そうして、進展どころか退行してしまった3年生は、微妙な空気を漂わせたまま終わりを迎えた。
4年も引き続き同じクラスだったが、翼と面と向かって会話をするのは朝の登校の時くらいになった。
死ぬほど苦しかった。本当は毎日でも、片時でも離れたくないのに、教室では遠くから彼女を見つめるくらいで、自分から話しかけることはほとんどなかった。
もともと翼は活発で、誰とでも仲良くできる人。俺と会話することがなくなっても、翼は毎日楽しそうだった。
たまにふと目が合うときに微笑んでくれる以外では、彼女から俺に話しかけることもほとんどなくて、そうしてつまらない日々を送っていた。
そんな俺の日々に、ある日小さな異変が起きた。
俺に直接的なダメージはないけれど、クラスの数名の男子が翼に惚れている噂が流れ始めた。
その噂の対象に俺の名前はなく、いつの間にか俺と翼の関係を冷やかす人間は誰もいなくなっていた。
それと同時に、俺は翼と今までのような一番近い異性としての関係に戻れないこともなんとなく悟っていた。
それからのことは、よくわからない。
何人かが翼に告白をしたらしいが、彼女は顔を真っ赤にするばかりで自分の気持ちを誰にも話すことはなかったようだった。
つまりみんなフラれたのだ。
俺は影で小さくガッツポーズをしていた。
自分から告白する勇気もないくせに、勇気をもって告白した男子がフラれるのが嬉しくて仕方なかった。
「私また告白されたんだー」
朝、登校の時に彼女はそんなことをよく俺に話していた。
俺はただ、そうなんだと相討ちを打つことしかできなくて、何て返事をしたのかも、翼に好きな人がいるのかも知らないまま時間だけが過ぎていった。
「藤森くんは、誰が好きなの?」
一度だけ聞かれたことがあったが、その時は、「教えられない」となんとも情けない返事をした記憶がある。
それから6年生になって、活発だった彼女もおしとやかで大人しい女の子へと変わっていった。
気づけば卒業まであと数ヵ月まで迫っていた。
結局、なにも進展はなく、成長するに連れて少しずつ翼と俺は完全にただのクラスメートになった。
朝、一緒に登校することもいつの間にかなくなって
修学旅行も、音楽祭も運動会も、彼女との思い出はなにもない。
気づけば彼女に一目惚れをしてから、6年になろうとしていた。
最後釣りでしたー、よかった振られた男はいなかったんだね。で終わるやつだな
>>50
そっちのが気は楽でいいね