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水遣り
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翌々週の火曜日の事です。課長に声を掛けられます。

「少し早いが出張に出て欲しい。宮下さんが一番適任なんだ」

「部長からは3ヶ月後くらい経ってからだと聞いていますが。私でなくては駄目なんですか?」

「農産物関係なんだ。土壌も見て欲しい。大きなプロジェクトだから君のような専門家の目が欲しい。社命だと思って欲しい」

社命とあらば仕方ありません。妻は出張を受けます。

「解りました。何日ですか?」

「今週の金曜日だ。」

「随分急ですね。それで何処へ?」

出張先は大阪です。

「大阪だ。君も知っての通り西日本の拠点になる一大センターを建設中だ。その核の一つが関西地区の農産物だ」

大阪と聞いて妻は不安にもなるのですが、会社に期待されていると言う気持ちのほうが上回っています。


佐伯は若干焦ります。

オマンコの言葉で引いてしまった妻。

その後 携帯に電話しても妻は出ません。

仕事では無いので会社の電話で叱責するわけにもいきません。


更に佐伯に追討ちが掛かります。

出張が建設工期の遅れ等で半月位延びそうなのです。

1週間や10日に一度位は本社に業務目的として帰る事は出来ます。土曜日、日曜日にもそれは出来ます。

体の関係が出来てからならともかく、そんな時に妻を連れ出す事はいくら何でも出来ません。
これから3週間余りも我慢出来ない。佐伯は思案します。

『宮下は週に2、3回は駅前のホテルで昼飯を取る。女性社員を一人雇った』

今、本社では本社所在の駅の近くにアンテナショップを創る計画があるのに気がつきます。

人の流れを掴む為、周辺をビデオ、デジカメで長時間撮影しなければなりません。

もう撮影は始まっています。

『これは使えるな』

本社に確認すると、ホテルの出入口もその対象になっています。

全ての対象の重点時間は10時から2時までと5時から7時となっています。一週間の連続です。

その作業も明日で終わります。

佐伯はその記録を大阪の自分のホテルに送らせる手配をします。誰も疑問に思いません。

大阪の新センターの参考にする、その一言ですむ事です。只、ホテルの分だけで良いとはさすがに言えません。

10数本のUSBメモリーが送られてきます。

記憶容量は16GB、10数本で300時間分以上の画面が記録されているでしょう。勿論すべて見るつもりはありません。ちゃんと仕分けされています。対象別、曜日別、時間別と。その中から、Uホテルと書かれている平日のものを見ます。

佐伯は私と一度会っています。

妻とホテルで食事している時に、居合わせた佐伯を見つけた妻が紹介したのです。

佐伯は月曜日から順番に見ていきます。簡単に見つけました。

火曜日に松下さんを連れて食事に行ったのです。

ホテルに入った時のもの、出てきた時のもの、数枚自分のラップトップパソコンに移動させてます。

『宮下も女性の顔もはっきり写ってるな。それにしても嬉しそうな顔をしてるな、この女は。お誂え向きだ。

入った時間は11:57、出た時間は12:38か。

随分早いな。まあ良い。時間は何とでもなる』

パソコンの知識がある者なら時間を改竄するくらい訳も無い事です。

日時の部分を切り取って、新しく訂正したものを背景を合わせて貼り付ければいいのです。

法定資料にする訳ではありません。

知識の無い妻を騙すくらい簡単なものです。

こうして時間は

入った時間11:32、出た時間14:23と書き換えられます。

綺麗にプリントして、鞄に仕舞います。


しかし、業務に託けて本社に帰ったときに妻に見せるのではどうも不自然です。

妻を大阪に出張させ、それとなく妻に見せる。

妻が受けるかどうか賭けてみる事にしたのです。

本社から電話です。

「宮下さんを出張に行かせる事になりました」

「そうか」

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その日の夜、帰ってきた私を待ち構えていたように、妻は話しかけてきます。

「今度の金曜日、大阪に出張なの。すみませんが、良いですか?」

「良いですかって、決まっているんだろう。でも出張は3ヶ月くらいからって、言ってたんじゃないか?」

「それが大阪センターの方で、こちらサイドでも農地の土壌を見る目のある人に来て欲しいのですって」

「君が見たくらいで解るのか?」

「それくらい見る目はある積もりです」

「日帰りなのか?」

「なるべく日帰りですむようにしてくれるみたいです。でも無理な場合は泊まっていいですか?」

「まあ仕方がないか。僕もどうせ金曜日は遅いし。あまり気にせずに頑張ってくればいい。初出張だしな」

私は気持ち良く了承します。妻の力が認められ嬉しくない訳がありません。妻も心持張り切っているようです。

木曜日の退社時間 間際になって、妻は一つの事が気になりだします。

『私、ショーツは普通のしか持っていない』

妻の下着は本当に地味です。今時の女子高生でも履かないでしょう。

妻は有り得ない事、有ってはならない事を考えてしまうのです。

もし万が一、部長とそんな事になってしまったら、今の下着では恥ずかしいと思ってしまうのです。

何と言う事を考えているのか、妻は自分の思いを打ち消すのですが、思いはぐるぐる回ります。

考えがつかないまま、退社時間になり車を家へと走らせます。

途中にランジェリーショップがあります。

『やっぱり買って行こう。普段履くわ。圭一さんの驚く顔も見たいし』

自分に言い訳をつくってショップに入ります。

セクシーなショーツを選ぶのは初めてです。

T-バック、紐パン、透けて見えるようなもの、真ん中に穴があいているもの、とても自分が履けるものではありません。

しかし妻は思うのです。こんなの履いて男に見られたら どう感じるのでしょうと。

相手は夫なのか佐伯なのかは別の事です。


結局、妻は4枚のショーツを買います。

2枚は少し派手目の普通のもの、1枚はT-バック、そしてもう1枚はデルタ部分が隠れるだけの腰の部分で紐で結ぶバタフライ。

お揃いの色のブラジャーも買うのです。


翌日、妻は少し昨日買った少し派手目の普通のショーツを身につけて出掛けます。

T-バックとバタフライ、同色のブラジャーは鞄にしのばせてあります。

迷った挙句持ってい行く事にしたのです。

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妻は9:00の新幹線で新大阪に向かいます。

新大阪駅には現地のスタッフが迎えで待っています。

スタッフの方は二人、二人とも女性で何となく安心します。

現場は二つあります。高槻と京都です。

12:30ピックアップしてもらって車で最初の現場、京都に向かいます。

最初の現場が京都なら、どうして京都で迎えてくれなっかたのでしょう、不思議に思います。

佐伯の時間稼ぎなのです。妻を日帰りで返したくないのです。

車中、スタッフが説明します。

「本当は高槻の方を先にして、京都から帰ってもらいたかったのですが、先方の都合で変則になりました」

そう言われれば納得するしかありません。

両方の現場とも農地として申し分ありません。肥沃な土地である事が一目で解ります。

契約農家の方と農地管理方針を話し、念の為、土を瓶に詰めてもらいます。

両方の現場には佐伯の姿がありません。

高槻の現場が終わったのが、6時半。急げば7時半の新幹線に間に合います。


スタッフの方が話し掛けてきます。

「お疲れになったでしょう。今日は お泊りになられたら?何れにしても大阪方面に向かいますので、お考えになっておいて下さい」


今日は立ち仕事、土いじりが多く、疲れもし 体中が埃っぽく気持ちが悪いのです。7時半の電車に乗れたとしても、ローカル線を乗り継いで帰宅するのは12時を過ぎるでしょう。

泊まる事にしました。スタッフの方が携帯電話でホテルの手配をしています。

「ホテルはOKです。佐伯部長が夕食を一緒にとお待ちになっています。私達もご一緒させて下さい」

彼女達も一緒で安心して夕食を頂くことになります。


>>次のページへ続く
 
 


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