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バイト帰りに出会った女子高生との数年間の話
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272 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 21:55:30.44 ID:Q5UKg1qg.net
「・・・うん。」
白石が応えてから俺が歩き出すと、一歩目で白石の腕が少し伸びたのが判って、二歩目で ほとんどほどけかけて、三歩目で白石の温度が消えた。
振り返ると足が止まりそうな気がして振り返らなかった。
引き延ばされたようなような感覚を覚えた数秒は、時間の流れの中に自然に溶けていった。
乗ってすぐに発車のアナウンスが流れる。
ドアが閉まる。
振り返ると白石が少し寂しそうに笑っていた。声も聞こえない中でなにを言うでもなく、俺はただ笑って見せた。
白石も応えるように笑う。
車窓が徐々に捉える世界の位置を変え始める。徐々に白石が遠くなっていく。
寂しさもあったが来た時よりも軽く感じる肩の荷物が確かな充足感を与えてくれていた。
終点まで三時間はあったが行きよりも気持ちはずっと楽だった。
白石と別れたのは それから二ヵ月後だった。
273 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/09/10(土) 21:59:13.56 ID:G97z5VDW.net
わか・・・わかっ・・・別れ!?
「・・・うん。」
白石が応えてから俺が歩き出すと、一歩目で白石の腕が少し伸びたのが判って、二歩目で ほとんどほどけかけて、三歩目で白石の温度が消えた。
振り返ると足が止まりそうな気がして振り返らなかった。
引き延ばされたようなような感覚を覚えた数秒は、時間の流れの中に自然に溶けていった。
乗ってすぐに発車のアナウンスが流れる。
ドアが閉まる。
振り返ると白石が少し寂しそうに笑っていた。声も聞こえない中でなにを言うでもなく、俺はただ笑って見せた。
白石も応えるように笑う。
車窓が徐々に捉える世界の位置を変え始める。徐々に白石が遠くなっていく。
寂しさもあったが来た時よりも軽く感じる肩の荷物が確かな充足感を与えてくれていた。
終点まで三時間はあったが行きよりも気持ちはずっと楽だった。
白石と別れたのは それから二ヵ月後だった。
273 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/09/10(土) 21:59:13.56 ID:G97z5VDW.net
わか・・・わかっ・・・別れ!?
274 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:01:50.52 ID:y4H7mC4j.net
one more time one more chanceの準備したわ
277 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:38:04.86 ID:Q5UKg1qg.net
別れようとは白石から切りだされた。
俺からしてみれば寝耳に水とは まさにこのことで、俺の方に落ち度があれば何とかすると言ったが、白石からは そういうことではないという答えが返ってきて
以来連絡が取れなくなり、俺も俺でゼミとかインターンシップとか就活とかが始まってしまってまともに白石の方にかまえる状況ではなかった。
分かっている。
分かっていた。
自分の中では そんなことを言い訳にして逃げていたのだ。
理由をこじつけてフラれたという事実から目を背けていただけだ。そうしていることしかできなかったのだ。ただ目の前のことに没入することで名状できない感情を振り払おうと必死になった。
幸か不幸かその がむしゃらのお陰で俺の身の丈には合わない程の企業から内定をもらって、気付いたら東京で働く少し若い一端の社畜になっていた。
278 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:38:55.51 ID:Q5UKg1qg.net
分かり切っていたことだが俺という人間は基本的に自分に全くと言っていいほどに自信がない。
だからまぁ、言い訳になってしまうが「俺以上に良い奴に出会ったのだろう」という諦観に似た感情によって白石には直接会いに行かなかった。
時期もあってバイトを止めてジャムさんと会わなくなって、互いに忙しくなって伊達に会う機会が減って行けば俺に親身になってくれる人間なんぞいなかった。
どうも俺は伊達やジャムさんの様な支援というか背中を押してくれる人間がいないと前に進めないらしい。
頭でごちゃごちゃ考えていながら結局白石に会いに行かなかった理由は つまりそういったことなのだろう。
そんなこんなで大学を卒業した俺だったが これが予想以上に時間の流れが速くて驚いた。というか体感時間が早く感じたのだろう。
失ったものの大きさを見ないために仕事に没頭していけば評価が上がって、嬉しくないことに相対的に仕事が増えていって、それにまた没入していくという循環だった。
279 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:40:22.80 ID:Q5UKg1qg.net
入社して一年ちょいもすれば そんな俺でも がむしゃらにではなく要領よく努力するということが出来るようになり周りを見渡す余裕が出来るようになった。
先輩でスゲー綺麗な人がいると気づいたのは その時だった。
だがまぁ、自分から声をかけられるほどの社交性と言ったものは無かったので眼で追ったりするような日が続いていたある日。
上司とともに取ってきた それなりに大きな仕事で部署で飲みをすることになった。
俺は酔うとゆっくり一人の世界に浸るとか少人数で飲むのに適しているらしく、大人数で飲むのはどうも煩わしいと思ってしまう。
なわけで俺は隅っこの方で諸先輩から離れて煙草をふかしながらゆっくり飲んでいた。
「お疲れさま小島君、大丈夫?」
件の綺麗な先輩から声をかけられた。
隅で騒ぐこともなく飲む俺を心配しての事らしい。
「ああ、戸田さん(戸田恵梨香似なので)お疲れ様です。大丈夫ですよ。騒がしいのが あんまり得意じゃないので…」
自然俺の横に座り二人だけで話すこととなる。
280 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:42:09.14 ID:Q5UKg1qg.net
「でも凄いね小島君。結構大きい話だったのに上司さんと一緒に取ってきたんでしょ?大変じゃない?」
「ほとんど上司さんの仕事ですよww 自分は付き添いみたいなもので・・・大変じゃないといえば嘘になりますけど、充実してますね。」
そりゃあまりデカくない企業とはいえ社会人二年目で過大な評価で受けているのだから大変ではある。
入社試験も滑り込みのつもりが何の冗談か結構良かったりして上司からは大分絞られている。
だがまぁ大変な状況なら その分だけ他の事を考えなくていいのだからそれでいい。
我ながらまだ消化できないのかと半ば呆れ、同時に女々しいとも思う。未だに残る心残りを大仰にジョッキをあおって酒と一緒に飲み干す。
「…1本良いですか?」
出来れば女性の前では吸いたくはないが習慣というのは中々直すのが難しい。
学生の頃に酒と一緒に吸って安上がりにしようと画策したものだが どうも金が稼げても貧乏性は抜けないらしい。
「意外、吸うんだね」
「昔から止めろっては言われてるんですけどねww」
「おいしいの?」
「不味いですよww 試しに吸ってみます?」
箱ごと向けると一瞬悩んだような顔を見せてから「じゃあ…」といって灰を落としていたほとんど吸っていない俺の手の中のをかすめとって自分で吸い始める。
少し驚いて呆気に取れられる俺を尻目に戸田さんは大きく息を吸って、むせた。
281 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:43:21.12 ID:Q5UKg1qg.net
「けふ!げほげほ!」
「あーあーww ほら水ありますから・・・」
頼んでおいたお冷を渡して火傷をしないように戸田さんの手から煙草を受け取り灰皿に置く。年上のはずなのだが世話の焼ける・・・
白石みたi・・・
一気に半分ほど残っていたジョッキを飲み干して次の注文をしておく。
「・・・かぁ〜!!!」
「ちょ、小島君!?」
「ッ!・・・大丈夫です。それより、落ち着きましたか・・・」
「あ、うん、ごめんね・・・」
顔を赤らめて俺を見る戸田さん。どこか懐かしい感覚と、既視感。途端、心臓が軋みだす。
押さえつけるために頼んでおいた酒をまたあおってから灰皿に残るフィルターに口紅のついた煙草を手に取る。
「あ・・・」
小さく戸田さんが声を出した気がしたが気にせず口をつける。
いつもと変わらない。微かなバニラの香りが鼻腔を満たす。
282 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:44:29.75 ID:Q5UKg1qg.net
「…小島君てさ、彼女いたりする?」
戸田さんは不思議そうな目で俺を見ながら言う。
「いないですよ?いるわけないじゃないですかww」
俺も俺で何故という疑問の眼で戸田さんを見る。
「いや、煙草吸ってる人って恋人出来るのかなって
・・・特に女性は嫌がる人多いでしょ?」
「まぁ、ですね。吸う奴が悪みたいな言い方をしますからね。」
特に今は と付け加えて小さくぼやく。同時に吐き出された煙は店の空気に溶けていた。
「じゃあ今までは?」
「飲み会で後輩男性社員相手に恋話ですか?w女性陣でやってきたらどうです?」
「あーww 私お局苦手で…」
何とはなしに笑って口寂しくてまた煙を吐く。
「で?いないの?」
「煙に巻けては無かったですかw」
小さく笑って軽く頭を掻く。
284 :1 ◆Rvi/ZSmlcg @\(^o^)/:2016/09/10(土) 22:48:41.57 ID:Q5UKg1qg.net
別に話せない訳ではないが そのあとに襲ってくる若干の孤独とか寂寥とか、そういうのが残るのが嫌だった。
褒められたものではないのは自覚しているが こういったときの俺は妙にずる賢いところがある。
白石の事を思い出したとか、人恋しいとか、きっと酔いの勢いもあってだろう。気が付けば口をついていた。
「今、戸田さんに彼氏いるのか教えてくれたらいいですよww」
そう聡い人でなくても言葉の裏が読めるような文章。
案の定戸田さんも読めたらしく酒気を帯びた顔に更に赤みが増した。
「そ、そういう冗談はよくないよ!?」
「冗談じゃ、ないっすよ?」
「え…え、え!?」
真顔で見つめる。
身を捩りながら戸田さんは首を振っている。
十割本気と言えば嘘だが どんなに言葉を尽くしても戸田さんに そういう感情が無かったといえば嘘になる。
それでも これの目的はいじることだったのだが。
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