もない筈なのにと思いながらも、発信します。
「佐伯だ」
「宮下です。昨晩は電話を頂いたのに気がつかなくて申し訳ありません」
「なにも誤ることはない。あんな遅い時間に電話した僕の方がいけない」
「済みません。何かご用ではなかったのですか?」
「いや、用は何もない。ただ、昨日こちらで良い話があったので、君に真っ先に聞いてもらいたかった」
「私なんかにですか?」
「君にだからだよ。女房がいれば、女房になんだろうが、生憎僕にはそう言う女性は居ない」
佐伯は5年前に離婚しています。離婚の理由は知りません。
頼れる上司からそう言われれば、悪い気はしません。
「お仕事うまく行ってるのですね。良かったですね」
「君にそう言ってもらえると、本当に嬉しいよ」
「昨晩は寝不足なんだ。君から電話がいつ来るかと待っていたんだ。少々、辛かった」
「これからは直ぐ出れる様にします」
就業時間外の、しかも社用でもない話、そんな電話に本来直ぐ出る必要はないのです。
しかし、正社員してもらったと恩を感じています。直ぐ出なければと思ってしまうのです。
妻は佐伯の仕掛けた罠に又一つ自分から嵌まってしまいます。
この時から妻は佐伯の携帯を肌身離さず持ち歩くようになります。
自分の携帯に着信音がなります。
「はい」
思わず、部長と言うところでした。電話は夫からです。
「洋子、昼飯の支度は終わったのか?」
佐伯との電話の後暫く ぼうっとしていました。 食事の支度どころではありません。
「いいえ、まだです」
「そうか、それでは外で済まそう。これから帰るから」
「ただいま、食事に行こうか」
「どう言う風の吹き回しですか、お昼を外でなんて」
「うん、仕事の延長の積もりで君に聞いてもらいたい事がある。それには外の方が良いと思ってね」
私は妻とUホテルと言う割と大きなビジネスホテルで食事をします。洒落たレストランが併設されています。
「また一つ良い話が纏まった。台湾の新しいメーカーの日本代理人になれそうだ。営業的な事は僕一人で大丈夫だが、処理とか書類の整理とかちょっと手に負えなくなりそうだ。それに経理も そろそろ中でやりたい」
「新しいお仕事がまた出来たのですか。良かったですね」
今、経理処理は定期的に税理士さんを頼んでいます。この機会に書類、帳簿の整理を含め経理も任せる人を一人雇おうと考えているのです。
それを妻にと思っています。
「一人雇おうと思っているのだが、どうだろう、君がやってくれないか。そうすれば、外に金が出ないし、君とずっと一緒に居られる」
「どれ位お給料払う積もりなんですか?」
「うーん、月10万円位かな。そんなに忙しい訳でもないし、パートで良いと思っている。」
「経理もでしょう?10万円じゃ無理よ。誰も来ないと思います」
「そうか、でも君なら大丈夫だろ10万円でも」
「私は経理の知識もないし、それに今の所を辞めれば その差は大きすぎます」
「経理は少し勉強すれば慣れるさ、そんなに処理件数は多くないから。15万円ならどうだ」
「大差ないわ。今のお仕事も面白くなってきたし辞めたくないの。もう少し頑張れって言ってくれたじゃない。とにかく一日でも早く自分の家が欲しいの」
家の事を出されれば、それ以上反論出来ません。結局、妻に押し切られます。
--------------------
次の週、二人の女性と面接します。
>>次のページへ続く
\ シェアする /
関連記事
easterEgg記事特集ページ
