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数年前、自殺しようとしてた俺が未だに生きてる話
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124 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 04:58:17.75 ID:vhmrIwJ8.net
まさか。

そう思った瞬間、体中から血の気が引いた。

まさか、レイはいない? 去ってしまった?

慌てた指が、エンターキーを押した。

「君も俺と」

中途半端な言葉のかけらが飛び出して、俺のパニックに拍車をかけた。



125 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 05:04:33.18 ID:vhmrIwJ8.net
「レイ、いる?」

俺は初めて彼女の名を呼んだ。

「あれ、なんか回線おかしい? 俺逃しかみえないんだけお」

確かめずにエンターキーを押すと、無様な言葉が表示されてた。

「俺のしか、見えないよ」

打ち直す間、みじめな気持ちに襲われた。



126 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 05:10:39.54 ID:vhmrIwJ8.net
「どこ行ったんだよ・・・・・・」

打って変わって どん底の気分で、俺はつぶやいた。

この期に及んで、自分の何が悪かったのかなんて考えることもなかった。

レイの気持ちも考えず、気分よく自分語りした結果だってのに。


「君も俺を見捨てるんだ」

まだレイがいないと決まったわけじゃない。

ちょっと席を外してるだけなのかもしれない。

それなのに、自分のことしか考えられない俺は、被害妄想に陥った。


「君もみんなと同じじゃないか!」

「みんな俺を見捨てるんだ!!」



127 :き被検体774号+@(^o^)/:2016/03/06(日) 05:16:59.18 ID:vhmrIwJ8.net
「みんな俺を見下してるだ!

「みんねっ思ってるんだ!

「うざてキモくいクズなんか死ねって!」

「俺んか死んだ方が世界ためんだ!」

がら、醜いわめき方だと思う。けど、あのときの俺はレイに捨てられたって感覚いっぱいで、ほかのことなんかられなか

る価値る〉

そう言っくれたのは何だったんだ、それとも、は全嘘で天上から俺をょくってたのか!

惨めさと怒りと、とで、れはちゃぐちゃにった。




128 :名無き被検774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 05:23:14.95 ID:vhmrIwJ8.net
いま、俺はこれを書くに、あのとログ返している。

すると、驚くべきことに永遠にも感じたあのレイの沈黙は、時間してたったの三分ほどのことだった

たったの十分だ。


俺は間、死ぬほど罵倒と卑下を繰り返した

そうしながら、このまま狂い死にするんじゃないかとた。

いやうなばい思っ

そし死んだことをレイは一生後ればいと思

画面の向うの彼女が、俺の死を知ることができるかどうか置いておいて。



129 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 05:38:22.24 ID:vhmrIwJ8.net
狂った俺を、レイが何を思いながら見つめていたのかは、いまも知る由がない。

俺に想像できるのは、あのキャラと同じく冷静なレイの表情だけだ。

ロボットのように感情がなく、設定されたプログラムだけを確実に遂行するような・・・・・・。


だから、レイが俺を見捨てなかったのは、「俺を見捨てないこと」

それがレイに組み込まれたプログラムだったんじゃないかとさえ思えるほどだ。

それくらい俺はひどかったし、だというのにレイはそこに居続けた。


「私は、答えを聞くためにここへ来たの」

俺の罵倒に埋もれるように、たった一行、レイが言葉を放った。

それに気づいた瞬間、書きかけのクソみたいな文字を連ねる手が止まった。

その一言だけで、ヘドロと化していた俺は浄化された。



130 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 13:56:48.38 ID:vhmrIwJ8.net
「よかった、いなくなったんだとおもっt」

恥も外聞もなくすがった俺を遮って、レイの冷たい言葉が並んだ。

「聞きたいのは、それだけ」「けど、答えが出ていないのなら、また明日来る」


「え、でも・・・・・・」

俺は焦った。せっかく会えたんだから、少しでも話がしたかった。俺の話を聞いてほしかったし、レイのことが知りたかった。

でも、レイは一度言った言葉を覆したりはしなかった。

「また明日」

レイは言った。


それから、去り際に捨て台詞のように言った。

「あなたはすぐに、みんなが、みんなが、って言うけど、その〈みんな〉って誰?」

「何度でも言うわ」

「頭の中で生きるのをやめて」


その言葉を最後に、画面はぴたりと動かなくなった。俺は今度こそ、レイが去ったことを知った。

けど、さっきのようにパニックにはならなかった。レイはまた約束を残してくれたから。



131 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 14:14:53.40 ID:vhmrIwJ8.net
俺の胸には、大波が去ったあとの凪が広がった。

蜘蛛の糸が切れなかったことに、大げさじゃなく俺は感謝した。

今日は去ってしまったけれど、レイは明日も来てくれる。

それは もはや、俺の生きる意味だった。

それがたった一日二日の出来事であっても。


それは俺がレイの言うとおり、〈頭の中の世界〉で生きていたからにほかならないだろう。

〈頭の中の世界〉では、時間の経過や常識的な尺度なんかは通用しない。

だって、そこは俺が創り出した世界だ。

優先順位は、世界の主である俺が決める。

そして、いま、そのトップに輝いているのがレイの存在ということなのだ。



132 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 14:23:38.41 ID:vhmrIwJ8.net
俺はしばらく画面の前で ぼうっとしていた。そうして、彼女の後ろ姿を眺めていた。


それから、おもむろに立ち上がり、部屋の扉を薄く開けた。

そこには丁寧にラップのかけられたサンドイッチが置かれていた。

そこに誰もいないことを素早く確認すると、俺はサンドイッチをわしづかみし、再び部屋の中に引っ込んだ。

中身も見ずに一口ほおばると、たらこバターの味が広がった。

小さい頃、俺が好きだった たらこスパゲッティをそのままサンドイッチにしたような味だった。



133 :宿名も無き被774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 14:29:34.55 ID:vhmrIwJ8.net
あの頃味を食べれば、○○(俺)も部から出るかもしれない。

・・・・・の意図のった味だった。


が聞いたら、被害妄と言うだろうか

けど、俺の母親に関しては、俺の方が正い。

そんな ひとすくの砂便くらいじゃ、何も埋まらんだろ!そんな突っ込みなるらい、遠回し回しに外簿なん




134 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 14:34:51.03 ID:vhmrIwJ8.net
そんな意図を感じながらじゃ、サンドイッチも美味くはなかった。けど、腹が空いた俺はそれを飲み込む勢いで口に入れた。たらこバター臭のゲップが出た。

「〈みんな〉って誰なのよ」

同時に、レイの言葉が頭に浮かんだ。

少なくとも、母親は俺のことを見捨ててなんかない・・・・・・か。

俺は しぶしぶそれを認めた。



135 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 14:41:14.67 ID:vhmrIwJ8.net
「それなら、〈みんな〉って、誰?」

頭の中のレイがそう言った。それが文字よりもさらに冷たく聞こえるのは、俺の妄想だからだろうか。

「〈みんな〉は、〈みんな〉だろ」

相手が頭の中のレイだから、俺は強気にそう答えた。

「俺以外のやつらだよ。大勢の他人だよ」

「でも、あなたのお母さんは〈みんな〉に含まれてないんでしょう?」

「まあ、でもそれは親だから」

「親なら無条件で あなたの味方であるべき?」

「そりゃそうだろ。親の勝手で俺は生まれたわけだからさ」

「それって本気?」

「本気だよ。・・・・・・っていうか」

どうして俺は頭の中のレイにさえ、言い負かされようとしてるんだ?



136 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 14:53:47.69 ID:vhmrIwJ8.net
「親は子供を育てる責任があるんだ。そんなの当たり前だろ」

俺は さらに強気で言った。

「俺は産んでくれなんて頼んでない。ってか、こんな人生なら、生まれない方が断然よかった」

「おめでとう。また、自殺の理由が増えたわね」

レイのあの無表情に、微かな嘲笑が浮かんだ。


「生まれてこない方がよかったなら、いま死んで当然だものね?」

「何が可笑しいんだよ」

「何も。でも、あなたが生まれたのが完全なる親の意思なら、いま無価値なあなたを殺すのも、親の意思であるべきじゃないかって、ただそう思っただけ」

「親が、俺を殺す?」

「そう。あなたの論理で言えば、そういうことにならない? あなたの命は親のもの。それをクズなあなたが勝手にしていいのかしら」



137 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/06(日) 15:00:11.81 ID:vhmrIwJ8.net
「うるさい! そんなことになるわけないだろ!」

俺は叫んだが、それは敗北を宣言したのと同じだった。

「クズはクズね。あなたに希望を託したご両親も、気の毒に」

頭の中のレイは狂ったように笑った。笑い声はぐるぐる渦を巻くようにこだまして、俺の気まで狂いそうになった。

「うるさい、うるさい、うるさい!」

頭から毛布をひっかぶって、俺は叫んだ。けど、高笑いは消えることがなかった。

〈頭の中の世界から、出て〉

小さく、本物のレイの声が聞こえたような気がしたが、そのときにはもう手遅れだった。

俺はその日一日を、頭の中の狂ったレイとのやりとりに費やした。



139 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 03:32:29.02 ID:muQilJab.net
そんな一日を過ごした俺が、満足に眠って次の日を迎えられたわけもなかった。

「答えを聞かせて」

夜中、再びレイが現れたときには、俺の精神状態は最悪で、彼女の言う〈答え〉なんて、まるで頭になかった。

「俺はクズだ。クソだ。おまえだって本当はそう思ってんだろ!」


頭の中のレイに狂わされた俺は、本当に狂いかけてたんだと思う。レイのことを「おまえ」呼ばわりするほどに。



140 :名も無き被検体774号+@\(^o^)/:2016/03/07(月) 03:40:38.42 ID:muQilJab.net
「他人の〈本当〉なんてどうだっていい」

「前にもそう言ったはずよ」

それが〈答え〉じゃなかったにも関わらず、レイはなぜかそう答えた。

おまえ呼ばわりしたことにも、俺が昨日とまったく変わってないことにも触れもせず。

けど、攻撃的になっていた俺は、そんなことに気づきもしなかった。

「どうだっていいわけないだろ!」

「俺を笑って、おちょくって、馬鹿にして!!!」


そして、ネットでは当たり前の、けれど現実では吐いちゃいけない言葉を吐いた。

「死ねよ!」「おまえなんか死んじまえ!」「俺を馬鹿にする奴らは、全員死ね!」




>>次のページへ続く



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