妻が隠れて喫煙するようになった理由
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長女がまた口火を切ります。
長女「今日は、パパもママもお休みだったの。」
私「そうなんだ、でもねこれから大事なお話があるから、お外で遊んでおいで。」
少しいぶかしげにしながらも、弟の手を引いて近くの公園に遊びに行く長女を見送りました。
その光景を見つめていた妻は、今までに無く大きな声で泣き出し、目からは大粒の涙がこぼれ落ちていました。
私「あの子達の事は良く考えないといけないな。」
妻「・・・はい。」
私「お前と、醜い争いはしたくは無いが、私もあの子達を手放す気は無い。
ただ、子供達を引き離す結果になることもあるかも知れない。
法律は、私の方にばかり味方してくれないだろう。
もし、私がこの家を出れば、事の始まりは別にして、お前の方が、子供達にとって生活し易い環境に見えるかもしれない。
母親であり、仕事も持っていて祖父母も同居、ローンは残っているにしても持ち家。
さらに再婚相手も居るとなれば、独身男の俺よりは格段に有利だ。」
妻「彼と再婚なんてしません。」
私「今はな。」
妻「絶対にありません。」
私「何でそう言い切れる、好きになった男、それもセックスまでした男、私と別れれば、もう何も障害は無い。
栗本にしても、奥さんと離婚ということになれば、お互い好都合だろう。
体の愛称もいいようだしな。
儀父母さんだって、家のローンの心配をしなくていい。」
妻「あの子達の父親はあなただけです、許してください。彼とはもう会いません。」
私「だから、何を許せというんだ。」
妻「・・・」
私「他の男を愛したお前を許せる程、包容力のある男ではない。」
妻「愛してません。」
私「誰をだ、私か。」
妻「いえ、栗本のことです。」
私「愛していない男とセックスが出来るか。」
そういいながら、私の脳裏に由香里との事が浮かびました。確かに、その時の自分の精神状態から由香里と結ばれたのは事実でしょう。
しかし、私も由香里を愛してセックスしたのか、良く分からない部分が有ります。
しかし由香里のことが好きになり始めている自分が居るのも事実でした。
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家庭が崩壊状態だというのに、当事者を除いては生活は坦々と時を刻んでいきます。
夕食も済ませ、子供達も眠りに着き、イライラしながら栗本からの電話を寝室で待ちました。
妻も片付けを終わらせ、寝室の鏡台に俯いて座っています。
私といえば、結論の出ないままベッドに横たわり、タバコをふかしているだけでした。
八時丁度にその電話はなりました。
私はベッドから飛び起きると、電話に出ようとする妻を制止し、受話器をとりました。
私「もしもし、○○です。」
栗本「栗本です、遅くなってすみません。」
私「奥さんと良く話し合ったか。」
栗本「・・・はい。」
私「でどうする。」
栗本「出来ればお会いしてお話を・・・」
私「当然だね、電話で済むむ問題じゃない。」
栗本「出来れば昨日の事務所で・・・」
私「良いよ、お互い家族には心配かけたくないからね。」
栗本「すみません。」
私「直ぐに出るから。」
車で事務所に着くと、既に栗本は着いているらしく事務所には明かりがついていました。
車を降りると、昨日と同じように栗本が入り
口で出迎えました。
事務室に入ると小柄な女性が一人、こちらに向かい深々と頭を下げていました。
その人が栗本の奥さんであることは状況からして疑う余地は有りません。
顔を上げたその人は、年齢は私より少し上に思えましたが、顔立ちの整った綺麗な女性でした。
しかしその目元は少し腫れ上がり、昨日か今日かは分かりませんが、夫婦間で我が家同様の修羅場が展開されたことを私に想像させました。
栗本の奥さんに小さな声で着座を促され、ソファーに座ろうとすると、妻が私に何か訴えかけているが分かりました。
昨日は、私に栗本の隣に座るよう言われた妻は、今日は貴方の隣に座らせて欲しいとでも言うような目つきで私の顔を覗き込んでいました。
私が隣に座る様に伝えると、安心した様に妻は腰を下ろしました。
栗本の奥さんがお茶を持ってくる間、会話も無くただ重苦しい時間が数分間流れました。
奥さんが私の向かいに座り、その後から栗本
が妻の向かい側に座りました。
最初に話し始めたのは、栗本の奥さんでした。
奥さん「この度は、主人が大変なことを、申し訳ありません。」
私「奥さんに謝って貰おうとは思ってませんから。」
奥さん「でも、主人のしたことで、○○さんにご迷惑を・・・」
私「私の妻も同罪ですから。」
妻「申し訳ありません・・・」
私「専務さん、それでどうしますか。」
栗本「もう奥さんとは会いません。本当にすまない事をしたと思っています。許してください。謝って済むことでない事は十分、分かっていますが。今はそれ以外に出来ることがありません。」
そう言われた私は、返す言葉がありませんでした。
栗本が、もう少しお互いに非がある有る様な言い方でもすれば、売り言葉に買い言葉で話はエキサイトしたのかも知れませんが、栗本の顔は、一晩でこんなに変わるのだろうかと思えるほど窶れて見えました。
私が拳を握り、返答に困っていると、奥さんが話し始めました。
奥さん「昨日、この人から今回の件を聞きました、○○さんには、大変申し訳ないと思っています。
男として、けじめをつけなければならないと思います。
○○さんの気持ちが治まるようにするには、どのようにすれば良いでしょうか。」
奥さんの言葉に私は、また言葉を失いました。
奥さんにしてみれば、妻は夫を寝取った女、しかし妻を責めるどころか、夫の後始末を気丈にも行っているのです。
ただ妻の浮気に動揺して、話の場に結論すら持ち合わせていない私に比べて、奥さんの言動は女性の強さを感じさせられるばかりでした。
私「奥さんは、どうしようとお考えですか。」
奥さん「大変失礼とは思いますが、慰謝料という形でお話しするしかないと。」
私「すみません、私はお金が欲しくて話し合いに来たのではありません。」
奥さん「ですから、失礼とは思っています。」
私「奥さんを攻めているわけでは有りません。ただ、専務さんがどういうけじめをつけるのかが聞きたくて。」
奥さん「この人も反省してます。
手前どもの家も感じやすい年頃の子供が居ます、私もこの人を許すことは出来ませんが、子供のことを考えると、直ぐ離婚と言うわけにも行きません。
○○さんにしてみれば、社会的な制裁を望んでおられると思いますが、今はそれが出来ません。」
奥さんにそこまで言われると、何の反論も出来ませんでした。
もともと妻や夫のある身、喧嘩両成敗は仕方が無いことは分かっていました。
しかし、私は遣り得的な状況だけは嫌だったのですが、奥さんにあそこまで言われれば、男として妻を繋ぎ止めて置けなかったおいめもあり、引き下がるしかないと思いました。
私「慰謝料は、お互い様ですから、請求するつもりは有りません。私は、今後こいつと遣っていけるかどうかわかりません。私の方からも奥さんに一言お詫びいたします。」
結局、気丈な奥さんに優柔不断な男達が、仕切られた形で話し合いは終わりました。
終始私と奥さんが、会話するのみで当事者の二人は会話に入ることはありませんでした。
改めて栗本の小心さには驚かされました。帰りの車の中で私は妻に言いました。
私「あの男のどこが良かったんだ。」
妻「・・・ごめんなさい。」
私「俺はあの男以下ということだよな。自分が情けないよ。」
妻「そんなこと無いです、ごめんなさい。」
私「だったら何故、あの男と寝た。」
妻から返事が返ってくることは有りませんでした。
部屋に帰ると、私達夫婦の間には、出掛ける前よりも一層距離感が増したような気がしました。
私「これで終わったと思うなよ、俺達の事はこれから始まるんだからな。」
妻「そんなこと思ってません。簡単に許して貰おうとは思ってません。
私「そこからもう違うよ、俺がお前を許せるわけが無いだろ。もし俺がお前を裏切って浮気してたら、お前は俺を許せるのか。」
妻「私にそんな権利は無いです。」
私「そうじゃない、俺がお前を裏切っていたらとしたらだよ。」
妻「解りません、今の私には。」
今私が、由香里との関係を妻に伝えれば、妻の気持ちは直ぐに解るでしょう。
逆上するか、それとも自分の立場を理解した上で、穏便に済ませるか。
しかし私は、この時点で由香里との事は妻に伝える気は一切なく、この答えを知ることを意識的に先延ばしした。
私「お前に聞いておきたいことがある。」
妻「はい。」
私「栗本のことが好きなのか。」
妻「・・・解りません。」
私「そうやって誤魔化すのは止めろよ。さっきも言ったが、お前は好きでもない男とセックスが出来るのか。」
妻「本当に解らないんです。」
私「それじゃ、何であいつに抱かれたんだ?言ってみろ、理由があるだろ。俺とのセックスに不満があったのか?それとも、生活が嫌になったか?」
妻「・・・」
私「本当はあいつのことが好きで、セックスがしたくて堪らなかったんだろ。」
妻「・・・違います。」
私「何が違う、どう違うんだ言ってみろ。」
妻「彼と寝たのは弾みだったんです、初めからそんなことする気は無かったんです。」
私「それなら聞くが、セックスする前に栗本と会っていたことを何で俺に隠してた。」
妻「それは、貴方が嫌がると思って。」
私「普通の男は、自分の奥さんが他の男と、しょっちゅう二人で逢っていれば嫌がると思うぞ。お前は、俺が他の女と二人きりで、しょっちゅう会っていても平気か。」
妻「すみませんでした、ごめんなさい。」
私「お前が俺に黙っていたのは、いずれ、あいつとセックスすることを期待していたからだろ。そうでなければ、黙って逢ってた理由が見つからない。」
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