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不思議な友人と暮らしたひと夏の想い出をぽつぽつ語る
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156 :M子 :2018/08/23(木) 19:02:18.85 ID:Ho539xn7p.net
イチの声は聞こえないけれど、楽しそうに話すツチノコの声でやっぱ連絡とって正解かな、なんてこちらまで嬉しくなる。


仕事の資料をまとめたりなんだりして、そろそろ寝る時間。電話はどうするのかなぁ…と思ってたところ。

マイクをミュートにしたらしいツチノコに話しかけられる。


「悪い、なんか、このまま電話繋いで寝落ちる流れ…。」


「あれま、たまには良いじゃん。わたしは気にしないけど…朝、気を付けないとわたし話しちゃいそう。」


「それはまずい…いや、朝になったら即切る。ほんとごめん。あーこうなるから嫌だったんだよ…。」


時間は深夜0時近いし、社畜二人にはもう限界の時間。


「いーよいーよ気にしてないしwさて、寝ましょうかね。と言うかわたし聞いてて気まずくない?空気だと思ってくれて良いよwww」


「いや気まずさゼーロー、と言うか俺もすぐ寝そうだし。」


軽口を叩きながらいつも通り二人並んでベッドに入る。

さすがに電話口のイチがミュートの状態を不審に思い始めたらしい、この距離だとツチノコを呼ぶ彼女の声も聞こえる。

″つーくん″って呼ばれてんのこの人…ええ…にやける…。



157 :名も無き被検体774号+ :2018/08/23(木) 19:18:19.80 ID:Ho539xn7p.net
眠りにつこうとツチノコに背を向けて目を閉じた。

…が、聞いちゃいけないとは思いつつ、どうしても耳に声が届く。

「お?トイレ行くのか?よっしゃこれはついにトイレにイチと一緒に…あ、こら、おいミュートにすんな。」

……おい、どんな会話してんだよwwwだから変態のレッテル貼られるんでしょうお兄さんwww

って言う悪ふざけは序盤だけ。眠くなるとさすがに二人ともなんとなーく甘い雰囲気になってきたみたい。

人が誰かに甘え倒して寝るところをわたしは初めて目の当たりにした。いや、見てはないから耳当たり?


「つーくん眠そう、今日も一日お疲れ様、よーしよーし。」


「だー、なんで俺がされてんだ。よしよしは俺の役目だろ。」


「いーの。いつもしてもらってるから、ふふ。たまにはさせて?好きだよ、つーくん。」


とても、恥ずかしい、わたしが。何なのこれwww


変にくすぐったくなってからかってやろうかとツチノコの方へ寝返りを打った。同じタイミングでわたしの体にツチノコの手が伸びてきて抱き寄せられる。

抱き寄…え?なんで?抱き寄せ?

疑問符を頭上に浮かべてる間に暗闇の中でぱちりとツチノコと目があった。


「よーしよし、俺も好きだよ。」


整った顔に穏やかな笑み。わからないのは、その瞳がわたしを捉えて離さないこと。その綺麗な手がわたしの髪を撫でたこと。

イチに重ねて、わたしにそうしたのは、何故?酷く優しい仕草と表情のせいで、胸が苦しくなる。

こんな感覚は、知らない。いや、知りたくない。

戸惑って揺れる表情を見られたくなくて、彼の胸に顔を埋めて眠りに就いた。




158 :名も無き被検体774号+ :2018/08/23(木) 19:31:35.52 ID:Sepz5OsRH.net
これ出版したらそこそこ売れるんじゃないか?




162 :名も無き被検体774号+ :2018/08/23(木) 19:49:44.88 ID:Ho539xn7p.net
>>158
ええ、嬉しいお言葉(´・ω・`)

でもわたしがもし出版するならこんなにネタをぶっ混みません(´・ω・`)

ありのままだからほんとにぐちゃってるw




160 :名も無き被検体774号+ :2018/08/23(木) 19:46:59.08 ID:r93PrhhF0.net
舎弟ちゃん(だよね?)の名前がイチだから1と混ざって一瞬混乱したw

1はM子になったんだわな


164 :名も無き被検体774号+ :2018/08/23(木) 19:51:04.31 ID:Ho539xn7p.net
>>160
そーそーそーなの。

イチは別の子なんです(´・ω・`)

ややこしくてごめんよ(´・ω・`)



161 :M子 :2018/08/23(木) 19:48:36.62 ID:Ho539xn7p.net
イチ「…せっかく電話したのにすぐ寝ちゃうんだよね……ねえ、ちゃんと聞いてる?M姉。」


M子「あ、あーあー聞いてる、聞いてるよ。」


とてつもなく気まずい状況にいます、M子です。

あれ以来、何度か二人の寝落ち電話を耳にしてるんだけど、ついにそれ以来初のイチからの相談電話を受けてる。

M子「あーえっと、仕事が忙しくて話せてもすぐ寝ちゃうから、電話しないほうが良いのかなって話だっけ?」

イチ「うん、わたしは声が聞きたいけど、彼が疲れてるなら無理強いはできないし…。」

M子「あー…ええと、何だろうな。仕事が忙しいとほら、最低限の生活を送る事が限界というか。」

けど、わたしとは毎日一緒に寝る。


M子「忙しい人にとっては夜の一時間だって、頑張って頑張って捻出した一時間だと思うんだよね。」

けど、わたしと出掛けるのは苦じゃないって言う。


あああああ!何なんだ。思えばわたしがいるからイチとツチノコは満足に電話もできないし、この子すげー悩んでる訳で。イチが欲しいものを、わたしが奪ってる…?


イチ「うん、わかってる。わたし、彼のこと好きなんだ。すごく好き。付き合う時に、彼にいつも笑って欲しいって思ったの。

なのに、わたしが苦しめてるのかな。いつから間違っちゃったんだろう。どうしたらいいかわかんないや。」


電話口でイチが困ったように笑う。こんなに健気な子の幸せを、わたしは奪ってるんだろうか。

いやでも、ツチノコが望んでわたしと…いや、望んでるの?転がり込んでるのはわたしじゃないか。


イチ「M姉?」


M子「え?あ、ごめんごめん。その気持ちがあるなら、もう少しだけなんか、彼のこと信じて待ってみようよ。きっと、忙しいだけなんだよ、今はさ。」


心が酷く乱れる。理由が、まったくわからない。


イチ「ありがとうねM姉。きっと苦しめてるってわかってても諦められないから、もう少し歩み寄ってみる。

でも悪いことばかりじゃなくて。今度ね、彼と会うの。彼の家で。

次の週末に泊まらせてもらうんだ。今からもうその日が楽しみなの。えへへ。」


″彼と会うの、彼の家で″。




165 :M子 :2018/08/23(木) 19:53:35.31 ID:Ho539xn7p.net
ご飯の時間だよ(´・ω・`)

もぐもぐしてくるよ(´・ω・`)




166 :名も無き被検体774号+ :2018/08/23(木) 20:11:36.27 ID:AARq72+ea.net
いってらっさい
待ってるよー





168 :M子 :2018/08/23(木) 21:32:03.45 ID:Ho539xn7p.net

もう何度目かわからないイチとツチノコの電話。

相変わらずわたしの横に転がって、幸せそうにというか、馬鹿みたいに笑ってるツチノコ。

やあこんばんは、わたしM子。ってな具合に乱入してやろうかとも思う…そんな事をしたらとんでもない修羅場が待ってるのはわかってるけどさ。

楽しそうに話す彼らの声を聞くのが、あの日以来非常に憂鬱になってるのも確かで。


″俺も好きだよ″。


″彼に会うの、彼の家で″。


………何かが、崩れる音がした。


ツチノコ「マジかよ、あんま無理すんなよー……ん?」


イチ「どうかしたの?つーくん。」


気が付いたら彼の手首を掴んで人差し指の先を口に含んでいた。ゆっくり根元から先端まで唇を滑らせて、挑発的に視線を流す。触れて欲しい時、彼にする合図と同じ所作。ただし、音は立てないように細心の注意を払う。

驚いた表情のツチノコを尻目に、何も知らないフリをしてただひたすらに指先を愛でていく。優しく舌を這わせ指の間をくすぐって、また指先へ。





170 :M子 :2018/08/23(木) 21:32:48.57 ID:Ho539xn7p.net
何分そうしていただろう。わたし自身そうしている事に酔っていたのかも知れない。

ツチノコ「…ごめん、ちょっと待ってて。」

それを合図に、急にツチノコの体がわたしの上に覆い被さる。両手がベッドに縫い付けられるのと同時に、唇が塞がれる。ちゅ、と一度、音を立てて離れていった。

お互いキスをしない約束をした、って訳じゃない。でも、これまでなんとなく、しようともしなかった。

のに………。


もう一度重なった唇は、戯れに何度も啄んでは離れてを繰り返す。…こんなに心地良いキスを、わたしは今まで知らなかった。

少し遠くに聞こえていたイチの声が、終話の音と同時に途切れる。

余裕のないツチノコの表情。シーツの擦れる音。

周りなんて何もかもどうでもよかった。彼がわたしを求めている。

それだけがすべてだった。



171 :M子 :2018/08/23(木) 21:35:49.46 ID:Ho539xn7p.net
ただいまです(´・ω・`)

ぽつぽつしていくよ。


思い出って綺麗に残したいって

つい思ってしまうよね。なにゆえ。




172 :M子 :2018/08/23(木) 21:38:04.39 ID:Ho539xn7p.net
問題の週末が迫るなか、中々本人に事を聞けなかった。

どう切り出そうとか、なんて言おうとか、ドラ子が知ってるかとか、いろいろなことが頭を回ってた。

いくら考えてもうまい言い回しなんか何も出てこない。…諦めよう。


M子「ねえ、ドラ子。イチから聞いたんだけどツチノコってさ、イチと会うの?」


ドラ子「そうよー、あれ。ツチノコ言うとらんかったと?たしか今週末会うんよなぁイチちゃん。」


M子「そっか、じゃあ一旦実家に帰らなきゃなぁ。」


ドラ子「なぁー。ほんま急に予定いれるんよあいつ。Mことちゃんおらんの寂しいなぁ。M子ちゃんの荷物は上手いこと隠すけん、またその日の夜帰って来たらよか。」


にこにこと嬉しそうに洗い物をするわたしに抱きついて来るドラ子。

たまーにこうして家事をしてると抱きついて来る、本人曰く邪魔してるつもりらしい。マジ天使かな?


ドラ子には「ああ、好かれてるな」って思うことがすごく多い。もちろん友人として。

……ツチノコは、どうなんだろう。好かれてるとか好かれてないとか、そんなこと考えたことなかった。利害が一致すれば、それで良いじゃないか。


ひとつ無理矢理答えを出して、風呂に入りたいとわたしの服を脱がせに掛かるドラ子を…ドラ子?ちょっと、何してんの、やめなさい勝手にパンツ脱がさないで。入るから、風呂入るからねえ!待って!

ほんの少しもやもやする、いつも通りの夜でした。




174 :M子 :2018/08/23(木) 21:50:16.73 ID:Ho539xn7p.net
M子「それじゃ、日曜の夜また帰ってくるから。楽しんでね。」


ドラ子「ありがとうM子ちゃん、気を付けてなぁ?」


彼女の家を後にして、長い長い週末がやって来た。

たまには彼に連絡を取ろうかとも思ったけど、休みの日が忙しい彼に土日の予定を聞くのは野暮も良いところだ。


………何をして、過ごしてたっけ。

いざ一人になるとわからない。前までは一人が大好きで、早く家に帰って部屋に閉じこもりたいとか思ってたのに。


今頃、2人は何してるんだろう。


わたしがいた部屋で、わたしと見たテレビを見て。わたしと入ったお風呂に一緒に入って。私と、寝た。ベッドで。


そこまで考えて、やめた。結局2日間何をして過ごしたかなんて、覚えてない。でも、二人のことを頭から消せた瞬間なんて、無かったんじゃないかと思う。

おまけに、こんな時に限って見なくても良いものを見てしまう。眺めたのはイチが日頃文字を綴っているサイト。

″背中をみてるのが、すごく好き″。

何気ない呟きだった。けど、それだけでわたしには十分だった。何らかの形で彼女に嫉妬をしてるのを、ようやく自覚した瞬間。

ただ、その感情の正体がわたしにはどうしてもわからなかった。わかるはずもない。自分の手で隠したものを、見る手段なんてないのだから。







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カテゴリー:男女・恋愛  |  タグ:青春, 純愛, メンタル,
 

 
 
 
 

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